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篠崎ミズホの冒険 クロと闇の冒険物語  作者: 旅立 マス
第5章 少女達の信じる道
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第58話 ミズホと覚悟を決めた戦い

レオンさん、カインさん。

……まだ面影は残っている。でも、もう“人”じゃない。目の奥にあったはずの光が消えて、動きだけが、あの二人のまま残っている。


私はクロを見る。たぶん私の考えはバレてる。

「無理ニャ。あの二人は、完全に魔物になっちゃってるニャ」

……そっか。


胸の奥がきゅっと縮む。助けられる道があるなら、どんな無茶でもしたかった。でも無い。

だったら――せめて、苦しまないように。これ以上誰かを傷つけないように。

それが、今の私にできる“責任”だ。


「ミズホ、覚悟を決めるニャ」

「……分かった。やるよ。私」


覚悟を決めた。

あの二人を止めて、私たちは先へ進む。


魔物化したレオンさんとカインさんが、一斉にこちらへ突っ込んできた。

動きは単純。読みやすい。勝てない相手じゃ――


……と思った瞬間、カインさんの姿が消えた。


背後!?

私は反射で防御魔法を張る。空気が裂ける音。ぎりっと魔力の膜が震えた。


「人間のときの強さが残ってるってこと!?」

「ええ」フライヤが歯を食いしばる。「レオンとカインは、一人ひとりの攻撃自体は単純。でも、二人で連携すると力を発揮するスキルがあるの。アタシでも、コンビだと苦戦した……」


それが、魔物になっても発動する。最悪だ。

守るだけで精一杯。防御に回った瞬間、主導権は相手に渡る。


「ミズホ……まだ躊躇してる感じがあるニャ」

クロの声が刺さる。

躊躇? 覚悟は決めたはずなのに。なのに――手が、ほんの少しだけ遅い。魔法の出が鈍い。


この感じは……。


その瞬間、カインさんが目の前に現れた。

「うわっ!?」

避けきれない。腹に重い一撃。息が潰れて、視界が白く跳ねる。


「ミズホ!」

エリーの声が揺れる。

「いったた……油断したわね」


……ほんとに油断?

私は攻撃魔法を放っている。いつも通りのはず。なのに倒れない。クロが言った“躊躇”――それが、私の火力を、決定打を、どこかで避けさせてる。


「くっ……これだけ攻撃してるのに、なんで倒れないの!?」

地下のゾンビより、何倍も強い。

学園の中では敵なし、みたいな気分でいたけど、外の世界はそんな甘い場所じゃない。私より強い人も、私より残酷な現実も、普通にある。いやでも思い知らされる。


このコンビネーションを崩さないと勝てない。

そう考えたとき――


「ミズホ!」

「フライヤ?」

フライヤがまっすぐ、私を見た。

「……もういい。本気出しても」


本気。

クロが言ってた。“まだ躊躇してる”って。

……そうだね。認める。


覚悟を決めたと言いながら、私はどこかで「助けられるかも」って可能性を拾ってた。ほんの少しでも、人のまま戻せる道があるんじゃないかって。

でも、その甘さのせいで私が負けたら――エリーも、ルアナも、フライヤも、守れない。


そっちのほうが、よっぽど嫌だ。


(ごめんね。……でも、ここで止める)


迷いが晴れる。視界がクリアになる。

二人がまた突っ込んでくる。さっきより動きがはっきり見える。読める。いける。


「――!?」

レオンさんとカインさんが、攻撃を当てた“はず”の感覚がなくて、一瞬戸惑った。防御の膜じゃない。体捌きと間合いで、すり抜けた。


「よし、今だ!」


私は拳に魔力を集める。闇が、熱を持って掌に渦を巻く。

ここは敵の施設。壊れてもいい。いや、壊れるくらいじゃないと止まらない。


「行くよ――奥義! 闇魔道波!」


圧縮した闇の波動が、まっすぐ二人を貫いた。衝撃が空気を叩き割り、床の砂埃が舞う。

レオンさんとカインさんは、抵抗する間もなく吹き飛び――壁に叩きつけられ、地面に転がった。


……静寂。


「……これで、私の勝ち」


胸が痛い。勝ったのに、全然嬉しくない。

でも――止められた。私たちは、先へ進める。

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