89 シャトロワ王国第一王子の結婚式
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閉ざされた町に続く山道の入り口付近に立ち並ぶ野営用のテント。
ここでは常時、シャトロワ王国の騎士団が見張りを続けていた。
寝静まる時間帯の深夜でも、いくつもの焚火で明るく照らし、10人の見張りを立てて警戒をしていた。
そんな閉ざされた町の中に、黒ローブを羽織った複数の人物の姿があった。
彼らはいったいどこから入って来たのだろうか?
吹き付ける吹雪の中、枯れ木の森を進んで行く。
閉ざされた町、そこに町は存在しない。
この世界の北の果てにあるこの町は、常に雪に閉ざされており、人間が住むことが出来る環境ではない。
閉ざされた町の殆どは険しい雪山となっていて、山間部には枯れ木の森が広がっている。
そんな閉ざされた町に入るには、シャトロワ王国の北側にそびえる岩山の山道を通って行かなければならない。
その山道の入り口で、シャトロワ王国の騎士団が厳重に警戒をしている。
もちろん、山道を進んで行った閉ざされた町の入り口にも騎士が配置されているため、中に入ることは容易ではない。
この警戒態勢の中、黒ローブの人物達は閉ざされた町の中へと侵入した。
「この先か?」
「この森を抜けた先にある、切り立った雪山のどこかに封印されているはずだ」
「1ヵ月前に向かった者達が封印を発見したことは確かだ。だが、消息を絶ってしまった……彼らはいったい何処で消息を絶ってしまったのか」
「ここまでにそのような形跡はなかったからな。封印の場所で何かが起こったのだろう」
「封印を解除した後に魔王様の拠点となる城は?」
「着々と準備は整っているから心配するな」
「今度こそ、我らの悲願が叶う時が来たのだな」
「そうだ」
黒ローブ達を拒むように、枯れ木の森の吹雪は次第に吹き荒れていく。
視界が遮られ、足を止める黒ローブ達だったが、そこから引き返すという選択はなさそうだった。
―――――――
―――――
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「ミオは……船の上でも箒に乗るのか?」
「ヒールの威力が上がったとはいえ、箒の上の方が安心なので」
「船も箒も同じような乗り物なのだがなぁ」
「全然違いますよ!」
ミオと父親であるペリグレット国王は、シャトロワ王国に向かう船の上にいた。
エリアスの婚姻の儀に出席するための船旅だ。
明日の昼過ぎにはシャトロワ王国の港町に到着し、そこから王都までは馬車で1週間かかっての到着予定だ。
1週間?とんでもない移動日数だ。
ルグミアン王国からの帰りに立ち寄った時は箒での移動だったので、まさかそんなにかかるなんて思いもしなかったけれど……大きな王国なんだな、シャトロワ王国って。
護衛には、第二騎士団の団長と騎士数名が同行している。
護衛は騎士団が順番で行っているらしく、ミオがルシヨット魔導国に行った時に第一騎士団が同行したので、順番で今回は第二騎士団の同行なのだ。
ルグミアン王国には騎士団として同行していないため、カウントはされない。
ちなみに、ミオがこちらの世界に来た際に国王の外交に同行したのは、第三騎士団だったらしい。
今までは遠出するのにシャルルが同行してくれていたので、何となく落ち着かないミオ。
隣にシャルルがいるのが当たり前ではないことに、何だか寂しさを感じていた。
「って、シャルルさんは私だけの騎士じゃないのよ!何考えてんの私!」
ミオは頭を振って気持ちを切り替えると、海にリヴァイアサンを召喚してみた。
驚く船員や騎士達。
「おいおい嬢ちゃん!そんな魔物召喚して大丈夫なのか!?」
「とっても賢いんですよ?ほら」
リヴァイアサンはミオの真似をして、片手を上げたり体を回したりお辞儀をして見せると、最後にミオとハイタッチして見せた。
船の上で拍手と歓声が上がり、退屈な船旅に花を添えた。
予定通り翌日、昼食を食べた後にミオ達を乗せた船はシャトロワ王国の港へと到着した。
荷物を馬車へと積み込み、船長達に船のことを任せると、ミオと国王、エレーヌ、騎士達は馬車への乗り込んで王都へと向かった。
「この王国でももうすぐ収穫祭なんですね」
「そうだな。世界中で、この時期は収穫祭を行う国が多いのだよ」
「そうなんですね」
ここからが長い旅となる。
馬車で1週間の移動か……ミオにとって初めての馬車での長旅だ。
でも、そう考えると……ルグミアン王国から戻って来た時にエリアスが驚いて王宮の中から走って出て来たのにも納得がいくし、船に戻った時の船員達の驚き具合も理解できる。
それにしても、馬車での1週間の移動は予想以上に大変だった。
1ヵ月の船旅も退屈だけれど、1週間の馬車旅も退屈極まりない。
あちこちの町で、収穫祭に向けた飾り付けがされていたのがせめてもの救いだった。
でもさすがに、ヒールを使って馬車酔いは防げたけれど、揺れによるお尻の痛さは半端なく……ミオは殆ど箒で移動した。
何故、他の人達は平気な顔で馬車に乗れているんだ?
