第7話 双子、不届き者を成敗する
色々あったけど、僕達は冒険者として登録することができた。これで食い扶持に困ることは無いね!
「皆さん、ありがとうございました!」
「お陰で冒険者になることができました!」
「大したことじゃねぇよ。俺達はただ、お前らをここまで連れてきただけだぜ。なぁ、リーダー?」
「そうだな、感謝される程のことではないさ」
「何言ってるんですか!? 僕達だけじゃ登録どころか、この街に辿り着くこともできなかったんですよ?」
「仮に街まで辿り着けても、皆さんがいなかったら検問も通れませんでした。皆さんには感謝しかありません!」
「ふふっ。2人共、本当に素直だね」
「リーダー。ここは寧ろ、1つ貸しにしてしておいた方が、2人のためかもしれないっすね」
「わ、私もそう思います。その方がお2人も、後腐れが無くて楽でしょうし」
「・・・2人の力を借りたい時にも、口実に使える」
「さすがにそこまでのことは起こらないと思うが・・・わかった、ここは1つ貸しにさせてもらおう。俺達が困った時には、是非とも君達の力を貸してほしい」
『もちろんです!!』
「お前らが困った時も、また俺達を頼ってくれて良いからな!」
『ありがとうございます!!』
「それじゃあ、俺達はギルドに報告があるのでな。ここで一旦お別れだ」
「私も、自分の店での仕事がありますので、暫しの別れでございます」
「そっか・・・」
「寂しくなりますね・・・」
「そんな顔をするな、2人共。俺達の拠点はこの街にあるんだ。すぐにまた会えるさ」
「私もこの街に拠点がございます。しかも、ちょうどこのギルドの目の前に」
え、近っ!
「何かお探しの物がありましたら、是非とも私の店をご贔屓に。そうだ!お2人にはこれを」
「これは?」
「またカードだ」
「私の系列の店で使える、会員券です。それがあれば買い物の際に、お品物を2割引きでお買い上げ頂けます」
『2割引き!?』
「ただし、私からの指名依頼を、優先的に受けていただくことが条件となります」
「それなら大丈夫です!」
「お世話になったマシュロフさん―――いや、おやっさんのためなら、どんな依頼も受けます!」
「二言はございませんね? では、こちらをどうぞ」
『ありがとうございます!!』
「おいおい、わかってるのか? ソイツをもらうっつーことは、平気で一ヶ月とか掛かる護衛依頼も、絶対受けなきゃならねぇんだぞ?」
「おやっさんの役に立てるなら!」
「全然平気です!」
「やれやれ、2人は本当にお人好しだよね。おやっさん、2人の優しさに付け込むようなことしたらダメだからね!」
「もちろんですとも。私の名に誓って、そのようなことはいたしません」
「心配せずとも、おやっさんなら大丈夫だ。それより、そろそろ報告に行こう」
「そうだね」
「それでは2人共、達者でな」
「またお会いしましょう」
『はい!また今度!』
こうして、『大いなる鷹』はギルドへの報告へ、おやっさんは向かいの店へ、そして僕達は、初依頼を受けに向かった。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
「うわぁ・・・!」
「綺麗・・・!」
僕達は今、ヴィオランダの南方面―――ヴィオランダ郊外の草原へ来ている。ここで僕達は、人生初の依頼をこなすのだ。
「依頼は『ヴィオランダ郊外の、草原に発生するゴブリンの駆除』だったよね?」
「うん。ランクEの依頼だし大した内容ではないけど、しっかりやろう!」
「もちろん!初依頼、絶対成功させよう!」
『おーーーー!!』
しかし、肝心のゴブリンが見当たらない。ただ美しい草原が広がっているだけだ。
(ここで姉上とピクニックとか・・・えへへ ⸝⸝^ᴗ^⸝⸝)
「キール」
「え!な、何?」
「いや、その・・・ここでキールと、デートとかできたら良いなって♡」
