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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
一章 旅立ち
5/50

5話

 塔の中は、外から見た印象とはまるで違っていた。


 石造りの重厚な壁に囲まれているはずなのに、足を踏み入れた瞬間、僕たちはどこか別の空間にいた。空は灰色に霞み、地面は鏡のように光を反射している。まるで、世界そのものが“記憶”でできているような、不思議な場所だった。


「……ここ、なんか変だな」と有志がつぶやく。


「気をつけて。何かが来る」と夢界が言った。


 その瞬間、空間が歪んだ。鏡のような地面が波打ち、そこから人影が現れる。

 それは――僕だった。


 いや、正確には、“僕に似た誰か”。

 けれど、どこか違う。背筋が伸びていて、目に迷いがない。

 その姿は、まるで“完成された僕”のようだった。


「アキモト様……?」と、みるいが小さくつぶやく。


 その声に反応したのか、影の“僕”がこちらを見た。

 その目が、まっすぐに僕を射抜いた瞬間、頭の奥に何かが流れ込んできた。


 ――仲間を守るために、僕は選んだ。

 この世界を作り、記憶を封じ、すべてをやり直すことを。


 眩暈がした。膝が崩れそうになる。

 でも、影の“僕”は容赦なく剣を抜いた。


「来るぞ!」と太郎が叫ぶ。


 戦いが始まった。

 影の“僕”は、まるで僕たちの動きをすべて読んでいるかのように、的確に攻撃を繰り出してくる。太郎の銃弾をかわし、有志の剣を受け流し、夢界の突撃を軽くいなす。


「こいつ……強すぎる!」と有志が叫ぶ。


 僕は短剣を握りしめ、影の“僕”に向かって走った。

 刃が交差する。火花が散る。

 その瞬間、また記憶が流れ込んできた。


 ――僕は、間違ってなどいない。

 この世界を守るために、必要だったんだ。

 誰にも理解されなくても、構わない。


 その言葉が、まるで自分の心の奥から聞こえてくるようで、思わず動きが止まった。


「唯斗!下がって!」と夢界の声が飛ぶ。


 我に返った僕は、すんでのところで影の剣をかわした。

 その隙に、有志の一撃が影の“僕”を貫いた。


 影は、光の粒となって消えていった。


 静寂が戻る。

 けれど、僕の中には、まだあの記憶の残響が残っていた。


「大丈夫か?」と夢界が声をかけてくる。


「……うん。ちょっと、変な感じがしただけ」


 そう答えたけれど、心の奥では、何かが確かに変わり始めていた。

 まるで、誰かの意志が、僕の中で目を覚まそうとしているような――


 塔の奥へと続く扉が、音もなく開いた。

 次の層が、僕たちを待っていた。


(続く)

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