3話
日が暮れてからかなりの時間が経った。だが、僕たちは街にいない。いや、いれないのほうが正しいだろう。それもそのはず…第二の街セカナチアについた後、住民たちによって追い出されたのだ。こればかりは夢界が悪い。なんせ、武器屋で暴れてしまったのだ。と考えていると
「いやぁ、困ったもんだねぇ」と夢界があたかも他人事のように言った。
「いやぁ、お前さぁ…」
とここで口が止まってしまう。正直、彼は最悪な確率を何回も連続で引いてしまったのだ。あくまでも運が良い…はずなのだが。
「でもさ、『ゴールデンムカイ』ってネーミングセンスいいねぇ」
と、太郎がふざけていうと同時に夢界の姿を凝視してしまう。それは仕方のないことだと思う。なんせ、金色の胸当て等目立たないわけがないのだ。
「でもちゃーんと自分でも作れるようだから助かったなぁ」
「でも誰が作るんだよー」
「…そこは…こう…」
と行き詰まったかのように見えたが
「大和魂しかないだろうね」
と、精神論を出してきやがった。
まあ、こんなこともあろうかと、と夢界が言うと、カバンから寝袋を取り出した。真面目に野宿する気らしい。
寝袋に入ったあと、全員でどうするか話し合った。どうやら昼頃に左に行った分かれ道を右に行って一日以上歩くと、第五の街ファイブリハがあるようだ。
そこまで行けばさすがにセカナチアでの悪評が来ない…はず(だと信じたい)。というわけで、来た道を引き返して、分かれ道を右に行くルートに切り替えることにした。
翌朝、7時頃に出発した。なんせ、その分かれ道からセカナチアまでが半日、さらにそこから一日かかると考えると、今日中に着くとは思えない。もう一晩野宿が必要だろう。
「出発するぞ〜」と夢界が言うと、早々に歩き出した。いよいよ出発だ。
夢界は(見ないが)地図を持ち、太郎は銃を構え、有志は水筒をもち、僕は寝袋を回収した。効率的に動けていて何よりだ。
二十分後、川と道が垂直に交わる地点に到達した。どうやら昨日、セカナチアから離れるとき、結構歩いてきていたようだ。ここから一時間くらいで例の分かれ道だ。と、ここで
「せっかくだし、例のおじちゃん家いくかぁ?」
と有志が言った。例のおじいちゃんとは、彼の能力・千里眼を伝授した人のことだろう。確かに、街で武装強化ができない分、スキルで補う必要がある。その点で考えれば、スキルを伝授してもらうのも悪くはない、と思い、多数決の結果全会一致で寄ることになった。
「フォッフォッフォッ、よくきおったのぅ」
これがそのおじいちゃんか、と思ってしまったのは仕方のないことだと思う。なんせ、見た感じ100歳を軽く超えてそうなのに超が十個ほどつくくらい元気なのだ。
「こんにちは、おじいちゃん。昨日ぶり!」
と有志が話すと
「有志や、千里眼は使いこなせたか、ありゃ使い続けるとよってしもうもんでのぅ…わしくらいになれば使えないもんだよ」
「いやいや、その千里眼のおかげで助かりましたし…」
というように、実の祖父と孫のような会話に何処かほっこりとした。
「ところで本題なんですけど」
「なんじゃ?」
「この3人にも能力を伝授してほしいんだ。」
「ほぉ、なんとなんと。おぬしたちよ、どのような能力を望んでるのだ?」
と不意に聞かれて「…」と黙ってしまった。
「この世界を統べる神になる能力」と即答したゴールデンムカイこと桐山夢界には尊敬を超えて恐怖までも感じたのは言うまでもない。
「僕は、、、狙撃能力向上のための暗視能力かなぁ?」と太郎。
僕は……悩んだ末、「コミュニケーション能力」と答えたが、
「フォッフォッフォッ、それはお主次第じゃよ」と真っ向に正論で返されてしまった。
結局、ダメ押しで答えた「爆裂魔法」になってしまったのは別のお話。
「おじいちゃん、ありがとう!」
「いやいや、そなたたち、セカナチアに行くと思ってたんじゃが、どこに向かっておるんか?」
「ああ、ファイブリハに行くことになったんだ」
「なんじゃと?」と眉間にしわを寄せて言われたときは恐怖を感じた。だが、
「一気に飛ばしていくのか…道中、強敵もでるだろうからのう、気をつけるんじゃぞ?」
と心配してくれていることに気づいて、申し訳無くまでなってきた。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「きをつけてのう」