(っ!!あ、姉上ってば、僕と、デ、デートだなんて・・・≧∇≦ )
「・・・依頼の後で、2人でまたここに来よっか?」
「うん!」
姉上の顔が真っ赤になってる。まあ、そう言う僕も、さっきから顔が熱くてしょうがないけど・・・と、ここで、ムードぶち壊しの野暮な奴らが現れた。
『ギギギィ!!』
今回の目的のゴブリン達が、群れを成してこっちに迫ってくる。数は3体程で、レベルは約200程。探してた相手だから見つかったのは良かったけど、あまりにもタイミングが悪すぎる。しかもよく見ると、皆女性を襲う下卑た男のような目で、僕達を見ている。完全に僕達を襲うつもりだ。
『・・・チッ』
少々イラつきながらも、僕達はゴブリン達に挑む。そして一瞬で、首と胴を泣き別れにしてやった。
「えーと、確か討伐証明に、片耳を持ってかないといけないんだっけ?」
「うん、確かそうだったよ?」
「じゃあ、耳回収しようか」
「だね・・・あまり気は進まないけど」
幾ら魔物といっても、その耳を切り落として持っていくのは、正直気分の良いものじゃない。僕達は躊躇しつつも、依頼達成のためにナイフで耳を切って、それを魔法のポーチにしまっていく。
「はぁ~・・・魔物の耳を切るのって、心にくるなぁ~」
「案外倒すよりも、こういう回収の方が大変だったりして?」
「それはあるかも」
きっと『大いなる鷹』も、こういう試練を乗り越えて、Sランクまで上り詰めたんだ。
「さて、それじゃあそろそろ帰ろうか」
「だね!それで、その後は?」
「そうだな。またすぐここへって気分でも無いし・・・一緒に街でも周ろうか?」
「良いね!」
『ギギギィッ!』
そこへ、またタイミング悪くゴブリンが現れる。レベルは先程と同じだが、今度は数が5体程になっている。
「コイツら、マジで・・・!」
「タイミング悪すぎ!」
僕達はさっきよりもイラつきながら、ゴブリン達を全滅させる。そして討伐証明として、耳も回収していく。
「ああ、また心にダメージが・・・」
「頑張って、姉上!きっとここから先、こういうことはいっぱいあるんだから!」
「・・・そうだよね。よし!」
5体の耳全てを回収した所で、僕達は今度こそ街へ帰ろうとする。
「ねえ、姉上?」
「どうしたの?」
「手、繋いでも良い?」
「っ!!もちろん―――」
『ギギギィ!!』
またまたタイミング悪くゴブリンが現れた。今度は10体・・・!
『いい加減にしろ!!』
「ゲギャ!?」
「『時空破壊拳』!!」
「『風の斬撃刃』!!」
仏の顔も三度まで。僕達のイライラ度は頂点に達し、少々乱雑にぶっ飛ばしてしまう。お陰でゴブリン達は粉微塵になり、耳も残らなかったけど、今はそんなことどうでも良い!
「キール!これ絶対おかしいよね!?」
「うん、絶対おかしい!」
「私達がイチャイチャしようとすると、急にゴブリンが湧いてくるなんて」
「きっと、他人がイチャつくのに嫉妬してそれを邪魔しようとする、逆恨みも甚だしいゴブリンが近くにいるんだ!」
「許せない!自分勝手な嫉妬で人の恋路を邪魔しようだなんて!」
「絶対やっつけてやらないと!」
改めて気配を探ってみると、南の方からかなり大勢の気配がする。『鷹の目』を使って調べてみると、ここからさらに南の方向に洞窟があって、そこに大量のゴブリンが集まっていた。ギルドの人の話と照らし合わせると、恐らくゴブリンの集落というやつだ。一番奥に、一番強そうなリーダーっぽいゴブリンが2体いて、玉座のようなものに座っている。そして一段低い所に、銀色の鎧を纏ったそれなりに強そうなゴブリン達が、隊列をなしていた。他にもフード被った奴だったり、弓持った奴だったり、とにかく凄い数のゴブリンが集まっている。
(この魔力、さっきのゴブリン達と良く似てる。コイツらが、さっきの奴らの親玉に違いない!コイツらが僕達の邪魔を・・・!)
