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異世界こじ開けジャーニー  作者: 蓬莱
第1章 旅立ち
2/9

第2話 元王子様、暴れる

追放されてから3日目―――

僕は相変わらず、凶悪な魔物だらけの森の中を歩いていた。そして今も、レベル

4000のエルダートレント((上位の木の魔物))の集団に襲われている。


「ウゴゴゴゴォ!!」


トレント達は木の根を伸ばして攻撃してくる。僕は鍵を振るって斬撃を飛ばし、木の根諸共トレントを斬っていく。


「ウゴアァァァ!」


木の根が通用しないと判断したのか、今度は僕を集団で取り囲み、一点集中の咆哮攻撃をぶつけてくる。これはエルダートレントのスキル『呪咆哮(カースド・ロア)』というもので、咆哮による振動攻撃と同時に、相手の精神に作用する呪いをかける。・・・まあ、レベル差がある相手には効かないけど。


「悪いけど、僕にそれは効かないよ」

「ウゴッ!?」


エルダートレント達は絵に描いたように驚いている。その隙に僕は彼らのスキルを奪い取る。


「『封印』からの『回遊』、そして『開錠』」


エルダートレント達の『呪咆哮(カースド・ロア)』と先程の木の根を操るスキル『蔓鞭』が、赤い錠前となって僕に集まっていく。


「とどめだよ!」


僕は鍵の表面に『赤滅』を纏わせ、肉薄して1体ずつ地道に斬っていく。手間が掛かるけど、これが一番安全だ。約1分程かけて、僕は100を越えるエルダートレントの集団を全滅させた。


(ふう、いつ来てもこの森は魔物が多いな。まあそのお陰で色々試せたけど)


僕はこの3日間、魔物達を相手に職業(クラス)とギフトの力を試し続けた。お陰で少しずつだが、自分の力を理解し使いこなせるようになった。兄上から半ば押し付けられたこの鍵も、剣として大分馴染んできた。


(そうだ。そろそろこの鍵に名前を付けてあげよう。何がいいかな? ・・・決めた、カリバーンにしよう!)


カリバーン―――

それは、僕の好きなお伽噺に登場する伝説の剣の名前だ。

そのお伽噺は、カリバーンを手にした勇者が、仲間と共に悪しき魔王を倒すという、定番だが非常に引き込まれる内容で、小さい頃は毎晩双子の姉上と共に、母上に読み聞かせて貰った。もっとも、その姉上にももう会えないし、母上に至っては・・・庶民の出身であることを疎まれ、事故を装い殺されてしまった。


「母上、姉上・・・」


優しかった母上。双子であり相棒だった姉上。2人のことを思い出して、僕は寂しさで泣きそうになる。


(いや、クヨクヨしてもしょうがない。先へ進もう)


気持ちを切り替えて、僕はまた歩き出す。それからしばらく歩いて、ついに森の出口が見えてきた。


(こんな所まで来るのは、久しぶりだなぁ)


追放を宣告されてから3日掛けて、僕はようやく森の出口まで辿り着く。ここまで来れば、国境まであと少しだ。出口を抜けた僕は森の方へと振り返る。そして、


「今日まで、大変お世話になりました」


僕は、僕達(・・)を育ててくれた森に挨拶をして、そのまま踵を返し歩き出した。


*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*


森を抜けた僕はそのまま西へと直進し、1日掛けて国境の検問所へ辿り着いた。本当は森の南側にある街道を使いたかったけど、人目を避けて行く為にこうせざるを得なかった。


(早くここを抜けて、さっさと隣の国の街を目指そう)


国境を出て街道沿いに歩けば、街に辿り着く。街に辿り着いて、冒険者ギルドで冒険者登録することが、今の目下の目標だ。冒険者とは、魔物の討伐や僻地の調査、時には街のボランティアまでこなす何でも屋のようなもので、「職に困ったらとりあえず冒険者に」と言われるほど人気がある。


(冒険者に登録できれば、お金に困ることはない。できれば国内で登録したかったけど・・・まぁ、街についてからでも大丈夫だよね。それよりも今は、国境を通ることに集中しよう)


