78 ただいま、ペリグレット王国
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ルシヨット魔導国からの帰路は来た時とは少し違っていて、そのため途中で立ち寄る港町も違う町だったので、なかなか楽しめる船旅だった。
ただし、船上での日々が退屈なことに変わりはなく……
1つだけ行きの船旅と違っているのは、ミオの船酔いが大幅に改善されたということ。
やっぱり特級魔導師のステッキは凄かった!
ヒールの効果が明らかに違っていて、1回のヒールで12時間程の効果が得られるようになった。
そのため、寝起きのポーションが必要なくなり、朝起きたての不安というものがなくなったのだ。
まぁ、寝坊してしまうと効果は切れてしまうのだけれど……さすがに12時間も寝るなんて失態は起こしていないので、そこは大丈夫だ。
「明日はいよいよオルレーヌに到着かぁ……退屈な割に案外早かったな」
2ヵ月と少しぶりの帰国だ。
久しぶりに会う皆を思い浮かべると、何だか胸が躍ると言うか何と言うか。
ミオはニコニコしながら甲板で海の向こうを眺めていた。
「楽しそうだな、ミオ」
「シャルルさん。だって、久しぶりのペリグレット王国ですよ?皆に会えるの楽しみじゃないですか」
「ふふ、確かにそうだな」
「それに、早くクリスタルを設置して驚かせたいですし」
「それは私も早く見てみたいと思うよ」
「新しい魔導師とか入ってると嬉しいなぁ」
「どうだろうな」
さすがにそれはないかなと内心では思っているけれど、もしも魔導師が増えていたら、嬉しいことこの上ない。
「これ、風魔法使ったら船が速く進むんですかね?」
「海の魔物を刺激してしまうから、絶対に使わないでくれ」
「……ですよね」
シャルルの笑顔の奥に、黒い何かが見えたような気がした。
この日は、船上での最後のディナーということで、とても豪華な料理が並べられて宴会を行った。
本当に、この航海に同行してくれた皆には感謝しかない。
また船旅をする時には、同じメンバーで行けたらいいなと思う。
賑やかな夜が更けていき、翌日に船はオルレーヌの港へと着港した。
「お帰り、ミオちゃん!船酔いは大丈夫だったかい?」
「ただいまです、シルヴィーさん。最初は苦労しましたけど、凄いステッキを手に入れたので、帰りはとても快適でしたよ」
「凄いステッキ?」
「これです。特級魔導師のステッキですよ」
「特級?……ななな、なんと!ミオちゃんは特級魔導師なのか!?」
「そうみたいです」
出迎えてくれたシルヴィーが、ミオが特級魔導師だと聞いて、飛び出さんばかりに目を見開いて驚いた。
やっぱり、そんなに凄いことなんだ、特級魔導師って。
船からの荷下ろしが全て終わると、ミオはシャルルと一緒に船長や船乗り、料理人の皆に挨拶をして、ここで解散となった。
ミオ達も王都へと向かって出発する。
やっぱり、自分の国というのはとても落ち着くな……そう思いながらミオは馬車の小窓から外を眺めた。
ミオ達を乗せた馬車がネーオールの森の湖の横を走り抜けている時、盛大に水しぶきを上げながら水竜が飛び出して来た。
突然の出来事だったため、ミオの魔法は間に合わずに皆ずぶ濡れだ。
ルシヨット魔導国からの派遣魔導師なんか、驚きすぎて目を見開いて口をパクパクさせていた。
―――ミオ!!どこ行ってたんだよー!僕、寂しかったんだからねー!
……ルシヨット魔導国に行って来るって言いましたよね?
―――あ、そういえばそうだったかも?
そうですよ!もう、皆ずぶ濡れじゃないですか…
―――ごめん、ごめん。久しぶりにミオが通ったからさー、僕嬉しくてつい
水竜さんは元気にしてました?
―――僕?うん!この通り、とても元気だよ!
他の皆さんは?
―――皆元気だよ!
それなら良かったです。それじゃあ、また見回りの時に来ますね
―――うん、待ってるね!