「・・・ん?」
「どうしたの?」
「一番強そうな奴の隣に、同じくらい強そうな奴がいるんだけど・・・やっぱりコイツ、メスのゴブリンだ!」
「メス? もしかして隣にいるのって・・・」
「うん、絶対一番強そうな奴の彼女だよ!」
「っ!!それってつまり、ソイツ自分だけ彼女とイチャついて、他の人のイチャイチャを邪魔してるってこと!?」
「そうだよ!逆恨みどころか、完全に悪意を持って邪魔してたんだ!」
「んの野郎~!」
こうしちゃいられない!今すぐあの集落をぶっ潰す!
「行こう!姉上!」
「おうよ!世界中のカップルの、恋路のために!!」
僕達は全速力で、ゴブリン達の集落を目指した。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
ここは、ゴブリンの集落。
この集落に住むゴブリン達は、今日もレベル上げの最中だ。
「グフフ、我らの眷属共が、順調に経験値を集めているようだな」
「ええ。この調子でいけば、いずれあの町を支配下におけるわね」
人間のように言葉を話せる高い知性を持った、この集落の長たる2体のゴブリン―――ゴブリン王とゴブリン女王は、ヴィオランダを支配下に置いた様子を思い浮かべ、恍惚とした表情を浮かべる。
ゴブリン王とゴブリン女王には、番となることで獲得できる2つのスキルがある。そのスキルとは『眷属誕生』と『眷属回収』。『眷属誕生』は文字通り、眷属―――ゴブリンを生み出す繁殖のスキルだが、厄介なのは『眷属回収』。このスキルは、眷属が人や他の魔物を殺した際、眷属が稼いだのと同じ分の経験値を獲得することができ、さらに眷属が倒された際は、眷属を倒した分の経験値と、眷属のスキルを獲得できるのだ。そしてこのスキルの力を活かすべく、王と女王はある作戦を決行していた。
作戦は単純で、「ゴブリンの群れを定期的に草原に送り出す」というものだ。低級とは言え、ゴブリンも魔物。ゴブリンがいるとわかれば、街の守備隊か、冒険者が必ず討伐にくる。ここで眷属が彼らを倒せれば良し、倒せなかったとしても、眷属達の経験値で王と女王はレベルアップできる。
さらに狡猾なことに、1つの群れにつきゴブリンの数は、10体までに抑えられている。キールが街までの道中で出くわしたような、1000体規模のゴブリンの群れが現れた場合、Sランクの冒険者が必ず出張ってくる。Sランクともなると人や魔物の気配に敏感で、集落の存在に気付かれて攻め込まれる可能性が高い。しかし10体程度であれば、集まっていても違和感を持たれることはなく、出張ってくるとしてもゴブリン相手なら、せいぜいCランクまで。Cランクならば、街からそれなりに離れた洞窟の奥にある拠点に気付かれる心配もなく、集落を密かに成長させることができる。
スキルの特性と、人の先入観を利用した狡猾な作戦で、今や王と女王のレベルは
5000にまで至っている。さらに『眷属回収』には、キングとクイーンが経験値を得た際、最大でその8割と同量の経験値を眷属が得られるようにする力もあり、それによって8割の経験値を得続けた眷属20体が、ゴブリン将軍―――銀の鎧を纏ったゴブリンに、4割を得続けた眷属200体がゴブリン魔術師、ゴブリン呪術師、ゴブリン弓術士、ゴブリン剣士へと進化して、王と女王を守っている。将軍のレベルは約4000~4500、魔術師、呪術師、弓術士、剣士のレベルは平均2000。最早『大いなる鷹』でも対処不可能なレベルの、大集落である。
「まさか、あの方の作戦がこれほど上手くいくとは、恐ろしい方だぜ」
「そうね。でもあたし達は、あの方に選ばれた。味方になれば、あの方以上に心強い人もいないんじゃない?」
「そうだな。後はあの方のお望み通り、この先のヴィオランダとかいう街を落とせれば、俺達はあの方の部下として認められる」
「ウフフ、楽しみね。あの街の奴らはどんな悲鳴を上げてくれるのかしら?」
