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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第一章 異世界生活と黒ローブ
9/132

09 王国と竜と少女の物語

「う~ん……こうだっけ?記憶が曖昧だなぁ…」


 自分の部屋で机に向かって座り、紙に何かを書いては頬杖をついて斜め上を見上げて首をひねる……そんなことを繰り返すミオ。


 昨日、メーヌの森から無事に帰還したミオは、本日は休日となっております。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 王国と竜と少女の物語



 ある所に、四体の竜がいました。

 昔から、竜は怖い生き物として、人々に恐れられていました。

 それは、竜の力がとても強かったからです。

 でも、本当はとても優しい生き物なのです。

 竜の力は、王国を守るために神様が与えた力。

 竜がその力を使うのは、王国を守る時と、自分を守る時。

 そんな強い力を持つ竜からは、様々な噂が生まれました。


 竜の血を飲むと、永遠の命を手に入れられる

 竜の涙は、あらゆる病を治す

 竜の牙は、魔力を増大する

 竜の爪は、絶対に折れない剣を作れる

 竜の鱗は、絶対に壊れない防具になる…


 人々は、本当かもわからないそんな噂を信じて止みません。

 そして、愚かなことに、人々の中には竜を襲う者が出てきました。


 戦争の道具として使おうとする者、高い値段で売りつけようとする者、不老不死を願う者…


 竜は、自分の身を守るために戦います。

 その強大な力を駆使して。

 そうすると、更に噂は尾ひれをつけていきました。

 そして、竜を狙う人間は、後を絶ちませんでした。

 いつしか、王様たちも、竜が王国を守っていることを忘れ、噂に翻弄されていきました。


 その結果、王国の守護は崩れ、王国内の平穏は失われていきました。


 こうして、王国が滅ぼうとしていた時、天空から一筋の光が降りてきました。

 その光とともに降りてきたのは、一人の少女。

 この世界で、その少女だけが本当の竜を知る存在でした。

 少女は訴えます。

 噂話が本当でないことを。

 でも、誰も耳を貸しません。

 それでも少女は訴え続けます。

 そんな少女に、人々は剣を向けました。


 少女は戦います。

 あらゆる魔法を駆使し、あらゆる知識を使って。


 少女は傷だらけでした。

 それは、人々と戦ったからだけではありません。

 竜を守ろうとしたからです。


 竜は人間を敵だと思っていました。

 仕方がありません。

 人々が竜を攻撃し続けたのですから。

 どんなに少女が守ろうとして言葉を投げかけても、竜には届きませんでした。

 でも、少女は諦めません。

 どんなに竜が攻撃しようとも、優しく手を差し伸べて、優しく微笑みました。


 ある日、一体の竜が他の三体の竜に襲いかかりました。

 少女は必死に止めようとします。

 でも、竜の力は強いのです。

 少女の力では止められるはずもありません。

 少女は、なぜ竜が襲い始めたのか、原因を探りました。

 そして、ようやくその原因がわかったのです。


 竜は、悪い魔導師に操られていました。


 悪い魔導師は、人間の力では竜に勝てないことを知り、竜に戦わせることにしたのです。

 何日もかけて、魔導師は竜を操るために罠をしかけました。

 そして、血のにじむような努力の末、一体の竜を操ることに成功しました。

 魔導師は死んでしまいましたが、竜を操っている魔法は消えませんでした。


 少女は、四体の竜を守りながら、操られている竜の魔法を解こうと、必死に解除魔法をかけました。

 それでも、竜を操る魔法は解除されません。

 少女は考えました。

 どこかに、竜を操る魔法陣があるのではないかと。


 少女は困りました。


 ここを離れてしまったら、竜が傷ついてしまう…


 そこに、一人の騎士が現れました。

 少女は、この騎士も竜を狙っているのかと、悲しみに涙を零しました。

 でも、その騎士は敵ではありませんでした。

 少女の味方だったのです。


 騎士は、最初から少女の味方でした。

 竜が王国を守っていることを忘れていなかった騎士は、王様に一生懸命竜のことを話しました。

 でも、王様は話を聞いてくれませんでした。

 挙げ句の果てに、騎士を牢屋に閉じ込めてしまいました。

 王様も、悪い魔導師に操られていたのです。

