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第44話 ミズホと覚悟の大きさ

ルアナが住む村に来て、二日目の夜。

私たちは、村の宿屋を紹介してもらった。


「ここなら安心して休めるわよ」ってルアナが胸を張って言うものだから、正直ちょっと期待していたんだけど──その期待を裏切らないくらい、温かい宿屋だった。


宿屋のおばちゃんが作ってくれる料理は素朴なんだけど、味がしみててすごく美味しい。煮込みスープは体の芯から温まるし、焼きたてのパンはふわふわで、思わず何個もおかわりしちゃった。おばちゃんも気さくで、私やエリーの話を聞いてケラケラ笑ってくれる。気づいたら、ルアナも一緒になって笑ってて、なんだか“家族みたい”って思っちゃった。


そしてなにより──

この異界に来てから、初めて“ふかふかのベッド”で眠れそうだってことが一番幸せだった。


「うぅ……しあわせぇ〜……」


ベッドに飛び込んで、布団に顔を埋めた瞬間、思わず声がもれた。だって、一日目なんて牢屋の床の上だったんだよ!? 石の床に、硬いわら。寝返りを打つたびにゴリゴリ背中に刺さって……。あれを“寝る”って呼んでいいのか、今でも疑問なくらい。


だからこそ、今こうしてシャバの空気を胸いっぱいに吸えるのが嬉しくてたまらなかった。


「全く、十七歳の年頃の女の子が“シャバ最高”なんて言うものじゃないわ」

呆れ顔のエリーが、冷静にツッコミを入れてくる。


「いやいや、言いたくもなるってば! 一度牢屋で寝てみたらわかるから!」

「……絶対に遠慮するわ」


そんなやり取りに、また笑いが込み上げてくる。うん、こういうのも悪くない。いや、牢屋は二度とごめんだけど!


──こうして夜を過ごしながら、私はふと考えてしまう。

これから私たちの旅はどこに向かうんだろう? 本当に“濃い冒険の始まり”って感じだよね。


ホーリーライトの連中の襲撃以来、どうしてもルアナたちのことが気になってしまう。彼女たちは堂々と無教徒であることを誇り、自分の信じる道を真っ直ぐに進んでいる。その姿はまぶしくて、ちょっと羨ましいくらいだ。


でも、胸の奥にチクリと刺さる思いもある。


「……なんだろう。ルアナたちって、自分の道のためなら命さえ惜しまない覚悟があるんだよね」


ぽつりと呟いたら、エリーがこちらを見て首をかしげた。

「ミズホ、顔に出てるわよ。ほっとけないんでしょ?」


「まあね……。彼女たちのこと、すごいなって思うけど……。同時に、ちょっと怖いの」


ルアナの強さを見て、私も自分に問いかけてしまう。

私はどのくらいの覚悟を持っているんだろう?


クロと交わした約束──“闇の役割を見つける”って決意してこの旅を選んだ。けれど、いざ考えると、自分の覚悟の大きさなんて、まだ測れない。私なんて、まだまだ子どもなのかもしれない。


そんな私の考えを見透かしたみたいに、エリーが柔らかく微笑んで言った。

「大丈夫よ。ミズホはミズホの道を見つければいいの。焦って答えを出そうとすると、かえってつまずくものだから」


その言葉に、胸の中のもやもやが少しだけ晴れた気がした。


そうだよね。せっかく学園を飛び出して、こうして旅をしているんだ。焦らなくてもいい。歩きながら、少しずつ見つけていけばいいんだ。


「ありがとう、エリー」


ほんと、こんなに理解のある親友がいてくれてよかった。もしエリーがいなかったら、私はきっと、とっくに心が折れていたに違いない。


宿屋のランプが小さく揺れて、窓の外では星が瞬いている。

この旅の先に何が待っているのか、まだ誰も知らない。

でも、今はこの瞬間を大事にしながら、少しずつ前へ進んでいきたい。


そう思いながら、私はベッドに身を沈めた。

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