「使える奴隷も幾分か調達したいな。眷属共は全て兵士に回し、雑用を全て押し付けられるようにな!」
「ウフフフ・・・」
「グフフフ・・・」
既にヴィオランダを支配することが確定しているかのように、余裕の笑みを浮かべて支配した後の話を始める2人。だが、現在この集落には、終焉の化身が迫っていた。
『っ!?』
突如、その場にいたゴブリン全員が、凄まじい覇気を感じて身構える。
「な、何なのこれ!?」
女王が怯えの混じった声で聞くが、そんなこと王にもわからない。ただ得体のしれない何かが、物凄い勢いでこちらに迫っていることだけは確かだった。
(Sランクか? いや違う!Sランクなんて可愛いものだ。一体何が―――)
ここで、凄まじい轟音と衝撃が、集落を襲う。そして次の瞬間、洞窟の天井が破壊され、何かが飛び込んで来た。さすがに高レベルなだけあって、降ってきた瓦礫で圧死する者はいなかったが、それでも一部の者は傷を負い、洞窟の天井には青空が映っていた。
「クソッ!一体何だってんだ!? いきなり天井がぶっ壊れるなんてよ!」
「チッ!あたしの美しい顔が台無しじゃない!」
悪態をつきながら王と女王は立ち上がる。手下のゴブリン達も、態勢の整った者から立ち上がった。土煙が収まり視界が開かれると、そこにはそっくりな顔立ちをした、白髪の人間が2人いた。
「な!人間のガキだと!?」
「しかも、たった2匹!?」
『ガキって言うな!!』
『あ、はい・・・』
2人の勢いに押されて、王達は思わずそう答える。
「って、今はそんなことどうでもいい!お前らだな? 僕達のイチャイチャを邪魔しやがったのは!!」
『・・・はあ?』
「とぼけても無駄だぞ!私達を襲ったゴブリン共は、間違いなくあんたらの手下だった!私達がちょっと良い雰囲気になる度に、ゴブリンをけしかけやがって!」
「自分だけ彼女とイチャついておきながら、他のカップルの恋路を邪魔するなんて!」
『許さないぞ!カップルの敵め!』
王も、女王も、その場にいるゴブリン全員、2人が何を言っているのか、理解できなかった。
結論から言うと、双子の推理はまったくの見当違いである。王達はゴブリンに、草原に来た弱そうな人間を倒せと命じていただけ。当然、カップルの邪魔をしろなんて命令は、一度も出していない。ただこの双子は、背が低いため一見弱そうに見える上に、ヒト族でも類を見ない程容姿端麗だ。ゴブリンには、容姿端麗なヒト族を見かけると、奴隷にしようと即座に襲い掛かる習性がある。故に双子はゴブリンによる襲撃を、断続的に3度も受けたのだ。タイミング自体は偶然だが、双子が集中的に襲われたことには、ちゃんとした理由があったのだ。
そんなこととは知らない双子は、恋敵と勘違いしたゴブリン達の集落を破壊、Sランクパーティーでも手に余るゴブリンの集落に真っ向から喧嘩を売ったのだ。
「てめぇらが何を言ってるか、さっぱりわからねぇが、俺達の住処をぶっ壊して、覚悟できてんだろうな!?」
「そっちこそ、消される覚悟できてんの?」
「んだと、ゴラァ!?」
「飛んだ身の程知らず共ね。あんたら、今の自分達の状況わかってる? 確かにレベルはあんたらの方が上みたいだけど、こっちはレベル2000~レベル5000の、200体を超えるゴブリン群団よ? そんじょそこらのゴブリンの群れと同じだと思ったら、大間違いよ!」
「たった200? しょっぼ(笑)」
「んなっ!?」
「こんなの私達が相手するまでもないね」
「え、誰か呼ぶの?」
「ふっふっふ、キールにも見せてあげるよ!私のギフト『獣王』の力!」
カーナが片足を振り上げ、一歩前に出ながら、四股踏みの要領で地面を踏み抜く。するとカーナの前に魔法陣が展開され、そこから何かが召喚される。
「おいで、神狐王『九尾』!」
名前:九尾
種族:神狐王
レベル:9500
スキル:幻霧
「凄い!まさか神獣を呼び出せるなんて!」
「神獣だけじゃないよ!獣系の魔物も、契約すれば自由に呼び出せるんだ!まあ、1回戦って認めさせないとだけど」
