7話
――夢界、能力の発現
場所は、放課後の誰もいない教室。
夕暮れの光が、机の上に斜めに差し込んでいる。
夢界は、ひとりで席に座っていた。
唯斗と瑞希が先に帰ったあと。
ふたりの背中を見送ったあと。
胸の奥に残った、あのざらつきが、まだ消えない。
彼は、ふと立ち上がり、
瑞希がいつも座っている席に近づいた。
何気なく、そこに手を置いた瞬間――
世界が、揺れた。
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視界が、にじむ。
音が、遠のく。
そして、次の瞬間――
夢界の目の前に、
“見たことのない風景”が広がっていた。
高い塔の上。
風が吹いている。
空が広くて、どこまでも青い。
そして――
唯斗と、瑞希が、手をつないで立っている。
いや、違う。
それは、“瑞希”じゃない。
髪の長さも、制服も、少しだけ違う。
でも、目の奥にある光は、同じだった。
(……これ、なんだ?)
夢界は、動けなかった。
ただ、その光景を見つめていた。
まるで、誰かの夢の中に入り込んだような感覚。
でも、これは夢じゃない。
**“記憶の残響”だ。**
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視界が戻ったとき、
夢界は、息を切らしていた。
手は、まだ瑞希の机に触れたまま。
でも、そこにあったのは、ただの木の感触だった。
(……今の、なんだよ)
彼は、ゆっくりと手を引いた。
そして、確信した。
(俺、見たんだ。
あいつらの“過去”を。
いや、“過去”って言っていいのかもわかんねぇけど……)
夢界の中で、何かが静かに目を覚ました。
それは、ずっと彼の中にあったもの。
空気の揺れを読む力。
人の目の奥にある“言葉にならないもの”を感じ取る感覚。
それが今、
**形を持って、現実を越えた。**
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夢界は、窓の外を見た。
空は、もう夜の色に変わっていた。
でも、どこか澄んでいて、
星がひとつ、瞬いていた。
(……俺にできることが、あるのかもしれない)
それは、誰かを救う力じゃない。
でも、誰かの“真実”に触れる力だ。
そしてそれは、
**唯斗と瑞希の物語に、もう一人の視点を与える力でもある。**
夢界は、静かに拳を握った。
その手のひらには、まだ微かに、
あの風の感触が残っていた。




