表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
26/50

12話

校舎の裏門を抜けたとき、

三人は立ち止まった。


そこから見える街並みは、

まるでジオラマのように静まり返っていた。

信号は点滅し、コンビニの看板は光っている。

けれど、車は動かず、人影もない。

音も、匂いも、風さえも――

すべてが、どこか“作り物”のようだった。


「……このまま、どうなるんだろうな」


夢界が呟いた。

その声は、やけに大きく響いた。

それだけ、周囲が静かだった。


「わからない。

 でも、何もしなければ、

 このまま世界が“空っぽ”になっていく気がする」


唯斗の言葉に、瑠衣が頷いた。


「塔に行こう。

 あそこが、すべての中心。

 きっと、何かがある」


「賛成。

 どうせ、ここにいても何も変わらない。

 だったら、動いたほうがマシだ」


夢界が肩をすくめながらも、

その目は真剣だった。


三人は、坂を下り、街へと足を踏み入れた。


---


道は、あまりにも整然としていた。

倒れた自転車。

開け放たれたままのコンビニのドア。

途中で止まったままのバス。

どれも、ついさっきまで人がいたことを示しているのに、

今は、まるで“誰も存在しなかった”かのような空気が支配していた。


「……まるで、誰かが“世界を上書き”してるみたいだな」


夢界が、周囲を見渡しながら言った。


「上書き……?」


「うん。

 現実の上に、別の現実を重ねて、

 元のものを塗りつぶしていく。

 そんな感じがする」


唯斗は、胸の奥がざわつくのを感じた。

夢の中で見た、あの塔の風景。

瑠衣と手をつないで立った、あの場所。

あれは、ただの夢じゃなかった。

記憶だった。

そして今、現実がその記憶に“侵食”されている。


「……俺たちが、思い出したから……?」


「たぶん、そう。

 でも、それだけじゃない。

 “誰か”が、意図的にこの世界を壊そうとしてる。

 記憶を喰らって、存在を消して、

 最後には、すべてを“なかったこと”にするつもりなんだ」


瑠衣の声は、静かだった。

でも、その奥には、確かな怒りがあった。


「……許せない。

 私たちが積み重ねてきたものを、

 勝手に消されるなんて」


唯斗は、瑠衣の横顔を見た。

その瞳は、まっすぐに前を見据えていた。

“みるい”としての記憶を持ちながら、

“瑠衣”として今を生きる彼女。

その存在そのものが、

この世界の“継ぎ目”になっている。


(……俺が、守らなきゃ)


そう思った。

理由なんて、いらなかった。

ただ、彼女の隣にいたい。

それだけだった。


---


やがて、三人は、

塔のふもとにたどり着いた。


そこは、かつて公園だった場所だった。

ブランコも、ベンチも、遊具も、

すべてが黒い靄に包まれ、

まるで炭のように変質していた。


塔は、静かにそびえていた。

近くで見ると、その異様さはさらに際立っていた。

表面は、まるで液体のようにゆらめき、

ところどころに“記憶の断片”のような映像が浮かんでは消えていた。


唯斗は、塔の根元に近づき、

そっと手を伸ばした。


その瞬間――

塔の表面が、波紋のように揺れた。


「……反応した……?」


「唯斗……」


「たぶん、俺たちを“知ってる”んだ。

 この塔は、俺たちの記憶から生まれた。

 だから、俺たちを“迎え入れる”準備ができてる」


夢界が、ノートを開いた。

ページの端に、いつの間にか新しい文字が浮かんでいた。


『塔の内部は、記憶の層で構成されている』

『進むごとに、過去と現在が交錯する』

『最深部に、“奴等”の核がある』


「……行くしかねぇな」


夢界が、ノートを閉じた。


「準備はいいか?」


唯斗と瑠衣は、頷いた。


「うん。

 ここで止まったら、

 きっと、全部が消えてしまう」


「だったら、進もう。

 この記憶が、消される前に」


三人は、塔の中へと足を踏み入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