86 繋がりがもたらした情報
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魔王について、書庫で調べる必要がなくなったミオ達は、翌日には帰国の途につくことにした。
ペリグレット国王への報告は早い方がいいだろう。
「国王様にもよろしくお伝えください」
「世界樹のことも含めてお伝えしておきますよ。国王も驚かれることでしょう」
「また今度、ゆっくりと訪問させていただきたいと思います」
「お待ちしております」
神官達に礼を言って、ミオ達はルグミアン王国を後にした。
今度は、王都以外の町も巡ってみたいなと思う。
箒で移動しながら、ミオはクリスタルを取り出してラウルに報告した。
「え、ミオちゃん世界樹の結界の中に入れたの!?マジで!?」
「うん。それで、光竜と話して来たよ」
「ミオちゃんって、魔導師じゃなくて神様なんじゃないの?」
「そんなわけないじゃん」
ミオはケラケラと笑っていたけれど、シャルルとカミーユも内心でそんなことを思ってみたりしていたことは……秘密だ。
「魔王の封印が解かれてからだと間に合わないから、準備が整ったら俺もそっちに行くね!」
「え、だっていつ封印が解かれるかわかんないよ?解かれないかもしれないし……国王様が国から離れっぱなしってマズいんじゃ」
「あー、それなら大丈夫だよ、ユニオールの王様にルシヨットのこと頼んでくから」
「そんな簡単に……」
「心配しなくても大丈夫だって」
「うーん……転移魔法は?それが出来たら問題解決じゃん」
「それはまだ無理!ホント、難しいんだからね?」
「うん、知ってる」
「とにかく、そのうちまた魔導師団に入れてもらうから、よろしくー」
「別に魔導師団に入らなくても、王様として来ればいいじゃん」
「魔導師団に入りたいの!じゃ、そういうことで!」
ラウルとの通信を終えて、ミオはカミーユに視線を向けた。
「だそうですよ、師団長」
「ったく、自由な奴らめ」
「奴らって……ラウルさんだけですよ?」
「どうせ、コルトとディナールも連れて来るだろうが。それに、お前も入ってるからな」
「何で私も!?」
驚くミオの後ろで、シャルルがおかしそうに笑っていた。
何がそんなにおかしいんですか?
ルグミアン王国に来る時に通った国を、逆向きに通って行き、ミオ達はシャトロワ王国を目指す。
行きと帰りとでは、帰りの方が時間の流れが早く感じるのはどの世界でも共通のようで……って、これってミオだけが感じていることか?
あっという間にシャトロワ王国へと戻って来た。
港へは向かわずに、エリアスが待つ王宮へと向かい、王宮の門番に名乗って事情を説明すると、報告を受けたエリアスが走って出て来た。
そんなに待たせてました?
「もうルグミアン王国に行って来たのか!?」
「そうですよ?」
「どれ程飛ばして行ったんだ、お前は」
「普通に飛んだだけですよ」
どうやら、待たせてしまったのではなく、あまりにもの早い到着に驚いて出て来たようだ。
エリアスがミオ達3人を、応接室へと案内する。
応接室で出された紅茶を飲みながら待っていると、国王を連れてエリアスが入って来た。
いやいや、国王様まで呼んで来なくても……なんて思ったけれど、魔王の封印場所はシャトロワ王国に近い場所だし、国王も聞いておいた方が良い話か。
ミオがルグミアン王国でのことを報告すると、シャトロワ国王もエリアスもラウルと同じような反応で、ちょっと笑ってしまいそうだった。
「何か、怪しい人とかっていないんです?」
「私が王国に戻ってからは、四六時中閉ざされた町の入り口に騎士を配置しているが、今のところそういった報告はない」
「そうですか。魔王の封印が解かれてしまうと命がけの戦いになるようなので、出来れば封印を解かれる前に何とかしたいんですけど……」
「それは、この世界全体がそう思っている」
「ですよね」
とにかく、今は閉ざされた町への出入りを厳重に警戒して、怪しい人物を見つけることが先決だろう。
もしも封印が解かれてしまったら……その時は覚悟を決めて戦うしかない。
そうならないことを祈りたいけれど。
「今日はここに滞在して行くのか?」
「いえ、帰りますよ。早く報告したいですし」
「……そうか」
エリアスの顔が、とても残念そうな顔に見えたのは気のせいだろうか?
