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9話
その日、空は朝から妙に白かった。
雲が薄く広がり、太陽の輪郭がぼやけている。
風もなく、蝉の声も聞こえない。
まるで、世界が息をひそめているようだった。
唯斗と瑠衣は、いつも通りに登校していた。
けれど、校門をくぐった瞬間、
空気が変わった。
「……なんか、変じゃない?」
瑠衣が立ち止まる。
唯斗も、周囲を見渡した。
生徒たちが、空を見上げてざわめいている。
教師たちも、スマホを手にして、何かを確認している。
唯斗が顔を上げた瞬間――
その視界に、“それ”が飛び込んできた。
校舎の向こう、遠くの山の稜線に、
黒く、細く、空に向かって伸びる“塔”が立っていた。
「……あれ……」
唯斗の声が震える。
瑠衣も、目を見開いていた。
「……あの塔……夢の中と、同じ……」
「まさか……」
そのときだった。
空が、裂けた。
塔の頂から、黒い光が放たれる。
空が、まるでガラスのようにひび割れ、
そこから、“何か”が降りてくる。
人の形をしている。
でも、人ではない。
影のように黒く、目だけが赤く光っている。
「……来た……!」
瑠衣が、震える声で呟いた。
「“奴等”が……来た……!」