というふうにおじいちゃんの家を出発した。
5時間ほど歩いたとき。山の麓に着いた。素晴らしいほど道をふさいでいるこの山を超えるには、洞窟を通るのが最も近く、迷いにくいようだ。方向音痴の多い僕たちにはちょうどよいルートだ。
「洞窟に入ろうか」
「「いいね」」
というふうにいい感じに議会制民主主義をしてから洞窟に入った。
さらに1時間後。迷子になった。この広い洞窟の中で。
「いやぁ、もっとわかりやすく通路を作って欲しいね」といっているのは全ての原因の夢界。
「大丈夫、まだ何とかなるよ」とポジティブ思考なのは太郎。
「本当ーにどうするんだよ!なんで迷うんだー」
といっているのは有志。
「え、ええ。」と困惑しているのはもちろん僕。
こうなったのにもしっかりとした理由があり…
40分ほど前まではしっかりと通路を進めていた。しかし、そこからなんとモンスターが出てきたのだ。しかもこれがかなり厄介。なんせ、出てくるたびに倒すと方向が分からなくなるのである。そうして何回も戦い、何回も(夢界の)直感を信じた結果……今に至る。
「いやぁ、ここまで来ると夢界の運のなさにも才能を感じるよ」と皮肉めいて言ったのだが、
「いやぁ、ははは」と、あまり効かなかったようだ。
「なんかさ、どんどん敵モブつよくなってないすか?」と聞くのは有志。太郎は遠距離武器の銃を使っているからか、分かっていないようだ。もちろん僕も(ナニモしてないので)全く感じない。
「ま、まさかだけど…ボスとかいないよねー?」
と、空気を紛らわそうと言ったのだが。
「いそうだねぇ」と誰も反論してくれなかった。
と、ーーキーン、シャン、シャン、シャン
「!!」
これはおそらく剣を使った攻撃の音。誰かがモブと戦っているのか?
考えるより早く、体が動いていた。今までずっっっと腰にかけて使っていなかった短剣を抜いて。
洞窟の分かれ道を左に曲がり右に曲がり左に行ったところで、一気に開けた。奥で誰かが戦っているようだ。
「僕がここから爆裂魔法を放つからその間に夢界はあの人に警告して。有志は右展開、太郎は左で発砲準備」
と、すらすらーっと命令が出てきた。これでも、一応このグループのリーダーだからだ。
「「「了解!」」」
さすがのコンビネーションだ。まだ全員には5人程不足しているが、十分すぎるほどだ。
【大地よ。我らを育みしこの大地よ。我に力を貸したまえ。我が名は唯斗。我が力に見とれるがよい。闇より暗い漆黒に、我が爆裂魔法の閃光輝給え。…】
構えた両手の先30センチメートルほどの距離に一点の神々しい火球ができた。それを成長させるイメージを頭の中で繰り返すと、火球も一回り、二回りと大きくなった。【…エクスプローディング・ディスチャージ!】と、最後の文を言うと、火球が前方へ飛んでゆき、ボスと思われる敵モブに接触した。同時に、火球があらゆる方向に膨張・爆発し、火炎ダメージおよび爆発ダメージ、閃光によるスタンまで成功する。ここまでくれば上出来だ。
「今だ!一斉攻撃!」
残り少しとなったボスのHP全損を目指して一斉攻撃をかました。ボスでもこれには耐えきれず、有志の一撃で完全に沈黙し、グループ全員と二人の歓声が上がった。
「大丈夫?」
「あ…助けてくれてありがとうございます、私は魅琉生。洞窟に入ったら迷ってしまって。」
同じような奴もいるんだなぁ、と思いつつ、
「みるいさん?はじめまして、唯斗っていいます」
みるい?となったのにも理由がある。この人と……何処かであったことがある気がするのだ。恐らく現実世界。だが、思い出せない。すると、
「!!?ゆ、ゆいと?アキモト様ではないですか!」
と言われ、これには!ー?!??となった。
詳しい話を聞くと、彼は森の中で仲間に見守られている中、HPを全損してタヒんだのだという。その仲間の一人にそのアキモト様という人がいたらしい。
「正直、信じられないです。タヒんだはずなのに生きていることも、アキモト様でない唯斗がいることも」
やはりこの前の誰かさんの推理は正しいのか…?パラレルワールドが存在するのだとしたら…じゃあ、なんで僕はみるいの名前に覚えがあったのだろう…謎が謎を呼んでいく…
そう考えているうちに、ついに洞窟を出ることに成功した。みるいについてなにか思い出してきましたが、この壮大な景色を前に吹き飛んでしまった。
(続く)




