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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第四章 交流
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74 封印された魔導書

のんびり更新中♪

「それじゃあ、まずここに魔法陣を描くよ」

「誰が?」

「ミオちゃんが」

「え?」


 ミオの前に1枚の紙が置かれ、何やら特殊そうなペンを持たされた。


 本日の午前中は、以前ラウルにお願いしていた通信用クリスタルを、ラウルの指導の下ミオが作成することになっている。

 そんなに難しくないからと言っていたラウルだったけれど、ミオにとってはかなり分厚い壁にぶち当たっていた。


「まず、基本的な外枠から描いてみて」

「基本的な外枠って?」

「えーと……魔法陣の基本」

「魔法陣の基本って?」

「…………ミオちゃん、魔法陣を描いたことは?」

「ないよ」


 いつものラウルの人懐こそうな笑顔が、引きつった笑顔へと変わった。

 シャルルは、魔法のことはよくわからないので、ミオの隣で成り行きを見守っている。


「魔法使う時って、頭の中に魔法陣を描くよね?」

「うん」

「それは出来てるんだ」

「だって、そうしないと魔法が発動しないじゃん」

「あのさ、ミオちゃん」

「ん?」

「その頭の中に描く魔法陣を、この紙に描くだけなんだけど」

「うーん……それが出来たら苦労しないよね?」

「いやいや、何で描けないのさ!?」


 何故と言われても、描けないものは描けないのだ。

 こればかりはミオにもどうすることも出来ない。


「そ、それじゃあ、俺が描いてみるから、真似して描いてみて」

「うん」


 ラウルがもう1枚紙を持って来て、ミオの向かい側に座って魔法陣を描き始めた。

 ミオがそれを見ながら自分の紙に描き込んでいく。

 ミオがいつも頭の中で描く魔法陣とは、少し違っているようだった。


「わぁー、ちょっと待って。もっとゆっくり……これで合ってる?なんか、私の頭の中に描かれる魔法陣とは違うんだよね」

「え、マジで?……とりあえず、これで合ってるから進めるよ?」

「うん」


 ラウルの言うところの基本的な外枠というものを描き終えると、今度は文字のようなものを描き込んでいく。

 だんだん魔法陣らしくなってきた。


「ここは、術者の名前を書き入れる場所だから、間違えないようにね」

「そんなものも書かれてるんだ」

「……今までどうやって頭の中に魔法陣を描いてたの?」

「どうやってって……こう、パッとだよ」


 今まで使ってきた魔法は、どれも頭の中に流れ込んできた魔法陣を思い浮かべていたから、どう描いたのかと聞かれても返答に困る。

 ラウルに言われたように、術者の名前を書き込む場所に自分の名前を入れて、ようやくクリスタルの基本的な魔法陣が完成した。

 間違っていないかラウルがチェックする。


「とりあえず、大丈夫そうだね」

「この魔法陣って、使い回せるの?」

「使い回せるよ」

「じゃあ、大切に取っておこう。たぶん、1人で描けって言われたら描けないし」

「難しくはないんだけどなー」

「難しいからね!」


 今描いた魔法陣は、普通の通信用クリスタルを作るための魔法陣で、出来上がったクリスタルは、魔力を込めれば誰でも通信可能なのだとか。

 ラウルに渡されたラウル専用とは少し違っていて、ラウル専用はラウルとミオ以外の魔導師が魔力を込めても使えないらしい。

 専用のクリスタルを作るには、魔法陣の中で描き替えが必要となり、ミオにはよくわからないので今は聞かないことにする。


「あと、通信場所の設定なんだけど」

「設定?」

「ここに、どこと通信するとか、誰と通信するとかの設定を書き込むと、対象クリスタルが選択できるようになるよ」

「うーん……アドレス帳的な感じかな?」


 とりあえず、第一騎士団、第二騎士団、第三騎士団と書き込んで、魔法陣が完成した。

 この魔法陣の上にクリスタルを置いて、魔力を込めれば通信用クリスタルの完成だ。

