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ノヴァムカイワールド  作者: フィのー
二章 ムカイヒュージョン
13/51

2話

 二学期、二日目の朝。

 まだ誰も、夏休みが終わったことを本気で信じていなかった。

 教室の空気は、どこか緩く、眠たげで、

 窓の外からは、蝉の声が名残惜しそうに響いていた。


 唯斗は、ぼんやりと窓の外を見ていた。

 空は青く、雲は高く、風はまだ少しだけ熱を帯びている。

 でも、何かが違う。

 それが何なのか、言葉にはならなかった。


---


「おーい、席つけー」

 担任の声が、教室のざわめきを切り裂いた。

「今日は転校生が来てるぞ。静かにしろー」


 ざわざわとした空気が、少しずつ収束していく。

 夢界が「転校生ってマジかよ」と小声でつぶやき、

 有志が「この時期に?」と眉をひそめる。


 唯斗は、まだ窓の外を見ていた。

 風が、カーテンをふわりと持ち上げる。

 その一瞬、**空気の層がずれたような感覚**があった。


---


「じゃあ、入ってきて」


 ドアが開く音。

 足音が、ゆっくりと近づいてくる。

 唯斗は、何気なく顔を上げた。


 そして――**息を呑んだ。**


---


 そこに立っていたのは、

 黒髪のショートボブに、涼しげな瞳。

 制服のリボンを、少しだけゆがめて結んでいる少女だった。


瑞希瑠唯みずき・るいです。よろしくお願いします」


 その声は、はじめて聞くはずなのに、

 耳の奥に、何度も響いたことがある気がした。

 いや、違う。

 **“あの世界”で、何度も聞いた声に、似ていた。**


---


 夢界が、唯斗の隣で小声を漏らす。


「……おい、唯斗。お前、今すげぇ顔してたぞ。

 知り合い?」


「……知らない。はず、なんだけど……」


 唯斗の声は、かすれていた。

 胸の奥が、ざわざわと波打っている。

 懐かしさとも違う。

 恐れとも、喜びとも違う。

 ただ、**“何かが戻ってきた”**という確信だけが、そこにあった。


---


 担任が席を指さす。

「じゃあ、あそこの席に座ってくれるかな」


 瑞希瑠唯は、静かに頷いて歩き出す。

 唯斗の斜め前の席。

 すれ違いざま、ふと立ち止まって、彼の目を見た。


 その瞳は、まっすぐで、どこか遠くを見ているようだった。


 そして――

 **「また会えたね」**

 そう言った気がした。


 でも、口は動いていなかった。



 ただただ無性に、カバンの中の石を、そっと握りしめた。

(続く)

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