第2話 ミズホとエリー。仲良しコンビの会話
生徒指導室を出た途端、見慣れたふたりの姿が目に飛び込んできた。
「ミズホ、大丈夫?」
声をかけてきたのは、私のルームメイトで親友のエリー。
実は、彼女、知る人ぞ知るとんでもないいいところの令嬢。どうしてそんな子と親友になったのかって? ふふ、その話はまた今度。語れば長いわよ?
「ミズホ先輩……本当に、大丈夫ですか?」
もうひとりは、後輩のサチちゃん。控えめで真面目な子で、エリーのことをとても慕っている。
「私は平気よ。それより、サチちゃんこそ大丈夫だった?」
あの男子生徒……サチちゃんにちょっかい出してた最低なやつを、私が軽く(ちょっと派手に)ぶっ飛ばしたわけだけど。
「……ミズホ、また無茶したでしょ」
「うん、今度は気をつける」
「今度が無いようにって言ってるの」
エリーのその目。完全に信じてないわね? まあ、認めるよ。私がやらかすの、一度や二度じゃないもんね……。
「でもさ、アマンダ先生には全部バレてた。全部お見通しって感じだったわね」
「アマンダ先生ってすごいんですね……」
「今回の罰は、図書館の本の整理だってさ」
「すみません……私のせいで、先輩が……」
サチちゃんがしょんぼりと下を向く。ああもう、この子、ほんとにいい子。
「気にしないで。あれは明らかに向こうが悪い。私はただ正しいことをしただけよ」
「……けど、暴走するのはやめてね? 私の時もそうだったし」
エリーの言葉に、ふと昔を思い出す。彼女とまだ仲良くなる前、同じように嫌な男子に絡まれてて――私、そいつもぶっ飛ばしたんだったっけ。成長してないな、私。
「まあまあ、サチちゃんが無事ならそれでいいの。今度同じことがあったら、私みたいにやってみなさい」
「だからそれを教え込まないの!」
「先輩方って、ほんと仲良しですよね……」
「でしょ? 尊敬してくれてもいいのよ?」
「えっと、それは……」
あ、目を逸らした。
……地味に、傷つく。
「でもでも、ミズホ先輩って、主席ですごいし、実技もトップクラスで……私、ほんとに尊敬してます!」
「ふふっ、ありがと。よーし、撫でちゃうぞ〜」
サチちゃんの頭を優しく撫でる。こういう素直な子、癒されるわぁ……。
「じゃ、私は図書館に行ってくるわね。ふたりとも、またね〜!」
手を振って歩き出す。
さっきからのやりとりからわかるように、周囲の評価はだいたいこんな感じ。
「主席であることはすごい」けど、それ以外は……「ちょっとアレ」ってね。
でも、私は気にしない。私は私。自分の信じるやり方で生きるだけ。
さて、思ったより時間を使っちゃったな。図書館、急がなきゃ。