83 ルグミアン王国への旅
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ミオとシャルル、カミーユの3人は、テーブルに広げた地図を囲みながら、ルグミアン王国までの移動方法について話し合っていた。
ペリグレット王国からルグミアン王国まで行くには、2通りの行き方がある。
船でシャトロワ王国へと渡り、3つの国を通って陸地を移動する方法と、パント王国まで船で行き隣の国を抜けてルグミアン王国へと向かう方法だ。
どちらの行き方でも3~4週間くらいかかるらしい。
「だったら、船での移動が短いシャトロワ王国経由がいいです」
「ミオにはその方が良いだろうな」
「そんなに船が駄目なのか?」
「カミーユも一緒に船旅をすればわかるさ」
「まぁ、魔法の威力が上がった分、楽にはなりましたけどね」
カミーユは、ミオがルシヨット魔導国に出発した時のことを思い出した。
そういえば、ヒールをかけ忘れて乗船したとたん降りて来て動けなくなっていたな……
「だったら、シャトロワ王国から馬車での移動だな」
「それなんですけど……」
「何だ?」
「馬車じゃなくて箒で移動すれば、数日でルグミアン王国に行けますよ」
「護衛の騎士達は箒なんか乗れないだろうが」
「うーん……護衛っていります?」
「当たり前だ!」
ミオ的には、そんなに何人も護衛の騎士を連れて行かなくても良いのではないかと思うわけで。
いろいろと提案をしてみる。
「変装して私1人で行くとか」
「却下だ」
「じゃあ、騎士の皆さんは馬車で移動して、私が箒で先に行くとか」
「却下だ。1人で行くのと変わらないだろうが!」
「うーん……だったら、1人の騎士さんを後ろに乗せて行くとか」
「それも却下だ」
「えー……あ、変装して後ろに騎士さんを乗せて行く、これならバレませんよ!」
「馬鹿か、却下だ!」
「てゆーか、誰も私が王女だなんて知りませんよ?」
「それでも駄目だ」
絶対に、何人も護衛の騎士を連れて移動した方が王女だとバレバレなのになと思う。
わざわざ正体をバラしながら移動することに、何の意味があるというのか。
「じゃあ、シャルルさんと師団長と一緒に行くってのはどうでしょう?」
「はぁ?」
「ミオは、どうして護衛を連れて行くのが嫌なんだ?」
「嫌と言うか……目立つじゃないですか。もう少し気楽にお出かけしたいと言うか……」
「なるほどな。まぁ、ミオは他の王国の王女とは違って、魔導師としての力もあるから、いざという時には自分の身を守ることも出来るが……」
悩んだ末に、とりあえず国王に相談してみると、シャルルとカミーユが同行するのであればと、案外簡単に許可が下りた。
父よ、ナイス判断をありがとう!
こうして、準備を整えてルグミアン王国へと向かうことになったミオ達だったけれど、一緒に行きたいとごねるアルバンとアリスを説得するのには苦労した。
カミーユが留守中の魔導師団のことはアルバンに託するのだけれど……そんなアルバンとアリスのことをジェラリーに託して出発する。
多少不安は残るけれど……頑張れ、ジェラリー。
―――――――
―――――
―――
「明日の午前中には、シャトロワ王国の港町に到着するんですよね?」
「そうだ」
乗船時間が短いというのは、ミオにとっては素晴らしいことだ。
船酔いとの戦いが短くなるのだから。
「お前……ルシヨット魔導国に行った時も、そうやって船の上で箒に乗っていたのか?」
「そうですよ。おかげで箒の操縦術がめちゃくちゃレベルアップしました!」
キラーンという効果音をバックに、ドヤ顔でカミーユを見るミオ。
シャルルは笑いながら2人のやり取りを見ていた。
2日間とはいえ、正味1日と少しという時間はあっという間であり、予定通りペリグレット王国を出発した翌日の昼前には、シャトロワ王国の港町へと到着した。
武装国家と言うくらいだから、筋骨隆々な人達ばかりいるのかと思っていたミオだったけれど……港町にいる人々は、皆普通の人達だった。
まぁ、当たり前か。
この港町は、赤レンガを基調とした造りになっていて、何だかシックな港町といった感じだ。
観光したい気持ちはあったけれど、ここには来月にエリアスの結婚式でも訪れるので、観光はその時にすることにして隣国へと向かうことにした。
「たぶん、向こうですね」
「やっぱり道は関係なしか」
「当たり前です」
空を飛ぶのだから、最短距離で向かうというのは当たり前のことだろう。
ミオは後ろにシャルルを乗せると、箒を浮上させて加速していった。
後ろから、荷物をぶら下げたカミーユが追いかけて来る。
「飛ばし過ぎだ、ミオ!」
「えー、そんなには飛ばしてないですよ?何ならもう少し速度上げられますけど」
「シャルルが怖がるだろうが!」
「私なら平気だよ、カミーユ」
「はぁ!?」
ミオの後ろでニコニコしているシャルルに驚くカミーユ。
先日、パトリエール邸に行った時に、ミオの箒での移動の速さには慣れているので、シャルルにとってはこれくらいのスピードは特に問題はないらしい。
こうして、日が傾く前には隣国へと入る国境の門をくぐることが出来た。
思ったよりも早くこの王国に入ることが出来たので、国の中央にある王都まで移動することにし、今夜は王都で宿に泊まることになった。
この王国は、漁業や農業が盛んな国らしく、王都への移動では田園風景が広がっていた。
港町に行くと、とても活気のある魚市場があるらしいから、いつか行ってみたいなと思う。
ペリグレット王国でも、この王国からは米や野菜をたくさん輸入しているらしい。
そういった物流に関しても、何も知らないなと思う。
こうして、国外のことを知る機会に巡り会えて、本当に良かった。
