87 とりあえずは小康状態
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いよいよ最終章です!
「すみません、シャルルさん。なんか付き合わせてしまって……」
「別に構わないよ。王女の護衛も騎士の役目だからな」
「今は王女ではなくて魔導師ですよ」
「ふふ、そうか?」
ミオは今、魔王や光竜のことを氷竜に報告したところだ。
フェルドーまで1人で来ることはやっぱり許可がもらえず、カミーユに言われてシャルルが一緒に来ているのだ。
ミオが箒に乗せて移動出来るので、馬車は使わずに箒で来ている。
「水竜や氷竜、風竜は、普通に人間が立ち入ることが出来る場所だが、炎竜はどのようにして会っているんだ?」
「炎竜ですか?タルブ火山に入ってすぐの場所なので、そんなに難しくはないんですよ」
「タルブ火山は、立ち入ることが難しいのだがな」
「行ってみます?今から行くと、サンブリーに1泊か……深夜に王都に帰る感じになりますけど」
深夜に王都に戻るというのはさすがに許可が出来ないということで、サンブリーに1泊することになった。
カミーユにクリスタルで報告をしてサンブリーへと向かう。
移動しながら、現在サンブリーに派遣中のジェラリーに連絡をし、第三騎士団の宿舎だとまた激辛料理が出て来るので、夕食は町で食べて行くことにした。
こうして、夜に第三騎士団の宿舎に到着すると、少しずつ融け始めていたアイスブロックを新しいものに作り変えた。
特級魔導師のステッキを使ったアイスブロックは、今までよりも融けにくいと思うけれど……どうだろう?
「嬢ちゃん、その氷を街の中心にも作ってもらえないか?」
「街の中心ですか?いいですよ」
「さすがに暑くてな、街の皆にも涼める場所があったらいいんじゃないかと思っていたんだ」
「そうですよね。明日、タルブ火山に行く時に設置して行きますね」
「おぅ、助かるよ」
こうして翌日、ミオは街の中央にある広場にアイスブロックを設置してからタルブ火山へと向かった。
設置されたアイスブロックの周りには、さっそく人が集まって来ていたのが見えた。
街の人達が少しでも暑さをしのげたらいいなと思う。
タルブ火山の入り口に到着すると、ミオはホワイトアウトを使って自分とシャルルの周囲に冷気を漂わせた。
これで、準備は整った。
「なるほど、これでタルブ火山の暑さにも耐えられるというわけか」
「そうですよ。それじゃあ、行きましょうか。こっちです」
ミオは、インターホンが設置されてある火山の裏側に向かった。
入り口から入って、そんなには歩かない場所にインターホンは設置されてある。
ミオが立ち止まって、インターホンを指差しながらシャルルに笑顔を向けると、シャルルはキョトンとした顔で首を傾げた。
「これを押すとですね、炎竜が出て来てくれるんですよ」
「これを?」
「はい」
インターホンを押してしばらくすると、タルブ火山の火口から飛び出した炎竜が、ミオの前に姿を現した。
―――よぉ、久しぶりだなミオ
お久しぶりです
―――何だ?魔王の件なら氷竜に聞いてるぞ
あ、そうなんですね。光竜さんのことは?
―――光竜?あいつがどうしたんだ?
子供達によろしくと言っていましたよ
―――光竜に会ったのか?よく入れたな
私、結界すり抜けちゃうんですよね……てゆーか、まさか光竜さんの子供だったとは驚きましたよ
―――そんなに驚くことか?何だ、そんなことでわざわざ来たのか
まぁ、それもありますけど……元気かなと思って来てみただけですよ。あ、光竜さん呼びましょうか?親子のご対面的な感じで!
―――絶対に呼ぶな!そんなことで呼んだら、光竜がキレちまうぞ!
