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異世界こじ開けジャーニー  作者: 蓬莱
第1章 旅立ち
6/9

第6話 元王女様、変身する / 双子の冒険者登録

姉上が仲間に加わって、2日程経った。多少魔物は現れるが大したことは無く、いたって平和な旅路だ。ただこれだけ平和だとやることが無いので、僕と姉上はどちらが多く魔物を倒せるか、競争を始めた。


「『時空破壊拳(クロノ・パンチ)』!」

「ブモォォォ・・・!!」


今もちょうど姉上が、約1キロ先にいた『突撃猪(クラッシュ・ボア)』を倒したところだ。


「レベル2000か。全然だな」

「ああ!また取られた!でも『時空破壊拳(クロノ・パンチ)』はかっこいいなぁ!」

「あーはっはっは!そうでしょう?」

「でも、僕だって負けないよ!『風の斬撃刃(ウィンド・スラッシュ)』!」


今度は僕が、カリバーンを手に取り、風魔法『風の刃(ウィンド・カッター)』と融合させた斬撃を飛ばす。斬撃は遥か上空まで飛んで見えなくなり、しばらくすると斬撃の代わりに、低級竜種『飛蜥蜴(ワイバーン)』が5体落ちてきた。


「レベル1000とはいえ、飛蜥蜴(ワイバーン)を一気に5体!? うわー、やられた!あんな高い所にもいたんだ。よく気が付いたね?」

「姉上は地上ばかり見てたから、僕は空に集中してたんだ」

「ああ、それでさっきからキールの獲物は、飛行する魔物ばかりなんだね」


そんな話をしていると、ガイさんが話しかけてきた。


「な、なあ、2人共」

『はい?』

「2人はいつもこんなことをしているのか?」

「『どっちがいっぱい魔物倒せるかバトル』のことですか?」

「名前は知らんが、多分それだ」

「そうですね。森に通ってた頃は、ほぼ毎日のようにやってました」

「僕達の遊びっていったら、基本はこれです!」

「そ、そうか」

(魔物狩りが遊び・・・なんて恐ろしい子達なんだ)

「まあ、今回は獲物が弱すぎますけどね」

「いつもは最低でもレベル4000だもんね?」

「ねー?」

「ほ、本当かそれは!?」

『はい』

(ザックとアドレナのレベルで、最底辺だと!? ヤバい、ヤバすぎるぞ、その森は!やはりギルドに報告して、大々的に調査する必要があるな )


何やらガイさんが難しい顔をしてる。


「どうかしたんですか?」

「あ、あぁ、すまない。少し考えていたんだ。ほら見ろ。そろそろ街が見えてきたぞ!」

『え!? どこどこ!?』

「落ち着け2人共。あそこだ」


ガイさんが指す方向を見ると、そこには立派な砦がある。


「あれがディアナ王国辺境の街、ヴィオランダの入口だ。あそこの検問を通り抜ければ、街に入れるぞ」

「何か必要な物はありますか?」

「えーと・・・何だったか?」

「確実に必要なのは身分証ですね。組織などで発行される身分証には、その者がどういう立場なのかが記録されます。そのためこうした検問では、良く身分証の提示が求められるんです。身分証を提示することで、余計な疑いを掛けられることなく、すんなり検問を通ることができます。冒険者の身分証などは特に、ほぼ全ての国で共通で使うことができるので、重宝されていますよ。まあラスタル王国のように、冒険者の身分証を認めていない国もありますが」

