1話
新章の開幕です
九月一日、午前七時五十二分。
教室の窓は少しだけ開いていて、風がカーテンを揺らしていた。
「……あっつ。夏、終わってねぇじゃん……」
夢界が机に突っ伏しながらぼやく。
「お前、制服の下にタンクトップ着てるの、もう諦めろよ」
有志が呆れたように言いながら、椅子を引いた。
「え、だってまだ蝉鳴いてんじゃん。これはもう“夏の延長戦”だろ?」
「延長戦って……お前、宿題終わったの?」
「……ノーコメントでお願いします」
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唯斗は、そんなやりとりを聞きながら、
自分の机に座って、そっとカバンを開けた。
中には、夏休みの宿題と――
あの世界で拾った、小さな石が入っていた。
白くて、すこしだけ光っている。
「……持って帰ってきちゃったんだな、やっぱり」
「ん? なんか言った?」
夢界が顔を上げる。
「いや、なんでもない」
唯斗は笑ってごまかした。
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そのとき、**教室の時計が“カチッ”と音を立てた。**
唯斗は、なんとなく視線を向けた。
秒針が、**同じ位置で二回、音を鳴らした。**
カチッ。……カチッ。
でも、針は動いていなかった。
ほんの一瞬のことだった。
誰も気づいていないようだったし、
次の瞬間には、何事もなかったように秒針は進んでいた。
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「……なあ、唯斗」
夢界がぼそっと言った。
「今日って、なんか……空気、重くない?」
「……そうか?」
「うん、なんかこう……“夏休み明け”って感じがしないっていうか……
いや、気のせいかも。ごめん、変なこと言った」
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唯斗は、もう一度カバンの中を見た。
石は、静かに光を吸い込んでいるように見えた。
**世界は、まだ静かだった。**
でもその静けさが、どこか――
“始まりの前の静けさ”のように思えたのは僕だけだろうか。
(続く)




