84 ルグミアン王国への旅2
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酪農の町で1泊したミオ達は、昼食を購入してから出発となった。
これから向かう山道は、隣国まで向かうのにかなり迂回した道となっており、町などもないので途中で休憩するための準備が必要だ。
空を飛ぶのだから飛び越えれば……などと思ったりもするけれど、標高が高いため山頂付近は常に雪が吹き荒れており、とても箒で通れるような状況ではないらしい。
ここは諦めて山道を進む他ないだろう。
「この辺りには、確かロック鳥やコドモドラゴンが生息していたな」
「コドモドラゴン?コモドドラゴンじゃなくて?」
「コドモドラゴンだよ。ミオの世界ではコモドドラゴンと呼んだのか?」
「コモドドラゴンって動物がいたんですよ。確か、世界一大きなトカゲの仲間だったと思います」
「似たような名前の生き物もいるのだな。コドモドラゴンは、飛べない小型のドラゴンといった感じだろうか。口から火を吐く獰猛な魔物だよ。刺激しなければ攻撃してくることはないが」
「あまり高く飛ぶんじゃないぞ。ロック鳥に獲物だと思われて連れて行かれる」
「……あー、あの時私は獲物だと思われて追いかけられたんだ」
ミオは、ルシヨット魔導国へと向かっていた最中の出来事を思い出した。
ということは……
「師団長、前にロック鳥みたいなのにヒール使ったら、仲良くなれましたよ?」
「はぁ!?」
「もしかして、ヒールって魔物を穏やかにする作用があるのかもしれませんね」
試してみたいところはあるけれど、1体ならまだしも、複数で襲われたら討伐するしかないだろう。
とりあえず、面倒なことにはならないように、大人しく山道の上を飛びながら国境へと向かった。
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―――
「わぁ、甘い香りが漂っていますね」
「この王国は、果樹園が有名な国だからな」
険しくて長かった山道を抜けて国境の門をくぐると、それまでとは違って木々が生い茂った景色へと変わった。
ここでは上空を飛んでも問題はなさそうだ。
箒を上昇させて進んで行くと、整然と木々が立ち並ぶ光景が目下に広がり、箒を下降させてみるととても芳醇な香りに包み込まれた。
ここからは町まで果樹園が続くらしい。
「今の季節だったらぶどうか?」
「そうだな。もう少しすると梨やりんごも旬を迎えるのではないか?そのままでは食べられないが、カリンもあったと思うよ」
「秋は果物が美味しい季節ですからね」
この世界でもぶどう狩りとかあるのだろうか?
元の世界でも、フルーツ狩りって行ったことがないけれど、あれってどれくらい食べれるものなんだろう?
「今日はこの先の町で1泊するぞ」
「はい」
「明日にはいよいよルグミアン王国へと到着だな」
「まさか、こんなに早く到着できるとはな。箒で移動しようなどと考えるのは、ミオくらいだろ」
「箒に乗れたら、誰だって考えますよ」
「俺は考えなかったぞ」
「それは……何故でしょうね?」
てゆーか、そもそも箒で空を飛べるのに、上空を移動しないで道なりに飛んでいたということ自体、ミオには理解できないことだ。
再び上空へと上がり、果樹園の上を通りながら町へと向かい、夕暮れ前には宿へと入ることが出来た。
この宿では、赤ワインを使ったとても美味しい料理を堪能できたのだけれど……少しくらいのワインなら大丈夫かなと、一口だけワインを飲んだミオはその場でテーブルに突っ伏してしまい、シャルルが笑いながら部屋まで運ぶことになった。
そのまま朝までぐっすりと眠ったミオは、案の定夜が明ける前に目覚めてしまった。
仕方がないので早朝の散歩に出かけると、摘みたてのぶどうなどという思いがけないご褒美を頂き、これぞ早起きは三文の徳などと思いつつ、美味しいぶどうを食べながら宿へと戻って行った。
「おはよう、ミオ。随分とご機嫌だな」
「おはようございます、シャルルさんに師団長。今朝、早起きしたんで散歩してたら、美味しい摘みたてのぶどうを頂いたんですよ」
「ふふ、それは良かったな」
「それにしても、お前があんなに酒に弱かったとはな。そういや、食堂でも酒を飲んだことがなかったか」
「ワインなら、ぶどうジュースのような感じかと思ってました……」
「んなわけあるか」
「ワインも案外強い酒だと思うよ」
そういえば、元の世界でもワインは飲んだことがなかったなと思い出す。
あんなに甘くて美味しいぶどうが……どうやってあんなに強い酒に変わるんだ?
