82 とんでもない王国の王様がやって来た
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「王子様乗せられたんだから、シャルルくらい乗せて行けるだろ」
「ま、まぁ……乗せられると思いますけど……」
ロイヤー領の領主には第二騎士団が、レヴィナス領の領主には第三騎士団が通達に行くことになり、他の領主には魔導師団が手分けして通達に行くことになった。
シャルルの家には、シャルルと一緒にミオが行くことに。
……シャルルを後ろに乗せて飛ぶのって、エリアスを乗せるよりも緊張するんですけど!
シャルルの家はそんなには遠くないので馬車でもいいのだけれど、箒で行った方が速いのでミオが乗せて行くことになったのだ。
「それじゃあ、出発しますね」
「よろしく、ミオ」
シャルルの右腕がミオのお腹に回されて……エリアスと同じ体勢なのに何だこのドキドキ感は?
ミオはあまり意識しないようにして箒を浮上させた。
「えーと……シャルルさんの家に行くんだと、こっちから行って城壁飛び越えるのが近いんですけど、やっぱり門から行った方がいいです?」
「そうだな、帰りは近い方で構わないが、行きは門をくぐって行こうか」
「わかりました」
ミオは、オルレーヌの門に向かって移動した。
門までは道が割と真っすぐ通っているので、そこまで道からそれて飛ぶことはない。
途中、ネーオールの森近辺の見回りに向かう騎士団を発見し、挨拶をしてから追い抜いて行った。
「そういえば、エリアス王子は何故また来ていたんだ?」
「来月、婚姻の儀というのをするみたいで、招待状を持って来てました」
「王子自ら持って来たのか?」
「そうみたいですよ」
「ミオも招待されたのか?」
「はい。でも……魔王の封印のこともあるし、どうなるんですかね?」
「そうだな」
まぁ、クリスタルも渡してあるし、連絡は取りやすくなっているから大丈夫だろう。
それよりも……この世界の結婚式ってどんなだろう?てゆーか、王子様の結婚式って、偉い人とかたくさん来てて気疲れしそう……
湖の上を通っていると水竜が顔を出したので、帰りはここを通らないため少しだけ話をしてから湖を後にした。
こうしてあっという間に門に到着し、シャルルも驚いていた。
「お疲れ様です、シャルル様。本日は見回りですか?」
「いや、領主への報告だ。それから、兄はいるか?」
「ジェラール様でしたら、街の見回りに行っておりますが……お呼びして来ましょうか?」
「兄にも一緒に聞いてもらいたい。至急家まで来るようにと伝えてもらえると助かる」
「承知いたしました」
「では、私達は先に行くので、そう伝えてくれ」
「はい!」
門番をしていた騎士が、ジェラールを探しに馬を連れて街中へと走り去って行った。
ミオとシャルルは箒に乗ってパトリエール邸へと向かう。
―――――――
―――――
―――
「あらぁ、ミオちゃんいらっしゃい」
「お久しぶりです、お母様」
「父上は?」
「いるわよぉ~。呼んだ方がいいの?」
「お願いします」
「あら、もしかして婚約の報告かしら!」
「えっ!?」
「違いますよ、母上」
「違うのぉ?それは残念ねぇ。それじゃあ、お父様を呼んで来るから、2人は座って待っていなさい」
婚約の報告でないことを知り、心底残念そうな顔でカルロスを呼びに行くエミリー。
そもそも何で婚約の報告だなんて思ったんだ?
エミリーがカルロスを呼んで来ると、同じ報告をするからと言って、ジェラールが来るのを待った。
そして、部屋に飛び込んで来たジェラールは、エミリーと同じような言葉を放った。
「ついに婚約の報告か、シャルル!」
「……違いますから。とりあえず座ってくださいね、ジェラール兄さん」
この家の人達は、何故ここまでシャルルの婚約報告を期待しているんだろうか?
シャルルよりもまずはシルヴィーが先なのでは?
とりあえずそのことはさて置き、シャルルが魔王の封印についての報告を始めた。
皆、驚いてはいたけれど、あまり実感はわかないようだった。
「魔王の封印など、ただの言い伝えだと思っておったからのぅ」
「本当に魔王など封印されているのか?」
「私も実際に見たわけではありませんが……この王国を守っている竜がそう言うのですから、間違いはないかと思います」
「まぁ、氷竜もまだ兆候があるだけで、封印が解除されるとは言っていない……と言ってましたけど」
「魔王についてはこれから詳しく調べます。またご報告に来ますので」
「わかった。魔物に関してはこちらでも警戒はしておく」
「今度は魔王か。なかなかに問題ごとが起こるものじゃな」
何だろう……魔王の封印が解かれそうって、結構な重大ニュースなはずなのに、この家ではあまり大事として捉えていないような気がするのは……気のせいだろうか?
