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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
一章 旅立ち
7/50

7話

 第三層に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


 そこは、まるで音を吸い込むような静寂に包まれていた。

 壁も床も天井も、すべてが黒い石でできていて、光を反射しない。

 足音さえも吸い込まれていくようで、誰もが無意識に息を潜めていた。


「……ここ、やばいな」と太郎がつぶやく。


 彼の手には、いつもの三八式歩兵銃。

 けれど、その指先が、わずかに震えていた。


「太郎、どうしたの?」とみるいが声をかける。


「いや……なんでもない。ちょっと、昔を思い出しただけ」


 その言葉の裏に、何かがあることは明らかだった。

 けれど、誰もそれを深く追及しなかった。今は、前に進むしかない。


---


 迷宮は、まるで生きているかのようだった。

 進むたびに道が変わり、同じ場所に戻ってきたかと思えば、見たことのない扉が現れる。

 そして、ついに――敵が現れた。


 それは、黒い鎧に身を包んだ騎士だった。

 顔は見えず、ただ無言で剣を構えている。


「よし、俺に任せろ!」と太郎が前に出る。


 銃を構え、引き金を引く。

 ――パンッ!


 銃声が迷宮に響く。けれど、騎士は微動だにしなかった。

 弾は、鎧に当たった瞬間、まるで霧のように消えてしまった。


「なっ……!?」


「効いてない……!?」と有志が叫ぶ。


 騎士が動いた。太郎に向かって一直線に突進してくる。

 太郎は咄嗟に後退しながら、連続で発砲する。

 けれど、すべての弾が霧のように消えていく。


「くそっ……なんでだよ……!」


 そのとき。


「【大地よ。我らを育みしこの大地よ。我に力を貸したまえ。我が名は唯斗。我が力に見とれるがよい。闇より暗い漆黒に、我が爆裂魔法の閃光輝給え……】」


「ちょ、ちょっと待って唯斗!?まだ太郎が――!」


 みるいの叫びも虚しく、唯斗の手のひらに巨大な火球が生まれる。

 それは瞬く間に成長し、空間を赤く染めた。


「【エクスプローディング・ディスチャージ!】」


 火球が放たれた。

 轟音とともに、爆炎が迷宮を包み込む。

 敵も味方も、すべてを巻き込むような、無慈悲な閃光。


---


 しばらくして、煙が晴れた。


 黒い騎士は、完全に消滅していた。

 だが、仲間たちもまた、地面に倒れ込んでいた。


「げほっ……な、なんだよ、今の……!」と夢界が咳き込みながら立ち上がる。


「爆裂魔法って、あんな範囲広いの!?死ぬかと思った……!」と有志。


 みるいは、肩を押さえながら唯斗を見つめていた。

 その目には、怒りと困惑が入り混じっていた。


「唯斗くん……どうして、あんな……」


 唯斗は、無表情のまま答えた。


「銃が効かないなら、他の手段を使うしかない。合理的な判断だろ?」


「でも、私たちが巻き込まれるかもしれなかったんだよ!?」とみるいが声を荒げる。


「結果的に無事だった。問題ない」


 その冷たい言葉に、誰もが言葉を失った。


---


 その夜、太郎は一人、銃を手入れしていた。

 銃身には、爆風でできた焦げ跡が残っていた。


「……唯斗、お前、何を考えてるんだよ」


 その問いに、答える者はいなかった。

 ただ、遠くで雷が鳴ったような気がした。


(続く)

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