第1話 追放された王子様
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タイトル:最強AIの異世界転移
「キール、お前を国外追放処分とする」
僕は、キール=フォン=ラスタル。
ラスタル王国の第4王子で、兄弟姉妹の末っ子だ。
そんな僕だが、現在ラスタル王国の王城「謁見の間」にいる。そこでいきなりだが、国王である父上から追放を宣告された。
「お前が得たギフトは『錠前』と『吸い込み』。『錠前』はどんな鍵も開くことができるが、ただそれだけ。『吸い込み』はどんな物でも吸い込めるが、ただそれだけ。国の統治にも戦闘にも役にも立たないギフトだ。しかもお前の職業は『魔法鍵士』。ただの鍵使いの職業。『ダブルギフテッド』と期待させおって!!」
この世界では15歳で成人となり、神殿で神様から『職業』を与えられて才能を開花させ、これまでの比ではない力を得る。その際極稀に『ギフト』を授かる人がいて、そうした人達は『ギフテッド』と呼ばれる。その中でも僕はさらに希少な『ダブルギフテッド』で、最初は父上も大層喜んでいた。でも、それは長く続かなかった。
父上が言った通り、僕が与えられたギフトは『錠前』と『吸い込み』。名前から戦いには向かないギフトと推測できる。戦闘向けのギフトを期待していた父上としては、落胆どころの話ではないだろう。
「我が国は世界有数の軍事国家。お前の兄・姉達も余と同様戦闘系の職業を持ち、既に『レベル』も3000を超え、今こうしている間も軍を率いて領土拡大に貢献している。対してお前という奴は、職業は非戦闘系で実戦経験も皆無。戦えないどころか戦いの手助けもできない」
領土拡大って、他国に侵略して領土を奪ってるだけじゃん・・・。
あ、レベルというのは、神殿の人達曰く「この世界に組み込まれた補助システム」らしい。魔物の討伐などで手に入る経験値を集めると数値が上昇し、数値に応じて大きな力を与えてくれる。レベル3000なら、小国なら1人で滅ぼせるだろう。
「お前は我がラスタル王国の恥さらしだ!本当ならば今すぐにでも殺してやりたいところだが、仮にも息子だ。余の最後の情けで、命だけは助けてやる。明日の明朝、城から出ていけ!そして二度と『ラスタル』の名をかたるな!!」
「・・・招致いたしました。陛下の慈悲に感謝致します」
「ではもう下がれ!お前の顔を見るだけで不愉快だ!」
こうして僕は国を追われることが決まった。謁見の間を出た僕は真っ直ぐ自室を目指す。自室に入った僕は扉を閉め、大きくため息をついた。
「はぁぁ・・・予想はしてたけど、まさか本当に実の息子を国外追放にするなんて・・・」
父上はこれまでも、力に物を言わせたかなり強引な手法を幾度も取ってきた。そんな父上にとっては、自分の子供ですら駒でしかない。だから追放を宣告されても驚きはしない。それでもどこかで、実の息子を追放したりはしないと信じていた。結果はこの有り様だが。
「まあクヨクヨしてもしょうがない。さっさと準備を始めよう」
僕は頭を切り替えて荷造りを始める。既に国中に僕が追放される旨が通達されていたらしく、街の人達の反応は冷たい。会う度嫌味を言われながらも、食糧や水など旅に必要な物を集めて、気付けば夜になっていた。
(どうせ明日には国を出るんだ。大したことじゃないさ)
荷物のチェックを終えると、僕は早々にベッドに潜る。ラスタル王国での最後の夜はこうして更けていった。
―――次の日の朝、僕は起きて早々に着替えを済ませ、荷物を纏めた(と言っても、建物1戸の容量の「魔法のポーチ」に詰め込んだだけだが)。そして城門を潜り城を出たところで、誰かに呼び止められる。
「よぉ!出来損ない!」
振り返ると、ラスタル王国第2王子で僕の兄、ガイロ=フォン=ラスタルがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて立っていた。何やら背中に背負っているようだが・・・?