「さぁ、話は終わりよね?シャルルとミオちゃんも、家でお昼ご飯食べて行くでしょう?」
「……そうですね……ミオ、食堂でもいいが、ここで食べて行こうか?」
「え、いいんですか?」
「当たり前でしょう?ミオちゃんは家族みたいなものですもの」
「ありがとうございます」
まさかの家族認定に驚くけれど、シャルルの家族には本当にいつも良くしてもらってるなと思う。
食事の用意が出来るまでもう少し時間がかかるとのことで、リビングで話をしているとシルヴィーが帰って来た。
ミオとシャルルの姿を見ると、目を見開いて驚くシルヴィー。
「ままま、まさか!シャルルとミオちゃんの婚約の報告かね!?」
「違いますよ、シルヴィー兄さん」
「……あはは」
本当に、何なんだ婚約の報告って。
こうして、賑やかで楽しい昼食の時間を過ごし、ミオとシャルルは箒に乗って王都へと戻って行ったのだけれど……エミリーが自分も乗りたいとごねたので、少しだけ乗せてあげるととても喜んでいた。
シルヴィーも乗りたいと粘ったけれど、それはシャルルによって断られた。
「母と兄がすまなかったな」
「いえいえ、大丈夫ですよ。相変わらず楽しいご家族ですよね」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
パトリエール邸から王都までは、港町は通らずに森の上を通り抜けて行く。
見たこともない景色に、シャルルも驚いていた。
「本当に……道は関係なく飛べるのだな」
「空ですからね。あ、もうすぐ着きますよ」
「もう着くのか?随分と早いものだな」
「最短距離なので」
「私の家がこんなに近かったとは……今度からは、家に帰る時にはミオに頼みたいものだな」
「いつでも言ってください。いくらでも乗せて行きますよ!」
ミオが笑顔を向けると、シャルルも優しく微笑んだ。
そういえば、この距離感にも慣れたものだなと思う。
朝、王宮を出発する時にはとてもドキドキしていたけれど、今ではこの距離感がとても心地良いというか、とても安心感がある。
いつまでもこのままでいたいと思ったけれど……最短距離で帰って来たため、すぐに王宮へと到着してしまった。
「お疲れ様、ミオ」
「私は全然疲れてませんよ。シャルルさんの方こそ疲れたんじゃないですか?箒の乗り心地ってあんまりよくないですし」
「私は大丈夫だよ」
魔導師団の執務室に行くと、カミーユ達はまだ帰って来ていないようで誰もいなかったので、ミオとシャルルは図書室へと向かった。
魔王について詳しく調べるためだ。
ここの図書室は、ルシヨット魔導国の図書室とは違ってあまり人がいたことがない。
まぁ、そんなに調べ物があるわけでもないだろうし、王宮に学校が併設されていないのも1つの理由だろう。
「そういえば、騎士団の養成所ってどこにあるんです?」
「王都のはずれにあるよ」
「そうなんですね。知らなかったです」
1年半もここにいながら、本当に知らないことが多いなと反省する。
シャルルが今度案内してくれると言ってくれた。
「魔王って……魔物じゃなくて人間なんですよね?」
「そうだな」
「じゃあ、魔物のコーナーにはないんでしょうか?あ、でも魔物の王様だから、やっぱ魔物のコーナーなのかな?」
「伝承や物語の方にもあるかもしれないな」
「あ、そうですね」
とりあえず、それっぽいコーナーを探してみる。
今まで魔王に関する文献は目にしていないと思うけれど……もしも目にしていたら気になって読んでいたはずだ。
魔王、魔王……可愛い魔物図鑑?何だこれ、めちゃくちゃ気になる!……って、今はそんなものを読んでいる場合ではない、魔王に関する文献を探さなくては。
それらしい本を数冊見つけて、テーブルに運んで目を通してみる。
シャルルも数冊の本を持って来てミオの隣に座った。
「何か書いてあった?」
「うーん……役に立ちそうな情報はないですね。まだ、全部は読んでないですけど」
「800年前に魔王の封印に大きく関わった国ならば、詳しい文献も残っているだろうが……」
「あ、そうかもしれませんね。魔法の封印に大きく関わったと言うと……やっぱり、一番近いシャトロワ王国でしょうか?」
「そうとも限らないがな」
そうか、場所が近いからと言って、シャトロワ王国だけが魔王の封印に関わったわけでもないかもしれない。
きっと他の国々などの協力も得ただろう。
こうして、本を読むのに夢中になっていると、シャルルが夕食を食べに行こうとミオに声をかけた。
もうそんな時間ですか?
