第62話 ミズホと結成、ダークキャッツ!
ルアナが、珍しく声を落とした。いつもの「アタイはアタイだ!」って勢いじゃなくて、言葉を選んで、噛みしめるみたいに。
「アタイ、今回捕まって改めて思ったんだ。今まで、無教徒っていうのを理由に……子供みたいに、ただホーリーライトの連中に対抗してただけなんだなって」
その一言で、胸の奥が、ちくっと痛んだ。
ルアナの強さって、剣の腕だけじゃない。自分の弱さを認める勇気も、ちゃんと持ってるんだ。
「ただ“異端”であるだけっていうのもダメだと思った。だからと言って抵抗しない訳じゃない。ミズホが、世の中で異端とされてる闇の力の在り方を見つけるように……アタイ自身も、自分を誇れる生き方を見つけたいと思った。お前らとなら、それが出来そうだと思ったんだ」
……私が?
私が“在り方を見つけようとしてる”なんて、そんな大層なこと、格好よく言えるほど立派じゃない。
正直に言えば、迷って、転んで、泣いて、怒って、たまに意地になってるだけだ。
でも、ルアナには、それが“進もうとしてる姿”に見えたってことだよね。
そう思ったら、照れくさいのに、背中が少しだけ真っすぐになる。
続けて、フライヤが一歩前に出た。彼女の表情は、いつもの凛々しさの中に、少しだけ柔らかさが混じっている。
「そうね。アタシも、ホーリーライトっていう狭い世界でしか見てなかった。……今回の件で、自分の正義が何か見直すきっかけになったわ」
彼女が“正義”って言葉を口にするたび、私は思う。
フライヤは本気でそれを大事にしてる。飾りじゃなくて、ちゃんと自分の骨として持ってる。
「ルアナと一緒。ミズホ達について行って、アタシ自身の生き方を見つけるのもいいかなって思ったの」
ルアナ、フライヤ……。
私のことを、そんなふうに見てくれてたんだ。
(……なんか、めちゃくちゃ照れる)
さっきまで「チーム名どうしよう」とか「キャッツってどうなの」みたいなノリだったのに、急に大事な場面が来るじゃん。
気持ちが追いつかなくて、私は一回、喉の奥で息を飲み込んだ。
でも——嬉しい。
言葉にすると軽くなりそうなくらい、嬉しい。
二人が入ってくれたら、心強いなんてもんじゃない。
剣と槍がある。戦いの現場を知ってる二人がいる。何より、自分の意志で“ここから”を選んだ二人がいる。
私は頬をかくふりをして、ごまかしながら言った。
「……嬉しいよ。二人が入ってくれたら、ほんと心強い。いいよね、エリー?」
エリーは、私の横で静かに頷いた。いつもの落ち着いた笑み。だけど、その目はちゃんと熱がある。
「ええ。私も賛成よ。よろしく、二人とも」
その瞬間、胸の中で何かが“カチッ”と音を立ててはまった気がした。
迷子のまま歩いてた道に、仲間が増えて、道が“旅”になった感じ。
「よし。じゃあ——」
私は自分に言い聞かせるみたいに、はっきり言う。
「ダークキャッツは、私とエリーと、ルアナとフライヤ。四人でスタートだね」
ルアナがニッと笑う。
「おう。よろしくな、隊長……って言った方がいいか?」
「やめて!それ恥ずかしい!」
反射でツッコんだら、フライヤまで小さく笑った。
その空気を、さらに明るくぶち抜いてきたのが——
「いや〜、いいもの見させてもらったわ〜」
ルーシーさんだ。さっきまで“潰すか”って目をしてた人とは思えないほど、満面の笑みで拍手までしてる。
「なんか私、感動しちゃった。ルアナちゃん、フライヤちゃんもダークキャッツの仲間入りってことね!おめでとう!」
「う、うん……ありがとう、ルーシーさん」
照れくさい。祝われるの、慣れてない。いや、嫌じゃない。むしろ、今はこの感じが救いだ。
旅に出てから、牢屋だの襲撃だの、ゾンビだの、魔物化だの。
気を抜いたら、暗い方へ引っ張られそうな出来事ばかりだった。
でも今だけは、ちゃんと“前に進んでる”って思える。
手を伸ばしたら届く場所に、仲間がいるって思える。
……それに。
(たぶん、ここからが本当のスタートなんだよね)
ホーリーライトは、まだ終わってない。
クレードも逃げたまま。
地下牢のことだって、放っておけるはずがない。
だけど、もう一人じゃない。
私は胸の奥で、もう一度小さく誓った。
闇に飲まれない。
闇を、“守るため”に使う。
そして——この四人で、ちゃんと答えを見つける。
「……よし。改めて、よろしくね。ダークキャッツ」