国境には砦と警備隊が配置されていて、荷物の検査や犯罪歴の検査など、行き来する人の監視をしている。この国境は人の往来が激しく、砦の前には長蛇の列ができていた。2時間程待って僕の順番が来る。検査員には嫌な顔をされたけど、ただ出て行くだけで別に危険物を持っているわけでもないため、検査はすんなり終わった。しかし、国境を出ようとした所で問題が起こる。


「おっと!そこで止まりな、元王子様!」


突然、ラスタル王国の外側にいるおじさん警備兵と、おばさん警備兵に呼び止められる。


「何でしょう? 僕に何か御用でしょうか?」

「ここを通りたかったら、まず罰金を払ってもらおうかねぇ」

「罰金? 一体何の?」

「この国に滞在した分の罰金だよ!お前が国外追放を宣告されたのは4日前。だがお前がここに着いたのは今日。つまりお前はその4日間、この国に不法滞在(・・・・)してたってことだ!その分の落とし前はつけてもらわねぇとな!」

「・・・事情はわかりました。それで、一体いくら支払えば?」

「何言ってんだよ。有り金全部だ!」

「ぜ、全部!?」

「もちろん金だけじゃないよ? あんたの持ってる荷物、装備品、身に着けてる衣服。何もかもあたしらに渡して、素っ裸になればここを通してやるよ!」


困ったな。荷物と装備品は勿論だけど、何より服はマズい。裸で外を出歩けば間違いなく変質者扱いされて、冒険者になるどころか札付きになってしまう。でもそれ以前に、僕は露出が苦手なんだ。上半身裸ですら、顔から火が出る程恥ずかしい。許容範囲は半袖までだ。


「どうした? 素っ裸になるまでここは通さねえぜ?」

「さぁ早く、可愛い少年がひん剥かれて、恥じらう姿を見せておくれよぉ」

「ひぃっ!?」


警備兵達の下卑た視線と言葉に、思わず僕は悲鳴を上げてしまう。


(こ、こうなったら強行突破だ!『固定』!!)


僕は『固定』を発動し、世界の時間を固定する。森で過ごした3日間で、『固定』の対象となるのは人や魔物といった目に見えるものだけじゃないと気付いた。人の思考や時の流れといった目に見えないものですら、『固定』を使えば止めることができるのだ。ただ時間停止は流石に魔力を消耗するから、連続での使用は難しい。


(そんなにお金が欲しいなら、これあげるよ!)


止まった時間の中で、僕は白金貨を1枚ずつ警備兵のポケットに突っ込む。世界で最も価値の高い貨幣だ。僕が消えたとしてもそっちに目が眩んでくれるだろう。白金貨を渡した僕は、そのまま西の方角へ踏み込み、地面を蹴って飛んだ。加減はしたものの、衝撃で地面にはクレーターができ、砦にもヒビが入る。でもその甲斐あって、一飛びで砦が遥か後方に見える場所までこられた。僕はそこで時間停止を解除して、砦の方を振り返る。


(まさかこんな荒々しい出国になるとはね。だけど、ようやく出国できたぞ!僕の新しい人生の始まりだ!)


これでラスタル王国も見納めかと思うと少し寂しくなる。それでも僕は冒険者になるという目標を胸に、街道に沿って歩き始めた。


*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*


「・・・・・・・遠い」


街道を歩いて3日経った頃、僕は素直にそう思った。この3日間夜通し歩き続けているのに、僕は未だに街に辿り着けていない。レベル10000に到達しているお陰で疲れはないが、なにせ1人なのでさすがに寂しくなる。一体街まで後どのくらいあるのだろう? 気になった僕はゴーグルを装着する。


(一番近い街はどこかな?)


このゴーグル『鷹の目』には、対象の鑑定機能の他に千里眼の力もある。文字通りの千里―――を大きく越えて万里まで見通せる優れものだ。『鷹の目』を使ったお陰で、僕は一番近い街を見つけることができた。しかしその街ですら、今日まで歩いた分で半分しか進んでいなかった。


(跳躍して行ければ楽だけど、目立つ上に街道がクレーターだらけになっちゃうからなぁ)


跳躍を使えば数時間で行ける距離も、歩きで行けばおよそ3日かかる。せめて同行者がいれば寂しくないんだけど・・・そう考えながら千里眼を使っていた時、僕は少し先の街道を1つの集団が歩いているのを見つける。真ん中に幌着き馬車がいて、その周りを武装した人達が6人囲んでいる。恐らく商人と護衛の冒険者だ。


(この距離なら、走れば追い付くな。いい加減1人旅も嫌になってきたし、一緒に行かせてもらおう!)


