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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第四章 交流
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閑話 船の上で過ごす日々

のんびり更新中♪

 船の上で過ごす毎日は、出来ることが限られてくるので退屈でもあり、それでいて刺激的なことも起こったりする。

 それは、そんな船の上で過ごす日々のお話。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「どうしたんですか?ミオ様」

「……私も船の掃除がしたいです」

「ミオ様に掃除なんてさせられるわけがないでしょう」

「なんでですか?」

「ミオ様ですから」

「それ、答えになってないですよ!」


 甲板をデッキブラシで掃除している騎士の隣で、箒に乗りながら移動するミオ。

 朝食の後は皆で船の掃除をしていて、ミオだけが暇人なのだ。

 甲板を往復する騎士の隣を、ひたすら箒で移動し続けるミオ。

 騎士は苦笑いしながらミオに目を向けた。


「あのぅ……ミオ様」

「なんですか?」

「ずっと隣にいられると、俺も掃除しづらいのですが……」

「気にしなくてもいいですよ」


 ミオはにっこりと笑みを向けた。

 その後も騎士の隣を、ニコニコしながら箒に乗って移動し続けるミオ。

 結局、騎士が自分の担当エリアのブラシ掃除を終わらせるまで、ミオはニコニコしながら付きまとった。

 そんな毎日が数日続いた。


「……ミオ様」

「はい?」

「そんなに……このブラシ掃除がやりたいんです?」

「やりたいです!」


 根負けした騎士が、デッキブラシをもう1本持って来てミオに手渡すと、ミオは目を輝かせながらヒールを使って、箒から飛び降りてデッキブラシを握った。

 そして、騎士とは反対側からブラシがけをする。

 騎士は、楽しそうに掃除をするミオを見ながら、これをシャルルに見られたら怒られるんだろうな……などと思いながら盛大にため息をつくと、ブラシを動かし始めた。


 そんな騎士とミオの様子を背後から見ていたシャルル。

 ミオが毎日騎士に付きまとっていたのも知っていたので、ミオが掃除の手伝いをすることは、シャルルによって許可されることになった。

 ただし、ミオ1人で甲板を掃除するのではなく、騎士と一緒に掃除するという条件付きで。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 シャルルを始め騎士達は、毎日鍛錬を欠かさずに行っていた。

 筋トレしたり、剣を振ったり……そんな騎士達の傍で、ミオも船の上で出来る訓練を考えた。

 まずは、箒に乗りながら光の玉を出して操作してみる。

 こちらの世界に来て、魔力操作の練習をした時と同じような感じだけれど、あの頃と違って魔力操作は完璧に近い状態で出来るようになったので、光の玉をいくつも出して操作してみた。


「あ、ちょっと楽しいかも」


 いくつもの光の玉を、杖を使って自由自在に動かしていると何だか楽しくなってきて、そのうちに箒に膝を引っかけてさかさまになった状態で、光の玉を動かした。

 あまりにも見事な身のこなしに、鍛錬していた騎士達から拍手が沸き起こったほどだ。


 でも、魔力操作だけ練習していてもさすがに飽きてくるため、ミオは顎に手を当てながら考えた。

 海なら……攻撃魔法を放っても問題はないのでは?

 今、船の周りには海しかない。

 これだったら、誰かを巻き込んで迷惑をかけるなんてこともないだろう。

 ミオは海に向かって、ステッキを持った両手を翳した。


「フロージングランス!」

「ミオ!?」


 いくつもの氷の槍が海に向かって放たれ、シャルルが慌ててミオの名前を呼びながら腕をつかんだ。

 ミオの腕をつかみながら、険しい顔で海を見つめるシャルル。

 あれ……もしかして、私……やらかしましたか?


 ミオが海に目を向けた時、遠くから何かがこっちに向かって来るのが見えた。

 それは大きな波……ではなく、大量の海の魔物達のようだった。

 苦笑いするミオの額から、変な汗が滝のように流れた。


 これは、マズいかも……


 船長が慌てて船の向きを変えようとした。

 そんな船長に向かってミオが叫ぶ。


「私が全部防ぐので大丈夫です!」


 ここは、何が何でも魔物達の攻撃を防がなくてはいけない。

 ミオが何気なく放った攻撃魔法によって、魔物達を怒らせてしまったのだから。

 ミオは自分に魔力強化魔法をかけると、ホーリーシールドで船全体を囲んだ。

 そこに、海の魔物達が一斉に押し寄せて来た。

 ホーリーシールドによって、魔物達の攻撃は船には当たらない。

 ミオは、シールドが破壊されないよう全神経を集中させた。

 こうして、どれくらいの時間魔物に攻撃され続けたのだろうか?

