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月の見える夜に───しずく草の夜
塔のふもとに、白い花が咲いた。
名もなきその花に、ふたりは“しずく花”と名を与えた。
夜の空気に溶けるように、
ふたりの声は静かに重なり、
夢の中でさえ、同じ景色を見た。
塔はまだ眠っていない。
それでも、
彼らは恐れず、
“今”を選んだ。
記録守として、
この夜を忘れないように記す。
**――これは、ふたりが“今”を信じた夜の記録。
しずく花の夜、確かに存在した。**
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それだけを記して、夢界はノートを閉じた。
塔の影が、朝の光に溶けていく。
彼は微笑んで、
静かにその場をあとにした。
(終わり)
間章としてきましたが、次から3章が始まります




