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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
14/50

3話

 二学期、三日目の放課後。

 空は高く、風は少しだけ涼しくなっていた。

 校門を出たところで、夢界が声を上げた。


「おーい、瑞希ー! 一緒に帰ろーぜ!」


 呼ばれた少女は、少し驚いたように振り返った。

 そして、ふわりと笑った。


「うん、いいよ」


---


 唯斗は、少しだけ戸惑っていた。

 昨日のあの瞬間が、まだ胸の奥に残っている。

 でも、夢界の自然さに引っ張られるように、

 気づけば三人で並んで歩いていた。


---


「なあ、瑞希ってさ、前はどこ住んでたの?」

 夢界が聞く。


「んー、ちょっと山のほう。空気はきれいだったけど、電波が悪くてね」

 瑠唯は笑いながら答える。


「なるほどなー。じゃあ、こっち来てから文明に感動してる?」


「うん。自販機がしゃべるの、ちょっとびっくりした」


「それは……まあ、わかる」


---


 唯斗は、二人のやりとりを聞きながら、

 どこか遠くの音を聞いているような気分だった。

 声のトーン、歩き方、笑い方――

 全部が、**“みるい”に似ているようで、違う。**


 でも、違うからこそ、

 **似ている部分が、余計に胸に刺さる。**


---


「ねえ、唯斗くんは?」

 瑠唯がふいに振り向いた。

「夏休み、どこか行った?」


「え……あ、うん。ちょっと、遠くまで」


「へえ。楽しかった?」


「……うん。楽しかったよ。

 でも、帰ってきたら、なんか……全部、ちょっとだけ違ってた」


「ふふ、それって“旅の後遺症”ってやつじゃない?」


「……かもな」


---


 そのときだった。

 ふとした拍子に、唯斗が口を開いた。


「なあ、みる――」


 言いかけて、言葉が止まった。

 夢界が、横目で彼を見た。

 瑠唯は、少しだけ首をかしげていた。


「……ん? なあに?」


「……いや、なんでもない」


---


 沈黙が、三歩ぶんだけ続いた。

 そのあと、夢界が笑いながら言った。


「お前さ、今“みるい”って言いかけたろ。

 ……誰? 元カノ?」


「ち、ちがっ……!」


「えー? 怪しいなあ~」


---


 瑠唯は、ふふっと笑った。

 でもその笑顔は、どこか寂しげだった。


「“みるい”って、かわいい名前だね。

 ……私も、そう呼ばれてみたいな」


---


 唯斗は、何も言えなかった。

 ただ、胸の奥で何かが、

 **静かに、確かに、ほどけていく音**がした。

(続く)

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