 4個のクリスタルを受け取り、ミオは1つずつ魔法陣の上に置いて魔力を込めていった。


「これで出来上がり?」

「そうだよ。1つに魔力を込めてごらん」

「うん」


 出来上がった4個のクリスタルの中から1つを手に取り、魔力を込めてみると……クリスタルの上に、4カ所の名称が浮かび上がった。

 タッチパネルのようになっていて、通信したい場所の名称に指で触れると、場所を選べるらしい。

 設置する時に設置場所を登録するので、今はまだ選択しても通信は出来ない。

 今設定してしまってもいいけれど、どれが何処だかわからなくなってしまったら面倒なので、設置する時に設定することにする。


「これで連絡が取りやすくなるよ、ありがとうラウルさん」

「どういたしまして。見回りにもクリスタル持って行けると便利だし、その分も作っておく?」


 魔導師の名前で設定して作れば、騎士団と同行する際に持ち歩いて連絡が取れるようになる。

 帰ってから作ればいいのだけれど、もう一度作っておけばミオの頭もさすがに覚えておけるだろう。

 各騎士団に設置するクリスタルとわからなくならないように、分けて袋に入れることにして、各魔導師が持ち歩くためのクリスタルも作成した。

 ラウルが予備のクリスタルも用意してくれていたので、それも頂いて行く。


「こんなに貰っちゃっていいの?」

「クリスタル自体は、すぐに手に入るからね」

「そうなんだ」

「もしも、壊れてしまったりして足りなくなったら、いつでも連絡してよ。クリスタルを送ってあげるから」

「うん、ありがとう」


 こうして、クリスタル作成が終わると昼食を食べに食堂へと向かった。

 食堂に着くと、その広さと魔導師の人数に、ミオとシャルルは目を見開いて驚いた。

 何なんですか、この食堂の広さは!?

 第一騎士団と魔導師団の食堂の4倍はあるんじゃないですか!?


「広っ!!」

「学生もここで食べるからね」

「それにしても、うちの食堂とは比べ物にならないよ」

「まぁ、あの食堂もこじんまりとしてて、俺的には居心地良かったけどねー」


 食事スペースが2階にもあって、とても多くの人達が食べられるようになっている。

 圧倒的な規模の違いを感じるな。

 騎士団と魔導師団、それに各領主の騎士団の人数を合わせても、ペリグレット王国の防衛人数ってこの世界では最少なんじゃないかと思ってしまう。

 防衛人数が最少ってことは……もしかして最弱国家なのでは?

 あ、でもその分を4体の竜達が担っているということか。


 食堂での食事は気分的に落ち着くかも、なんて思っていたミオだったけれど、こんなにも広いと逆に落ち着かないような気もしてきた。

 まぁ、でも……王宮で食べるよりは気が楽なのは確かだと思う。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 昼食を食べて少し雑談をした後は、ミオが心待ちにしていた図書室に案内してもらった。

 どんな魔導書があるのかとてもワクワクする。

 問題は……内容が理解できるかということだけれど、まぁ、ラウルもいることだし何とかなるだろう。


「ここが、ルシヨット魔導国の王宮図書室だよ」

「ここも広っ!!」

「凄い本の量だな」


 天上の高さと部屋の広さに驚いたけれど、何よりも驚かされたのは本の多さだ。

 何なんですか、ここの本棚は!?

 本がぎっしりと詰まった本棚がそびえ立っていて、天井まで伸びているではないですか!

 ラウルが箒を持って来いと言った理由がようやくわかった。


「何の魔導書を読みたいの?」

「え、決めてないよそんなのは。目についたものを片っ端から読もうと思ってたし」

「……そうやって、ミオちゃんは図書室に引きこもるんだね」

「と、とりあえず見て来るね」


 ミオは箒に乗って、天井近くの本棚から見て回ることにした。

 なかなかに興味深い題名の本がたくさん並んでいたけれど、手に取って開いてみると……どれも難しすぎて読めたものではなかった。

 泣く泣く本棚へと戻す。

 そんなことを繰り返していると、何かが光っているような場所を見つけた。

 誰かのクリスタルでも光ってるのだろうか?

