75 雨の日はインドアで楽しもう
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朝、雨の音で目が覚めたミオ。
もうすぐ夜明けの時間なのに、外はどんよりとしていて薄暗かった。
雨か……今日は何しようかな?
そういえば、最近気がついたことがある。
ホーリーシールドを使うと、雨が防げるのである。
水竜が激しく撒き散らす水しぶきを防ぐには、やっぱりいつものように水属性魔法を使って防ぐのが効果的だったけれど、雨くらいであればホーリーシールドが便利だった。
よし、後で雨の庭園を楽しんで来よう。
まだ早い時間だったけれど、すっかり目は覚めてしまったため顔を洗って身なりを整えた。
早いけど……図書室って開いてるかな?
廊下をウロウロして出会った使用人に聞いてみると、図書室は24時間利用できると言われたので、図書室まで案内してもらった。
朝食までここで時間を潰そう。
ミオは面白そうな本を探して、図書室の中を彷徨った。
こうして、ミオがこの日発見したのは小説。
空想の物語なのか実話なのかはわからないけれど、魔導師が世界中を旅する物語だった。
とても面白い内容で、ミオはとりあえず10巻までテーブルに運んで読み始めた。
―――――――
―――――
―――
「ミオ?」
朝食の時間となり、シャルルがミオの部屋を訪れると、そこにミオの姿はなく。
昨日は庭園を散歩していたけれど、今日はあいにくの雨だし、さすがに散歩をしているということはないだろう。
……ミオなら、雨の中の散歩もありえるか。
シャルルは少し悩んで、一応庭園を探してみることにした。
でも、さすがに散歩はしていなかったようで、庭園にミオの姿は見つけられなかった。
あと考えられる場所は……図書室か。
シャルルが図書室に向かおうとしたところで、ラウルと顔を合わせた。
「おはようございます、団長さん」
「あぁ、おはよう」
「あれ、ミオちゃんは?」
「部屋にいなくて探しているところだ。庭園にはいなかったから、今から図書室に探しに行こうと思っている」
「だったら、俺も一緒に行くよー」
こうして、シャルルとラウルが図書室に行ってみると、予想通り本に囲まれて座っているミオを見つけた。
「ミオ」
「……あ、シャルルさん。おはようございます」
「おはよう。凄い本の山だな」
「面白い小説があったんですよ!」
「おはよう、ミオちゃん。朝から読書なんて、ホントに本が好きだよねー」
「あれ、ラウルさんも?どうしたんです?2人で」
「ミオ、朝食の時間だよ」
「え、もうそんな時間でしたか!」
「きっと、俺達が探しに来なかったら、食事も忘れて夜まで本を読んでるんだろうね」
「そそそ、そんなことは……すぐに片付けます」
「あー、大丈夫だよ。この札置いといて」
「え、でもこんなにたくさん持って来ちゃってるし」
「何冊でも大丈夫だから」
こうして、昨日のように札を置いて、ミオ達は朝食を食べに図書室から出て行った。
夜明け前から図書室にいたことに、2人にはとても驚かれたけれど……まぁ、当たり前のことだろう。
そんなに早い時間から図書室にこもる人などそうはいない。
「雨の音で目が覚めたんで、図書室に行ってみたら入れたのでつい……」
「ミオらしいな」
「今日は雨だし、とりあえず図書室にこもる?」
「え、いいの?」
「別に構わないよー」
「私は少し騎士達と話をして来るよ」
「わかりました」
「俺は仕事でもしてこようかなぁ」
「ごめんね、毎日付き合わせちゃって」
「ミオちゃんが謝ることじゃないの!俺が招待したんだし、ミオちゃんはお客さんなんだからね!」
「でも、お仕事とかあれば手伝うよ?」
「何でだよ!」
こうして、王宮とは思えない賑やかな朝食を食べて、シャルルとラウルはミオを図書室まで送ると、それぞれ宿舎と執務室へと向かった。
やっぱり、食事は賑やかな方が楽しいし美味しく食べれる気がする。
きっと普段の食事は、ラウルは1人で寂しく食べてるんだろうな……と思うと、何だか胸が痛んだ。
同時に、ミオの父親であるペリグレット王国の国王のことも頭に浮かび、やっぱりラウルと同じように1人で食べるのは寂しいんだろうなと思った。
てゆーか、国王も食堂で食べればいいのでは?
ペリグレット王国に帰ったら提案してみよう、ミオは忘れないように携帯のメモに書き込んだ。
「さ、続きを読もう!」
ミオはテーブルに置いたままの本達の前に座ると、さっきまで読んでいた続きから読み始めた。
図書室にはここの魔導師や学生達もよく訪れるらしく、ミオが読書している間もかなりの人数が図書室へと足を運んでいた。
そして、誰もが本を読んでいるミオの姿を目にしていた。
そんなミオの姿がちょっとした話題となっていて、それによって図書室に足を運ぶ人の数も多くなっていた。
もちろん、ミオは気がついていないけれど。
何が話題となっているかと言うと、ミオの集中っぷりである。
図書室で、何だか小さくて可愛らしい女の子が、もの凄い速さでめちゃくちゃ集中しながら本を読んでいる……しかも、コロコロと変わる表情が何とも言えない……
そんな噂が広まり、いつの間にか図書室には人だかりが出来ていた。
「あの子よね?本に囲まれてる子」
「そうなのよ!凄い速さで読んでるでしょ!」
「あ、笑った……泣いた……って、今度は怒ってる。面白いな」
「誰だろう?見たことがない子だな。新しく入った魔導師か?それとも……学生か?」
「誰か、声かけてみろよ」
「あんな集中している子に声かけられるかって!」
最初は遠巻きに見ていた見物人達だったけれど、少しずつミオとの距離を縮めていき、いつの間にかミオは囲まれていた。
そんな見物人達にミオが気がついたのは、滝のような涙を流しながら最終話を読み終えて、しばらく感傷に浸った後のことだった。
「……はっ!?え、何で囲まれてんの私!?……あ、ご、ごめんなさい!この小説、読みたかったですよね?すぐに片付けます!」
「あー、違うんだよ。君が本を読んでるところが話題になっててね」
「え?」
何故に話題に?