「まあそういう時は、検問所でお金払って、その国の旅人としての身分証を買うしかないっす」

「ちなみに、2人は身分証は・・・」

『・・・・・・』

「まあ、持ってるわけないか」

「では、その費用は私が払いましょう」

『本当ですか!?』

「お2人の将来性を見込んだ、先行投資というやつです」

『ありがとうございます!!』


それから10分もしない内に、僕達は砦に辿り着く。そこで僕達は、おやっさんの予想通り、身分証の提示を要求された。


「マシュロフさん、『大いなる鷹(グレート・ホーク)』の皆さん。おかえりなさい!」


警備兵のお姉さんが、はじけるような笑顔でそう言った。


『ただいま!』

「ただいま戻りました。いつもご苦労様です」

「ありがとうございます!早速ですが、身分証の提示をお願いします」

「ああ、確認を頼む」


大いなる鷹(グレート・ホーク)』の皆さんが白金(プラチナ)のカードを、おやっさんが金の装飾が付けられたカードを取り出す。


「はい、確かに。ところで、そちらのお2人は?」

「ああ、旅の途中で出会ってな、冒険者志望だと言うので、一緒に連れてきたんだ」

「随分可愛らしいお子さん達ですね!顔がそっくりですけど、双子ちゃんですか?」


むう、また子供扱い。僕達はもう大人なのに!


「2人揃って、見事に膨れてるな」

「え、もしかして、この2人は・・・」

「そうなんだ、全くそうは見えないだろうが、この2人は既に15歳。つまり、成人してる」

「た、大変失礼しました!」

「いえいえ、この身長ですから」

「子供と見間違えても、仕方ないですよ」


思い切り笑顔を浮かべて、僕達はそう言った。本当はかなり不満が残ってるけど、些細なことでずっと怒り続けるのは、子供のやること。大人の僕達は、大人に相応しい対応をしないとね。


「はぅっ!可愛い!―――じゃなくて、寛大な心に感謝致します」

「2人は今、身分証が無くてな、2人のディアナ王国の旅人としての、身分証の発行をお願いしたい」

「招致いたしました。ではまず、代金として金貨2枚お支払いいただきます」

『金貨!?』


身分証たっか!


「申し訳ありません。手頃な値段で発行できてしまうと、逃亡中の犯罪者まで街に入ってしまう恐れがあるので・・・」


確かに。最悪お金さえ払えばこの検問は誰でも通れるけど、それでは犯罪者でも入れてしまう。だから、ある程度の制限をかける必要があるんだね。


「こちらをどうぞ」

「確かに、金貨2枚いただきました。では、お2人の名前を教えていただけますか?」

「はい、僕はキールって言います」

「私はカーナです」

「キールさんと、カーナさんですね。承りました。少々お待ちください」


そういってお姉さんは、奥の部屋へ行ってしまう。それからしばらくして、銅色のカードを2つ持って、お姉さんが出てきた。


「お待たせいたしました。こちらがキールさんとカーナさんの身分証になります」


そう言って渡されたカードには、僕達の名前と、身分の欄に『旅人』と書かれていた。そして不思議なことに、僕達がカードを持つと、左上の空いていた欄に、僕達の顔が描かれた。


「わ、何これ!」

「顔が出てきた!?」

「凄いだろう? 身分証に使われるカードには、微弱な魔力が宿っていてな。持った者に魔力を流して顔の構造を把握し、その者の顔を刻むことができるんだ」

「へえ~、凄いなぁ!」

「これが、僕達の身分証・・・!」

「ただし、その身分証はディアナ王国でしか使えない。世界を見て周る気があるなら、冒険者の身分証は必須だ」


それなら尚のこと、早く冒険者登録をしないと!


「それでは、キールさん、カーナさん。ようこそ!ヴィオランダへ!」


お姉さんに見送られ、僕達はついにヴィオランダの街へ足を踏み入れる。生まれて初めて目にする、ラスタル王都とは別の街。そこは活気に溢れ、数多の種族が共存し、人々は笑顔を浮かべていた。皆、とても楽しそうだ。軍隊が幅を利かせ、常に重苦しい雰囲気が漂うラスタル王都とは大違いだ。


『わぁ~~!!』


僕と姉上は、街の雰囲気に圧倒されていた。


「気に入ってくれたか? この街は」

『はい!』


もう今すぐにでも街を探検したくてしょうがない!


