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篠崎ミズホの冒険 クロと闇の冒険物語  作者: 旅立 マス
第2章 立場を超えた友情物語
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第28話 エリーと守るべき親友

薬品盗難事件から、ひと月ほどが経った。


あの夜、噴水のまわりで植物がすべて枯れていた光景は、今でもはっきり思い出せる。世界が冷たく色を失ったようだった。


けれど、その後は何事もなかったように、日々は過ぎていった。表面上は、何も起きていないかのように。


──ただ、時間が意外な形で答えを運んできた。


「匿名の通報」によって、学園とは関係のない企業の研究所が摘発された。そこでは、噴水広場で使用された薬品とまったく同じ成分の毒薬が密かに開発されていたという。


つまり、あの事件の真犯人は、学園外の毒薬研究機関。彼らの目的は、魔法学園の評判を落とすこと──それが狙いだったらしい。


私たちの学園が、実験材料のように扱われていたなんて。


でも、事件は一応の解決を見た。

多くの人が、胸をなでおろしていた。


……ただひとりを除いて。


「うー……私が犯人を突き止めるはずだったのに……。誰よ、勝手に通報なんてしてさ……!」


犯人が捕まったというのに、ミズホはまるで納得がいっていないようだった。


「ま、まあ……結果的には解決したんだし、いいんじゃない?ね?」


そう言ってみても、彼女の唇はまだ不満げに尖っている。


──きっと、自分の力で成し遂げたかったのだろう。彼女はそういう子だ。どんなことでも、自分で立ち向かい、自分で掴みたいと思っている。


「そうだ!エリー、今日、いつものカフェで新作のスイーツが出るらしいよ!行こう、行こうよ!」


「え、今から? 授業はどうしたの?」


「……うぇい。」


仕方ない子。ほんとに。


でも、こうしてまた笑い合える日常が戻ってきたことが、私は嬉しかった。


学園内では、いつの間にか私たちは「ミズホ&エリン」と呼ばれるようになっていた。

成績上位の王女様と、風紀を乱しまくる(けど主席の)問題児の名コンビ。

私たち自身は自覚してなかったけれど、どうやら周囲からは、ちょっとした名物らしい。


事件をきっかけに、ミズホと私の友情は一層深まった。

彼女は、誰よりも自由で、正直で、私を“エリン様”ではなく、ただの「エリン」として扱ってくれる。そんな友達は、今まで一人もいなかった。


彼女がいてくれて、本当に良かったと思う。


──そして、話は「現在」へと戻る。


今振り返ってみれば、あの通報があったのも、偶然ではないように思えてきた。


もしかしたら、あの企業自体が、異界──この世界ではない場所の存在とつながっていたのかもしれない。あるいは、通報者もまた、異界の住人だったのかもしれない。


なぜなら、この学園には“闇の精霊”が存在しているのだから。


それを探る者。それを保護する者。あるいは、利用しようとする者……。

表には出ていないだけで、水面下ではいろんな思惑がうごめいているのかもしれない。


そして──ミズホは、その“闇の精霊”と、契約した。


クロ。彼女が名付けたその精霊は、小さくて黒くて、気まぐれで、どこか憎めない存在だった。


最初にそれを知ったとき、私は動揺した。


闇の力。それは、この世界では一般には忌避される存在。過去の歴史でも、多くの悲劇の元となってきたから。


でも。


ミズホがクロと心を通わせ、真正面から向き合い、そして選んだその力は、たしかに“光”を内包していた。


彼女は変わらなかった。おちゃらけてて、ちょっと暴走気味で、人を助けずにはいられない優しいミズホのままだった。


──私は、彼女が“クロ”と契約して本当に良かったと思っている。


彼女じゃなければ、あの力に呑まれていたかもしれない。


でも、ミズホならきっと大丈夫。

闇に染まるのではなく、それすらも味方に変えてしまうような子だから。


ただ──それでも私は思う。


私たちが今まで経験したどんな出来事よりも、これからの未来の方が、ずっと困難で、複雑で、恐ろしいかもしれないと。


でも、どんなに困難な道だとしても。

私は、ミズホのそばにいようと思う。


王女である前に、

「親友」として──彼女の力になりたい。


私たちの日常は、きっともう、昨日と同じではいられない。


けれど、どんな未来になろうと。


私は、あの自由で強くて、まっすぐな彼女の隣で、同じ景色を見ていたいと、心から思っている。

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