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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
15/50

3話

 二学期、三日目の昼休み。

 屋上のベンチに、夢界、唯斗、瑠唯の三人が並んでいた。

 空は高く、雲は薄く、風は少しだけ秋の匂いを含んでいた。


「……やっぱ、ここ風通しいいな。教室より全然マシ」

 夢界がパンをかじりながら、空を見上げる。


「でも、日焼けするよ」

 瑠唯が笑う。


「いいのいいの。俺は太陽と仲良しだから」


「それ、皮むけるやつだよ」


 唯斗は、手にした紙パックの麦茶を見つめていた。

 さっきの会話の続きを、まだ引きずっている。


 ――“私も、そう呼ばれてみたいな”


 あれは、冗談だったのか。

 それとも、何かを知っていて言ったのか。

 わからない。でも、気になって仕方がなかった。


「なあ、」

 夢界が口を開いた。

「昨日さ、唯斗さ、“みるい”って言いかけたじゃん。あれ、マジで誰なん?」


 唯斗は答えなかった。

 瑠唯が、少しだけ視線を落とした。


「……“みるい”って、どんな子だったの?」

 瑠唯の問いに、唯斗はゆっくりと息を吐いた。


「……静かで、優しくて。

 でも、芯があって……

 なんていうか、言葉にしにくいんだけど……

 “そこにいるだけで、安心する”って感じの子だった」


 瑠唯は、しばらく黙っていた。

 そして、ぽつりと呟いた。


「……じゃあ、私とは違うね」


「……いや、そうでもない。

 似てるところ、ある。

 声とか、笑い方とか……

 でも、違うってわかってる。

 だから……ごめん。昨日は、間違えた」


 そのとき、瑠唯がふっと笑った。

 風が、彼女の髪を揺らす。


「……じゃあ、間違えてもいいよ。

 “みるい”って、呼んでくれても」


「え……?」


「だって、唯斗くんがそう呼びたくなるなら、

 それは、私の中にも“その子”がいるってことかもしれないでしょ?」


 唯斗は言葉を失った。

 その笑顔は、どこか懐かしくて、でも確かに“今”のものだった。


 夢界が、ぽりぽりとパンの袋をたたんだ。


「……なんか、深い話してんな。俺、置いてかれてない?」


「うるさいよ、夢界」

 唯斗が笑った。


「お、久々にツッコミ入った。よし、今日の俺は満足だ」


 そのあと、三人で屋上をあとにした。

 階段を降りる途中、瑠唯がふいに言った。


「……じゃあ、今日から“みるい”でいいよ。

 唯斗くんがそう呼ぶなら、私はそれでいい」


 唯斗は、彼女の背中を見つめながら、

 胸の奥で何かが静かにほどけていくのを感じていた。


 “みるい”は、もういない。

 そうわかっていてもなぜか懐かしさをかんじた。

(続く)

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