ミオ達が王都へと到着したのは、日が暮れて辺りが暗くなってすぐだった。
先に宿を確保してから、夕食を食べるために街へと出かけてみると、街の広場がフードコートみたいになっていて、たくさんの人が集まっていた。
「お祭りかなんかです?」
「どうだろうな?」
店の人に聞いてみると、特に祭りというわけではなく、ここはそういう場所なのだと教えてくれた。
昼間も賑わうけれど、夜はお酒も提供されるため、祭りのように賑やかになるらしい。
テーブルを確保すると、シャルルとカミーユがいろんな料理を買ってきてくれた。
こういうのって、何だか楽しいわよね。
「うわぁ、とっても美味しい野菜ですね!」
「新鮮だからな」
「見たこともない魚もあるぞ」
ゆっくりと観光してみたい気分だったけれど、今回の旅はそうのんびりとするわけにもいかない旅だ。
魚市場も含めて、今度改めて観光に訪れようと思う。
夕食を食べて宿へと戻る途中で、見たことのある馬車を見かけた。
奴隷を連れている、檻が連なった馬車だ。
ミオが立ち止まって見ていると、シャルルが頭に手を乗せながら説明してくれた。
この王国の広い田畑を管理するためには、たくさんの人出が必要だ。
そのために、奴隷は必要不可欠な存在となっている。
前に見た貴族に売られている奴隷とは違って、ここでは労働のために雇われており、ぞんざいな扱いを受けることは少ないらしい。
それに、24時間365日働きづめということではなく、交代で休みながら働くシフト制のような感じだった。
契約期間もきちんと決められており、奴隷として送られてもきちんと家に帰される。
そういう人達が育てた米や野菜などを頂いていることに、感謝するだけでは足りないんじゃないかと思ってしまうミオだった。
翌朝、ミオ達は朝食を食べるとすぐに宿を出発した。
今日向かう国は、ほとんどが山岳地帯となっている酪農が中心の王国だ。
山間部にある国境の門を超えると……ミオが想像していた山岳地帯とは違った、岩肌が見えるゴツゴツとした山岳地帯だった。
え、こんな場所で酪農?
なんて思っていたら、このゴツゴツとした山岳地帯を抜けた場所に、ミオが想像しているような牧草地帯が広がっているらしい。
ここは、険しく高い山が連なっているため、箒で空を飛べるとはいえ道なりにしか進むことが出来ない山道で、もしも馬車で来ていたらあの断崖絶壁を通ることになるのか……と、少し青ざめてしまうミオだった。
「ここって……この山道抜けないと、町ってないんじゃないです?」
「そうだな」
「え、じゃあ、馬車の人達ってご飯とかどうするんです?」
「見回りの時みたいに、どこかで休憩をするのだよ」
「あんな危険そうな場所でですか?」
「そうだな」
この王国を旅するのは、命がけの旅になりそうだ。
空を飛べて、本当に良かったと思う。
こうして、険しい山岳地帯を抜けて行くと、少しずつ木々が現れていき、それまでとは別世界のような牧草地帯が広がった。
これぞ、酪農が盛んなイメージの場所だ。
あちらこちらに、牛や羊、ヤギなどの集団が見えて来る。
広々とした牧草地帯を進んで行くと、小さな町に辿り着いた。
この広大な牧草地を管理している町らしい。
この王国の王都はこの町の北側にあるので、今回の旅では立ち寄ることが出来ない。
ミオ達は、町の手前で箒から降りると、町へと入って行った。
「何となく、マルセーヌの町に似ていますね」
「あの町も酪農はやっているからな」
「あれじゃないか?宿屋」
ペンションのような可愛らしい宿屋を見つけて中に入ってみると……険しい山道を超えて来る割に観光客は多いらしく、今日は一部屋しか空いておらず、仕方がないので3人で一部屋に宿泊することになった。
ベッドは3つあるらしいので、問題はないだろう……あれ、そういえば前にも3人で泊ったことがあったような気がするな。
部屋に荷物を置くと、遅い昼食を食べに町へと出かけた。
酪農と言えばお肉や乳製品、美味しいご飯にありつけそうな予感が満載だ。
歩いていると美味しそうな匂いが漂ってきて、その匂いを辿って行くと……何と、バーベキューをしている場所へと辿り着いた。
所々にバーベキューグリル的なものが設置されていて、自分達で購入したものを焼いて食べるシステムらしい。
食材を売っている場所には、美味しそうな肉やウインナー、野菜などがたくさん並べられていた。
「焼くだけなら、ミオでも作れるな」
「もちろんですよ!てゆーか、別に包丁を使えないわけじゃないですけどね」
「ミオが包丁を持つと、周りの人の寿命が縮んでしまうよ」
「それは言えてるな」
「そんなにです?」
「「そんなにだ!」」
こうして、とても美味しいバーベキューを堪能した後に、店でヨーグルトを見つけて食べてみると、とてもクリーミーで濃厚な、非常に美味しいヨーグルトだった。
さすがは酪農王国、肉も乳製品も素晴らしい。
夕食には、これも今まで食べたことがないような絶品のチーズフォンデュをふるまわれ、何とも言えない幸せな気分で就寝についたミオだった。
こんなにのんびりと町を満喫出来たなら、泊まらずに次の国に向かっても良かったのでは?などと思ったミオだったけれど、この先がとても長い道のりだから、あのまま進んでいたら途中で夜を迎えることになったらしい。
野営の準備をしていないミオ達には、この町での宿泊が最善だったようだ。
空を飛べるからと言って、全てが最短距離で移動できるわけではないのだと知る。
旅をするって、とても勉強になるなと思う。
こうして、ルグミアン王国への旅は続くのだった。
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