「何か御用でしょうか、兄上」
「気安く兄上呼びすんじゃねぇ!!ガイロ様と呼べ!」
「・・・失礼いたしました、ガイロ様。それで、何用でございますか?」
「おう、お前にこれをやろうと思ってな!」
そう言って兄上は、背負っていた何かを渡してきた。それは、片手剣サイズの、大きな鍵だった。
真っ白な刀身(?)に、金色に装飾された持ち手。見るからに、骨董品だ。
「・・・これは?」
「お前は鍵使いって聞いたからよ、お前の為に鍵を持ってきてやったのさ。しかも世界で3番目に強い金属『ミスリル』製だ!どうだ、嬉しいだろ? まさか、いらないなんて言わないよな?」
なるほど、要は嫌がらせだ。
こんな大きな鍵、持っていてもただの邪魔な荷物にしかならない。つまり兄上は僕のことを「お荷物の鍵使い」と言いたい訳だ。わざわざミスリルで作られている所が皮肉が効いている。
「・・・ありがたく頂戴します。ガイロ様」
しかし断ることは許されない。今の僕はただの平民なのだから。
「ちったぁ抵抗するかと思ったが、ほんとつまらねぇ奴だな。ま、今じゃラスタル王国軍の中将の俺様の申し出を、小市民のお前が断れる訳ねえか!ギャハハハハハ!」
ひとしきり笑った後、兄上は城に戻っていった。残された僕は、抱えるように持っていた大きな鍵を見つめる。見れば見る程美しい鍵だ。僕への皮肉以外の目的で作って貰えたらどんなに良かったか・・・。でも、過ぎた事を言ってもしょうがないので、とりあえず手に持ってみる。その時だった。
「っ!これは!?」
突然僕の体の内から、何かが沸き上がって来るような感覚がした。大量の知識が僕の頭に流れこんでくる!
「くっ・・・!」
あまりに突然の変化に目眩がする。それでも必死に耐えていると、しばらくしてようやく変化が治まった。
「はぁ、はぁ・・・今のは」
「おい貴様!一体いつまでそこにいる!さっさと行け!」
城の門番が、痺れを切らしたのか僕を急かし始めた。まだ足元がふらつくものの立ち止まっている訳にも行かず、大きな鍵を背負い、僕は城に背を向け歩き出した。
(僕のレベルでもこれ程消耗するなんて、一体僕に何が起こったんだ? すぐに確認したいけどここじゃ・・・。とりあえずこの先の森に入ろう。そこでなら休める)
王都を出て西へ進むと森がある。この森はとある事情で基本人は寄り付かない。今の僕はこの国にいるだけで周りから非難を浴びる。宿泊場所としても・・・まあ、ここ以上の所はない。僕は森を目指して歩き始めた。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
小1時間程歩いて、僕は森に辿り着く。そこからまた少し歩いて、森の中まで入り込んだ所で僕は一旦休憩することにした。体調はすっかり元通りになったけど、まだ落ち着かない。
「さて、まずはさっき得た情報をメモしよう」
先程鍵を手に持った時、僕は自分の職業とギフトに関する情報を得た。
まずは職業
『魔法鍵士』なのはそのままだが、名前が『魔法鍵士』に変わっていた。僕の記憶にある『魔法剣士』は、普通に剣士として戦えるだけでなく、剣に魔法を纏わせたり、魔法を剣技として発動できる、剣魔一体の最強職だ。もしも僕の『魔法鍵士』が、剣の代わりに鍵を使うのだとしたら・・・
「僕の職業は、実は最強職の1つだったのかもしれない」
まあ、そうだとしてももう国に戻るつもりは無いけどね。
次に1つ目のギフト『錠前』
ギフトにはそれぞれ、幾つかの能力が宿っている。この『錠前』には、
・『開錠』:あらゆる鍵、封印を解く。
・『回遊』:あらゆる結合力をゼロにして、素粒子レベルで自在に動かせる。
・『固定』:対象をそのままの状態で固定する。
・『封印』:対象を封印する。
これら4つの能力が宿っていた。父上はただの鍵開けのギフトだと言っていたが、どうやら逆に鍵を掛けることも可能らしい。きっと父上は碌に調べもせずに、名前だけで能力を判別したのだろう。―――僕と同じように。
「これを教訓に、次からは何事も深く調べる癖をつけておこう」
最後に2つ目のギフト『吸い込み』
このギフトは『黒穴』を作り出し、それを使って万物を吸い込むことができる。黒穴には種類があり、
・『無飲』:縁が無色の黒穴。
超重力で全てを飲み込む。
・『赤滅』:縁が赤い黒穴。
触れる全てを消滅させる。
・『桃貯』:縁が桃色の黒穴。
吸い込んだ物を保存し、眷属化できる。
・『白転』:縁が白い黒穴。
別の場所と道を繋げることができる。
・『緑吸』:縁が緑の黒穴。
魔力や衝撃を吸収し、自身を回復できる。
これら5つの黒穴がある。
だがこのギフトの本質は、黒穴を形作る凶悪な破壊のエネルギー『黒力』の生成にある。魔法を使う為のエネルギー『魔力』が足元にも及ばないほど強力で、下手に扱うと世界を滅ぼしかねない。『吸い込み』はその黒力を黒穴という形にして扱いやすくしているのだ。正直言って、人間が持って良い力じゃないと思う。
「・・・返品したいなぁ」
本気でそう思った。
(ここは前向きに考えよう。もしも父上にギフトの本当の力が知れたら、今頃僕は城に幽閉されて、大量破壊兵器として使い潰されてたに違いない。何より、罪の無い大勢の人々が犠牲に、っ!)