 その後、王様は悪い魔導師に殺されてしまいました。


 騎士は、このままでは王国が滅んでしまうと思いました。

 王国が滅んでしまう前に、少女の所に行かなければ…

 騎士は必死に牢屋から逃げてきたのでした。


 騎士は、少女に向かって大声で叫びました。

 自分は味方だと。

 その声を聞いた少女は、ハッとして騎士を見下ろしました。

 その時、最後に零れ落ちた少女の涙が眩く光り、結晶となって騎士の手に届いたのです。


 少女は騎士に向かって言いました。

 竜を操っている魔法陣に、その結晶を放り込んでと。


 騎士は走り出しました。

 魔法陣を探して。

 少女は、騎士が魔法陣を見つけてくれると信じて、竜を守り続けました。

 こうして、少女の体力も魔力も限界を迎えようとしたその時。


 森の中から、四本の光の柱が立ち上りました。


 少女は、最後の力を振り絞って言葉を紡ぎます。



『古の理に、我の御霊を捧げん。ディスペレーション!』



 天空に吸い込まれた光の柱が、竜の頭の上から降り注ぎました。

 竜の体を光が包み込み、キラキラと輝きながら消えていくと、竜を操っていた魔法は消えました。


 力尽きた少女は、地面に吸い込まれるように落ちていきます。

 四体の竜は、ようやく少女を味方だと認めました。

 でも、少し遅かったのです。

 傷だらけの少女は、全ての力を使い果たしました。

 そう、命の灯火までも。


 少女の体は、地面に落ちる直前に、騎士が抱きとめました。

 でも、息をしていない少女に、騎士は大声で泣きました。

 その時です。


 四体の竜の目から、大粒の涙が零れ落ちました。

 四つの涙が合わさって、一粒の涙になりました。

 その涙は少女の上に落ちて、少女を包み込みました。

 そして、虹色に光ったのです。


 騎士は驚きながら腕の中の少女を見ていました。


 四体の竜は、ただジーッと、上空から見下ろしていました。


 少女を包み込んだ虹色の光は、少しずつ消えていきました。

 虹色の光が全て消えると、少女はゆっくりと目を開けました。


 四体の竜は、少女が目覚めたのを見て、嬉しそうに上空を旋回すると、それぞれの場所へと戻っていきました。


 これは、王国と竜を救った少女の話です。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「確か……こんな話だったような…」


 記憶を辿り、紙に書き出して何回も読み返してみる。

 これは、ミオがまだ小さかった頃に、母親が何回も話してくれた物語。

 絵本ではなく、母親の言葉だけなので曖昧な部分も多かったけれど……物語の内容としてはこれで正しいと思う。


「これ……絶対にお母さんの話だよね?」


 母親の日記はまだ最後まで読めていないけれど、この物語は母親がこちらの世界にやって来てぺリグレット王国を守った実際の話なんじゃないかと思う。


 ミオは母親の日記を取り出してみた。






 ―――――

 ―――


 12月5日 晴れ


 12月だというのに晴れていて暖かい。温暖なことはいいことだ。私は寒いのが苦手だ。


 街では人々の争いが起こるようになった。なぜ争う?

 争いは何も生まないのに。

 今まで街の人間に、竜をどうこうしようなんて人はいなかった。黒ローブが人々を掻き立てるような何かをしたのだろうか?


 私は……いったいどうしたらいい?

 てゆーか、私は今日で16歳になった。誰も祝ってくれる人なんかいない。何て誕生日だ。






 黒ローブはこの王国をどうしたかったんだろう?

 街の人々まで争わせるなんて…


「お母さん、何か誕生日なのに可哀想……それにしても…16歳?考え方とか行動とか、いろいろと私よりも大人じゃない!?」


 ミオ・サクライ、現在23歳。

 16歳に負けた気がしてちょっと凹む……でも、凹んだところで今の自分が精一杯なことに変わりはない。

 私は私、母親と比べるのはやめよう。


 うん、そうしよう………って、気持ちが切り替わらないので、母親の日記を読むのはまた今度にすることにした。

 代わりに自分の手帳を開く。


「……あ、今日で私がこの世界に来て丁度1カ月だ」


 今日は5月25日。

 1カ月かぁ……何だかあっという間だった気がする。


 私はこの1カ月間で、この国に来た理由に貢献できる何かをしただろうか?


 ミオは何となくだけれど、この国でまた良くないことが起ころうとしているのではないかと思っていた。

 母親の代わりとしてこの国を守るために呼び寄せられたのでは?


