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第三話『推理と撮影』

放課後、喫茶店、扉をくぐればそこは、探偵への入口だ。


気づかぬうちに探偵倶楽部が出来上がっていく。

新しく調査担当として加わった立花カイは、ユミと同じく張り切っているようだ。

そんなある日のこと。

「ごめんください!」

喫茶店の扉が勢いよく開いた。

茶髪で大きなリボンをつけたポニーテール、若干の猫目がスバルたちを捉える。

アスカ(あすか)!? なんでお前がここに……」

カイが驚いた様子で、店に入ってきた少女に声を掛けた。

「知り合いか?」

「一応、幼馴染」

「言い方ひどい! てか、カイこそここで何してるの?」

カイはアスカに事情を説明する。

スバルが認めたわけではない。

ここでやっとユミが口を開いた。

夕陽(ゆうひ)アスカさんですね」

ユミはスバルたちの中学校に通う一年生は全て名前と顔を覚えているという。

夕陽アスカ、今回この喫茶店に来た理由は、立派な依頼があるかららしい。

「この喫茶店に探偵さんがいるって聞いてきたんだけど、誰かな?」

「ああ、俺だよ」

夕陽は疑うような眼でスバルを見ている。

「ま、解決できるならいっか」

なんだか失礼な奴だ。

夕陽は依頼内容を話し始めた。


最近、近くの山に住む動物たちの撮影をしていた夕陽。

しかし、ある時から全く動物たちを見かけなくなったという。

近くを散策しても見当たらず、夕陽も心当たりがない。

何が起こっているのか調べてほしい。


というわけで、スバルは夕陽に提案する。

「依頼を受けるなら条件が一つだけある」

「お、お金なんて持ってないよ?」

「夕陽、お前も手伝うことだ」

夕陽は快く承諾。

早速作戦会議を開始した。

ユミはこの周辺の山についての情報を集める。

カイと夕陽は山に出向いて調査する。

「俺はその集めた情報をまとめて推理する。明日決行だ」

今日はひとまず解散した。


翌日、放課後、喫茶店にて。

ユミが調べた結果、SNS等で山登りの投稿を見つけた。

「猟銃会という投稿者が山に罠を仕掛け、動物を捕まえている可能性があります」

いかにもという感じだ。その動機まで分かればいいのだが。

カイと夕陽も同様に、山での足跡、罠の跡など様々な証拠を写真に収めてきた。

「麓には何もないけど、少し山奥に進むと罠がたくさん仕掛けてあった。捕まえているのは確定だろうな」

カイが眼鏡を拭きながら意見を言う。

「やっぱり動物たちは見つからなかったよ。使用済みの罠は何個か見つかったけど」

夕陽も写真を見せて一生懸命説明してくれている。

これだけ情報があれば十分だ。

「推理するまでもないか」

スバルはグラスに入ったアイスコーヒーを飲み干した。


猟銃会はこの近くの大学の山登りサークルらしい。

山に入っている時間帯は日中、平日も休日もお構いなしだ。

人数はおそらく三人、いつも同じメンバーだ。

動物が見当たらないということは、ほとんど捕らえた後だろう。急がなければ逃げられてしまう。

平日はもちろん、スバルたちは学校に行っている。

「今週の土曜日、四人で山登りといこうじゃないか」


山登り当日、スバルたちは案の定怪しい三人組を見た。

猟銃会の投稿写真に映った人相、服装は一致していた。

「あいつらで間違いないな、追いかけよう」

大学生たちは何か棒状のものを背負い山に入っていく。猟銃会というだけあってやけに本格的だ。

ある程度山奥まで来ると、大学生たちは茂みに隠れて動物たちを物色している。

スバルたちも茂みに隠れて様子を見ることに。

「俺が仕掛けてみる、その間にカイと夕陽は逃げ道を塞いでくれ」

「了解」

「ユミは周りに監視カメラと盗聴器を設置するんだ。そして、俺が合図をしたら警察を呼んでくれ」