「姉上!探検しに行こうよ!」

「いいね!行こう行こう!」


我慢ができなくなって、僕は姉上と一緒に探検に飛び出そうとした。けれどそこで、ガイさんに止められてしまう。


「2人共、ちょっと待て。まずはカーナの衣服を買いに行くぞ」

『え?』

「『え?』って、当たり前じゃん。その恰好のままだと超目立つんだもん」

「なんせ、ラスタル王国軍の大将の軍服っすからね。既に注目浴びてるみたいっすよ?」

「あ、あはは。そうでしたね・・・」

「もしやカーナ、その軍服のことを忘れていたのか?」

「はい・・・」

「やれやれ。とにかく、このままではマズい。早い所着替えさせないとな」

「でしたら、この近くに私のお抱えのブティックがあります。そこで新しい服を購入されてはいかがでしょう? 案内致しますよ」

「本当か? それは助かる!」


砦を抜けた先の道をまっすぐ歩き続けて、少し経った所で大きなショーウィンドウのある店に辿り着く。


「こちらの店です」

『デッカーー!』


もちろん、ラスタルの王城と比べると小さいけど、今まで見てきたお店の中では、間違いなく1番のデカさだ。


「どうぞこちらへ」


おやっさんに連れられて、僕達は店に入る。


「いらっしゃいませ~!あら、マシュロフちゃんじゃない!久しぶりねぇ~!」


出迎えてくれたのは、何やら奇抜なファッションに身を包むおじさんだった。


「ご無沙汰しております。ブルーノさん」

「もう、違うでしょ? 今のあたしはキャシーよ、キャシー!」

「いやはや、失礼。昔の呼び名の方が慣れているものでして」

「まあ良いわ。ところで、後ろにいる人達って『大いなる鷹(グレート・ホーク)』じゃない? 後でサイン良いかしら?」

「まあ、構わんが・・・」

「ありがとう!あ、失礼。自己紹介が遅れたわね。あたしはキャシー。このブティックのオーナーよ!よろしくね!」

「ブル―――キャシーさんは少々こだわりの強い方ですが、ファッションについては腕利きです」

「それで、今日は『大いなる鷹(グレート・ホーク)』の服を捜しに来たの?」

「いえ、服を見繕って欲しいのは、彼女です」


キャシーさんがこっちを向く。そして僕達を見た瞬間、目を輝かせた。


「んまぁ~!!可愛い双子ちゃん!あなた達、お名前は?」

「カーナです」

「キールです」

『2人揃って、15歳です』

「漫才みたいな自己紹介ね。って、え!? あなた達、成人してたの!?」

「驚いただろ? 全然そうは見えねぇけどな!ガハハハハハ―――痛っ!」

「笑うな!」

「笑うな!」


ザックさんが思い切り笑ってきたので、骨が折れない程度に、脛を姉上と代わる代わる蹴ってやった。え、大人の対応? 馬鹿にされたら無理でしょ。


「痛っ!痛っ!や、やめてくれ!頼む!」

『ごめんなさいは?』

「ご、ごめんなさい・・・」


よし、謝ってもらったし、許してあげよう!


(・・・この子達を怒らせるのは、止めといた方が良さそうね)

(頼むぞ。でないと、世界は即日滅ぶ)

(っ!? わ、わかったわ)


キャシーさんとガイさんがヒソヒソ話してるけど、どうしたのかな?


