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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
27/50

13話

塔の中に足を踏み入れた瞬間、

空気が変わった。


重力が、少しだけ軽くなる。

音が、遠のく。

視界が、ゆっくりとにじんでいく。


「……ここ、どこ……?」


瑠衣が呟いた。

その声は、水の中で響くように、

ゆっくりと耳に届いた。


周囲は、灰色の霧に包まれていた。

床も壁も天井もない。

ただ、無限に広がる“空間”があるだけ。


「……ここが、“記憶の層”……?」


唯斗が、足元を見た。

そこには、確かに“地面”があった。

けれど、それは石でも土でもなく、

まるで“思い出”を固めたような、

不思議な質感だった。


「気をつけろ。

 ここでは、何が起きても不思議じゃない」


夢界が、慎重に周囲を見渡す。

彼の目が、わずかに光っていた。

“残響視”が、何かを感じ取っている。


「……来るぞ。

 記憶の断片が、動き出す」


その言葉と同時に、

霧の中から、光の粒が浮かび上がった。


それは、まるでホタルのようにふわふわと漂いながら、

三人の周囲を舞い始めた。


「……これ、見覚えがある……」


瑠衣が、ひとつの光に手を伸ばす。

その瞬間、光が弾けた。


そして――


世界が、変わった。


---


そこは、草原だった。

風が吹いている。

空が広く、雲が流れている。

遠くに見える塔。

そして、丘の上に立つ、三人の姿。


「……これ、“あの世界”……!」


唯斗が叫ぶ。

目の前にいるのは、かつての自分たち。

でも、名前は変わらない。

唯斗は唯斗のまま。

瑠衣も夢界も、同じ名前のまま、そこにいた。


「……思い出した……

 俺たち、あの世界で戦ってた。

 “奴等”と。

 記憶を守るために」


「私たちは、“記録守きろくもり”。

 世界の記憶を守る者。

 でも、最後の戦いで――」


「負けたんだ。

 そして、記憶を失って、

 この世界に戻ってきた。

 でも、今、思い出した。

 あのときの力。

 あのときの誓い。

 全部、ここに戻ってきた」


夢界が、静かに言った。


三人の体が、淡く光り始める。

それは、かつての力が戻ってくる証。


唯斗の手には、**記憶のメモリアブレード**が現れた。

瑠衣の背には、**記憶の羽衣ルミナヴェール**が揺れていた。

夢界の目には、**記憶視レコードサイト**の紋章が浮かび上がる。


「……これが、俺たちの“本当の姿”じゃない。

 “今の俺たち”が、過去を受け継いだ姿だ」


唯斗が、剣を握りしめる。

その刃は、光と影を同時に宿していた。


「でも、なんで今、思い出せたんだろう」


瑠衣が、そっと羽衣に触れながら言った。


「きっと、心が重なったからだよ。

 あの夢の夜、

 俺たちは、同じ記憶を見た。

 同じ想いを、確かめ合った。

 だから、境界が開いたんだ」


夢界の言葉に、ふたりは頷いた。


「……じゃあ、ここからが本番だね」


「うん。

 記憶を取り戻した今なら、

 “奴等”と戦える」


「でも、気をつけろよ。

 あいつらは、俺たちの記憶を喰って強くなってる。

 次に出てくるのは、

 きっと“過去の自分たち”の影だ」


「……それでも、行くしかない」


唯斗が、剣を構えた。

その背に、瑠衣と夢界が並ぶ。


「記憶を守るために。

 この世界を、

 そして、俺たち自身を――取り戻すために」


霧が晴れていく。

次の層が、姿を現す。


三人は、再び歩き出した。


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