「黒ローブ……てゆーか、黒ローブの組織って実は目立ちたがりなの?黒ローブなんか羽織って、悪いことしますよアピールみたいよね?時代は変わってるのに同じような姿で現れるとか…あ、でも元の世界でも悪いことする人って黒いパーカーとか着てる率高かった気がするかも…」


 悪いことを企む人間が黒い衣装を纏うのは、どの世界でも共通事項なのですか?

 不思議な共通点を見つけてしまった…


 何だかいろいろ考えているとマイナス思考に偏りそうだったので、気持ちを切り替えるため部屋から出ることにした。

 そうだ、スージーに大切な用事があったんだった!

 ミオはカレーのレシピを持って食堂へと向かった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「……………」


 食堂の入り口で固まるミオ。

 またやってしまった…


「おや、ま~た食べ損ねちまったのかい?まぁ、姿が見えないからそうだとは思っていたけどねぇ」

「………はい」

「まったく仕方がないねぇ。ほら、おいで」


 ミオは食堂に来て昼食の時間が過ぎていたことに気がついた。

 物語を書き出すのに夢中になっていたため、空腹にも気がつかなかったのだ。

 そんなミオのことを笑いながら、スージーは取っておいたミオの昼食を出してくれた。


「え……もしかして…残しておいてくれたんですか?」

「そうだよ」

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


 深々と頭を下げてお礼を言うミオ。

 スージーは神様なんじゃないかと思いながら、美味しく昼食を頂いた。

 こうしてお腹が満たされたミオが、食器を下げながらスージーに作ってもらいたい料理があることを伝えると、スージーは快く引き受けてくれるようだった。


 ミオはレシピを渡しながらスージーに説明をする。


「それじゃあ、さっそく今晩の夕食にでも出してみようかね」

「本当ですか!?スージーさんって神様ですよね!」

「何を言ってるんだいこの子は。あんたも手伝うんだよ?」

「もちろんです!」


 こんなにも早くまたカレーが食べられるなんて、これが夢でないことを祈ろう。


 こうして夕食で振舞われたカレーは、騎士団や魔導師団の皆にはとても好評で、マルセーヌの町で一度食べた騎士達にも大変喜ばれた。

 カレーのスパイスはまだ残っているし、きっと食堂のメニューとして定番とされるだろう。


 そして、翌日。


「なるほどなぁ、これがミオの母親が語っていた物語か。ミオの母親がこっちにいた頃、俺はまだ幼かったが……俺の親が当時のことを語りたくない理由が何となくわかるな」

「そうなんですか?」

「自分達の国を救ってくれた少女に敵対していたわけだからな。子供には言いたくないだろうさ」

「なるほど……てゆーか、やっぱりこの物語の内容って、私の母のことなんですか?」

「見りゃわかんだろう」

「何となくそうかな…とは思ってましたけど」


 カミーユに、昨日書き出した母親に聞いた物語を読んでもらい、物語が母親のことを語ったものだとわかった。

 ということは、やっぱり黒ローブの組織は壊滅せずに残っていて、当時の目的を果たす為か新たな企みなのかはわからないけれど、また動き出したということだろうか?

 それとも、もっと前から動き始めていたのかもしれない。


「まぁ、この黒ローブと今回の黒ローブが同じ組織かはわからないけどな」

「違うってこともあるんですか?」

「そりゃあ、あるだろう。こういう悪だくみする奴なんか山程いるだろうしな」

「え、そんなにですか!?」

「平和に見えても、陰で悪だくみする奴はいる」

「……まぁ、そうですね」


 ミオがいた世界も、平和とはいえ日々何かしらの事件は起きていた。

 戦争をしている国もあった。

 どの世界でも、やっぱり一番怖いのは人間なんだと思う。


「そういえば、あの黒ローブの人から何か情報は得られたんです?」

「あー、アイツなら馬車の中で死んでいたらしい。自殺なのか殺されたのか…死因は特定できないそうだ」

「え、そうなんですか!?」


 まさか、馬車の中で死んでいたなどとは思わなかった。

 やっぱり、口封じのために組織に殺されたのだろうか?