「あの、キャシーさん。そろそろ良いですか?」

「え? ああ、ごめんなさい。それで、カーナちゃんはどんなお洋服が欲しいのかしら?」

「え~と・・・舞台の王子様みたいにかっこよくて、それでいて軍服要素のある服ってありますか?」

「え、結局軍服なの?」

「なかなか難しい注文するわね・・・」

「ってか、カーナの姐さんは、軍服に拘りがあるんすか?」

「軍人とは、国を守る者。だから私にとって、軍服は『何があろうと弟を守る』という誓いの証のような物なんです」

「それで軍服以外の服を持って無かったんだ」

「でも、皆さんにとって迷惑でしたら、普通の服でも・・・」

「そんな!このくらい迷惑なんかじゃないよ!」

「俺達としては、『ラスタルの大将』でさえなければ良いんだ。軍服自体は構わんよ」

「ありがとうございます!」


その様子を見ていたキャシーさんが、コソっと僕に耳打ちしてくる。


「―――良いお姉さんを持ったわね、キールちゃん」

「はい!世界最強、世界最高の姉上です!」

「聞こえたぞ、キール!ほんと、可愛い奴め!」

「うわっ!姉上!そんな強く抱きしめられると、苦しいよ・・・!」


皆が僕らの様子を見て笑い始める。笑ってないで助けてよぉ~。


「良いわ、滾ってきたわ!ちょっと難しい注文だけど、こうなったら久々に本気出しちゃうから!ミラ!」

「は~い!」


店の奥から、頭にウサギの耳が生えたお姉さんが出てきた。恐らくこのお姉さんは、獣の特徴を持つヒト族の一種、獣人だ。


「こちらの白髪の女性の採寸をしてあげて頂戴!」

「かしこまりました!それでは、こちらへどうぞ」


キャシーさん達は、姉上を連れて奥の部屋へと消えてしまう。それからしばらくの間、時折声が聞こえてくるだけの、ただ待たされる時間が続いた。

―――30分程経った頃。


「出来たわ!!」


キャシーさんの声が聞こえて、姉上が出てくる。

姉上は、とっても素敵に変身していた。まず、服は白の軍服のままだけど、ボタンの位置が違ったり、スカートがズボンになったり、さっきまでのとは違うデザインになっていた。右肩からは、さっきまで無かった赤い肩帯をかけ、さらに肩飾の付いた、軍人用の白い上着を羽織っている。


「かっこいい・・・!」


僕は思わずそう呟いた。軍服を下地に残しつつ、華美な雰囲気が追加されて、まるで、白馬に乗った王子様みたいだ・・・!


「いかがかしら?」

「最高です!キールにもかっこいいって言ってもらえたし!」

「気に入ってもらえて良かったわ!」

「はい!ありがとうございます!」

「いいのよ、仕事なんだから。それに、美しい姉弟愛を見せてもらったしね。あ、そうだマシュロフちゃん? これ、今回の請求書ね」

「むっ、やはり少々お高いですな」

「これでも格安よ!」

「ええ、存じておりますとも。こちらをどうぞ」

「ええ、確かに頂いたわ。キールちゃん、カーナちゃん、また来て頂戴ね!『大いなる鷹(グレート・ホーク)』の皆さんもよ!」

『ありがとうございました!』

「装備が傷付いた時は、頼むとしよう」


そして僕達はブティックを後にして、いよいよ冒険者ギルドを目指す。


*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*


ブティックから少し歩いたところに、冒険者ギルドはあった。冒険者ギルドもまたデッカい建物だったけど、こちらにはどこか荘厳な雰囲気がある。


「き、緊張するね、姉上」

「うん、武者震いがする」

「ふふっ、お前達でも緊張することがあるんだな」

「心配しなくても大丈夫!冒険者は子供でもなれるものなんだから。大人の2人なら余裕だよ!」

「そ、そうですよね!」

「私達、大人だもんね!」


覚悟を決めて、僕達はギルドの扉を開く!ギルドには、様々な人がいた。顔に傷のある大きなおじさん。やけに露出の多い鎧を身に着けたお姉さん。全身をローブで覆い隠した人。他にも、色んな人がいた。ただ、僕達みたいに極端に背が低い人はいなくて、僕達2人は凄く目立っていた。


「あの奥にあるカウンターが受付だよ。あそこで冒険者登録ができるからね」


受付には、ワイシャツを着たお兄さんとお姉さんがいる。あの人達に話しかければいいのかな?


「すまない。ちょっと良いか?」

「いらっしゃいませ、『大いなる鷹(グレート・ホーク)』の皆様」

「本日はどのようなご用件で?」

「ああ、今日はこの2人の冒険者登録を頼みたいんだ」

『よろしくお願いします!』

「初めまして。冒険者ギルド、ヴィオランダ支部へようこそ。冒険者登録をしたいとのことですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「僕はキールです」

「私はカーナです」

「キール様に、カーナ様ですね。かしこまりました。それでは、代金の金貨2枚をいただきます」


げっ!ここもか!