ミオ達は、朝食を食べ終えると準備を整えて出発した。
今日中にはルグミアン王国へと入る予定だけれど、ここはまだこの王国の入り口付近だ。
目的地まではまだ遠い。
何事もなく到着できるよう、気を引き締めて行かないとだ……何ていうことは、何かのフラグになってしまうため考えないことにしよう。
「ミオ、カバンの中で何か光っているようだが」
「ん?」
シャルルに言われてカバンに目を向けると、確かに中で光っていた。
この光はクリスタルだ……ラウルだろうか?
ミオがクリスタルを取り出すと、やはりラウルからのようだった。
「こんにちは、ラウルさん」
「やぁ、ミオちゃん。あれ、移動中?」
「うん」
「ごめんごめん。じゃあ、また後で連絡するよ」
「このまま話してても大丈夫だよ?」
「見回り中じゃないの?」
「違うよ。今、ルグミアン王国に向かってるとこ」
「ルグミアンって……え、あの世界樹の?もう向かってたんだ?」
「世界樹?もう?」
ルグミアン王国の世界樹というのは聞いていない。
世界樹?そんなファンタジーな木がこの世界にもあるのだろうか?え、あるなら是非とも見てみたい!
「あれでしょ?この世界を創造した神々を祀ってる王国」
「そうだよ」
「もしかして、魔王について?」
「うん。ルグミアン王国の王様が、詳しい文献があるから見せてくれるって」
「ルグミアンの国王と話したの!?」
「こないだ、ペリグレット王国に遊びに来てたから。なんか、父と仲いいみたい」
「ホント、凄いよねミオちゃんって」
「私じゃないよ、父と仲良しなの」
「でも、良かったー。俺が伝えたかったのも、ルグミアン王国のことだから」
「そうなの?」
「ユニオール王国の国王に会ったでしょ?」
「うん」
「あの王様が教えてくれたんだ。魔王についてなら、ルグミアン王国に行った方が情報が集まるって」
「なんであの王様が?」
「あの王国、召喚とか魔物についての研究とかしててさー。ちょっと詳しいんだよね、そういうこと」
「そうだったんだ」
「とりあえず、ルグミアンに向かってるなら良かったよ。何かわかったら教えてね」
「うん、連絡するよ」
「それじゃあ、気をつけて行ってきて!」
「またね」
ラウルとの通信を切ってカバンにしまうと、もう1つのクリスタルが光り始めた。
今度は……エリアスだ。
さすがに立て続けに話しながら飛ぶのも危ないと、カミーユが地上に降りて行ったので、ミオも地上に降りてからクリスタルに魔力を込めた。
「エリアス様、おはようございます」
「本当につながった……それよりも、遅いぞ」
「ちょっと箒で飛んでいて、違う人との通信もしていたので。すみません」
「そうか……悪かったな」
「いえいえ、大丈夫ですよ。それよりも、何かありました?」
「港にペリグレット王国の船が停泊していたが……誰か来ているのか?」
「あー、私ですよ。今、ルグミアン王国に向かってるんです。今日中には到着予定ですよ」
「ルグミアン王国?港に船が着いたのは4日前と聞いているが?」
「そうですよ」
「は?ルグミアンまでは3週間程かかるはずだが?」
「箒で飛んでるんで、そんなにはかかりませんよ」
「は?箒でだと!?お前……やはり馬鹿だろう」
「わ、私に対して失礼ですよ!何事もなく箒でここまで来ましたよ!」
「……何をしにルグミアンに?」
「魔王について調べるためです。何かわかったらエリアス様にも連絡するので、待っていてください」
「クリスタルでか?」
「そうですよ」
「……帰りに顔を出せ」
「いやいや、私何も準備してきていませんし」
「構わん」
「ま、まぁ……いいですけど」
こうして、ルグミアン王国からの帰り道に、シャトロワ王国の王宮へと立ち寄ることになったミオ達。
まぁ、シャトロワ王国から船に乗るわけなので、少し寄り道するくらいは問題ないだろう。
エリアスとの通信が終わり、改めてルグミアン王国に向かって出発した。
「それにしても、広大な果樹園ですよね。この先も続いてますよ」
「この王国はほとんどが果樹園だからな」
「南側にはオレンジ畑が広がってたな、確か」
「そうなんですね」
フルーツ王国……美味しいスイーツとかたくさんあるんだろうな。
昼食もこの王国で食べる予定だし、その時にスイーツ屋さんを探してみよう。
そんなことを考えながら飛んでいると、ちょうど王都辺りで昼食の時間となり、王都に立ち寄ることとなった。
これは期待できるぞ、スイーツ屋さん!