……そ、そうなんですね。やめときます
しばらく炎竜と話をして、ミオとシャルルはタルブ火山を後にして王都へと戻って行った……と言っても、話をしていたのはミオだけだけれど。
「それにしても、驚いたよ。まさかあんなふうに炎竜を呼び出すとはな」
「なんか、火口まで行くのは大変だって言って、母があれを設置したらしいですよ」
「凄い人だったのだな、カエデ様は」
確かに、インターホンなんてどうやって設置したんだろうと思う。
火口の中にどうやって音が鳴るようになっているんだ?
魔法の類なのだろうか?
ミオの母親がどのような魔法を使っていたのかはよくわからないけれど、魔法を使ってなかなか進まない王都の復興を終わらせたのだ、とんでもない魔導師だったということはわかる。
「まぁ、ミオもカエデ様に負けないくらい、凄い魔導師だがな」
「いやいや、私なんて母の足元にも及びませんよ」
「そんなことはないよ」
フェルドーとサンブリーを回って来て思うことは、見かける魔物達に特に異変はなかったなということ。
魔王の封印の解除は進んでいないと考えていいのだろうか?
氷竜も、警戒はした方が良いけれど、まだ危機的な状況になったわけではないと言っていたし……って、危機的な状況になったらマズいのでは?
それよりも、もしも魔王の封印が解除されてしまった場合には、船でシャトロワ王国に向かうよりも、氷竜に乗って閉ざされた町に向かった方が速いと言われたのには驚いた。
位置関係から見たら確かにそうかもしれない。
でも、氷竜に乗って移動となると……ミオ1人で向かうということになるのかと思ったら、竜1体に人間が3~4人くらいは乗れるらしい。
でも、フェルドーまですぐに移動できる人数は限られてしまうので、やっぱり大人数では向かえないことになる。
氷竜は、4体の竜で向かうから問題はないと言っていたけれど、4体が不在中に王国は狙われたりしないのか?という不安がないわけではない。
まぁ、でも、それが最善の方法だろう。
とりあえず、エリアスも閉ざされた町への出入りはないと言っていたし、何かあればクリスタルで知らせてくるはずだ。
今は何事も起こってはいないと信じるしかない。
「領主様達の所にも魔導師がいたら、クリスタルで連絡のやり取りが出来るんですけどね」
「まだ、魔導師の数は少ないからな」
「もしも、領主様達の所で上級の魔物とか出ても、すぐに連絡がもらえないと対処が遅れちゃいますよね……」
「定期的に騎士団が訪問するようにしないとだな。戻ったら各騎士団にも伝えよう」
この王国は、魔導師団はもちろんのこと、騎士団も決して人が潤っているとは言えない。
まぁ、小さな国だし、平和的な国だから、この人数でも問題はなかったのだけれど。
騎士団の訪問には魔導師も同行したいところだけれど……人が足りなすぎるな。
「ラウルさんがこっち来るって言ってましたけど……何人か魔導師連れて来てもらいましょうか?そうしたら、領主様達の所に魔導師が派遣出来ますよ」
「そうしてもらえると助かるが……ルシヨット魔導国も大変だろう?」
「ですよね……」
などと思っていたら、ラウルは魔導師を引き連れてくるつもりだったと言ってくれた。
それに……
「だってさー、さすがに魔導師不足すぎるもん、ペリグレット王国ってさ。魔王の封印解かれちゃったら、対処できるのって下手したらミオちゃんだけになっちゃうんじゃない?まぁ、師団長とか副師団長もそれなりだけどさー」
なんて、辛辣な意見を貰ってしまった。
……ごもっともな意見です。
アリスのように、魔力持ってて自力で訓練してる子もっといないかな……ペリグレット王国の全部の町や村を回って来ようかと、本気で考えてしまうミオだった。
―――――――
―――――
―――
「はぁ?」