「私がお支払いしましょう。こちらで足りますかな?」

「ありがとうございます。ダイム、お2人の冒険者カードをお願いします」

「わかりました」


ダイムと呼ばれたお兄さんが、受付の奥へと姿を消す。


「彼がカードを持ってくるまで、冒険者について幾つかお話させていただきます。まず、冒険者にはランクがあります。一番下がFランク、一番上がSランク。お2人も良くご存知とは思いますが、『大いなる鷹(グレート・ホーク)』の皆様は、最上位のSランクです」

「ランクはどうやったら上がるんですか?」

「依頼を達成して、実績を積み重ねると上がります。あちらのボードをご覧ください」


お姉さんの指さす方を見ると、木でできた大きなボードがあって、そこに沢山の紙が貼られている。


「あちらに貼られている紙の全てが、当ギルドが請け負った依頼となります。依頼もFからSまでランク分けされており、1つ上のランクの依頼まで受けることができます。依頼を達成すれば報酬が貰え、一定数の依頼をこなせばランクも上がります。しかし失敗すると何も貰えません。そればかりか依頼の失敗が続くと、罰金やランクの引き下げもあり得ますので、ご注意ください」

「うわ、罰金だって」

「依頼は慎重に選ぼうね」

「それから、当然のことではありますが、犯罪を行ったり、それに加担したりした場合には、一発で冒険者カード剥奪となり、冒険者登録も抹消されますのでご注意を」

『わかりました!』

「シアさん。持ってきました」


ちょうどそのタイミングで、ダイムさんが緑色のカードを持ってきた。


「ありがとう。それでは、こちらのカードに触れてください」

「あれ、白金じゃない」

「緑だね」

「ああ、それはランクによって違うんですよ。ランクがF~Dの場合は緑、Cで銅、Bで銀、Aが金で、Sが白金です。お2人は1番下のFランクからスタートなので、緑なんです」


なるほど、ラスタルの軍服と同じで、冒険者カードも色でランク分けをしてたのか。


「これで、冒険者登録は完了です。おめでとうございます!」

「やったね姉上!」

『イェイ!』


僕達がハイタッチを決めた、その時だった。


「やれやれ、また役に立たなそうな新人が来やがったか」


背中に二振りの剣を背負い、顎髭(あごひげ)を生やしたいかついおじさんが、そう言ってきた。いきなり『役に立たなそう』だなんて、ひどい言い草だな。―――なんて思っていると、受付の2人が、おじさんの言葉に反応した。


「ちょっとジェフさん!冒険者になったばかりの新人に、なんてこと言うんですか!」

「そうですよ!根拠も無しに人を貶すなんて!」

「根拠ならあるだろ? 見れば見るほど、小せえガキ共だ。一丁前に装備は身に着けてるようだが、こんなガキ共が使い物になると思うのか?」


この道具扱いにイラッとして、僕達も抗議の声を上げる。


「ちょっと、使うってなんですか!」

「僕達はあなたの道具じゃ―――」

「黙れガキ共!新人ってのはな、先輩の道具なんだよ!それにここは、ガキの遊び場じゃねぇ。ガキはガキらしく、とっとと家に帰って寝んねしてな!」


コイツ・・・!

いやダメだ。ここで暴れたら、山賊の一件の二の舞になる。


「・・・姉上、こんな小物(・・)は放っておこう」

「―――あん?」

「そうだね。こんな小物(・・)にいちいち構ってらんないもんね。それより、早く依頼を見に行こう!」

「―――待てお前ら」

『はい?』

「今、この俺様を、小物っつったのか? Aランクの冒険者で、レベル3000で、『双剣豪』の俺様を、小物と言ったのか!?」


ジェフの殺気が増している。もしかして、ここで()るつもり? 迷惑だから遠慮したいんですけど?