双子がそんな会話をしている裏で、ゴブリン達は身構える。自分達より明らかに強い2人組が、これまた格上の存在を呼び出したのだから当然だろう。
(折角育てた兵士共が減っちまうのは惜しいが、こうなったら仕方ねぇ)
「てめぇら、あのデカい狐を何とかしろ!」
『ハッ!』
王は九尾を眷属達に任せる。ただし、九尾を倒させるためではない。目的は九尾に眷属達を殺させて、自身と女王のレベルを上げることだ。もちろん眷属達はそのことを知らないが。
「九尾!やっちゃって―――」
「あ、ちょっと待って!その前に、『封印』!」
キールが王と女王に『封印』を仕掛ける。
「これで大丈夫だよ!」
「オッケー!じゃあ改めて、九尾!」
「コオォォォォン!!」
カーナの指示に、九尾が即座に動く。常人であれば瞬間移動にしか見えない速度で、ゴブリンの軍勢に急接近!そして鋭い爪の生えた前足で、一瞬の内にゴブリン達を一体残らず、頭だけ残して肉片に変えた。残るは王と女王のみ。
「ぐぬぬっ、まさか一瞬で消されるとは・・・!だが、残念だったな!」
「眷属達は消えちゃったけど、お陰でその力は全てあたし達の物になる!これでアンタ達なんか―――」
「ならないよ」
『へ?』
「だって、スキルは封印しちゃったもん」
そう言われて王達は、改めて自分達の状態を確認する。すると、『眷属誕生』と『眷属回収』が封印されており、レベルも5000のまま変化していなかった。
「ば、バカな!俺達のスキルが!?」
「君達のスキルは、この『鷹の目』で調べ済みだったからね。先に対策させてもらったよ♪」
「さっすがキール!益々好きになっちゃう♡」
「えへへ♡」
隙あらばイチャつく双子。怒り心頭の王と女王の前でもお構いなしだ。
「この野郎ーーーーーーー!!!」
「よくもあたしらのスキルを!!」
『うっさい!!』
キールはカリバーンで王の首を切り落とし、カーナはパンチで女王の体を爆散させた。
「あ、ついでに皆のスキル、貰っちゃうね」
ゴブリン達の頭から、赤い錠前が飛び出し、キールに集まっていく。そして錠前を開き、キールはゴブリン達のスキルを奪った。
「キールの『錠前』も凄いじゃん!あんな風に相手のスキルを奪えるなんて!」
「奪ったスキルを使いこなすのは時間がかかるけどね。それよりも姉上」
「何?」
「邪魔者は皆やっつけたし、さっさと首集めて帰ろうよ」
「そうだね!こんな辛気臭い所にいつまでもいたくないし!」
「手、繋いで帰ろうね ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝」
「もちろん!! ⸝⸝>ᴗ<⸝⸝」
ゴブリンの首を1つ残らず回収し、彼らの集落跡地を残して、双子は仲良く手を繋いでヴィオランダへと帰っていった。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
カップルの邪魔をする不届きゴブリン群団を全滅させ、僕達は冒険者ギルドまで戻ってきた。
「お帰りなさいませ」
受付まで来ると、シアさんが僕達を出迎えてくれた。
『ただいまです!!』
「あらあら、仲良く手を繋いで、デート中ですか?」
「これから行くんです!」
「その前に依頼達成の証明が欲しくて」
「えっ、あ、本当だったんだ―――ではなくて、かしこまりました。お2人が受けた依頼は、『ヴィオランダ南方面のゴブリン討伐』でよろしかったでしょうか?」
「大丈夫です」
「間違いありません」
「では、討伐証明の耳をご提示ください」
『はい!』
僕達はポーチから、合計8つの耳を取り出す。3度目の10体は粉微塵にしちゃったから、耳が残らなかったんだよね。
「討伐証明の、ゴブリンの耳を確認しました。これで、依頼は完了です。報酬は後程、お支払いします。2人共、お疲れ様でした!」
『やったぁ!』
僕達はハイタッチを決める。これで初依頼は完了だ!
