触れた手。
嫉妬?
自己嫌悪?
きっとそういった感情が入り混じった、そんな表情をしていたはず。
あまりみられて嬉しい顔じゃ無いけど、それでもこうやって心配そうな瞳を向けるユリアス様に、無碍になんでも無いですとかそんな言葉は言いたくなくて。
「ごめんなさい。ちょっと考え事をしてしまってて……」
「深刻そうな顔に見えたからね、気になってしまった」
「すみません……」
「いや、君が謝ることじゃないよ。私はできれば君には笑顔でいてほしいなって思っているだけさ。人にはいろいろあるし私の勝手な押し付けかもしれないからあんまり気にしないでほしいな」
「ありがとう……ございます……」
本当に、純粋に、彼がこう思ってくれているのがわかる。
笑顔、かぁ。
確かにお仕事の時には思いっきり笑顔を振りまいている。お仕事が楽しいって思ってるのは本当。だけどそれ以上に意識して笑顔になってる部分もあって。
ちょっと気が引ける。
わたくしの笑顔は本当に本物の笑顔なんだろうかって、そんなふうにも思ってしまう。
それでも。
この目の前の彼がわたくしに向けてくれている笑顔は本物なのだろう。
そっちの方が眩しく見える。
ジュリウス様からはこんな笑顔向けられたことがなかったのに、なんだか重なって見えるのも。
「お待たせいたしました」
ウエイトレスさんがお盆にのせてドリンクとアイスクリンを運んできた。
温かい飲み物と冷たいシャーベットの組み合わせはおかしいと思う人もいるけれど、わたくしは好きだ。ほんのり甘いロイヤルミルクティーと、あっさり甘く冷たいアイスクリン。
少しずつ口にすると、とっても幸せな気分になる。
「これは、うまいね」
ユリアス様がこちらをみて、微笑んでいる。
ああ。うん。すごくいい人だというのはわかる。
でも。
あまりにも彼がジュリウス様と似て見えるせいで、心の奥がちょっと痛い。
ジュリウス様に愛されなかった自分が思い出されて辛くなる。
「お気に召していただけて嬉しいです」
そう、当たり障りのない返事をしておく。
どうせ、今この時限り。
わたくしはこの人に正体を明かすつもりもないし、これ以上深く知り合うつもりもなかった。
さすがに後一年で離縁される身だとしても。だからと言って他の誰かを好きになるつもりにもなれなくて。
アイスクリンを食べながら当たり障りのない会話を投げてくるユリアス様。
わたくしも、それに合わせなるべく失礼にならないように気をつけて会話を続けていた。
そうこうするうちにアイスクリンを食べ終え飲み物も飲み干したわたくしたちは、どちらともなく席を立った。
ユリアス様は最初に言った約束通りスマートに会計を済ませ。
「さあ、行こうか」
と、わたくしをスムーズにエスコートしてくれる。
触れた手がとても温かかった。




