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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第四章 交流
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69 初めての船旅

のんびり更新中♪

「やぁ、ミオちゃん。久しぶりに会うけれど、相変わらず可愛いではないか。是非、私とお付き合いを」

「シルヴィー兄さん、さすがに怒りますよ」

「じ、冗談だよシャルル!挨拶のようなものだ」

「あはは……どんな挨拶ですか」


 ミオは今、オルレーヌの港町に来ている。

 港には立派な船が着港しており、騎士や船乗り達が荷物を運び入れていた。


「今回は、シャルルが国王の護衛なのか?」

「国王ではないですが……第一騎士団が護衛です」

「国王ではない?誰の護衛なんだ?」


 シャルルが目線を向けた先にいたのは……ミオだ。

 シルヴィーが驚いたようにミオとシャルルを交互に見る。


「なるほど、ミオちゃんの護衛か。伝説の魔導師だからな。しかし、ミオちゃんは船に乗れないのでは?」

「回復魔法を使うと乗れるようです。ただ、船旅は初めてですし、どれくらい効果があるのかはわかりませんが」

「それは心配だな。私もついて行こうかな」

「シルヴィー兄さんがついて来たところで、何も出来ないでしょう?」

「背中をさするくらいは出来るが?」

「……………」

「じ、冗談だと言ってるだろうが。私だってこの町の管理があるのだから、そんなに長期間は留守に出来ないよ!」


 どこまでが冗談なのかわからないシルヴィーだけれど、王国の船の管理をしているのもシルヴィーだし、船旅のための手配をいろいろしてくれたのもシルヴィーなので、ここは感謝しておこう。


 しばらく荷物の積み込みを見ていたミオは、シャルル達の所に駆け寄った。


「もうすぐ出発出来そうですよ」

「そうか」

「しばらくミオちゃんに会えないなんて、寂しくて私はどうにかなってしまいそうだよ」

「……そんなには……お会いしていませんでしたよね?」


 初めて王国の外に出る。

 元の世界でも、海外旅行に行く時はワクワク感が半端なかったけれど、ここでも同じだ。

 しかも、初めての船旅だ。

 飛行機とは違って、どんな旅になるのかが想像もできない。


 ミオがシャルル達と話をしていると、準備が整ったことを知らせに騎士が走って来た。


「団長、ミオ様、出発の準備が整いましたよ」

「わかった。行こうか、ミオ」

「はい」

「それでは、行って来ます。シルヴィー兄さん」

「行って来ます」

「気をつけて行って来るんだよ」


 シャルルに続いて船に乗り込んだミオは……乗船して十数秒後に慌てて船から降りた。

 驚いて振り返るシャルルや騎士達。

 船から降りたミオは、両手と両膝を地面について項垂れていた。

 突然の出来事に、シルヴィーはオロオロしている。


「どどど、どうしたのミオちゃん!?」

「……ヒ、ヒール使うの……忘れてました……うぅぅ……気持ち悪っ……」


 たった十数秒で船酔いとは……ミオはルシヨット魔導国まで辿り着けるのだろうか?

