表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

友人の体験談:都内のコンビニ

 お久しぶりです、佐藤です。

 別の友人から、コンビニについて聞きました。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 お~、久しぶりじゃん。

 佐藤は?宮城?あ、俺?都内都内。

 そうだ。あのさ、黒崎って覚えてるか?

 そうそう、声優の。黒崎ケイゴ。

 俺、あいつ見たわ。


 配信終わった後に、コンビニに行ったんだよ。

 霧が出てて天気悪いから、早く帰ろうと思ってさ。

 コンビニでさっさと飯買って。

 そしたら、ちょうどバックヤードから出てきたんだよ。


 いや、最初は分からなかった。

 でかい店員だなって、思っただけ。

 ただ、目元がなんとなく見たことあるなって思ってさ。

 俺、その時持ってた酒のビン落としちまったんだよ。


 拾ってもらったんだけど、店員が声出してさ。


「……交換しますか?」


 声聞いて分かった。


「黒崎じゃん!?何してんの、ここで!?」


 声優やってるの知ってたけど、バイトしてるとは思わなかったよ。

 あ~……確かに。下積み時代だとバイトしてる人とかいるよな。

 でも、今の時代ならソシャゲがあるじゃん?

 すぐに潰れたとしても、金は出るじゃん。

 それに動画サイトもあるし、俺、黒崎が動画やってるの知ってたからさ。

 しかも、黒崎って今売れっ子だろ?そこまでひっ迫してんのかなって。

 話ずれたわ。

 で、懐かしい~って思ってたら向こうが口を手に当ててなんか呆然としてんの。


「……そうだ」


 なんか、一人で納得してんだよ。

 で、話そうと思った時にもう一人バックヤードから出てきた。


「およ?すごい音したけど、どしたん?」


 メガネで細目で黒縁眼鏡のでかい女。

 いや、違うって。俺の性癖じゃないって。

 マジでそういう人が出てきたんだって。

 俺と黒崎を交互に見て店員が。


「あちゃあ、落としちゃったか。ヒビ、入ってるねぇ。コウくん、新しいの持ってきてもらっていい?」

「……うす」


 コウくんって誰?と思ったけど、その言葉で黒崎が動いたから黒崎なんだって。

 でも、あいつの名前って「黒崎ケイゴ」じゃん?

 どこにもないじゃん。名前の意味が。

 その間に女性の店員さんが俺の事見てくるんだよ。

 で、名札を見たら『店長』って書いてあってさ。


「いや~、すみませんねぇ。もう少し待っててねぇ」

「あ、別に大丈夫っすけど……。その……、さっきの店員って黒崎――」


 黒崎がここで何してるのとか、なんでここにとか聞きたかったけど聞けなかった。


 首に何か冷たいのが当てられたんだよ。

 というか、首じゃなくて全身が寒かった。

 目の前の店長は、笑顔なのに迫力があった。


「コウくんが、なニか、粗相デも?」


 明らかに人じゃない、あの話し方は。

 一つ一つ区切るように、まるで人間の声帯を真似してるようだった。

 それまでは、普通に喋ってたんだぜ?

 首降ったよ。必死に。

 で、友達だってことを話した。

 したら、空気が緩んだんだ。


「あ~、そういう事ね。びっくりしたぁ」

「あの、黒……コウってどこから来たんですか?」

「ん~?そっちと同じ場所。ただ、ここに来るときに全部落っことしたらしくてねぇ」


 落っことしたって、何を。

 質問しようと思ったけど、なんとなく出来なくて黙ってた。


「名前も存在も何もかも、あの子にはなかった。『こっち』に迷った時に、落としちゃったんだろうね。だから、私が名前を付けたんだ。虚空って書いて『コウ』って。ここにいる間だけ使える名前さ」

「だから、コウって」

「そういう事。……まぁ、君のおかげでコウくんも何か拾えたのかもしれないかな」


 寂しそうに嬉しそうに話す店長。

 なんというか、店長と店員って感じではなかったな。

 どちらかというと……心配?

 にしては、ちょっと過保護すぎるな。

 まるで、親が子供を心配するみたいだった。


「……これでコウくんも問題ないだろう。あとは、あの子の気持ち次第だし」

「そう、なんですか」

「うん。少なくとも、コウくんを『知っている』人がいるんだったら問題ない」

「ただなぁ。この『家』は寂しがるなぁ。せっかく、シェアハウスをしてたのに」


 店長がそう話した瞬間、コンビニ全体がぎしぎしと鳴り始めたんだよ。

 家鳴りってあるじゃん?柱がなるやつ。

 あれじゃない。もう、本当に揺れてるんじゃないか?ってくらい。

 癖で天井見て、何か落ちてこないか確認しちまった。

 店長は。


「まぁまぁ。私らがいるじゃん?」


 って、慰めてた。

 コンビニの店舗を。子供みたいに。

 俺、とんでもねぇところに来たんじゃないかって。

 ちょうどそのタイミングで、黒崎が戻ってきたんだよ。


「……店長、同じものがなくて……」

「あらら?じゃあ、別のでいい?」


 店長が俺に聞いてきた。

 もう、頷くことしかできない。

 明らかに人じゃない『店長』

 全部『落っことした』友人。

 意志を持って鳴る『コンビニ』

 すぐに帰りたかった。


 で、普通に金払って出たよ。

 帰る間際に言われた。黒崎に。


『思い出した。ありがとう』


 それで、思い出したんだよ。

 そうそう、お前の調査書。

 あれってさ、基本は東北だろ?


 なんで、都内にあのコンビニがあるんだよ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 これが、友人から聞いた話です。

 黒崎ケイゴ氏は、どうやら件のコンビニで働いているようです。

 しかも、今まで出た話と違いますね。

 今までは東北地方の一部地域にのみ出現していたコンビニが、都内にも出現しました。

 次ページに今まで出た情報をまとめます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