水竜は嬉しそうに湖の中に戻って行った。
少しやんちゃ過ぎるところがアレだけれど……まぁ、元気そうで何よりだ。
ミオがずぶ濡れになった皆を魔法で乾かすと、一行は王宮に向かって再び動き出した。
―――――――
―――――
―――
「お帰りなさい。長旅、お疲れ様でした」
ミオ達を乗せた馬車が王宮に到着すると、待機していた騎士団の皆が出迎えてくれた。
ここは何も変わっていないようで、何だかホッとする。
ミオはシャルルに手を引かれながら馬車を降りると、大きく伸びをして凝り固まった体をほぐした。
するとそこに、アリスが顔を出した。
「アリス、ただいま。お久しぶりね」
「お帰り、ミオ!随分と遅かったじゃないのよ!」
「え?予定通りじゃ……なっ!?」
突然アリスがミオに向かって攻撃魔法を放ち、ミオは咄嗟にホーリーシールドで防いだ。
突然の出来事に騎士達も驚いている。
「な、何すんのよ!?」
「腕はなまっていないようね、ミオ!もう一発行くわよ!」
「はぁ!?こんな所でやめなさいって……マジカルシーリング!」
アリスの首に光の輪がはめられて、アリスから攻撃魔法が放たれることはなかった。
今までは魔力封印を使うと全魔力が消費されていたミオだったけれど、特級ステッキのおかげなのか、1人に対してだと全魔力を消費しなくても使えた。
ちなみに、簡易的な魔力封印であれば、詠唱をはしょっても使える。
場合によっては解除されてしまうけれど。
「ちょっと!何すんのよミオ!外しなさいよこの首輪!」
「こっちのセリフよ!全く、こんな場所で攻撃魔法なんか使ったら危ないでしょうが……」
「わかったわよ!訓練場に行ってからにするから、早くこの首輪外してってば!」
「あのね、私はこれから王様への報告もあるし、今日は訓練場なんか行かないわよ」
ミオは盛大にため息をつきながら、自分の荷物を受け取った。
部屋まで運ぶと騎士は言ってくれたけれど、自分の荷物くらいは自分で運ばないとバチが当たるってものよ。
ドレスなどが入った荷物は、エレーヌが運ぶと言うので任せることにする。
「王様への報告が終わったらお土産渡すから、師団長と一緒に執務室で待っていて」
「お土産?私に?うん、わかった!」
「じゃあ、封印外すけど……攻撃してこないでね?」
「しないわよ!」
ミオが魔力封印を解除するのにアリスの前に立ちながらふと思った。
あれ……目線の高さが高くなってないですか?
アリスは元々ミオよりも少しだけ身長が高かったけれど、見上げる程ではなかったはず。
これは、もしかして……
「アリス……身長伸びた?」
「伸びたわよ?今は確か……165cmだったわね」
「なっ!?」
両手と両膝を地面について項垂れるミオ。
「わわっ!大丈夫っすかミオさん!?」
「私にも成長期戻って来ないかな……」
「何落ち込んでるのよ?ミオにだって成長期くらいあったでしょ?それじゃあ、執務室で待ってるわね!」
ミオにとどめの言葉を残して、アリスは嬉しそうに走り去って行った。
まったく、何だったんだ……てゆーか、何で皆そんなに背が高くなるのよ!?