ミオの集中っぷりには驚かされると笑いながら言うシャルルに、ミオは恥ずかしくて頬を赤く染めた。
どうやら、シャルルは何回もミオに声をかけていたのだけれど、本を読むのに夢中だったミオは気がつかなかったらしい。
―――――――
―――――
―――
「あ?お前ら、戻っていたのか」
食堂に行くとカミーユが先に食べていて、ミオとシャルルの姿を見て驚いたような顔をした。
「姿が見えないし、てっきりお前の家にでも泊って来るのかと思っていたよ」
「さすがにそれはないな」
「てゆーか、ミオ」
「何ですか?」
「陛下が探していたぞ」
「え、何でですか」
「それは自分で行って聞いて来い」
「じゃあ、食べてから行きますね」
「急いで食べて行けよ」
「えー、ゆっくり食べさせてくださいよ」
結局、カミーユにせかされながら食事を食べて王宮へと向かったミオ。
国王の執務室に行こうとしていると、騎士に応接室へと案内された。
何故に応接室?
ミオが応接室に入ると、そこには何だか神々しいようなローブを纏ったとても偉い人っぽい客人がいて、固まってしまった。
えーと……どちら様でしょうか?
「ミオ、紹介するぞ。こちらは、神聖国家ルグミアン王国の国王だ」
またしてもどこかの国の王様だった。
最近、王様の来国が多くないですか?
「は、初めまして。ペリグレット王国王女、ミオ・ペリグレットです」
「私は、プリアベル・ルグミアンだ。そんなに畏まらなくても良い」
「ミオ、こっちに座りなさい」
「……はい」
こんな偉い人が来ているなら、そう言ってほしかった。
知っていたら悠長に夕食など食べてから来なかったのに……
ミオは父親である国王の隣に座った。
「ルグミアン王国というのは、この世界を創造した神々を祀っている王国なのだよ」
「え、そうなんですか!?」
とんでもない国の王様だった!
何故、そんな凄い国の王様がペリグレット王国に来たんだ?
「昨年、私がルグミアン王国を訪問した際にとても意気投合してな、こうして遊びに来てくれたのだよ」
「エドワールとはとても話が合うのだよ。こうして気兼ねなく話せる友人は少ないのでな」
「そ、そうなんですね」
ミオの父親は、実はとんでもない人なのかもしれないと思った。
「ところで、魔王の封印が解かれそうだという話を聞いたのだが」
「はい、氷竜がそう言っていました」
「その件についてだがな、私の王国に魔王についての詳しい文献がある。持ち出すことは出来ないが、王国まで足を運んでもらえるならば、いくらでもお見せできるのだが」
「本当ですか!?」
「私が見るよりも、ミオが見て来た方が良いのではないかと思ってな」
「是非、拝見したいです!それと、この世界が創造されたことが書いてある本などもとても興味があります!」
「好きなだけ読んでもらって構わない。残念ながら私は他にも訪問する国があるので、一緒に行くことは出来ないが……これを王宮に持って行けば、王宮への滞在と、特別に許可された者しか立ち入ることのできない書庫への立ち入りが許可される。あなたに渡しておこう」
ルグミアン国王が、1枚の用紙をミオに手渡した。
国王直筆の許可証のようなものらしい。
父親が、その許可証を保管しておくためのケースを出してきてくれて、中に入れて大切に保管することにした。
「感謝するぞ、プリアベルよ。準備が整い次第、ミオをルグミアン王国へと向かわせるとしよう」
「私が案内出来ないのはとても残念だよ。またの機会には案内するから、今度は2人で来るといい」
「是非、そうさせてもらう」
「ありがとうございます」
ペリグレット王国の図書室では、あまり参考になる文献を見つけることが出来なかったけれど、これで詳しいことを知ることが出来そうだ。
人脈って大切だなと改めて思うミオだった。
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