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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
28/50

14話

塔の中に足を踏み入れた瞬間、

世界が、音を立てて軋んだ。


「……っ、なに……?」


瑠衣が、思わず足を止める。

空気が、変わった。

塔の内部だけではない。

**外の世界そのものが、変わり始めていた。**


唯斗が振り返る。

塔の入り口――

そこにあったはずの街の風景が、

まるで水に溶ける絵の具のように、

ゆっくりと滲み、崩れていく。


「……現実が……書き換えられてる……」


夢界の声が震えていた。

彼の“残響視”が、塔の内部だけでなく、

外の空間にも異常な反応を示していた。


「見える……

 街の上に、もうひとつの世界が重なってる。

 塔を中心に、記憶の地層が現実を侵食してる……!」


唯斗と瑠衣も、感じていた。

足元の感触が変わっていく。

アスファルトのはずの地面が、

いつの間にか、あの世界の“記憶石”に変わっていた。


「……もう、戻れないんだね」


瑠衣が、静かに言った。

その声には、悲しみも、決意も、すべてが混ざっていた。


「うん。でも、俺たちはここにいる。

 今の名前で、今の姿で。

 だから、進もう。

 この世界を、守るために」


唯斗の言葉に、夢界が頷いた。


「塔に入った瞬間、

 この世界は“記憶の世界”と完全に融合した。

 もう、夢でも記憶でもない。

 ここが、現実だ」


三人は、塔の奥へと進んだ。


---


そのとき、外の空が、音もなく割れた。


空の裂け目から、黒い光が降り注ぐ。

“奴等”が、現れた。


人の形をしている。

でも、顔がない。

輪郭が、ぼやけている。

まるで、誰かの記憶から抜け落ちた“存在”。


「……来たな」


唯斗が、剣を構える。

その刃が、淡く光る。


「この世界を、

 俺たちの記憶ごと、

 “なかったこと”にしようとしてる」


「でも、させない。

 だって、ここには――

 私たちの“今”があるから」


瑠衣の羽衣が、風を巻き起こす。

その光は、記憶の断片を守るように、

三人の周囲を包み込んだ。


夢界が、目を閉じる。

“残響視”が、奴等の核を捉える。


「……あいつらの中心にあるのは、

 “忘却”だ。

 思い出せなくなったもの、

 言葉にできなかった想い、

 そういう“空白”が、奴等を形作ってる」


「だったら、俺たちは――

 “思い出す”ことで、戦える」


唯斗の言葉に、ふたりが頷いた。


「記憶を、

 想いを、

 この世界を――

 守るために」


三人は、塔の奥へと進んだ。


その背後で、

現実と記憶が、完全に重なり合っていく。


街のビルは、記憶の塔に変わり、

道路は、記録の回廊に姿を変える。

空は、あの世界の蒼に染まり、

風は、かつての戦場の匂いを運んでくる。


もう、戻れない。

でも、それでいい。


唯斗も、瑠衣も、夢界も、

“今の名前”のまま、

“今の想い”で、

この世界を守るために戦う。


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