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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
18/50

5話①

 夢界は、自分の席に座ったまま、窓の外をぼんやりと眺めていた。


 空は、青かった。

 でも、どこか――**透明すぎる気がした。**


 風が吹いているのに、木の葉が揺れていないような。

 蝉の声が聞こえるのに、どこか遠くから流れてくるような。

 そんな、**感覚のズレ**が、胸の奥にひっかかっていた。


---


 ガラリ、と教室のドアが開いた。


「……おはよう」


 唯斗だった。

 夢界は、ちらりと彼を見て、すぐに目をそらした。


「早いな、お前にしては」


「……たまたま、目が覚めた」


「ふーん」


 それだけの会話。

 でも、夢界にはわかっていた。

 **唯斗の声が、少しだけやわらかくなっている。**


 それは、昨日の夜から続いている変化。

 瑠唯と何かがあったことは、もう確信に近かった。


---


 数分後、瑠唯が教室に入ってきた。


「おはよう、ふたりとも」


 その声は、いつも通りだった。

 でも、夢界の目には、**彼女の歩き方が変わって見えた。**


 背筋が、少しだけ伸びている。

 視線が、少しだけまっすぐになっている。

 そして――

 唯斗のほうを見たときの、**ほんの一瞬の目の合い方。**


 (……やっぱ、そういうことか)


 夢界は、心の中で小さく頷いた。


---


 その日、授業中も、夢界はふたりを観察していた。

 瑠唯がノートを取るとき、

 唯斗が何気なくそちらを見ている。

 瑠唯が笑うと、唯斗の口元も、わずかに緩む。


 それは、**誰も気づかないくらいの小さな変化**。

 でも、夢界には見えてしまう。


 (……付き合ってるって、言わないんだな)


 それが、少しだけ引っかかった。

 でも、言わないのは、たぶんふたりなりの理由があるのだろう。


---


 昼休み。

 夢界は、屋上に向かった。

 いつものように、風が吹いていた。

 でも、今日はひとりだった。


 ベンチに座り、パンの袋を開ける。

 ひとくちかじって、空を見上げた。


 (……あの子は、誰なんだろうな)


 “瑞希瑠唯”。

 転校してきたばかりのはずなのに、

 唯斗の隣にいる姿が、**まるで最初からそこにいたみたいに自然**だった。


 それが、不思議だった。


---


 夢界は、ポケットからスマホを取り出し、

 何気なくカメラを起動して、空を撮った。


 画面に映る空は、やっぱり透明すぎて、

 どこか現実味がなかった。


 (……俺だけ、取り残されてるのかな)


 そんなことを思った瞬間、

 スマホの画面が、一瞬だけノイズを走らせた。


 「……ん?」


 夢界は、画面を見つめた。

 ノイズはすぐに消えた。

 でも、その一瞬――

 **空の色が、ほんのわずかに紫がかっていた気がした。**


---


 午後の授業。

 教室に戻ると、唯斗と瑠唯が並んで座っていた。

 ふたりの間には、何もなかった。

 でも、**何もないことが、逆に何かを語っていた。**


 夢界は、自分の席に戻りながら、

 ふたりの背中を見つめた。


 (……俺は、どうするべきなんだろうな)


 問いの答えは、まだ出なかった。

 でも、夢界の中で、何かが静かに動き始めていた。


---


 放課後。

 ふたりが先に帰ると言って、教室を出ていった。

 夢界は、ひとりで黒板を消しながら、

 ふと、窓の外を見た。


 空は、やっぱり青かった。

 でも、やっぱり――**透明すぎる気がした。**

(続く)

夢界視点

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