79 実は王様だったり
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「ちゃんと通信できますね、良かったです」
「おぉー!すげーな!」
第二騎士団と第三騎士団にクリスタルを設置して、王都へと戻って来たミオ。
ちゃんと通信できるか試してみると、問題はなさそうだった。
今通信しているのは第二騎士団。
興奮するリシャールの後ろで、第二騎士団の皆も大騒ぎしているのが聞こえる。
同じように、第三騎士団の方も試してみると、こちらも問題はなさそうだった。
これで、全騎士団での連携が取りやすくなるだろう。
それに、個人用のクリスタルもあるので、どこからでも連絡が出来るようになった。
「師団長」
「何だ?」
「クリスタルでどこからでも連絡できるし、王都の外も1人で行ってもいいですよね?」
「いいわけあるか!」
「何でですか!?」
「いい加減、王女だという自覚を持て」
「王女だって1人で出かけますよ?」
「お前は危なっかしいから駄目だ」
「えー」
どこがどう危なっかしいと言うんだ?
ミオにはカミーユの言っていることが全く理解できなかった。
―――――――
―――――
―――
ペリグレット王国を旅する初老の男性がいた。
その男性は、馬車に乗ってたくさんの町や村を巡り、旅の最終地点である王都・モンフォワールへとやって来た。
馬車を降りた男性は、街の人に尋ねながら宿屋へと向かい宿泊の手続きをすると、部屋に荷物を置いて窓から見えた噴水広場へと向かった。
「よし、いい感じに付いた」
噴水広場のベンチに座って、雑貨屋で買って来たウサギのチャームを新しいステッキに取り付けたミオ。
乳白色のシンプルなステッキに、薄紫色のリボンを付けたウサギのチャームが良い感じのワンポイントになった。
ステッキを空に翳して、ミオは満足気に笑みを浮かべた。
「隣に座っても良いかね?お嬢さん」
「え?……あ、もちろんですよ!どうぞどうぞ」
「ありがとう」
ミオの隣に、初老の男性が座った。
何だろう?普通の男性なのだけれど……何だかとても気品を感じる男性だ。
「お嬢さんは、魔導師なのかな?」
「はい、そうですよ。王宮魔導師団の魔導師です」
「素晴らしいステッキをお持ちのようだ」
「先日、ルシヨット魔導国で購入して来たんですよ。お気に入りのチャームを付けてみたところです」
「ほう、ルシヨット魔導国とな」
「はい。そこの王様とは元同僚なんですよ。とても良くしてもらっています」
「なるほど」
初老の男性は、優し気な笑みを浮かべながら空を見上げた。
そして少しの間、ゆっくりと流れて行く雲を見ていた。
「この王国は、ルシヨット魔導国には攻め込まれたと聞いておったが」
「はい。ルシヨット王国の前国王が攻めてきましたよ。オルレーヌの港町は大変なことになりました。でも、どちらにも犠牲者が出なくて、本当に良かったと思ってます」
「攻め込まれたことを恨んではいないのかね?」
「うーん……犠牲者が出ていたら恨んでいたかもしれませんけど……別に恨んだりはしていませんよ。ラウルさん……えーと、今の王様がちゃんと処罰していますし」
「そうか」
「私は、戦争とか人々が争うことは嫌いです。でも、いろんな考え方があるので、争いごとは避けられないのかもしれません。善悪の判断は人それぞれですし。どんなに平和な国の中でも、ちょっとしたいざこざなんかは普通にありますからね……人々が幸せに暮らせる王国でありたいと思うので、それを壊そうとする人がいるのなら、全力で戦います」
「この王国を愛しておるのだな」
「私は、王国を守る魔導師なので!」
「はっはっはっ!頼もしい魔導師だ」
「それと、王国だけではなくて、困っている国があれば出来るだけ力になりたいなとは思います。まぁ……この王国は決して軍事力が高いとも言えないし、小さな王国なのでどれだけ力になれるかはわかりませんけど」
「そういうのは、気持ちが大切なのだよ」
ミオは、今まではこの王国のことしか知らなかったけれど、ルシヨット魔導国に行くのに他の国のことも知ることが出来た。
今はまだほんの少しの国のことしか知らないけれど、もっといろいろな国のことを知り、交流を深められたらいいなと思っている。
「それにしても、この王国は何処に行っても温かい人々がたくさんおるの」
「私もそう思います。まだ、全部の町や村には行っていませんが」
「とても良い国だと思うよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
自分の王国が褒められるということは、何て嬉しいことなんだろう。
ミオは初老の男性に満面の笑みを向けた。
―――――――
―――――
―――
「ねぇ!どうしてミオは、あの竜を乗りこなせるわけ!?」
「何回も乗ってるからねー」
本日のネーオールの森周辺の見回りには、ミオとアリスが同行している。
学校が夏休みのため、アリスやアルバンも見回りには普通に同行するのだけれど、アリスはまだ慣れていないことと性格に若干難ありということで、よくミオと一緒に同行しているのだ。
何だかんだ言って、アリスはミオと一緒にいる時はとても楽しそうだ。
「てゆーか、何でミオは竜と話せるのに、私は話せないのよ!」
「それは私に聞かれても……そういうものなんだし、諦めなさい」
「むぅ……」
見回りの帰りに、いつものように水竜と遊んで来たのだけれど、さすがのアリスにも水竜を乗りこなすことは難しいようだった。
水竜なりに優しく飛び回ってくれてはいたのだけれど。
やっぱり……背が高いとバランスを取りにくいのか?
