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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
一章 旅立ち
8/50

8話

 第四層――“運命の回廊”。


 そこは、無数の分かれ道が入り組んだ迷宮だった。

 どの道を選んでも、見た目は同じ。壁も床も、すべて灰色の石でできていて、目印になるものは何一つない。


「うわー、これ絶対迷うやつだ……」と有志が頭を抱える。


「地図もないし、千里眼も通じない……」と夢界も苦い顔をしている。


「つまり、ここは……俺の出番か!」


「え、なんで?」と太郎。


「俺、運ないからさ。逆に考えれば、俺が選ばなかった道が正解ってことじゃね?」


「いやいや、それただの逆張りじゃ――」


「じゃあ、信じてみる?俺の“運のなさ”を」


 夢界はニヤリと笑い、三つに分かれた道のうち、真ん中を指差した。


「ここは絶対ハズレ。だから、右行こう」


 半信半疑ながら、仲間たちは右の道を選んだ。

 すると、数歩進んだ先で、床が光り、次のエリアへの扉が現れた。


「……マジで!?」と有志が目を見開く。


「やっぱり、夢界の“運のなさ”って、逆にすごいのかも……」とみるいが笑った。


「ふふん、俺の直感、なめんなよ〜」


---


 その後も、夢界の“逆選択”によって、次々と正解ルートを引き当てていった。

 罠も敵も回避し、ついには安全な休憩所にたどり着いた。


 その夜、焚き火の明かりの中で、久々に穏やかな時間が流れていた。


「……なんか、久しぶりに落ち着いたね」とみるいがつぶやく。


「うん。……ありがとう、夢界」と唯斗が微笑んだ。


 その笑顔は、あの“冷たい唯斗”ではなかった。

 どこか、懐かしい。優しくて、少し照れくさそうな――あの頃の唯斗だった。


「唯斗くん、なんか……戻ってきたみたい」とみるいが小さく言った。


「……うん。なんかね、頭の中が軽くなった気がするんだ。変な声もしないし、記憶も……落ち着いてる」


「よかった……」と、みるいが微笑む。


 その夜、皆は久々に安らかな眠りについた。


---


 だが、夜半。


 夢界は、ふと目を覚ました。


 ――何かが、おかしい。


 静かすぎる。風の音も、焚き火のはぜる音も、仲間の寝息さえも、遠く感じる。


 そして、気づいた。


「……唯斗が、いない」


 夢界はすぐに立ち上がり、周囲を探し始めた。

 だが、どこにもいない。荷物も、短剣も、すべてそのまま。

 まるで、唯斗だけが“消えた”ようだった。


「みんな、起きて!唯斗が……!」


---


 その瞬間、迷宮が揺れた。

 壁が裂け、黒い霧が吹き出す。

 霧の中から現れたのは、異形の魔物たち――塔の守護者たちだった。


「くそっ、罠かよ!」と太郎が銃を構える。


「唯斗を連れていったのは、こいつらか……!」と有志が叫ぶ。


 激しい戦闘が始まった。

 だが、敵の数は多く、次々と湧いてくる。


「夢界、また頼む!どっちに逃げればいい!?」


「えーと……こっちが正解っぽいけど、俺の運のなさを信じるなら――左だ!」


「よし、左だ!行くぞ!」


 夢界の“逆直感”に従い、仲間たちは左の通路へと駆け出した。

 すると、霧が晴れ、光の扉が現れる。


「やっぱり……夢界、すげぇな」と有志が笑う。


「へへっ、まあね!」


---


 扉の先は、静かな回廊だった。

 その奥に、巨大な扉がひとつだけ、ぽつんと立っている。


 扉が、ゆっくりと開いた。


 中は、まるで玉座の間のようだった。

 高い天井、赤い絨毯、そして――玉座。


 その玉座に、ひとりの少年が座っていた。

 黒い装束に身を包み、目を閉じている。


「……唯斗?」


 みるいが、震える声で呼びかけた。


 その瞬間、少年が目を開けた。

 その瞳は、深い紫に染まっていた。


「ようこそ、僕の世界へ」


 その声は、もう“唯斗”ではなかった。


(続く)

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