第50話 エリーとミズホのルアナ救出作戦
「さて、ミズホちゃんとエリンちゃんにはここに来て早々だけど、依頼があるわ。ルアナちゃんを救出してほしいの」
ルーシーさんの一言に、部屋の空気が一気に張り詰めた。
その隣で、ミズホが目を輝かせて勢いよく身を乗り出す。
「え?マジ?ギルド公認?」
この子は本当に……どんなときでも前向きね。
でも、私はすぐに現実的な懸念が頭をよぎった。
「けど、ルーシーさん。そんなことをしたら、ホーリーライトと敵対になってしまうんじゃ……?」
ギルドは誰でも受け入れる“中立”の象徴。その立場を崩すことは、私には到底、軽い決断とは思えなかった。
普通のギルドなら、軽々しく口にできることじゃない。
「いい?今回のルアナちゃんの件は明らかにやりすぎよ。人道的にも問題ありよ。そんなのを見過ごすほど、私は甘くないの!」
ルーシーさんの言葉は、正面から炎を浴びせるようにまっすぐだった。
その勢いに押されるように、ミズホは「流石、ルーシーの姉御!」と笑う。
……本当にこの二人、妙に気が合っている気がする。
「そういうわけで、はい、これ!」
ルーシーさんがテーブルに広げたのは街の地図だった。
赤い印がつけられた場所――北西の駐屯地。
「ルアナちゃんが囚われてるとしたら、ここね。ホーリーライトの兵士たちが詰めてる場所」
確かに、連行されたのならそこが最も自然な場所。
でも、問題は――。
「どうやって入るの?」
私が問うと、ルーシーさんは迷いもなく答えた。
「え?もちろん正面突破よ?」
……この人、本気だ。
ホーリーライト相手に、正面から突っ込むつもりらしい。
「当たり前じゃない。ギルドのメンバーを不当に捕まえたんだもの。敵対行為を仕掛けてきたのは向こうよ!」
「え?ルアナって、ギルドの人だったの?」
ミズホが驚いて首をかしげる。
「ええ。街の人たちを助けていたから、ギルドのライセンスを渡していたの。もちろんホーリーライトにも、無教徒の人たちにも秘密よ。まさかバックにギルドがいるなんて思ってないでしょうね」
その瞬間、私の背筋に電流が走った。
ルアナさんが――ギルドの一員だった?
つまり、彼女の活動は公認のもの。
なのに、ホーリーライトはそれを知らずに“異端”として捕らえたということ?
「でも……ギルドがそんなことして大丈夫なの?」
私の疑問に、ルーシーさんは口元に笑みを浮かべた。
「何言ってるの。あいつら、街では迷惑な存在なのよ。今まで手を出せなかったのは戦力が足りなかっただけ。ルーサーさんの推薦するあなた達なら十分よ。今こそ、反撃のチャンスなの!」
……私たちが“戦力”として数えられている。
その言葉に、胸の奥が熱くなる。期待と重圧が同時に押し寄せてきた。
「え? 初対面の私たちを信じすぎじゃないですか?」
ミズホが冗談めかして言うと、ルーシーさんはニヤリと笑った。
「じゃあ、信じるに値する根拠を示すわ。――これを」
ルーシーさんは懐から二枚のカードを取り出した。
何の模様もない、ただの白いカード――のはずだった。
けれど手に取った瞬間、淡い光が浮かび、そこに文字と映像が現れた。
自分の顔写真、名前、そして――星の数。
「このカードはギルドの身分証明。魔力に反応して持ち主の情報を映す仕組みよ。あなた達のギルドレベルは1。けれど戦闘レベルは……星6つね。1人前よ」
「星6つ……!?」ミズホが目を丸くする。
「そう。一般的に、星5で熟練者、星7で“武器創生”ができるレベル。だから星6なら、もう一人前よ。年齢を考えたら相当優秀ね」
隣でミズホが得意げに胸を張った。
「でしょ? ほら、エリーだって強いし!」
「……あなたもね」私は苦笑を返した。
ルーシーさんが満足そうに頷く。
「ちなみに最高は13個。星7つを越えれば、自分の武器を生み出せるようになるわ。あなた達はまだ若いけど、戦場に出せる力があるってこと。信じる理由としては、十分でしょ?」
私の胸の奥に、何かが灯った。
ただの依頼じゃない。
信頼の証として託された――仲間の命を救うための任務。
ルーシーさんが静かに言葉を重ねた。
「というわけで、正式に依頼するわ。ルアナちゃんの救出を」
その言葉に、私とミズホは同時に頷いた。
ミズホは勢いよく「はい!」と返し、私は胸に手を当てる。
――これは試練。
どうなるか分からない。
けれど、必ず助け出してみせる。
光と闇が共に進む道の先に、きっと希望があると信じて。