「これで心置きなく、デートに行けるね!」
「うん!さっきの依頼の時は邪魔されまくったから、思いっきり楽しもうね!」
「え? 依頼の最中にデートしようとしてたんですか?」
「あ、いえ、そうじゃないんです」
「依頼が終わった後に、デートしようって話をしてたんです」
「ああ、そういうことですか。でもそれじゃあ、邪魔されたっていうのは?」
「依頼の途中であれですけど、僕達、良い雰囲気になることが度々あったんです」
「でもその度にゴブリンが湧いて、イチャつくのを邪魔されてしまって・・・」
「そ、それは災難でしたね・・・」
(私なんてもう30年独身なのに!このバカップルめ!)
「はい。何度も邪魔されてムカついたので―――」
『集落ごとぶっ潰してやりました! ^∇^』
「・・・へ?」
あれ、シアさんの様子が・・・?
「あの、聞き間違いだとは思うのですが、今『集落を潰した』って言いました?」
『はい』
「し、しかし、この辺りに集落の情報はありませんよ? ちょっとした、10体程度の群れとかじゃないんですか?」
「いえ、結構な数でしたよ?」
「確かデッカい奴が、『200体だ!』とか言ってました」
「そうだ!せっかく首持って来てたし、それ見せた方が早くない?」
「さすが姉上!というわけで、ちょっと多いですけど、出して良いですか?」
「え、ええ、どうぞ」
よし!許可ももらったし、早速出しちゃおう!
『それ!』
僕達はポーチをひっくり返し、受付前の広場に持ってきた首を出していく。
「あぁ、あぁぁ・・・!」
「な、何だよこの数!」
「軽く見積もっても、マジで200はいるぞ!」
「嘘だろ!? 本当にこんなのが、ヴィオランダの近くに!?」
「魔術師、呪術師、将軍に・・・キ、王と女王まで!?」
「しかも全部レベル2000以上だ!王共なんて、5000に至ってるぞ!」
『何ぃ!!!?』
シアさんが魚みたいに口をパクパクさせ、ギルドも大騒ぎになってしまう。
「皆どうしたんだろう?」
「『キング』とか言ってたけど、もしかしてコイツら強いのかな?」
「え? コイツらが?」
「ちょっと聞いてみよう。シアさん」
「は、はい?」
「コイツらって、そんなに強いんですか?」
『強いどころの話じゃないわ!!』
『ひぃっ!?』
み、皆どうしちゃったの? いきなり大声なんて上げちゃって!?