「だから、もしも魔王の封印が解かれた場合は、私は氷竜に乗って向かいますね。それと、ヴィクシスさんは一緒に来て欲しいです」
ミオは、氷竜に言われたことをカミーユに伝えたけれど、なかなか納得はしてもらえなさそうだった。
「氷竜は、4体で向かうと言っていて、1体に3~4人乗れるとは言ってましたけど……フェルドーまですぐに移動できる人数って限られてしまうので、やっぱり少人数で先に乗り込む感じですかね?あ、風竜は乗せてもらうの難しいかもです」
「……竜に乗るとか簡単に言うがなぁ」
「でも、船で向かってたら何日もかかっちゃうじゃないですか。封印が解かれたら一刻を争う状況になると思うんですよ。だったら、氷竜が言うように、雪原から向かうのがベストなんじゃないかと思います」
「確かにそうだが……」
「水竜なら喜んで乗せてくれるんで、練習は出来ますよ。それに、たぶん水竜が一番乗りこなすのが難しいと思うので、アレに乗れたら他の竜に乗るのはそこまで大変ではないと思います」
「……少し考えさせろ」
ミオも、竜を4体連れて行ってしまうことには不安はある。
でもやっぱり、封印が解かれてしまったらすぐにでも向かいたい。
「それとですね、師団長」
「まだ何かあるのか?」
「私、頭に思い描いた魔法陣が描けるらしいんですよ」
「はぁ?」
「なので、召喚魔法を使って魔物との戦闘訓練が出来ますよ!まだ、光竜しか召喚できませんけど……魔物との契約方法を教えてください」
「俺は召喚士じゃないんだ、無理に決まってるだろ」
「えー、師団長なのにですか?」
「師団長なのにってのはどういう意味だ?召喚魔法についてはラウルにでも教えてもらえ」
「そっか、ラウルさんに教えてもらうのが早かったですね」
きっと図書室に行って調べても、ミオには理解できないだろう。
ここは、ラウルの力を借りることにしよう。
というわけで、クリスタルを取り出してラウルに連絡をしてみる。
驚くことに、ラウルは船の上だった。
「え、もうこっちに向かってるの?」
「そうだよー。だってさぁ、早くミオちゃんに会いたいじゃん?」
「動悸が不純な気が……」
「そんなことはないよっ!で、何?」
「あ、そうだった。召喚術で呼び出す魔物との契約方法を教えて欲しいなと思って」
「もしかして、ミオちゃん魔法陣描けるようになったの?」
「ううん、描けないよ。でも、頭で思い浮かべるだけで魔法陣は描けるらしいよ」
「それは特級でも上位の魔法で……って、え!?ミオちゃん出来るの!?」
「うん」
「ズルい!」
「いやいや、ズルいって……とにかく、そういうことなの。ラウルさんがいなくなってから、魔物との戦闘訓練出来なくてさ。私、召喚できるの光竜だけだし……他の魔物の召喚の方法がわかんないんだよ。召喚魔法って、魔物との契約だよね?」
「まぁ、そうなんだけど。遭遇した魔物と契約でもいいけど、別に魔物を探しに行かなくても出来るよ」
ラウルの説明だと、魔法陣によって魔物を呼び出すと、その魔導師の能力によって魔物が呼び出しに応じ、それから契約を結ぶらしい。
呼び出しにさえ応じれば契約は簡単で、魔光を浴びさせれば契約完了なのだそうだ。
ごく稀に、呼び出しに応じたにも関わらず、魔光を拒否る魔物もいるらしいが……どういう理由で拒否られるのかを知りたい!
上級の魔物になる程、呼び出しに応じる確率が下がり、契約するのが難しくなる。
「ミオちゃんなら、契約できない魔物はいなさそうだけどね」
「リヴァイアサンとかも?」
「まぁ、そうだけどさ……リヴァイアサン召喚して何するの?」
「観賞」
「それだけ!?」
「うん」
今度、オルレーヌの港に行ってリヴァイアサンと契約を結ぼうと心に決めたミオだった。
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