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篠崎ミズホの冒険  作者: 旅立 マス
第1章 少女と闇は出会った
8/33

第7話 ミズホと光の教団の歴史

1時間目のホーリーライトの司祭様の授業が始まった。

教室に神聖な空気が流れ始めた瞬間、私はすでに眠気と戦っていた。


「おはようございます。今日は、聖魔戦争についてお話ししましょう」

司祭様の声は相変わらず単調で、まるで風が草を撫でるような眠気を誘う調子だ。


——ああ、これはやばい。寝落ちする未来しか見えない。


どうやら光の教団が今のように巨大な力を持つようになったのは、その聖魔戦争ってやつがきっかけらしい。

光の軍勢が闇の軍勢による侵略を食い止めたとか、伝説の勇者が戦って勝利を導いたとか、その勇者が後に教団を作っただとか。

……そんな話だったと思う。半分くらい夢の中で聞いてたから、細かいところはうろ覚え。


昨日、図書館で読んだ教団の書物にも、似たようなことが書いてあったっけ。

でも、どれも光の側から見た視点ばかりで、肝心の「闇」のことについてはほとんど触れられていなかった。

歴史って、勝者の物語なんだよね。敗者が何を考えてたかなんて、誰も書き残そうとしない。


それにしても、本当にこの授業、退屈すぎる。


——私、光を信じていないわけじゃないけど、こういう一方的な語りにはどうも馴染めないんだよね。

ありがたい話として聞ける人は、ある意味すごいと思う。


そんなことをぼんやり考えているうちに、授業が終わっていた。


ふぅ、やっと解放された……。


私は席を立ち、エリーのもとへ向かう。

教室の前方には、いかにも「貴族」って感じの男子たちがエリーを囲んでいた。

ああ、またこれか……王女様と知って近づいてくる人たち。まるでハエみたい。


——コネ作りに必死なの、見ててちょっと滑稽なんだけど。


それにしても、エリー困ってるな。表情は笑顔でも、目が笑ってない。

……よし、助け舟を出しますか、ミズホちゃんが。


「失礼、お姫様には予定がありますので、これで退散してくれます?」

にっこり笑いながら、一部にはキツめの視線でプレッシャーをかけた。

それでも諦めの悪いのが数人。ならば仕方ない、ちょっとだけ“実力”行使。


数分後、エリーの周りはスッキリと空気が澄んだ。


「やれやれ、エリーってやっぱり目立つよね」

「仕方ないわよ。立場が立場だもの。ある意味、宿命ね」

「……ボディガードとか、つけたりはしないの?」

「ふふ。私の実力、あなたが一番知ってるでしょ?」


——はい、その通りです。


エリーは学年で常にトップクラスの実力者。実技に関しては堂々の次席。

もちろん、主席はこの私だけど。

エリーを守れる人なんて、私以外そうそういない。それに彼女自身、戦う力を持ってる。

だからこそ、私は彼女の“ボディガード”でいるのが心地よい。


「そういえばミズホ、私に用があったんじゃなかった?」

「あ、うん。放課後、図書館に来てもらってもいい?」

「もしかして、本の整理の手伝いでもさせるつもり?」

エリーが冗談めかして笑う。まさか。王女様に雑務を頼むほど、私も無神経じゃない。


「本の整理じゃないよ。ちょっと、手伝ってほしいことがあるんだ」

私が真剣な声になると、エリーも表情を変えた。

今朝の会話を思い出したらしい。私の中にある、消えない違和感。その正体に、ようやく向き合おうとしていることを感じ取ったのだろう。


「もしかして、あの“今朝の話”に関係してる?」

「うん……それがね、やっぱり気になって仕方がなくて」

「分かったわ。親友の頼みだもの。何があっても、時間作るわ」


その言葉に、心の底から安堵した。

闇の精霊——未だ正体の見えない存在。

その声を聞いたあの夜から、私の中に眠っていた「何か」が目を覚ました気がしている。

エリーなら、きっと私を信じてくれる。そう思えるからこそ、私は今日の放課後、図書館で彼女にすべてを話そうと決めた。

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