11話 エピローグ
ついに元の世界に帰還した。
しかし現実ではすでに1か月以上経過していて8月30日になっていた。
八月三十一日。
蝉の声が、どこか名残惜しそうに響いていた。
学校の図書室。
窓から差し込む夕陽が、机の上のプリントを赤く染めている。
「……なあ、これ、あと何ページあるんだっけ?」と太郎が顔をしかめる。
「あと三十ページ。しかも、数学」と有志が即答する。
「終わるかあああああああああ!!」と太郎が机に突っ伏した。
「しかもまだ英語、国語、物理、生物があるっていうね」
夢界は、鉛筆をくるくる回しながら笑った。
「いやー、まさか夏休みの最後に宿題地獄とはな……。 塔の魔物よりこっちのほうが強敵だわ」
唯斗は、静かにノートをめくっていた。
その横顔を、誰もがちらりと見る。
あの戦いのあと、彼は何も語らなかった。
でも、確かに変わった。
目の奥に、強さと優しさが宿っていた。
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「……なあ、唯斗」と夢界がふと口を開く。
「ん?」
「お前、あの世界のこと……覚えてる?」
唯斗は、少しだけ考えて――
そして、微笑んだ。
「うん。全部、ちゃんと覚えてるよ」
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その言葉に、誰もが黙った。
でも、次の瞬間――
「じゃあさ、みるいの分の宿題もやってくれよ」と太郎が言い出し、
全員が吹き出した。
「お前、それ言うか!?」「空気読めよ!」「でもちょっとわかる!」
笑い声が、図書室に響いた。
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窓の外、夕陽が沈んでいく。
夏が、静かに終わろうとしていた。
けれど――
**あの夏の記憶は、きっとずっと、心の中で生き続ける。**
結局あの世界が何だったのか、あのあとどうなったのかはわからない。でもあの世界で過ごした日々は本物だし、思い出もまたここにある。
(終わり)
1章完結です、