 ミオは、光が漏れている方に箒を進めてみた。

 長い本棚の奥を曲がって、その先の角の一番下の段に光を放っている本を見つけた。

 こうして光を放たなければ、絶対に目を向けないような場所にある本だった。

 箒から降りてその本に手を伸ばしてみる。

 それは、とても豪華な装飾が施された、分厚い魔導書のようだった。

 本棚から引き出して手に取ってみると、その重量に驚かされる。

 これは……テーブルに置かないと読めない本だ。

 ミオは両手で本を抱えて、シャルルとラウルが待つテーブルへと向かった。


「随分と重たそうな本を見つけて来たな」

「凄くないです?めちゃくちゃ光ってるんですよ、この本」

「光ってる?」


 ミオは「よいしょ」とテーブルに本を置いて椅子に座った。

 怪訝そうな顔でラウルに目を向けるシャルル。

 ラウルがミオに確認するように質問した。


「ミオちゃんさ、その本どうやって見つけたの?」

「何か、光ってる場所があってそっちに行ってみたの。そしたら、この本がめちゃくちゃ光ってて……読んで下さいって、自己主張してるのかと思ったんだよ」

「何処にあったの?」

「凄くわかりにくい本棚の一番下」


 ラウルがテーブルに置かれた本を見ながら顎に手を当てた。


「その本、読めるの?」

「え、そんなに難しい本なの?重くて立ったままだと開けなかったし、中はまだ見てないけど」

「とりあえず……開いてみなよ」

「うん」


 ミオは、豪華な装飾が施された本の表紙を開いた。

 すると、今まで光を放っていた本から、スーッと光が消えていった。


「あ、光が消えたよ」

「てゆーか、それ開けたんだ?」

「え?」

「その本、封印されてるからごく一部の人にしか読めないんだよね」

「どういうこと?」

「閉じてみて」


 ラウルに言われて本を閉じてみると、その本はラウルが開こうとしても表紙を動かすことが出来なかった。

 もう一度ミオが開いてみると、普通に表紙を開くことが出来た。


「ね、こういうこと」

「……もしかして、めちゃくちゃ危険な本なの?」

「うーん、どうだろうね?ミオちゃんが開いても、俺にはただの白紙にしか見えないからさー、内容はわからないんだよ」

「え、そうなの?」

「たぶんだけど、ミオちゃんがその本の内容を話そうとすると、言葉を封じられると思うよ」

「それ、めちゃくちゃ怖いんだけど!?」

「この白紙のページに書いてある文字、声に出して読んでみてよ」

「…………あれ、言葉に出来ない」

「でしょ?」


 このやり取りを見ていて、シャルルもミオが言っていたことがよく理解できた。

 この本を読める人にだけ光って見えるということだ。


「とりあえず、読んでみなよ。危険な本ではないと思うから。たぶん、悪用を防ぐために選ばれた人しか読めないようになってるんだと思うよ?」

「うん……じゃあ、読んでみる」


 本を読み進めてみると、どうやらこの本には、今使っている魔法をより強い魔法に変える方法が書かれているようだった。

 何で封印する必要があったんだろう?と思ったけれど、魔法を悪用する人がこれを読んだら、脅威的な魔法になってしまう……そうならないための封印なのかもしれない。

 これを読めた人でも、悪用した場合には天罰がくだると書かれてある。

 天罰……怖すぎる!

 そして更に、魔法陣を少し描き替えるなんてことが書いてあり、ミオは固まって額から変な汗を流した。


「ミオ?」

「何か……固まっちゃったねー」


 石化しそうなオーラを放っているミオに、シャルルとラウルは顔を見合わせた。


 これ、私には無理なのでは?そんなことを考えながら、とりあえずページをめくってみた。

 まだ魔法陣は描かれておらず、その魔法の仕組みや原理などがひたすら文章で書かれていて、ミオは頭の中で何かがパチパチ言っているような感覚に包まれ……テーブルに突っ伏した。