「どうやら。痛い目見たいらしいな。いいぜ。こうなったらお前ら2人共、ズタズタに切り刻んでやる!そしてしばらく奴隷として使ってやるよ!」


そう叫ぶや否や、ジェフが背中の双剣を手に構える。どうやら本気らしい。


「マ、マズい!」

「2人共、逃げ―――」

「あー、2人共。こうなったら我慢する必要はねえ。ギルドが倒壊しない程度にわからせてやれ」

「ちょっ、ザックさん!? 何を言ってるんですか!?」

「ジェフさんがAランクというのも、レベル3000というのも本当なんですよ!? 新人が勝てるわけないですよ!!」

「心配すんな。ジェフじゃあの2人には勝てねぇよ。と言うか、心配すんなら、ジェフの方にしとけ」

「だね。あの2人に挑戦したら、命が幾つあっても足りないのに、馬鹿なのアイツ?」

「いや、2人の気配の隠し方が上手いんだ。ザックとアドレナも、実際に見るまで強さに気付かなかっただろ?」

「確かにな。っと、そろそろ動くぞ」


ジェフの両手に握られた剣に、魔力が収束する。そして両手を振り上げて、二振りの剣を思い切り振り下ろしてきた。


「『双剣挟撃』!!」


おそらく、ジェフ渾身の一撃と思われるそれが、僕らに迫ってくる。でも、


『おっそ・・・』


あまりにも遅すぎる。しかも威力が低すぎる。こんなの指2本あれば、余裕で止められる。なので僕達は、二振りの剣を1人一振りずつ、指2本で止めてやった。


「なっ!?」

「へ?」

「今、何が?」


ジェフ、受付の人達、さらにはその場にいた他の冒険者まで、おやっさんと『大いなる鷹(グレート・ホーク)』以外の全員が、驚きで言葉を失っている。これ以上は面倒なので、戦う手段を奪うことにした。


「姉上、ぶっ壊そう!」

「オッケー!」


剣を止めている指の力を強め、僕達はジェフの剣を二振りとも砕いてやった。


「お、俺様の剣が!?」


ジェフは大いに動揺している。これで終われば良かったんだけど、ジェフは諦めが悪く、今度は素手で殴りかかってきた。


「う、うぁぁぁぁぁ!!!!」


もちろん、そんな苦し紛れのパンチが当たるはずもない。僕達はそれをひょいと避ける。けど困ったな。これ、落としどころがないぞ?


「キール!固定(・・)したよ。やっちゃえ!」

「っ!了解!」


姉上の言葉に反応し、殺さないよう加減して、ジェフを蹴り上げる。ジェフは思い切り吹き飛び、ギルドの天上に激突した。本来ならこの時点でギルドは壊れているけど、姉上がギルドを固定してくれたお陰で、ギルドは揺れ1つ起こらなかった。・・・ジェフはボロ雑巾みたいになっちゃったけど。


「あ、あが・・・」

「う、嘘でしょ? あのジェフさんが、子供に・・・」

「やれやれ、だから言ったろ? 『心配するならジェフの方に』って」

「てか、早く『治癒術士(ヒーラー)』呼んだ方が良いんじゃない?」

「そ、そうでした!すぐに―――」

「ああ、大丈夫ですよ。それ!」


姉上がジェフの体の時間を巻き戻す。お陰でジェフは、傷1つ無い状態に戻った。


「え、傷が消えた!?」

「まあ、しばらくは夢の中ですけどね」


やっぱり加減が足りなかったかな・・・って、あれ? 何かさっきから騒がしいような?


「な、何なんだ、あの2人!?」

「怖すぎるだろ・・・」

「Aランクを、手玉に取っただと!?」


何か、凄い騒ぎになっちゃったな・・・


「ふふっ、初日から大注目だな!」

『笑い事じゃないですよ!』


こうして僕達は、初日から望まぬ大注目を浴びてしまった。


最近、更新速度がどんどん遅くなる今日この頃。

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