そうと決まれば善は急げ。僕は全速力で商隊を追い掛ける。1、2分程走ったところで、商隊に追い付いた。


「すいません!」


僕が商隊に向かって声を掛けると、護衛の冒険者らしき人達が振り返る。


「どうした坊主? こんな所に1人で。もしかして迷子か?」


最後尾にいた坊主頭のお兄さんがそう聞いてきた。


「違います。僕はこの先にある街を目指してるんです。ただ、訳あって1人旅をしていまして」

「1人? お前ここまで1人で来たのか?」

「はい。そんな訳でもう3日も1人の状態が続いてて、人肌が恋しくなってしまったんです。なので、皆さんと一緒に行かせて貰えないでしょうか?」

「・・・お前、どこから来た?」

「ラスタル王国からです」

「下手な嘘はやめときな」

「嘘?」

「ラスタル王国の国境からここまで、一体どれだけの距離があると思ってやがる。俺達は旅慣れしてるが、それでもここまでくるのに10日は掛かった。それを、お前みたいなガキが3日で、それも歩いて来ただと? 冗談も程ほどにしやがれ!自分を強く見せたいのか知らねぇが、嘘つきは信用できねえな。俺達に取り入って、馬車の積み荷でもくすねるつもりか?」

「そんな!僕は嘘なんか言ってません!3日間夜通し歩いてここまで来たんです!」

「はっ!まだ嘘を重ねるのか? 3日も夜通しで歩ける奴なんているわけねぇだろうが!」

「ちょっとザック!子供相手に何ムキになってんの!」


おじさんの隣にいた、鎧を身につけた金髪のお姉さんが、お兄さん―――ザックさんを宥める。


「そりゃ嘘はいけないけどさ、相手はまだ子供なんだよ? 背伸びしたい年頃なんだよ」

「むぅ、それはそうかもしれんが・・・」


僕を庇ってくれたみたいだけど、お姉さんも僕が嘘をついてると思っているようだ。僕が子供だと思ってるからかな?


(そもそも、僕は一応成人してるんだけどな・・・この身長じゃそうは見えないか。いっそ、僕のレベルを見せちゃった方がいいかな?)


レベルは、本人の意思で他者に見せることができる。でも、レベルは一般人で平均500、兵士や騎士、冒険者でも1500で1人前扱いだ。この人達も、見た感じレベル3500~レベル5000程度。レベル10000なんて到底信じて貰えないだろう。・・・気は進まないけど、威圧で力を示そうとした、その時だった。


「彼は本当のことを言ってると思うぞ?」


一番前にいた、黒髪で背の高いイケメンのお兄さんがそう言った。


「皆も感じないか? その子に宿る途てつもない力を。相当抑えてるみたいだが、正直言って彼を見た時は、この世の終わりかと思ったよ」

「おいおい何言ってんだよリーダー。じゃあ何か? このガキが怪物か何かだってのか?」

「怪物なんてもんじゃない・・・終焉だ」

「!?」

「はぁ!? ちょっとリーダー、本気で言ってるの!? 」


終焉だなんて心外だなぁ。別に世界を滅ぼそうだなんて考えてないのに。


「あ、あの・・・私、リーダーの言ってること、わかる気がします」


フード付きローブのフードを目深に被り、手にした杖を握りしめている桃色髪の女の子がそう言った。


「ソロナまで何言い出すんだよ!?」

「え、えっと、その・・・わ、私のスキル『危機感知』が、その子に、全く反応しないんです」


スキルとは、ギフトや職業(クラス)と違って、特訓で身に着けることができる特殊能力だ。ソロナさんの『危機感知』の場合、自分や仲間に迫る危険や、強敵の存在を見抜くことができる