「何か……凄いっすよね、あの子」
「……うん、そうだね」
「お、俺はミオさんはそのままでいいと思うっすよ!」
「私もそう思うよ?」
シャルルが微笑みながらミオを起き上がらせた。
そして、走り去って行くアリスに目を向けながらクスッと笑った。
「ミオのことを随分と慕っているようだな」
「そんなんじゃないですよ……敵視されてるだけです」
「ふふ、違うと思うよ」
「俺も違うと思うっす」
「えー……いつも攻撃されてますよ?私」
シャルルが言うように、慕われているのならいいのだけれど……とてもそうは思えないミオだった。
ミオはシャルルと一緒に国王の所へと向かい、調印式での書類を渡しながら今回の報告をした。
そして、シャワー設置のためにラウルが魔導師を派遣してくれたことを説明しながら、その魔導師を紹介した。
滞在中は王宮で寝泊まりしてもらおうと思ったけれど、出来れば宿舎で……と言われたので、魔導師の宿舎へと案内することにした。
それから、2ヵ月ぶりの娘との再会に、国王が滝のような涙を流して号泣したのは、言うまでもない。
―――――――
―――――
―――
国王への報告を終えてミオが魔導師団の執務室に行くと、カミーユとアルバン、アリスが待っていた。
「ただいま戻りました」
「ミオー!お帰り!」
「ただいま、アル君」
「元気そうで安心したよ。船酔いで死んでるかと思ったからな」
「私も成長したんですよ!」
ミオは、シャワーを設置してくれる魔導師のことを紹介すると、部屋に案内するため執務室から出て行き、再び執務室に戻って来ると、お土産のステッキとクリスタルをテーブルに並べた。
まず、個人用クリスタルを手渡して使い方を説明し、各騎士団に設置するクリスタルは明日設置しに行くことになった。
そして、ステッキを選ぶため、訓練場へと移動する。
……と、その前に。
もしかして、アルバンの身長がとても伸びたのでは?なんて思っていると、なんと169cmになったらしく、ミオは酷く落ち込んだ。
落ち込むミオをアルバンが慰め、アリスが傷口に塩を塗り、最終的にはカミーユに慰められて訓練場へと向かった。
こうして、訓練場で試し打ちをしてみると、ラウルの見立て通り、カミーユとアルバンは上級、アリスは初級だった。
「何で私は初級なのよ!」
「仕方がないだろうが、お前はまだ入ったばかりなんだし」
「そうだよ、アリス。そんな簡単に階級が上がるわけがないだろ」
「アルバンのくせに生意気!」
「僕の方が年上だからね!」
「2人とも、仲良くしようね……」
相変わらずの相性の悪さのアルバンとアリス……見てるとちょっと面白いのだけれど。
ラウルも言っていたけれど、階級が上がる程次の階級に上げるのは大変になる。
アリスはまだまだ成長の幅が大きいということだから、ここから頑張って欲しい。
「お前もステッキ買い替えたのか?」
「そうですよ。あ、そうだ……試し打ちしてもいいです?アル君もいることですし」
「試し打ち?何か変わったのか?」
「まぁ、新しい魔法と言うか……まずはいつも通りの魔法から……サンダーボルト!」
もの凄い威力の雷が地面を貫き、大きく地面を抉った。
これは……凄い。
「はぁ!?どうなってんだそりゃ!?」
「何か、私……特級魔導師みたいで」
「特級だと!?」
「まずはって言ったよね?もっと凄い魔法があるの?」
「そうだよ」
「ここの地面……なくなっちまうんじゃないだろうな?」
「さすがにそれはないかと……」
アルバンが地面を元に戻してミオがアイスブロックを設置すると、ミオはもう一度的に向かってステッキを構えた。
新しい魔法……どれくらいの威力なんだ?
「我が名はミオ、サンダーボルト!」
さっきのアンダーボルトとは桁違いの雷が地面を貫いた。
的はすべて破壊されて地面が大きく抉れ、訓練場全体がひび割れて崩壊した。
「あ……」
「何なんだこれは!?」
「これ、僕でも元に戻せないと思うんだけど」
「だ、大丈夫!全力で魔力強化するから!」
ミオがアルバンに魔力強化をかけて、何とか訓練場は元の形に戻った。
うーん……こんなに強烈な攻撃魔法、使う場面って訪れるのだろうか?
「何よそれ!?詠唱に名前を入れればいいの?私もやってみるわ!」
「ムリだよ、アリス。あの魔法は魔法陣も描き替えないとだから。ルシヨット魔導国にある、封印された魔導書が読めないと使えない魔法だよ」
「私もルシヨット魔導国に行って来る!」
「うーん……たぶん、読めないと思う」
「何でよ!」
「そういう魔導書だから」
もしもアリスが特級魔導師に成長したとして……この魔法を習得してしまったら世界が滅ぶのではないだろうか?ミオ、カミーユ、アルバンの3人が心の中でそう思ったことは、アリスには内緒だ。
そもそも、封印された魔導書が、攻撃的なアリスのことは認めないだろうけれど。
とりあえず、ルシヨット魔導国に行ったことは、ミオにとってとても有意義なことだったと思える。
あとは、ラウルに転移魔法を確立してもらって、気軽に行き来できるようになることを祈るばかりだ。
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お読みいただきありがとうございました!