「分かりました」

さあ、作戦開始だ。


「お兄さん、こんな所で何してるの?」

スバルは堂々と大学生の一人に話しかける。

「な、なんだよ、関係ねえだろ。それよりお前こそここで何してるんだ」

「俺は動物たちと遊びに来たんだよ、でも、最近見かけないんだよ。どうしちゃったのかなあ」

相手はごくりと息を吞む。

「そうか、それは災難だな。それより俺たちは今忙しいんだ、子供は帰れ帰れ」

「俺たち?」

しまったという顔が隠しきれていない相手。

「いやいや、なんでもない……」

「そっか、お兄さん以外にも『二人』いるんだっけ」

スバルもにやけがとまらない。もう隠しきれない様子の相手。

「なんだよ、それがどうした。何か俺たちが悪いことでもしたのか?」

「そんなこと聞くってことは悪いことしてる自覚あるみたいだね」

どんどん墓穴を掘る相手。

「うるせえ! ガキは黙ってろよ!」

「おっと、銃は人を殴る道具じゃないよ」

スバルは振り下ろされた銃をさっと避け、足で押さえつける。

「くっ、なんなんだよお前……!」

「この山での動物の捕獲、猟銃の使用が禁止なのはサイトにも書いてあるし、麓の看板にも書いてあることだよね?」

知らないはずがない、こいつらは自覚しているはずだ。

「……」

「『警察』、呼んじゃおっかなあ」

相手の顔が焦りに染まる。

「そ、それだけは」

「捕獲した動物たちはどうしたの?」

スバルは変わらず相手を見下ろし続ける。

「大学の研究室に、残りはそりゃ、おいしく……」

「……あっそ」

自然に押さえつける力が強くなる。本当、胸糞悪い。

「そ、それぐらいで怒んなよ、ガキはこれだからめんどくせえ」

「事の重要さも理解できない大学生だけにはなりたくないね」

この言葉が相手の地雷を踏んだらしい。

「いいから離せよ!」

「……!」

相手は銃を思いっきり上に押し上げ、スバルの足をどけた。そのはずみでスバルは尻もちをつく。

「警察なんてごめんだ、俺たちは帰らせてもらう。二度と来ねえから安心しろよ」

「そんな簡単に帰すわけないでしょ!」

隠れていた夕陽が大声をあげて出てきた。

「ちっ、仲間がいたのか」

「動物たちを返してよ!」

腰に手を当ててどんと構える夕陽。でも、よく見ると少し震えている。

「どけよ、痛い目にあわされたいのか?」

「ど、どうせ脅しでしょ?」

夕陽は涙目で相手を見つめている。

「邪魔なんだよ!」

「きゃあ!」

相手は右手の拳を大きく振り上げ、夕陽に殴りかかろうとする。

年下に、しかも女に手を出すなんて、男の風上にもおけない野郎だ。

スバルが助けようとしたその時。

「君! 何してるんだ!」

警察官のご登場、相手は驚いて動きを止めた。

茂みの向こうにいるカイがスバルにグッドサインをして、その隣にユミが立っていた。まあ、警察を呼んだのはユミだろう。

近くにいた残り二人の大学生も仲良く捕まっていた。

後は警察に任せることにした。


スバルたちはしばらく警察から事情聴取を受けた。

「はあ、やっと帰れるぞ」

カイは大きな背伸びをした。

「でも、解決してよかった! 動物たちも戻ってくるみたいだし!」

夕陽は動物たちの写真を眺めながら、とてもうれしそうにしている。

「喫茶店で結果をまとめないとですね」

ユミは相変わらず落ち着いている。

「私、これからも探偵のお仕事したい!」

「は、はあ?」

スバルは耳を疑った。なぜそうなる。

「仲間が一人増えるってことか、よかったなスバル」

「いや、俺は何も……」

勝手に話を進めるんじゃない。

「楽しみですね、スバルさん」

「ユミまで……」

なんともおめでたい仲間たちだ。

こうして探偵倶楽部に『夕陽アスカ』が撮影担当として加わった。

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