71 砂漠のオアシスと、海の嵐
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砂漠を進む、4頭のラクダと箒に乗った1人の魔導師。
彼らが向かう先には、この世界でも5本の指に入るほどに有名な観光名所でもあるオアシスがある。
ジリジリと照り付ける太陽の日差しの下、他の観光客達が暑さと戦いながらオアシスへと向かう中、5人はとても涼しげな顔で移動していた。
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時間をさかのぼること2時間ほど前。
ミオ達を乗せた船は、食料と燃料補給のためにとある島へと立ち寄った。
ここは、島の殆どが砂漠となっており、島の東西に港町、島の中央はとても奇麗なオアシスとなっているのだと、シャルルがミオに説明した。
「港からオアシスまでは、2~3時間くらいで移動出来るんだ。観光名所なので宿も多い。港町に宿泊もできるが……オアシスでの宿泊もおすすめだよ」
「オアシスですか。私、オアシスなんて物語の中でしか見たことがないので、一度見てみたいです!」
「わかった。それでは行きたい者を集めて行ってみよう」
「はい!とても楽しみです!」
こうして、ミオとシャルルはオアシスへと向かうことになり、皆に声をかけるとヴィクシスと騎士が2人同行することになった。
砂漠の移動には、こちらの世界でもラクダを利用するらしい。
ミオは、ラクダには乗ってみたい気持ちもあったけれど……馬よりも酔ってしまいそうなため、箒で移動することにした。
「オアシスはめちゃくちゃ楽しみっすけど……日差しが暑いっす!汗が止まらないっす!」
「砂漠だからな」
「それなら心配いらないですよ!」
ラクダに乗って砂漠の入り口まで移動すると、頭上にあった太陽を見上げて皆が苦笑いしていた。
オアシスまでは日差しがとても強くなるので、肌を守るために日差しを遮るポンチョ的なものを着させられる。
それで肌は守られるけれど、暑さは防ぐことが出来ないため全身から汗が噴き出してくる。
でも、そんな暑さには炎竜対策がとても役に立つのだ。
「ホワイトアウト」
ミオが1人ずつに魔法をかけていくと、それぞれが冷たい冷気に包まれて、砂漠の移動はとても快適なものとなった。
こうして、他の観光客達が暑さと戦いながらオアシスへと向かう中、ミオ達はとても涼しげな顔で移動していき、汗をかくこともなくオアシスへと到着した。
「す、凄いですね!オアシスって、こんなに綺麗な場所だとは思いませんでした!」
「ここは、5本の指に入る程の観光名所だからな。訪れる観光客の数も多い」
「俺も初めてっすよ!」
まるでリゾートのような風景が広がり、湧水が溜まった大きな泉の周囲にはたくさんの宿屋や店が並んでいて、1つの街のようになっていた。
良さそうな宿屋を選び、宿泊の手続きをしに行く。
夕食は宿屋で食べられるようなので、それまで各自自由行動となったけれど……結局、昼食は同じ店に集まったので、皆で食べてから解散した。
「この泉の水って、常に湧き出してるんですよね?」
「そうだな」
「でも、泉は大きくならないんですよね?湧き出した水って、どこに行っちゃうんでしょう?」
「生活をするための水は、この泉の水を使うんだ。だから、泉の水の量はほぼ一定で保たれているらしい。ここは雨が降ることもないからな」
「え、降らないんです?野菜とか育てるの大変なのでは?」
「食材は港町から仕入れていると思うよ」
「なるほど」
不思議といろんな仕組みが上手く出来ているようだ。
それにしても、綺麗な泉だな……ミオが泉の水を手ですくってみると、とても冷たくて汚れなど全くない綺麗な水だった。
この世界は、ミオがいた世界とは違って空気や自然を汚す物質がほとんどない。
例え、どんなにこちらの世界が発展したとしても、環境汚染となるような物質が生まれないといいなと、心からそう願う。
生活用水として泉の水を利用するため、泉に入ることは禁じられていた。
もちろん、ボートなどに乗ることも出来ない……まぁ、当たり前のことだけれど。
あくまでも景色を楽しむというのが、このオアシスのたしなみ方だ。
泉の大きさは思ったよりも大きく、店にも立ち寄ったこともあって、1周歩いてみるとそれなりの時間が経っていて、日が傾きかけていた。
夕日に照らされた泉はオレンジ色に染まり、昼間の泉とは違った景色を作り出していた。
「水色の泉も、オレンジ色の泉も、どちらも綺麗ですね!」
「そうだな。ミオはどちらの泉が好みだ?」
「そうですね……オレンジ色も捨てがたいですけど……うーん……めちゃくちゃ悩みます……でも、やっぱり水色の泉ですかね?」
「そうか」
泉がオレンジ色に染まっている時間は長くはなく、あっという間に日は沈んで夜の空に包み込まれていった。
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「あと1回港町で補給をしたら、いよいよルシヨット魔導国に到着だ」
「そうなんですね。1ヵ月ってもっと長いかと思ってましたけど、案外そうでもないんですね。まぁ……船の上は暇ですけど」
ミオ達がオアシスから戻ると、準備を整えて船は予定通り出航した。
この船旅もあと少しで終わる……また帰りも同じ船旅は待っているわけだけれど。
ルシヨット魔導国、どんな国なのだろう?