「結婚式は予定通りなんですよね?」
「結婚式?……あぁ、婚姻の儀か。予定通りだ」
「だったら、その時に王都の観光もしながら滞在させていただくので」
「そうか。私が案内してやろう」
「え、忙しいのでは?」
「問題ない」
「それじゃあ、私達は船に戻りますね」
「昼食くらいは食べて行っても良いだろう?美味い店があるから、案内しよう」
「いいんですか?」
「当たり前だ」
こうして、エリアスの案内で王都の料理店で昼食を食べ、ミオ達は港へと戻って行った。
少しだけ王都を見て感じたことは、武器屋や防具屋がとても多いなということだ。
そのため、港町に比べると厳つい人も多いように感じる。
この王国には腕の良い職人が多く、とても性能の良い武器や防具を揃えることが出来るらしい。
武装国家って、そういうことなのだろうか?
―――――――
―――――
―――
「えーっ!?もうルグミアン王国に行って来られたんですか!?」
船に戻って来たミオ達の姿を見つけた船員が、慌てて駆け寄って来るととても驚いていた。
箒で向かったので、馬車よりは早いとは思っていたけれど、まさかここまで早いとは思っていなかったらしい。
船員が、港町へと出かけた皆を探しに行き、船に残っていた船長や船員達も慌ただしく動き始めた。
何だか申し訳ない……って、連絡手段がないのが悪い。
魔導師以外でもクリスタルが使えるようにならないだろうか?
転移魔法の次は、クリスタルのことをラウルにお願いしようと思うミオだった。
ミオ達が港に到着したのは夜になってしまったけれど、船はいつでも出発できる状態になっていたので、全員が船に戻るとすぐに出発となった。
オルレーヌの港に着くのは、明後日の夜明け前くらいになるらしい。
船の上で箒に乗りながら、ミオはジェラリーに連絡してみた。
クリスタルの上に、何だかやつれた顔のジェラリーが映し出されて苦笑いする。
「ジェラリーさん、大丈夫です?」
「大丈夫じゃない」
「あはは……」
「あの2人、何であんなに仲が悪いんだ?それとアリス、あいつは何であんなに態度がでかいんだ?口は悪いしさぁ……」
「む、難しいお年頃だからですかね……明後日には帰るんで、あと少し頑張ってください」
「明後日?え、もう戻って来るのか?随分と早いな……辿り着けなかったのか?」
「ちゃんと行って来ましたよ!」
「マジで!?」
めちゃくちゃ驚いているジェラリーに、魔王について簡単に説明して通信を切る。
……やっぱり、アルバンとアリスは、何か波長が合わないんだろうな…
こうして、無事にルグミアン王国への旅を終えたミオ達は、王宮に到着するとまず国王へ報告しに執務室へと向かった。
あまりにも早い帰国に、やっぱりとても驚かれたのだけれど……皆同じような顔で驚くので、思わず笑ってしまった。
魔王についての報告をした後、エリアスの婚姻の儀が予定通り行われることも報告する。
予定では10月中旬頃の式なので、またすぐに船旅が待っているということになる。
まぁ、シャトロワ王国は近かったから、船酔いが酷いミオでもそこまで苦ではない。
「急いでミオの準備をしなくてはな!」
「何の準備ですか?式に参列する衣装なら、ルシヨット魔導国に行った時のドレスとかでいいじゃないですか」
「そうもいかんだろう」
「えー」
何なら、魔導師のローブでも良いのでは?などと思っているミオには、理解に苦しむことだった。
あるもので済ませればいいじゃん……本当に、王族の衣装ってよくわからない。
国王への報告を済ませて、魔導師団の執務室へと向かうと……帰って来たミオ達の姿を見るなり、3人が詰め寄って何だかんだ言い始めた。
3人でいっぺんに話されても、何言ってるかわかりませんが!?
「俺は忙しい。話はミオに聞いてもらえ」
「えーっ!?師団長も一緒に聞いてくださいよ!」
カミーユに丸投げされたミオは、とりあえず3人をソファーに座らせて、紅茶を入れて話を聞くことにした……って、何なんだこれは?地獄ですか?
ミオの隣にシャルルが座ってくれたのがせめてもの救いだ。
神様でも降臨してくれたら、この地獄のような空間が浄化されるかな……ミオは、世界樹の周りを包み込んでいた神聖な空気を思い出しながら、そんなことを考えていた。
魔王の封印は解除されてしまうのだろうか?
それとも、それを阻止することが出来るのだろうか?
いろんな人との繋がりによって手に入れることが出来た、魔王に関する情報。
ペリグレット王国と、王国を守護する竜を守るという使命だけではなく、魔王から世界を守るなどという使命も背負ってしまったミオ。
このまま、魔王の封印が解かれることがなく終わることを、ひたすら祈るばかりだ。
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お読みいただきありがとうございました!
次話から最終章となります。