ミオがキョトンとしていると、この人だかりに驚きながら、シャルルとラウルが入って来た。
「ミ、ミオちゃん?」
「この人だかりは……何があったんだミオ?」
「えーと……気がついたら囲まれてました」
まさかの国王の登場に、ミオの所に集まっていた人達も驚いて図書室は騒然としていた。
ラウルが集まった人達に理由を聞いてみると、もの凄く集中して本を読んでいるミオの姿が話題となっていて、それを見に人が集まって来たのだと彼らは答えた。
「コロコロと表情が変わるのとか……とても可愛いと言うか、面白いと言うか…」
「それに、あんなに早く本が読めるとか、どんな魔法なんだろうってですね……」
口々に語られる内容に、ミオはとても驚いた。
そして、そんなに見られていたということを知り、耳まで真っ赤になりながら俯いた。
別に、魔法を使って読んでいたわけではなく、普通に読んでいただけだし……え、そんなに読むの速かったですか?
「と、とりあえず、本を戻してきますね」
「私も手伝うよ」
「俺もー」
「すみません、シャルルさん、ラウルさんもごめんね」
ミオはシャルルやラウルと一緒に、小説を元の場所に運んで戻した。
小説は20巻ほどあり、この数を読み終えたことにシャルルとラウルはとても驚く。
これは……噂になるのは当たり前だと思った2人だった。
「さ、昼ごはん食べに行こうか」
「え、もうそんな時間なの?」
「やはり、気がついていなかったか」
「そうだと思ったー」
「……ちょっと、本を読むのに夢中で」
「ミオだから仕方がない」
「ミオちゃんだからねー」
「え、私だからって……どういうことです?」
くすくすと笑いながら図書室を出て行く2人を、ミオが眉間にしわを寄せながら追いかけて行き、そんな3人の後に続いて、集まった見物人達も皆図書室から出て行った。
そして、全員が向かったのは食堂。
ゾロゾロと移動する謎の集団に、さらに人が集まって大移動となったのは言うまでもない。
―――――――
―――――
―――
「雨、やまないねー」
「うーん……あ、前に話してたゲーム持って来たから、遊んでみる?」
「遊ぶ!」
ミオは部屋からゲームを持って来た。
2台のゲーム機で、ネット通信は出来ないけれどローカル通信は使えるのを確認しているので、テレビのないこの世界でも2人でなら対戦が出来る。
「シャルルさんは前にこのゲームやりましたよね?」
「ん?……あぁ、これならミオの家でやったな」
「じゃあ、シャルルさんはこっちで。ラウルさんはこれ使ってやるよ」
ローカル通信で2人対戦の設定をして、シャルルに1台渡してもう1台でラウルに説明する。
「私が一度やって見せようか?最初からラウルさんがやってもいいけど」
「よくわかんないし、ミオちゃんがやって見せてよ」
「うん、わかった」
ミオが説明しながらキャラクターを選んでセットする。
そして、シャルルとの対戦が始まった。
こういうゲームというのは、やっぱり男性の方が理解力があるんだろうか?
ミオがプレイしているのを見て、ラウルはやり方を理解したらしく、すぐに操作出来るようになった。
シャルルとはとてもいい勝負をしていて、見ていてとても楽しめた。
これって、もしかして……この中で一番プレイ時間が長いのはミオなのに、一番下手なのもミオなのでは?
それにしても、1人でするゲームはすぐに飽きてしまうけれど、こうして皆で遊ぶのはやっぱり楽しいなと思う。
テレビがあれば3人で出来たのにな……ラウルなら魔法でどうにか出来るのでは?と思ったけれど、それは少し難しいようだった。
ミオが持って来たいろいろなゲームを楽しんでいると、あっという間に時間は過ぎていった。
雨はまだ止みそうにない。
そんな日は、のんびりとゲームを楽しむのもありだと思う。
「コルトさんとか、ディナールさんも誘ってみる?」
「まぁ、たまには息抜きさせてあげないとだしねー」
「あ、そうだ。ヴィクシスさんも呼んで来ようか?それに、騎士さん達も。エレーヌさんは……一応声はかけてみようかな」
「私達だけ楽しむのも悪いからな」
「じゃあ、私呼んできますね」
「ちょっと待った!ミオちゃんはここにいて。俺が皆を呼んで来るから。ミオちゃんが宿舎に1人で行ったら……何かが起こる気がするよ」
「失礼ね、何も起こらないわよ」
ミオは否定したけれど、シャルルも内心ではラウルに同意していたことは内緒の話だ。
こうして、皆でゲーム大会をした雨の日だった。
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お読みいただきありがとうございました!