ミオは、高鳴る胸の鼓動を感じながら、船が進む方向を眺めた。
その日の夜、ミオが部屋でゴロゴロしていると、シャルルが部屋を訪れて来た。
「どうしたんですか?」
「これを、ミオに渡したかったんだ」
「ん?」
シャルルは小さな紙袋をミオに手渡した。
袋の中に入っていたのは……オアシスの泉のような水色の石に、キラキラと細かい星のようなラメが施され、魔法陣のような装飾の中央にその石がはめ込まれた髪飾りだった。
「こ……こんなに凄そうなものを頂いてもいいんですか!?」
「身を守る魔力が込められているらしい。ミオはすぐに危険なことに首を突っ込んでしまうからな」
「そ、そんなことはないですよ」
「貸してごらん」
シャルルは、ミオの手から髪飾りをつまみ上げると、ミオの髪に付けて優しく微笑んだ。
「とても似合っているよ」
「あ、ありがとうございます。何だかいつも頂いてばかりで……」
「たまたま見つけたから買ってみただけだよ。ミオの身が心配だからな」
「私はシャルルさんが思ってるよりも頑丈なんですよ。でも……本当にありがとうございます」
礼を言いながらミオが笑顔で見上げると、シャルルはミオの頭に手を乗せて、「おやすみ」と自分の部屋へと戻って行った。
ミオはドアを閉めると鏡の前に座って、鏡に映った自分を見た。
キラキラと輝く水色の石がとても奇麗だ。
あ……これを選ぶのに泉の色の好みを聞いてきたのかな?
それにしても、シャルルにはいつも驚かされる。
いったい、いつこんなものを発見していたんだろう?
一緒に見て回っていたはずなのに、ミオはシャルルがこのような髪飾りを見ていたことなど、全然気がつかなかった。
「……今度、私もプレゼント探してみよう」
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こうして、順調に航海を続けていたミオ達だったけれど、最終補給のための港町に到着する前日、激しい嵐に遭遇してしまった。
船長の指示のもと、船乗りや騎士達が慌ただしく船内を動き回る。
「あの、私もお手伝いを……」
「ミオ様は、危険なのでお呼びするまで部屋から出ないで下さい!絶対に出ないで下さい!いいですね!」
「……はい」
下手に手伝いに行って足手まといになってしまっても迷惑だろうし……ここは大人しく部屋にいることにしよう。
大きく波を立てながら窓に打ち付けてくる海を、部屋の窓から眺めるミオ。
激しく揺れる船に、ミオはヒールで船酔いを防げそうにないと思って箒に乗って揺れを回避しているけれど、注意しないと壁とかにぶつかってしまいそうだ。
荒れまくる海を眺めながら、ふと思う。
台風の時なんかもそうだけど、何で荒れてる天気の時って外を眺めたくなるんだろう?
まぁ、そんなのはミオだけかもしれないけれど。
外に出ようとは思わないけれど、何故かベランダの窓から外を見たくなるのが不思議だった。
たまに窓を開けて、暴風を肌で感じてみたり……何かが起こりそうで、何だか胸がドキドキしたのを覚えている。
「この嵐……いつまで続くんだろうな?このままずっと……なんてことは、さすがにないわよね?」
船で嵐をどうしのぐのかはわからないけれど、ベテランの船長や船乗り達なので心配はいらないだろう。
でも、決して人手が多いわけではないし、ミオも何か手伝った方がいいのでは?
窓から海を眺めながら少し考えて、ミオはゆっくりとドアを開けて廊下に顔を出してみた。
「……あ」
「部屋で大人しくしていてくださいね」
何と、部屋の前には見張りの騎士が立っていた。
え、そんなに信用ないの?私……ミオは苦笑いしながら顔を引っ込めて、部屋のドアを閉めた。
夜になると、あの嵐が嘘だったように静かな海に変わっていた。
嵐で激しく揺れた船では、さすがに船酔いになってしまった人達がたくさんいたようで、ようやく部屋から出してもらえたミオは、ヴィクシスと一緒に魔法で皆を回復させた。
「ミオさんは船酔い大丈夫だったっすか?」
「箒から降りなかったもん」
「よく何処にもぶつかりませんでしたね」
「私の箒の操作は、この船でかなり進化したからね」
キラーンという効果音をバックに、ミオは親指を立てた。
ペリグレット王国に帰国したら、きっとカミーユ達も驚くだろう。
船に合わせて箒を動かすだけではなく、船が揺れる中で狭い通路や障害物の間を通り抜けることでも、箒の操作は上達していったのだ。
箒の練習をするなら、船に乗るのが手っ取り早いのでは?
嵐で予定の航路からそれてしまったため、港町に到着するのは1日遅くなったけれど、これは想定内だと船長達は話していた。
ここまで嵐に遭遇しなかったのが奇跡だったらしい。
ルシヨット魔導国に到着するまで、予定ではあと6日。
何事もなく到着することを祈ろう。
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お読みいただきありがとうございました!