「とにかくだ、竜や魔物を操ろうとしている奴らがいることは明確だ。捕まえてきた黒ローブが死んだことからもわかるように、情報を漏らさないためには部下の命をも簡単に犠牲に出来る奴らだ。そんな奴らと戦うことになるわけだから、俺達も力をつけておかないとな」

「はい。私も今回の調査で自分の実力不足を痛感したので、もっともっと修行して強くなります。それでですね、師団長」

「何だ?」

「修行って固定された的に向かっての攻撃ばかりじゃないですか。実際には動く敵と戦わないといけなくて、凄く難しかったんですよね……魔物ならまだいいんですけど、人間を相手にするとなると…」

「それな……俺も人間とは戦ったことがないしな」


 カミーユの言葉に少し驚くミオ。

 確かに、魔法を使える人間はごくわずかだと認識されているようなので、人間同士のトラブルに魔導師は必要ないのだろう。

 長年戦争なども起こっていなさそうなので、魔導師の仕事は魔物の討伐くらいなのだ。

 あとは、ポーションを作ることとか。


「パトリエール団長にも話しましたけど、探せばもっと魔法を使える人ってたくさんいると思うんですよね。私が戦った黒ローブも魔法で攻撃してきたし」

「その件ならシャルルにも聞いている。今度、今後の修行方法とか魔導師のことも考えていくつもりだ」

「そうなんですね。あ、あともう1つなんですけど…」

「何だ?」

「箒の練習なんですけど、訓練場みたいな開けた場所だけじゃなくて、森の中のような障害物がある場所でもやった方が良いかなって。森の中で黒ローブ追いかけるの本当に大変だったんですよ!」

「今まではただの移動手段でしかなかったからな……それもそうだが、やっぱり他の魔導師にも早く箒を扱えるようになってもらわないとだ。もしも黒ローブのような奴と遭遇した場合、ミオみたいに追跡できないからな」

「そうですね」


 何だか課題が盛りだくさんだ。

 そんな話をしていると、執務室のドアがノックされて1人の魔導師が国王が帰って来たことを告げた。

 そういえば、ミオがこちらの世界に来た日から、国王は他の国に外交に出ているのだと前に教えてもらったことがあった。

 やっぱり交通手段が馬車しかないと……いろいろと時間がかかって大変そうだ。


 カミーユが国王への報告のため城へと向かったので、ミオは練習のため訓練場へと向かった。

 訓練場では3人の魔導師が、それぞれ的に向かって攻撃魔法の練習をしていた。


 そうだ、新しい魔法を試してみないと。

 ミオも3人の魔導師と並んで的の前に立った。


「よぉ、体はもう大丈夫なのか?」

「はい。もうすっかり元気ですよ」

「お前、魔法使う奴と戦ったんだってな。俺達以外にも魔法を使える奴がいるとは驚いたぜ」

「人間相手に戦うのって、凄く難しかったです。魔法を防御しながらこっちも攻撃しなくちゃいけないし、追いかけながらだし…」

「そういうの、俺達もやったことないからね」

「魔物の討伐に行って突然そんな奴らと遭遇したら、戦える気がしねーな」

「修行の仕方を考えるって師団長も言ってました」

「騎士団は手合わせとかしてるもんね」

「でもさ、魔法で手合わせとか……絶対に怪我するヤツじゃん」

「騎士団だって同じだろ。そのためのポーションでもあるわけだし」

「私達にはヒールがありますよ!」

「まぁ、そうだけどな」


 とりあえず今は的に向かって練習するしかないので、精度を高められるように練習することにする。

 さて、どの魔法から試してみよう…


「名前からして攻撃魔法っぽい…サンダーストームから使ってみよう」


 ミオは、的に向かって両手を翳すと目を閉じて魔法陣を頭の中に描いた。

 そして、目を開いて詠唱をする。


「サンダーストーム!」


 すると、それまで穏やかに青空が広がっていた空に暗雲が立ち込めてきて、いくつもの稲光とともにゴロゴロという雷鳴が聞こえてきた。

 隣で練習をしている魔導師達が、急に怪しくなった空模様に手を止めて空を見上げる。

 そして、いくつもの竜巻が現れて周囲のものを飲み込み始めた。


 え、これは……とてもヤバいのでは?