「? それって、この子が弱いってことじゃないの?」

「ち、違いますよ、アドレナさん。私の『危機感知』は相手が子供でも、弱いなら弱いで反応を示すんです。全く反応しないなんてことはありえません。なのに、全く反応が無いのは、この子が、私達が認識できない程強いってことです!!」

「あっ、その感覚、俺も分かるっす!」


ソロナさんの言葉に、今度は頭にバンダナを巻いたお兄さんが反応した。


「俺がまだ駆け出しで、レベル200くらいだった頃、レベル差が3000もある魔物に遭遇したことがあったっす」

「リーダーがお前を助けた時の話だよな? 」

「ええ。その頃の俺は職業(クラス)魔盗賊(ファントムシーフ)』の探索能力を過信してて、その魔物に対して探知が何も反応しないから、ただの雑魚だと思って戦い挑んじまったんすよ。結果は知っての通りっすけど。要するに探知系の能力って、術者との力量がありすぎる相手に対しては、強さを認識できなくて逆に無反応になっちまうんすよ」

「じゃあその時と同じで、この子と私達の間に力の差がありすぎて、逆にこの子の力に気付けてないって言いたいの?」

「その可能性は否定できないっす」

「・・・あの、ちょっとよろしいでしょうか?」


馬車の方から声が聞こえてきた。見ると、商人と思しきふくよかなおじさんが、遠慮がちにこちらを見ている。


「あぁ、すいやせんおやっさん、すっかり待たせちまって」

「いえ、それは良いのですが、その少年の事、私は信用して良いのではないかと思いまして」

「あ? おやっさんもコイツからヤベェ力を感じるのか?」

「いえ、私はただの商人ですから、戦闘についてはド素人でございます。ただ、私が見るにその少年は、1つも嘘を述べていないように見えるのです」

「・・・おやっさんの目利きはそれこそ怪物級だからなぁ・・・おやっさんが言うなら多分そうなんだろうな。仕方ねぇ、連れてくかはともかく、このガキの言うことは信じるか」

「だね。ソロナにリーダー、フィオもああ言ってるし。アスナはどう?」

「・・・始めから疑ってなどいない」


今まで一言も喋らなかった、東洋の「和服」らしき装束に身を包んだお姉さんが、ただ一言そう答えた。


「で、リーダー。この子はどうする?」

「決まっている。一緒に連れていくぞ。例えこの子が終焉の化身でも、彼は子供だ。子供を放り出すことはできん」

「だ、そうだぜ。良かったな坊主!」

「ありがとうございます。ただ、1つだけ」

「何だ?」

「さっきから皆さん僕を子供扱いしてますが・・・僕は子供じゃありません。1週間前に成人した、立派な大人です!」

「「「・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」」」


・・・全員に驚かれた。


「え、君成人してたの? どうみてもお子様なのに?」

「ちょ、おま―――」

「ふ、ふんだ!どうせ僕はお子様ですよ~だ!!」

「おいおい。拗ねちまったじゃねぇか」

「見事に膨れてるっすね」

「ち、ちょっと!そこで私を見ないでよね!?」

「・・・拗ねてる顔、可愛い」

「アスナさん!? 余計なこと言ってまた―――」

「敵襲だ!」

「「「!!!」」」


リーダーさんが叫んだのとほぼ同時に、メンバー全員が馬車を守るように陣形を組む。その直後、街道沿いの森の中から武装した集団が現れた。数は20人程で、全員レベル1000越え。頭目っぽいのがレベル4000程度。どうやら堅気じゃなさそうだ。


「お前達、何者だ?」


リーダーさんが武装集団の頭目らしき人にそう話しかける。


「見たらわかるだろ? この森を縄張りにしてる山賊様だ!!」

「狙いは、馬車の荷物か?」

「馬鹿野郎!!それで俺達が満足すると思ってんのか? お前達が守っている商人もいただくぜ!人質にすりゃ身代金をたんまり搾り取れるからな!あぁ次いでに、その女供もいただくぜ? 良い暇潰しになりそうだからな!」