 シャルルは船から降りて来ると、真っ青になっているミオを見て驚きながら、騎士にヴィクシスを呼んで来るよう伝えた。

 今回の船旅に、回復役としてヴィクシスを同行させたのは正解だった。


「どうしたんすか?シャルル団長……って、ミオさん!?」

「すまないが、回復魔法を頼めるか?」

「もちろんですよ!」


 こうして、ヴィクシスがミオにヒールをかけてくれたため、ミオは船酔いから解放されて、真っ青だったミオの顔色もいつも通りに戻った。


「ありがとう、ヴィクシスさん。死ぬかと思ったよ……すみません、シャルルさん」

「私も声をかけるべきだったよ、すまない」

「シャルルさんは、何も悪くありませんよ」

「それにしても、凄い船酔いっすね。ポーションも飲んでおいた方がいいっすよ」


 ヴィクシスにポーションを手渡されて飲み干すミオ。

 きっと、これで大丈夫なはず。

 気を取り直して、もう一度船に乗り込んだ。


「大丈夫か?ミオ」

「はい、大丈夫そうです」

「ポーション、多めに持って来たのでいつでも言ってくださいね。足りなくなりそうな時は、薬草買って作るっすよ」

「ありがとう、ヴィクシスさん」


 こうして、ミオ達を乗せた船がオルレーヌの港から出港した。

 ルシヨット魔導国までは、約1ヵ月で到着予定だ。

 現時点での最大の問題は……ミオの船酔いだろう。


 この船旅に同行するのは、シャルルと第一騎士団の5人の騎士、回復担当のヴィクシス、航海士の船長と乗組員が10人、料理人が3人、それに侍女が1人だ。

 本来は侍女も数人同行する予定だったけれど、身の回りのことは自分で出来るとミオが断ったので、今回はエレーヌのみの同行となった。

 船長と乗組員、料理人はシルヴィーが手配してくれた人達で、とても腕のいい人達らしい。


 さっきまでいた港町はどんどん遠ざかっていき、思ったよりも船の速度が速くて驚く。

 あっという間に辺りの景色が一面の海となった。

 凄いな、船。


「ミオ」

「シャルルさん……船って速いんですね。もう港町が見えなくなりましたよ!」

「この船は速度の出る船だからな」

「そうなんですね」

「ミオの部屋に案内するよ」

「はい、お願いします」


 こうして、シャルルに案内されたミオの部屋は、想像していた部屋とは違ってとても広い部屋だった。

 ベッドにソファー、テーブルに椅子、ドレッサーと、まるでホテルの部屋のようで驚く。

 ミオは、ビジネスホテルよりも狭い部屋を想像していたので、船の客室がこんなに広いとは思わなかった。

 大型船とは言えないこの船に、これだけの広さの部屋が人数分あるのかと思ったら、そうではないらしい。

 騎士や乗組員などは、相部屋となっているのだとシャルルが教えてくれた。

 自分だけこんな立派な部屋なのは……何だか申し訳ない気持ちだった。


「私の部屋は向かい側だから、何かあればいつでもおいで。夜中でもかまわないよ。もしもドアをノックしても返事がなければ、中に入って来てくれてかまわない」

「ありがとうございます。シャルルさんが近くにいてくれたら、とても安心です」

「それから、ミオの隣はヴィクシスにしたから。具合が悪くなったらすぐに行くんだよ?」

「はい」


 できるだけ迷惑はかけないようにしたいけれど……ヴィクシスの部屋には、何度も通ってしまいそうだとミオは思った。

 エレーヌの部屋はヴィクシスの隣らしい。


「それでは、私は甲板の方に行って来るよ」

「わかりました。私はとりあえず荷物を片付けます」


 シャルルを見送って自分の部屋に入ると、ミオはクローゼットの前に運ばれていたキャリーバッグを開けて、荷物の整理を始めた。

 ミオ自身の荷物はそんなに多くはないのだけれど……父親やエレーヌに持たされたドレスが、クローゼットを圧迫する。

 このドレス……本当に必要なのか?


 ペリグレット王国では同じ王宮魔導師団の魔導師だったラウルだけれど、今はルシヨット魔導国の国王であり、ミオはペリグレット王国の王女として訪れるのだから、身だしなみはきちんとしなければいけない。

 そのため、急いで何着ものドレスを仕立ててもらったのだ。

 侍女の同行を断ったものの、ドレスを着るということを考えると、エレーヌだけでも同行してもらって良かったと思うミオだった。


「片付け終わっちゃったし……よし、探索しに行こう」


 遊覧船などに乗った時には、船酔いのため探索どころではなかったけれど、こうして船酔いから解放されていると、船という乗り物は好奇心がくすぐられるものだ。

 ミオは、バッグを肩から掛けて箒を背負うと、目を輝かせながら部屋の外に出た。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「ミオ?」


 騎士や乗組員達と打ち合わせなどをして、船内を一通り回ったシャルルがミオの部屋を訪れると、部屋にミオの姿はなく。

 シャルルは、ミオを探して甲板へと向かった。


「ミオを見ていないか?」

「ミオ様ですか?俺がここに来てからは見ていませんが」

「そうか」


 甲板にもミオの姿はなく、シャルルが顎に手を当てながら考え込んでいると、1人の乗組員がミオを担ぎながら、慌てた様子で船内から飛び出して来た。


「おぅ、いい所にいた!この嬢ちゃん、中で倒れてたけど大丈夫か!?真っ青になっちまってる!」

「……ミオ!」


 乗組員がミオを床に降ろすと、真っ青な顔でぐったりと意識を失っていた。

 シャルルは甲板にいるヴィクシスを呼んだ。


「どうしたんすか?……って、またですか!?」

「先程よりも酷そうだが……回復出来るか?」

「大丈夫っすよ」


 ヴィクシスがヒールをかけると、ミオはゆっくりと目を開けた。


「ミオ、大丈夫か?」

「……シャルルさん?……あ、私船酔いで…」

「良かったなぁ、嬢ちゃん。顔色も戻ったみてぇだ。嬢ちゃんの近くにコレが落ちてたぞ?」


 ミオを運んで来た乗組員は、ミオにポーションを手渡すと安心したように船内へと戻って行った。

 ミオは、何回も頭を下げながら礼を言った。


「ヒールの効果が切れると、ポーションを飲む間もなく船酔いがですね……」

「回復魔法は?」

「意識が朦朧としてきて、魔法使える状態じゃなくて……すみません」

「謝らなくていい。それにしても……困ったな」

「俺、ここまで酷い船酔いの人って初めてっすよ」

「ポーション10本くらい飲んだら、効果の持続時間長くなるの?」

「さすがに変わらないっす」

「……それは残念……とりあえず、1本飲んどこう」


 ミオはポーションを1本飲み干した。

 きっと、こんなに飲むとは思ってなかっただろうし、多めに持って来てくれたとはいえポーションはすぐに底をついてしまうだろう。

 対策を考えないとだ。


「ミオ、そろそろ昼食の時間だが……少し部屋で休んだ方がいい。食事は部屋に持って行こう」

「いえいえ、もう大丈夫ですよ?皆さんと一緒に食べられます」

「本当に?無理はしないで」

「はい。でも……このままだと、ポーションでお腹がタプタプになって、ご飯食べられなくなっちゃいそうですよ……」

「それは大変っす!」


 ポーションの効果が切れる前にヒールが使えれば、お腹がタプタプになってしまうこともないだろうけれど、今のところ効果が切れる前の兆候などがわからないため、難しい問題だ。

 出航1日目だというのに、難解な問題に直面してしまったミオだった。



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