 ミオのホーリーシールドにひびが入り始めた時、魔物達は船から離れて行った。


「ふぅ……終わったぁ…」


 ミオはホーリーシールドを解除すると、フラフラと箒を下降させて地べたに座り込み……ヒールを使っていなかったため、船酔いで青ざめながら項垂れた。


 その後、ヴィクシスの魔法によって回復したミオが、船長とシャルルの前に正座をさせられて、長い長い説教をされたことは言うまでもない。

 シャルルに悪魔が降臨しなかったことだけは幸いだっただろう……見てみたい気もするけれど。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 世界を巡る豪華客船には、シアターやラウンジ、カジノなどの娯楽施設や、ショッピングモール、プール、ジムなど、様々な施設が充実していて、海の旅を満喫できるようになっているという話を聞いたことがある。

 でも、それはあくまでもミオがいた世界での話だ。

 この世界の客船に、そんなものを求めてはいけない。

 ましてや、ミオが今乗っている船は、豪華客船ではなく王国の船だ。

 王族とはいえ、そんな1人や2人のために贅沢な施設など用意できるわけがない。

 きと、一般的な客船にだってそんな施設はないだろう。


 何が言いたいかと言うと……結局のところ、船旅は退屈なのである。

 船の上での箒の操作に慣れてくると、携帯ゲームなども出来るようになった。

 でも、元々長時間ゲームをプレイするタイプでもなかったミオは、せいぜい1~2時間潰せればいい方だった。

 しかも、いい所でどこかにぶつかるなどのトラブルが起こるため、悔しい思いをすることもしばしばである。

 読書も同じような感じだ。

 読書をしながら箒の操作にも集中するため、ベッドにゴロゴロしながら本を読むのと違って、疲労感がハンパないのだ。

 だったら、ベッドに寝転がって読めばいいのでは?と思うかもしれないけれど、ヒールやポーションで船酔い対策をしていても、読書という行為は船酔いを誘発しやすいらしい。

 まったく、困った船酔いだ。


 ミオは、今日もいくつもの光の玉で魔力操作の訓練をしながら、箒に乗って船上を漂っていた。

 そして、ふんわりとした雲が浮かんでいる空を眺める。

 そういえば、子供の頃は雲って綿あめみたいなものだと思っていたなぁ……あ、元の世界では雲なんて水蒸気の塊のようなものだったけれど、異世界では本当に綿あめみたいだったりしないかな?


 ミオは魔力操作の訓練をやめて、ゆっくりと箒を浮上させていった。

 あの雲、どれくらいの高さにあるんだろう?

 ミオ達が乗っている船がだんだん小さくなっていき、気がつけば霧の中にいるような感じになり……雲の上に出てしまった。

 飛行機で雲の上に出た時のような感じで、この世界でも雲のつくりは同じなのだと実感した。

 それにしても、雲の上って空が綺麗よね。

 なんて思っていたら、何やら大きな鳥?のようなものが近づいて来て……追い回された。

 必死に逃げ回るミオ。

 これって……確かロック鳥だったかな?ルシヨット魔導国との戦いの際に、ラウルが召喚していたのと似ている気がする。

 逃げ回るミオの姿を見つけた船上の人達は、どうすることも出来ずただ青ざめながら見守っていた。


「ち、ちょっと!?嘘でしょ!?私、なんにもしてないんですけど!?なんで追いかけてくるわけ!?」


 攻撃をするわけにもいかず、ひたすら逃げるミオ。

 ここは……ヒールで癒してみますか?回復魔法ではあるけれど、癒しの魔法でもあるわけだし、この巨大な鳥?ロック鳥?も癒されるに違いない。

 ミオは一か八か、ヒールを放ってみた。

 すると、ヒールの効果はあったようで、ロック鳥と思われる生き物から攻撃的なオーラが消えた。

 そして、安堵のため息をつくミオを、何故か背中に乗せて飛び始めた。

 なかなかいい子ではないか。

 こうして、ミオが船の傍まで降りて行くと、とても心配そうな顔をしたシャルルが大声でミオの名前を呼んだ。


「ミオ!!」

「……えーと……なんか、新しい友達が出来ました」


 船の上に戻ると、シャルルがミオを抱き寄せて「無事で良かった」と耳元で囁いた。

 そして……


「海の上も、空の上も、散歩は禁止だよ」

「……はい、ごめんなさい」


 悪魔まではいかないけれど、シャルルに何かが降臨したような気がしたのは……決して気のせいではなかっただろう。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 ペリグレット王国からルシヨット魔導国までは、船で約1ヵ月の旅となる。

 ミオ達を乗せた船の上では、日々ちょっとした事件が起きたり起きなかったり……


 ルシヨット魔導国までの船旅は、まだもう少し続く。



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