「チッ!賊ってのは下衆な奴らばかりだな」

「き、気色悪いです!」

「何とでも言え!これが俺達の生き様よ!」

「お、お頭!あ、あれを見て下せぇ!」

「あん? 一体どうし、っ!!」


突然、山賊達が動きを止める。山賊達の視線は―――僕に向けられていた。


「な、何だあのガキ(・・)は!!」

「か、可愛い・・・!!」

「マジかよ!鴨がネギの代わりに可愛いガキ(・・)連れてやがった!」

「お頭!あのガキ(・・)も奪っちまいやしょう!いい奴隷になりやすぜ!」

「おうよ!本当はあのガキ(・・)が女ならなお良かったが、この際男でも良い!おいてめぇら!!あのガキ(・・)もいただくぞ!!ボロ雑巾になるまで使い潰してやらぁ!!」


・・・コイツら、僕のことをガキだの、奴隷にするだの、好き勝手言ってくれちゃって・・・!僕だって・・・僕だってぇ!!


「来るぞ!全員、戦闘態せ―――」

「誰が、ガキだって?」

「!!」

「なっ!?」


僕は思わず、本気で怒気を発してしまう。冒険者さん達は震え上がり、山賊達は頭以外全員気絶してしまった。


「ねぇ、山賊のお頭さん?」


僕は怒気を発しながら、満面の笑みを浮かべて話しかける。


「へ、へいっ!?」

「ガキって一体、誰のことかな?」

「す、すいませ―――」

「謝って欲しい訳じゃないよ? 君たちが誰のことをガキって言ってるのか、教えて欲しいだけなんだ」

「ひいっ!」


山賊の頭は今にも泣きそうになっている。僕はそれを一切無視して歩み寄った。


「言っておくけど、僕はもう15歳だよ。つまり、立派な大人だ」

「へ、へぇ!まったくその通りで―――」

「でも君達は僕のことをガキって言った。勿論それもムカついたけど、君達それに加えて、僕とお姉さん達を奴隷にするとか言ってたよね? ねぇ!?」

「ゆ、許してください!もう二度と悪さはしないから、許して―――」

「やだ ^ ∀ ^」


言うと同時に、僕は山賊の頭にパンチを食らわせる。


「ぐげぇぇぇ!!!!」


山賊の頭は思い切り吹き飛び、街道沿いの森を抉り、木々を薙ぎ倒しながら遥か彼方まで飛んで行った。思い切り吐血してたけど、加減したし急所は外したから多分生きてる。


「ちょっと大人気なかったな。あいつらの挑発にむきになって、挙げ句地形を変えちゃうなんて」


でも、色々と鬱憤も晴れて、気分は爽快だ!


「フィ、フィオさん。これ・・・」

「探知がどうとかいう次元じゃなかったっすね」

「・・・怖い」

「なぁ、世界って、広いんだな。あんなのがまだ他にも―――」

「いやいや、幾らなんでもあれは別格でしょ?」

「頼むからそうであってくれ。でなければ世界は明日滅びかねん!」


むぅ、散々な言われようだ。


「ちょっと皆さん? 僕はただ平和に暮らしたいだけの、ただの新米ジェント()マンですよ!」

「・・・ザック、どこから突っ込めばいい?」

「俺に聞くな」

「ハッハッハ、その少年―――失礼、その男性は、何やら不思議なものを感じますな。その気になれば大国ですら1人で滅ぼせる力を持っているのに、中身は誠実で尚且無邪気。少々危うくもありますが、彼には自分を省みる才能と素直さがあります。もしかすると、いずれ世界を動かすかもしれませんね」

「ハハハッ・・・それが世界の終焉でないことを祈るっす」

「もぅ、そんなことしませんよ」

「癇癪で地形変えといて、何言ってるっすか」

「うぅ」

「はぁ、やれやれ。おやっさんと街に戻るだけのはずが、とんでもないことに巻き込まれてしまったな。そうだ、ずっと聞きそびれていたんだが、君の名前は?」

「キールって言います」


(―――キール? どこかで聞いたような・・・)

 

「どうかしましたか?」

「あぁ、すまない。何でもないんだ。とりあえず馬車に乗ってくれ。我々のことも道すがら話そう」

「ありがとうございます。改めて、よろしくお願いします!」

「うむ、こちらこそよろしく頼む!」


こうして僕は、道中出会った(と言うか追い付いた)冒険者さん達と一緒に、街道の先にある街を目指すことになった。




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