表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
一章 旅立ち
9/50

9話

 塔の最上階――そこは、空に浮かぶ展望台だった。


 雲を突き抜けたその場所は、まるで世界の果てのようだった。

 足元には、これまで歩んできた塔の層が小さく連なり、遥か下には、記憶の海が広がっている。

 空は深い藍色に染まり、星々が静かに瞬いていた。


 その中心に、アキモト様が立っていた。

 黒い装束に身を包み、背を向けたまま、世界を見下ろしている。




---


 仲間たちが展望台にたどり着いたとき、最初に声を上げたのは――夢界だった。


「唯斗……!」


 その声に、アキモト様がゆっくりと振り返る。

 その瞳は、深い紫に染まっていた。


「……来たか。ここが、終点だ」


「違う! 終点なんかじゃねぇよ!」と夢界が叫ぶ。


 彼は、仲間たちの制止を振り切って、アキモト様に駆け寄った。


「お前、覚えてるか? 最初の訓練で、俺が的に当てたの、たった一発だったのに、

 “すごいじゃん”って笑ってくれたこと。あれ、めっちゃ嬉しかったんだぞ」


 アキモト様の瞳が、わずかに揺れる。


「……夢界……?」


「そうだよ。お前は唯斗だ。アキモト様なんかじゃない。

 お前は、俺たちの仲間だろ……!」


 夢界が手を伸ばす。

 その手が、唯斗の胸に触れた瞬間――


 光があふれた。


---


 唯斗の中で、何かが崩れた。


 記憶の海の底から、声が聞こえる。

 笑い声。怒鳴り声。泣き声。

 仲間たちと過ごした、あの時間。


 ――夢界のドジ。

 ――太郎の無茶。

 ――有志のまっすぐさ。

 ――そして、みるいの笑顔。


「……僕は……」


 紫の瞳が、ゆっくりと色を失っていく。

 黒い装束が、少しずつほつれ、元の制服が覗き始める。


「……僕は、唯斗だ……!」


---


 その瞬間だった。


 みるいが、そっと夢界の手を取った。


「……ありがとう、夢界くん。でも、それは――してはいけないことなの」


「え……?」


 みるいの瞳が、淡く光る。

 その手から放たれた魔力が、夢界を弾き飛ばした。


「うわっ――!」


 夢界が地面に転がる。仲間たちが駆け寄る。


「みるい……お前、何を……!」と有志が叫ぶ。


 みるいは、静かに唯斗の手を取った。


「あなたは、“王”でいなければならないの。

 この世界を守れるのは、あなただけだから」


「みるい……やめろ……僕は……!」


「ごめんね。私、あなたを守りたかった。

 でも、あなたが“唯斗”でいる限り、この世界は壊れてしまうの」


 みるいの魔法陣が展望台を包む。

 光が弾け、唯斗の姿が再び黒い装束に包まれていく。


「やめろおおおおおおおおお!!」と夢界が叫ぶ。


 だが、間に合わなかった。


 アキモト様が、完全に目を覚ました。


「……ありがとう、みるい。君のおかげで、僕は戻れた」


 みるいは、微笑んだ。

 その目には、涙が浮かんでいた。


---


 空が割れた。

 塔の外に広がる世界が、ゆっくりと崩れ始める。


「さあ、始めよう。君たちがこの世界を壊すというのなら――

 僕は、全力でそれを拒絶する」


 アキモト様が剣を抜く。

 みるいもまた、杖を構える。


 仲間たちは、武器を手に取った。


 これは、ただの戦いじゃない。

 **信じていた者との、決別の戦い。**


 そして、唯斗を取り戻すための――

 **最後の戦いだった。**


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