突然嫌な気配を感じて、僕は気配のある方向に意識を向ける。すると森から大量の魔物が走ってきて、僕の横を通り過ぎて行った。
「ギシャァァァァァ!!」
一呼吸置いて、森の奥から魔物の声が響いてきた。この感じは・・・
「イビルヴァイパーか」
イビルヴァイパーは巨大なヘビの魔物だ。表皮は硬い紫の鱗に覆われ、口には鋭い牙が生えていて、その牙には毒がある。地域によっては存続の危機に立たされる程危険な魔物だ。この森にはイビルヴァイパーのような、危険度の高い魔物が大量にいる。人が寄り付かない理由はこれだ。
そのイビルヴァイパーだが、どうやらこちらに近付いているようだ。
「・・・来る!」
「シャァァ!!」
木々を薙ぎ倒して、イビルヴァイパーが姿を現した。僕は咄嗟に頭に着けていたゴーグルを装着する。このゴーグルには対象を解析・鑑定して、情報をあらいざらい調べ出す能力がある。・・・自分に使えないのが難点だけど。
(レベル5000か。中々だな。まあいつも通り剣で―――)
いや、そうだ。あの鍵を使ってみよう。仮にもミスリル製な訳だし、イビルヴァイパーの鱗が相手でも折れることは無いだろう。
「よし、来い!!」
ゴーグルを外して、背負っていた鍵を手に構える。
「ギシャァァァァァ!!」
イビルヴァイパーは一切動きを止めず、僕の方へ突っ込んでくる。僕は間合いを見計らい、剣を振るう感覚で鍵を思い切り振るった。
イビルヴァイパーの首は綺麗に切り落とされ、鍵には一切刃こぼれがなかった。
「あのイビルヴァイパーの鱗を斬って刃こぼれしないなんて、すごい鍵だ」
ガイロ兄さんが、本当に嫌味でこの鍵を渡してきたのか疑問を抱いてしまう。それほどまでに僕はこの鍵の事を凄いと思った。
(それにしても、イビルヴァイパーのあの様子。何か引っ掛かるな)
イビルヴァイパーは僕を―――餌である人間を見ても一切動きを止めなかった。まるで何かから逃げているかのように。
(嫌な気配も消えてないし、まだ何かあるな)
そんな風に僕が考えていると、イビルヴァイパーが来た方向から嫌な気配の主が現れた。それは黒いドラゴンだった。それも普通のドラゴンより一回り大きくて、邪悪でおぞましい気配を纏っている。
(まさかとは思ったけど、コイツは・・・)
嫌な予感がして、僕は再びゴーグルを装着する。
種族:邪神竜
レベル:9500
スキル:邪神竜炎
「また来たの!? おかわりは要らないって言ってんのに!」
邪神竜は『魔神王の使い』と呼ばれる、魔神獣の一種だ。とてつもない力を持っていて、一度暴れ始めると大陸を半壊させるという。訳あって僕は何度か魔神獣と戦っているんだけど、正直戦うのが面倒くさい相手だ。でも来てしまったものはしょうがない。僕は覚悟を決めて奴の前に立つ。その時だった。
(何だ? 『封印』が反応してる?)
『錠前』の『封印』が邪神竜に強い反応を示している、気がする。でも、邪神竜そのものを封印するって感じじゃない。・・・もしかして!
