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篠崎ミズホの冒険 クロと闇の冒険物語  作者: 旅立 マス
第6章 セントラル・ノヴァ学園
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第66話 ミズホと謎のZランク

はあ……。よく「転生」だの「無双」だのの物語って、不幸とか不憫な立場から始まって、前世の記憶とか、生まれつきのチート能力とかで一気にひっくり返すじゃない?

でも、私の場合はどうなんだろう。


前世の記憶なんてない。

異質な能力だって――うん、「アンチフィールド」は珍しいとは思うけど、世界をねじ曲げるほどの何かってわけでもない。結界の“嫌な効果”を無効にできる、ちょっと便利で、ちょっと厄介なスキル。せいぜいそんな感じ。


……なのに。

今の気分だけは、まるでそういう物語の主人公みたいだった。


だってさ。

まさか、学園でいちばん下のクラスに放り込まれるなんて思わないでしょ……。


「ミズホ君なんだが……Zランクだ」

あの瞬間、頭の中が真っ白になって、次の言葉が耳に入らなかった。いや、入ったけど、理解が追いつかなかった。

私、学園でトップだったんだよ? ルーラでは主席だったし、実技だって誰にも負けなかった。――そう思ってたのに。


……まあ、いい。

いちばん下にいるってことは、上しかないってことだもんね。落ち込んでる暇なんてない。私、そういう時に限って妙に前向きになれるタイプだし。


ただ、ひとつだけ引っかかってる。

グレープ学園長が最後に言った、あの言い方。


「まあ、君が行く事になるZクラスは少し特殊な奴らが集まってる普通のZクラスではないよ」


……“普通のZじゃない”。

それってどういう意味? 上に上がりにくいってこと? それとも、問題児の隔離施設みたいな?

説明は「行けば分かる」だけ。いや、分かりたくないんだけど!


教室の前に着くと、入口の横に人影があった。

スーツ姿の、若い女性。背筋がすっと伸びてて、目だけがやけに鋭い。


「あら、あなたが篠崎ミズホさんね。初めまして。わたしはこのクラスの担任、マヨイ・キタカタです。マヨイ先生でいいわよ」


言葉は柔らかいのに、視線が観察みたいで落ち着かない。

うわ、この感じ……どこかで……。

そうだ、ルーラのアマンダ先生。優しい顔で、平然と地獄の課題を出すタイプの先生。嫌な予感しかしない。


「確かに学園長の言う通り、面白そうな子が来ましたね」

「……面白そう、って褒め言葉ですか?」

ちょっと皮肉っぽく返してみる。だって怖いんだもん。


するとマヨイ先生は、ふっと笑った。

「あら。その様子だと、本当に何も知らないみたいね」

うう……その“知ってる側の顔”、やめてほしい。

「ここから上を目指すのは、かなりハードよ」

「成績がアレだからですか?」

「あら……違うとも言わないけど、主な理由はそこじゃないわ」


……言い方ぁ。

いちいち気になる言い方するの、ほんとやめて。


そして私は、半ば背中を押されるように教室へ入った。

ぱっと見は普通。机と椅子、黒板、窓。

……でも、空気が違う。静かすぎるというか、妙に張りつめてるというか。みんなの視線が、私に一瞬で刺さって、すぐ離れた。まるで値踏みみたいに。


「ミズホさんは探検隊ギルドに所属していて、“ダークキャッツ”ってチームのリーダーなんですって」


ダークキャッツ、って言った瞬間、何人かが「ん?」って顔をした。

そりゃそう。まだ出来たばかりだし、名前だって私の勢いで決めただけだし。

(……“キャッツ”のせいでクロに後から怒られるやつ。)


「彼女がどこまで上に行けるか、先生は正直楽しみね。仲良くしてあげてね」

一同が「はーい」と返事する。やけに揃ってて、逆に怖い。


その流れのまま、マヨイ先生が教壇に手をついた。

「さて。AZクラスはここから序列を上げる為に頑張るわよ!」


……え?

いま、何て? Zじゃなくて、AZ?

私、聞き間違えた?


「あの、先生。いま“AZ”って……」

「そうね。学園長、何も説明してなかったんだったわね」


マヨイ先生は淡々と――淡々と、さらっと、とんでもないことを言った。


「この異界で学ぶ人たちは何億人っている。その中でZからAまでのクラス分けがあるんだけど……Aクラスの更に上があるのよ。それがAZクラス。ここは、この異界でも序列100位以内にいる人が入るクラス」

「……は?」

口から、情けない声が漏れた。


「ちなみに最高はAAクラスね。序列は役所が調査して付けてる。学生証には載らないけど、調べれば自分の順位は分かるわ」

「え、でも……そんなの、聞いたこと……」

「でしょうね。公開してもいいんだけど、昔からA以上は影の存在みたいになってるの。信じない人も多いし、都市伝説扱い。知ってたら相当の“異界マニア”よ」


つまり――

周りから見れば、ここにいる人たちは「Zクラスの学生」。

でも実態は、この異界の上澄み。化け物みたいな人たちの集まり。


……待って。

じゃあ私は? 私は、何でここに?

学園長が言ってた「普通のZじゃない」って、そういう意味……?


頭の中が追いつかないのに、背中だけがぞわぞわしてくる。

私、いま――とんでもない場所に立ってない?


「はあ……」

声にならない息が漏れた。

何だか、思ってた“学生生活”とはまるで違う方向に転がってる気がする。いや、転がってるというか、落とし穴に落ちたというか。


……でも。

こんなところまで来ちゃったなら、逃げるなんて選択肢はない。


何だか、とんでもないところに来ちゃった感じ……?

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