「……大丈夫か?ミオ」

「具合でも悪くなっちゃった?」

「……頭がショートしそう」

「確か……爆発しそうということだったか?」

「そうですよ」

「え、爆発!?頭が!?」

「煙、出てませんか?」

「安心してミオ。煙など出ていないから」

「頭から煙!?ミオちゃん、ちょっと休憩しようか!」


 テーブルに置いてある本には、使用中という魔法の札を置いておき、この場から離れることが出来るらしい。

 ラウルに手を引かれて、一旦休憩をしに食堂へと向かった。


「はい、これでも飲んで頭を休めて」

「ありがとう、ラウルさん」

「そんなに難しい内容なのか?」

「うーん……どうなんでしょう?私、魔法陣って苦手で……あの本……って、説明できなかった!」

「魔法陣が描いてあるの?」

「まだ、そのページまでも辿り着いてないよ……」


 何となく察したラウルが、時間はまだあるしゆっくり読んでみなよと言ってくれた。

 あの本は、封印されているから持ち出しは可能なんだとか。

 持ち出したところで、読める人は限られているかららしい。


「でも……何だか怖いし、図書室で読むよ」

「今日はどうする?」

「休憩したら読みに行く。気になるし」

「ミオちゃんって何か凄いよねー」

「私もそう思うよ」

「え、何も凄いことなんてないですよ」


 紅茶を飲んで頭をリフレッシュさせて、ミオは再び図書室へと向かった。

 シャルルとラウルには悪いので1人で行くと言ったのだけれど、心配だから1人には出来ないと言われて、結局3人で図書室へと戻った。


 こうして、何とか頭をショートさせずに理解困難な文章を読み進めていくと、ついに魔法陣のページへと辿り着いた。

 正直、魔法陣を見たところで、それまで書いてあった文章が理解出来るわけではなかったけれど、そこからは不思議なことに、魔法陣がミオの頭の中に流れ込んで来た。

 しかも、ミオの頭の中にある魔法陣に合わせて変換されながら。

 ミオがいつも頭の中に描いている魔法陣は、どの魔導書のものとも少し違っていた。

 どうして違っているのかは、理由がわからないけれど。

 それでも、こうして自動変換されて頭の中に入って来るというのは、とても助かることだ。

 あの難しい文章が理解できていなくても、魔法自体は理解して使いこなすことが出来る。


 全ての魔法陣が描き替えられた。

 この魔導書に書かれていた内容としては、それまでの魔法陣に自分の名前を刻み込み、詠唱にも自分の名前を入れることで、魔法を強化するというものだった。

 このことは誰にも説明は出来ないけれど、詠唱することで知られてしまうことになる。

 結局バレるんじゃ……などと思ったけれど、魔法陣にどのようにして名前を組み込むのかは知られないため、本の内容は他の人が知ることは出来ないらしい。

 上手く出来ているものだ。


 こうして、魔法陣のページとなってからはあっという間に読み進めることが出来たので、本を持ち出すこともなく読み終えることが出来た。


「何か、途中から読むの速くなったよね?」

「うーん……裏技発動、そんな感じ」

「えー、全然わかんないんだけど?」

「私にも説明できないもん。とりあえず、この本返してくるね」


 重たい魔導書を両手で抱えて、元あった場所に戻すと、その本はもう光を放つことはなかった。

 また、次に読める人物が現れるのを、ここでひっそりと待ち続けるのだろう。

 ミオは両手を天井に向かって伸ばして、大きく伸びをして2人の所へと戻って行った。

 他にも掘り出し物があるかもしれないので、この図書室にはまた来ようと思いながら、今日はこの辺で図書室から出ることにした。


 今日の収穫はかなりのものだろう。

 魔法を試したいと思うミオだったけれど、他国で試すわけにもいかない。

 早くペリグレット王国に戻って試したいところだけれど……あと1ヵ月は我慢しないといけないのだ。

 転移魔法が使えないって、本当に歯がゆいなと思う。

 でも、楽しみがあれば帰りの船酔いとも戦う気力が増すというものだ。


 こうして、ルシヨット魔導国での充実した日々を、ミオは存分に楽しんでいった。



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お読みいただきありがとうございました!

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