こうして馬車での移動最終日、今日は王宮へと向かうためミオはドレスを着せられており、箒での移動は出来ずに馬車に揺られていた。
「式は明日なんだし、ちょっとよそ行きの服とかじゃダメなんです?」
「そのドレスも、ちょっとよそ行きのドレスなのだがなぁ」
「ドレスなんてどれも同じに見えますよ……」
この世界の全国の王女様達は、よく文句も言わずドレスで毎日を過ごしているなぁ……ミオは、尊敬に値するなどと思いながら、小窓から外の風景を眺めた。
―――――――
―――――
―――
「長旅、お疲れ様でした」
本当に長旅だったよ……日暮れ前にようやく王宮へと到着したミオ達。
出迎えた騎士によって、ミオと父親はシャトロワ国王が待つ部屋へと案内された。
護衛の騎士やエレーヌ達は、馬車から荷物を降ろしてミオとペリグレット国王の部屋に運ぶと、騎士達は騎士団の宿舎、エレーヌはミオの隣の部屋へと案内され、それぞれ待機となった。
応接室として使用されている部屋には、いくつもの応接セットが設置されてあり、既に到着していた他の王国の国王や女王の姿があったけれど……あれ、王子様とか王女様って他にいなくないですか?
「よく来てくれた、エドワールよ。ミオ王女も、長旅疲れたであろう」
「招待状のおかげで、こうして娘と旅が出来る。感謝しておるぞ、コデルロス」
「お気遣いありがとうございます、シャトロワ国王様」
シャトロワ国王に促されて、父親と並んでソファーに座り、使用人が用意してくれた紅茶を頂く。
夕食まではまだ少し時間があるため、こうしてお茶会が開かれているらしい。
多くの王様や女王様の中にいると……とても緊張するのですが!?
ここは、父親がいれば良くないですか?
自分の部屋に戻りたい、そんな気持ちでいっぱいになるミオだった。
もしかして、夕食もこの緊張感の中で食べるのだろうか?ミオだけ宿舎の食堂で食べさせてもらえないだろうか?心の底からそう思ってしまった。
こうして、笑顔が引きつらないように気をつけながらミオが紅茶を飲んでいると、エリアスが部屋に入って来て、ミオの姿を見つけて歩み寄って来た。
「来ていたのか」
「ん?あ、エリアス様」
「エリアス王子、お邪魔させてもらっているよ」
「ペリグレット国王、ようこそおいでくださいました。ごゆっくりお寛ぎください」
「エリアス、晩餐会の方はどうなっている?」
「間もなく用意が整うようです」
「そうか。お前もここに座るといい」
「はい」
エリアスがミオの向かい側に座って……ミオをジーッと見つめた。
相変わらずガン見して来るな、この王子様……てゆーか、何なんだこの目力は!
「えーと……なんか変です?」
「いや」
「ご婚約者様はいらしてないんです?」
「当日に来るに決まっているだろう」
「あ、そういうものなんです?」
「そうだが……ペリグレット王国では違うのか?」
「私、結婚式とかよくわからないので……どうなんです?お父さん」
「いやぁ、私もカエデとは王宮で一緒に過ごしていたからなぁ……私以前の王族のことはよくわからんよ」
「そうなんですね」
元の世界でも結婚なんてしたことないし、友達もまだ結婚なんてしてなかったから正直よくわからない。
それにしても、王族の結婚式って大変そうだなと思う。
式は明日だというのに、前日からこうして各国の王様なんかを相手にしないといけないわけだし……晩餐会?普通に夕食じゃあダメなんですか?
もしも、自分が結婚するってなったらこんな感じなのかなと思うと、少し憂鬱な気分になるミオだった。
身内だけでこぢんまりと式を挙げたいなぁ……
晩餐会が終わるとようやく部屋へと案内された。
やっと寛げる……ミオは部屋に入るなりエレーヌにドレスを脱がせてもらい、部屋着に着替えてベッドに寝転がった。
偉い人達に囲まれるって、本当に疲れる。
「さ、お風呂探しに行こ―」
眠ってしまう前にお風呂に入らなくては。
ミオはベッドから起き上がると、お風呂の用意をして廊下に出た。
近くにいた使用人に案内してもらってお風呂に入り、部屋に戻るとあっという間に眠りに落ちたミオだった。
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