「まるで仲の良い姉妹みたいだな」
「そうですか?」
「もちろん私の方が姉よね?」
「何でよ!」
「見た目的に?」
「う、うるさいわね!」
身長の高さはともかく、金髪ツインテールよりも下に見られてたまるか!
アリス1人だと扱いに困る騎士団の皆も、ミオと一緒にいるアリスのことは、可愛い妹のように微笑ましく見ていた。
実際に、アリスはとても可愛らしい見た目ではあるのだけれど……気が強い性格や、お年頃の女子ということもあって、男性が接するのはとても難しいらしい。
「さ、帰ったら対戦するわよミオ!」
「えー、何でよ」
「私も早く中級に上がりたいのよ!私だけ初級なんて嫌なの!」
「アリスはまだ入ったばかりなんだし、焦る必要はないと思うわよ」
「アルバンなんて上級なのよ!悔しいじゃない!」
「アル君は天才なんだから、仕方がないと思う。副師団長だし……それに、魔導師としての経験が違うよ」
「だから、私もたくさん経験を積んで、追い越したいのよ!」
「アリスだって才能あるんだし、すぐに追いつくわよ」
成長したいと言う気持ちは大切だ。
どんなに努力を重ねても、成長したいと言う気持ちがなければ強くはなれないと思う。
まぁ、例外はあるだろうけど。
こうして、何事もなく見回りを終えて王宮へと戻った後、ミオはアリスに手を引かれて訓練場へと連れて行かれ、問答無用で対戦相手をすることになった。
アリスは容赦のない攻撃をミオに放ち、ミオは器用に箒を操作してアリスの攻撃を回避しながら、こちらからも攻撃をする。
本気でミオが攻撃してしまうと大変なことになるので、魔力を抑えての攻撃になるのだけれど……アリスにはそれが面白くないらしい。
「全力で攻撃して来なさいよ!」
「アル君いないからムリ」
「何でよ!」
「アリスも見たでしょ?訓練場が崩壊するのを」
「……そうだったわね……だったら、ちょこまか逃げるのをやめなさいよ!」
「逃げないとアリスの攻撃が当たるでしょうが!全力で逃げるわよ、痛いもん!」
空中戦となると、アリスには箒を操作しながらの攻撃がまだ難しいらしく、かなり苦戦していた。
こればかりは、経験を積んで自分なりのコツをつかむしかない。
こうして、ミオとアリスが対戦していると、国王が初老の男性を連れて訓練場へとやって来て、2人の対戦を見物していた。
2人が地上へと降りて来て、対戦が一段落したところで国王がミオを呼んだ。
「ミオ、ちょっと来てくれ」
「ん?」
ミオが国王の方に振り返り駆けて行くと、アリスも後ろから追いかけた。
国王の隣にいる初老の男性を見て、ミオが驚く。
「あれ、あなたは昨日の……」
「何じゃ、ミオの知り合いか?」
「知り合いと言うか、昨日街でお会いした方ですよ」
「昨日は話し相手になってくれてありがとう」
「いえいえ。こちらこそ、お話が出来て楽しかったです」
「そうか。ならばこの方のことは知っておるのだな」
「ん?ただお話をしただけなので……」
話しただけだし、特にお互い名乗りあったわけではない。
ミオが首を傾げていると、国王が男性のことを紹介してくれた。
「こちらは、ユニオール王国の国王だよ。ユニオール国王、これが先程話をした私の娘です」
「……え、国王様だったんですか!?」
「すまないね、お嬢さん。私は、ヴォルザック・ユニオールだ。この王国のことを見させてもらっていたのだよ」
「私はミオ・ペリグレットです。す、すみません……まさか王様だったなんて」
ユニオール王国は、ルシヨット王国よりも小さな国で、ガストビの政策によって2年間ルシヨット魔導国の支配下に置かれていたらしい。
ルシヨット魔導国がペリグレット王国に攻め込んだ際にも、協力を強制されたのだとか。
ラウルが国王となり、ようやくルシヨット魔導国の支配が解かれ、ユニオール王国は諸外国との交流を始めることした。
そして、ラウルに勧められてやって来たのがペリグレット王国だった。
「この王国は、本当に素晴らしい王国だ。是非とも、我が国とも友好条約を結んでいただきたいと思い、突然のことで大変恐縮ではあったが、王宮へと足を運ばせてもらったのだよ」
「ペリグレット王国としても、友好国が増えることは嬉しいことだ。なぁ、ミオ」
「そうですね。てゆーか……王様なのに、お1人で来られたんです?」
「護衛など引き連れてきたら、本当の姿が見れぬだろう」
「そういうものなんです?」
「そういうものだよ」
なるほど……だったら、ミオも一人旅が許されるのでは?
そんなことを心の中で考えながら、今度この王様が言ったことを理由にして説得してみようと思うミオだった。
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