王都というだけあって街にはたくさんの人が訪れており、昼時という時間帯も重なって多くの店に行列が出来ていた。
きっと、長い行列の店が美味しい店なのだろうけれど……そんなに長い時間の滞在は出来ないため、空いてそうな店を探して昼食を食べた。
「凄く美味しいですね!なんで行列が出来ていなかったんでしょう?穴場的なお店なんでしょうか?」
「どうだろうな。古くからある店のようだが」
「まぁ、並ばずにこんなに美味しい料理が食べれたんだし、良かったじゃないか」
全く客が入っていないわけでもなく、それなりに席は埋まっていて、人気がないわけでもなさそうなこの店。
どうやら、行列が出来ている店は最近オープンしたばかりの店が多いようで、話題性が高いために人が集まっていたらしい。
行列が美味しさの基準ではないということだ、よく覚えておこう。
美味しい料理でお腹と心が満たされて店から出て来ると、ちょっとした事件に遭遇した。
「ドロボー!」という声が聞こえてきて、声がした方を振り返って見ると、何かを抱えた男性が走って来るのが見えた。
あれ、こんなこと前にもあったような……
ミオは咄嗟に箒を振り上げると、走って来た男性のすね目がけて振り下ろした。
見事に転倒した男性の手から放り出されたのは、たくさんの焼き菓子。
すねに走る激痛に悶え苦しみながらも逃走しようとした男性を、シャルルが取り押さえたので、ミオが魔法を使わずに済んだ。
追いかけて走って来た、この焼き菓子のお店の従業員らしい女性が、ミオ達に深々と頭を下げて礼を言った。
「ありがとうございます!本当に、ありがとうございます!」
「いえいえ、たまたま上手くいったので」
「お礼に、当店自慢のスムージーを受け取ってください!」
「そんな、大したことしてないので頂けませんよ!」
男性が駆け付けた騎士に連行されると、女性従業員に店まで案内されて、お断りしたもののスムージーを頂くことに。
あまり断っても悪いので、ありがたく頂戴してミオ達は王都を出発した。
「お前、随分と手慣れた感じだったな」
「そんなことはないですよ師団長。前にモンフォワールでも似たようなことがあって……」
「はぁ?聞いてないぞ」
「あー、別に大したことでもないので報告はしてませんよ」
「私は騎士から報告を受けていたがな」
「えっ!?シャルルさん、知ってたんですか!?」
「ふふ、知っていたよ」
そういえば、モンフォワールの警備には騎士団が当たっているんだったと思い出し、笑っているシャルルの前で頬を赤く染めるミオだった。
「てゆーか、箒の使い方間違ってるだろ」
「箒も立派な武器ですよ」
「ミオの箒攻撃は強烈だからな」
「王女がすることかよ」
「私は魔導師です」
「俺も魔導師だが、箒で戦ったことはない」
「案外使えますよ?箒」
「あのな……」
その後は特にトラブルに巻き込まれることもなく、夕方にはミオ達は国境の門をくぐってルグミアン王国へと入ることが出来た。
このまま王宮に向かっても良かったのだけれど、さすがに夜になってしまうため、王都まで向かって宿屋に泊り、明日の午前中に王宮に行くことにした。
ここまで、知らない王国を訪れながらやって来て思う。
旅をしていろんな国のことを知ることが出来るのは、やはりとても素晴らしいことだ。
いつか、もっと交流を深めながらたくさんの国のことを知っていきたいなと、改めて思うミオだった。
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お読みいただきありがとうございました!