「グルアァァァァァ!!」
「っ!」
邪神竜が真っ黒な炎『邪神竜炎』を放ってきた。僕は即座にそれを避ける。
そして―――
「『封印』!」
僕は邪神竜に向けて鍵を突き出し、奴のスキル『邪神竜炎』を封印する。ゴーグルで確認すると封印は見事に成功していて、邪神竜はスキルを使えなくなった。
「グルゥ!?」
邪神竜は突然炎が止まって困惑している。
すると―――
(今度は『回遊』か)
正直『回遊』は、説明を呼んでもどういう物なのかよくわからない。なので僕は本能に従って、封印した『邪神竜炎』に向けて『回遊』を発動する。すると、邪神竜から赤い錠前が飛び出して、僕の方へ飛んでくる。そしてその錠前が、僕の体に入り込んだ。
(な、何だ!? どうして錠前が僕の中に? と言うか、今の錠前は、まさか!)
僕は『開錠』で、取り込んだ錠前の封を解く。それと同時に僕の体に新たな力が湧いてきた。
(やっぱりそうだ。僕は今、邪神竜のスキルを奪ったんだ!)
まさか『錠前』にこんな使い方があったなんて・・・
はっきり言って、追放されて正解だった。こんな力、父上達には絶対に持たせられない!!
「グル、ガァァァァァァ!!」
邪神竜が目を血走らせてこちらに向かってくる。どうやら、スキルを奪われたことを本能で悟ったらしい。レベル9500の怒れる魔神獣が、本気の殺意をぶつけてくる。
「スキルを奪われて怒るのはわかるよ。でもお前は、この力を大勢の人々を苦しめるために使ってきたんだろ? 他の魔神獣と同じように」
魔神獣は、魔神王が暴力で世界を支配するため送り込んでくる存在。僕や神殿の最高戦力『使徒』がいなければ、今頃世界は遊び感覚で滅ぼされていただろう。同情の余地はない。
「折角だから、最期に『吸い込み』の力も試させてよ。今回は・・・これかな?」
僕は『赤滅』を発動すると、鍵の剣身に纏わせる。本質が黒力の生成だからか、剣に纏わせるくらいの応用は利くようだ。
・・・実際に使ってみると、やっぱり恐ろしい力だと実感する。返品したいという気持ちはやっぱり変わらない。
(それでも、神様は僕を選んだんだ。きっと何か意味があるに違いない。だったら僕の力―――レベル10000に到達した僕の全力で、このギフトを使いこなしてみせる!)
決意を新たにした僕は、邪神竜に向けて鍵を思い切り振るう!それと同時に鍵から、縁が赤い漆黒の斬撃が飛び、邪神竜の首を切った。邪神竜は崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。
「・・・荒いな。斬撃を当てた所だけじゃなく、その周辺も消し飛んでる。もっと精密な力の制御が必要だな」
父上達には隠していたけど、僕は物心ついた頃からこの森に潜って、レベル上げをしつつ実戦経験を積んできた。その積み重ねがあっても黒力の制御は非常に難しく、狙った箇所以外の場所も消滅させてしまった。もしもこの積み重ねがなかったら、森ごと消し飛ばしていたかもしれない。
「まあやることは変わらない。日々訓練を積み重ね、強敵を相手に実戦して制度を上げる。その繰り返しをすればいいだけだ」
レベル10000の僕にとっても大きすぎる力に不安を抱きながらも、僕は気持ちを切り替えて西に向かって歩き出した。
キャラ紹介
・キール
ラスタル王国を追われた元王子。物心ついた頃から森で戦い続けた結果、レベルは10000に到達している。他者を思いやる優しさを持つが、それ故に自分の気持ちに蓋をしがち。他国を侵略し民間人にも手を出す祖国を毛嫌いしており、家族に対する隠し事が多い。
容姿:身長150cm
白髪で瞳は緑色
童顔で頭にゴーグル
半袖ワイシャツに黒ベストと黒ネクタイ (機能性重視の設計)
黒ズボン、冒険用ブーツ
白マント
レベルについてもう少し
レベルは1から10000まであるが、10000に到達するにはとある条件があり、現在は「最大レベルは9999」というのが定説。レベル差による力の比率は
レベル差500で2:1
レベル差1000で4:1
以降はこれを基準に計算できる (レベル差1500なら8:1)
因みにレベル10000とレベル9999には、レベル差1000分の力の差がある。