「わ、悪い。驚かせちまったな。だがよ、王と女王の群れってのは、本当にヤベーんだ」
「王と女王の番いはね、放っておくと手下のゴブリンをどんどん増やして、最終的にはスキルの力も相まって、街すら滅ぼす大軍勢になるの。この規模だと、ヴィオランダの街は100パー終わりね」
「だから番いは発見次第、デカくなる前に討伐するのがセオリーなんだ」
確かに、言われてみるとコイツらは、僕と姉上にとっては弱くても、他の冒険者にとっては大きな脅威だ。それこそ『大いなる鷹』でも、この群れを討伐することは不可能だと思う。
「僕達って、僕達が思ってた以上に、強かったんだね」
「もう少し自分達の力を自覚した方が良いね!」
「あ、あの、ちょっと、よろしいでしょうか?」
『はい?』
「先ほどから、お2人はこの群れをお2人だけで制圧したように言ってますが、そんな訳ないですよね? 他の方と一緒に制圧したんですよね?」
「いえ、僕達だけです」
「他の人の手を借りるまでも無かったので」
姉上がギフテッドであることを隠すためにも、九尾ちゃんのことは言及しないようにする。別に嘘は言ってない。2人でも、『2人と1頭』でも、僕達であることに変わりないし、人の手は借りてないからね。
「う、嘘じゃねぇのか?」
「いや、一緒に戦った奴がいるなら、ソイツがここに居て、そんで真っ先に報告するだろ」
「確かにな。あいつら放っといたら、このこと言わなかった可能性あるもんな。(デートとか言ってたし)」
いや、報告はするよ!―――デートの後に。
「―――わかりました。お2人の言葉を信じます」
良かった!信じてもらえた!
「お2人には、大変なご迷惑をおかけしてしまいました」
「め、迷惑?」
「ゴブリンの集落を潰しただけですよ?」
「いえ。我々ギルドがあなた方に依頼したのは、『ヴィオランダ南方の平原にいるゴブリンの討伐』のみです。にも関わらず、我々の調査が至らぬばかりに、『王と女王の集落の殲滅』まであなた方に任せることになってしまいました」
『あ・・・』
「それにもしも、お2人以外の誰かがこの依頼を受けていた場合、下手をすれば犠牲者が出ていたかもしれません。ギルドを代表して、ご迷惑をおかけした謝罪と、数多の悲劇を事前に防いでくださった感謝を述べさせていただきます」
シアさん、そしてその場にいたギルドの職員さん達が、僕達に深く頭を下げてきた。
き、気まずい・・・ (-_-;)
「あ、頭を上げてください!」
「僕達はただ、初依頼の延長をしただけですし!」
「寧ろ、私達にこの依頼を受けさせてくれて、良かったですよ!」
「そう言っていただけると、幸いです。さて、『サブマスター』シアの名において命じます。直ちにヴィオランダ南方面に、調査隊を送ってください。集落が存在した事実を確実な物とし、今後の対策のための調査を!」
『はいっ!』
職員さん達が慌ただしく動き出す。ところで、サブマスターって?
「シアさん、サブマスターって何ですか?」
「ギルドの総責任者『ギルドマスター』の補佐官であり、有事の際に代理を務める者のことです」
『つまり、偉い人なんですね!』
「ま、まあ、今はその認識で良いでしょう。話が逸れましたが、お2人には後日、改めて追加報酬を出させていただきます。それから、お2人のランクも上がると思いますので、お伝えしておきますね」
「え、もう?」
「早すぎません?」
「Sランクですら対処不能な案件を、たった2人で片付けたたんですよ? Fランクのままにしておけるわけないでしょう?」
「それは・・・」
「そうですね・・・」
「状況が整理でき次第、また改めて連絡させていただきますので、その時はよろしくお願いします」
『わかりました!』
「じゃあ、姉上。そろそろ・・・」
「そうだね、そろそろ行こっか!」
「どこ行く?」
「おいしい料理のある店にしよう!」
「いいね!行こう行こう!」
僕達はデートに行くため、ギルドを飛び出す。その際、周りから色々な視線を浴びたけど、そんなものは気にならない。だって、姉上と2人きりの、世界一幸せな時間が始まるんだから!