 地面に突き刺さっていた的も次々と吸い込まれていき…


「ミオ!一旦ストップだ!」

「わわわ、わかりました!」


 魔法を中断し、空を覆っていた暗雲が消えて元の青空へと戻った。

 でも、練習場には竜巻に吸い上げられた残骸が散らばっていて……これは…またやってしまった感が半端ないのですが…


「何だよ今の魔法!?」

「す、すみません!ちょっと新しい魔法を思い出したので試しに…」

「試すなら先に言え」

「はい…本当にすみませんです…」

「それにしても凄い威力の魔法だね。サンダーストームって言ってたっけ?」

「はい」

「サンダーストーム?雷属性でも上位魔法だろそれ」

「え、そうなんですか?」

「しかも範囲攻撃だ」

「へ、へぇ……そうなんですね(ちょっと使う場所考えないとな魔法ってことね…)」


 サンダーストームが上位魔法だということやその威力にも驚いたが、何よりも散乱する全ての的に放心状態になるミオ達。


「とりあえず……穴掘って的を立てたら練習できますか?」

「いや、無理だろ。根元から折れてるからな」

「困ったねぇ…」

「……すみません」


 その時、ミオは思い出した新しい魔法の中に使えそうな魔法を思いついた。


「あの……新しい魔法の中に、的になりそうなものがあるんですけど…」

「どんなヤツだ?」

「いや、まだ使ったことがないのでどんな魔法かはわかりませんが…」

「まぁ、どうせ的なくなっちゃったんだし、いろいろやってみたらいいんじゃないかな」

「そうだなー」

「じゃあ……ちょっとやってみますね」


 ミオは的が立てられていた場所に立って、両手を翳して目を閉じて魔法陣を頭の中に描いた。


「アイスブロック!」


 すると、ゴゴゴゴゴ…という地鳴りとともに、ミオの前にとても頑丈そうな氷の壁が現れた。

 これは使えそうな予感。

 3人の魔導師も驚きながら見ている。


「これでどうでしょう?」

「お前、ホントに凄いな!」

「ひんやりした空気が漂うし、夏場の練習にはとても助かるかも!」

「試しに攻撃魔法打ってみようぜ!」


 この氷の壁はかなりの強度のようで、炎攻撃でも融けることがなかった。

 今までの的よりも耐久性に優れているようで、ミオの全力サンダーボルトでも破壊されなかった。

 素晴らしい!


 それに、アイスブロック……小さいものを作れれば、飲み物に使えるのでは?

 ミオは、サイズを調整すべく魔力を調整してアイスブロックの大きさを変える練習に励んだ。


 こうしてしばらくすると、国王に報告に行っていたカミーユが戻って来たようで、訓練場にミオを探しに来た。


「…何だこれは?」

「あ、師団長。これはミオの新技ですよ」

「新技?じゃあ、アレもか?」


 カミーユが指を差したのは……氷の壁ではなく、散乱する瓦礫やらなんやら…


「あー、あれもミオの新技だな」

「凄い威力でしたよ!」

「途中で中断したから最終的にはどんな威力かわかんないけどな」

「えーと……グレイヤール師団長…?」

「ミオ……魔力の調整をしろと何度も言っただろうが!」

「す、すみません!いや、私もどんな魔法かわからなくて…まさか範囲攻撃の魔法だったとは。しかも上位魔法とか…」

「はぁ?何使ったんだいったい?」

「えーと、その……サンダーストームという魔法を…」

「はあ!?サンダーストームだと!?」


 まさかのカミーユも驚く魔法だった。

 恐るべし、サンダーストーム。


「まぁ、いい。瓦礫の片付けは後にするとして、ミオ、一緒に来い」

「え、どこにですか?」

「国王がお前に会いたいんだとさ」

「……え、なぜ!?」

「そんなことは知らん。ほら行くぞ」

「いやいや、ちょっと待ってください。私、こんな格好ですし…」

「問題ない」

「王様に会うマナーとか私知りませんよ!?」

「あぁ、国王はそういうの全く気にしないから大丈夫だ」

「ででで、でも…」

「いいから。行くぞ」


 カミーユはミオの腕をつかむと、王宮へ向かって歩き出した。

 ミオは腕をつかまれているため、否が応でもついて行くしかなかった。

 心の準備がぁ……






 ―――5月26日


 新しい魔法を試した。

 サンダーストームは……簡単に使っていい魔法ではないことがわかった。気をつけよう…

 でも、アイスブロックはとても使える魔法だ。

 魔法の練習の的にするのにとても重宝しそうだ。

 他の魔法はまた今度試そう。


 それにしても…


 今日は国王が外交から戻って来て、なぜか私も謁見することになった。

 そして凄いことがわかった。

 なんとお母さんと国王は……






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