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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第四章 交流
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68 本業は魔導師?王女様?

のんびり更新中♪

「おはようございます、シャルルさん」

「おはよう、ミオ。昨日は大丈夫だったか?」

「はい、何とかご案内出来ました」

「そうか」


 今日は、王女としての仕事から解放されて、騎士団の見回りに同行するミオ。

 やっぱりこっちの方が断然気が楽だ。

 シャトロワ国王とエリアスは、父親と一緒にどこかに出かけるらしい。


「今日は、見回りに同行してもらって大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。私の本業はこっちなので」

「ふふ、ミオの本業は王女様だと思うが?」

「あれは……副業です」


 準備が整い、出発しようとしていると、父親とシャトロワ国王、エリアスがやって来た。

 ミオとシャルルは顔を見合わせると、3人に歩み寄った。


「如何なさいましたか?陛下」

「シャルル達は、今日は何処の見回りだったかの?」

「ネーオールの森近辺ですが」

「私達も同行したいのだが」


 何故、見回りに同行?

 どうやら、シャトロワ国王がどのようにして見回りをしているのかを見てみたいと言ったらしい。

 ついでに、竜というものも見てみたいとか……え、見せちゃっていいんですか?

 こうして、ミオの父親達を乗せた馬車も、騎士団と一緒にネーオールの森に向かうことになった。

 ミオは馬車には乗らずに箒で移動する。


「馬車に乗らなくても良かったのか?」

「いいんですよ。窮屈そうだし……気分的に」

「私は、ミオが隣を飛んでくれて嬉しいけどな」

「私もこっちの方が気が楽でいいです」


 ネーオールの森に到着すると軽く休憩を取った後に、騎士達は二手に分かれて森を見回り、ミオは両方を行ったり来たりすることになった。

 ラウル達がルシヨット魔導国に帰ってしまったため、元の数とはいえ魔導師の数が少ないので仕方のないことだけれど、湖の上を飛んで行けばいいのだから、ミオ的にはそんなには大変ではない。


 ただ、湖の上を通過するたびに水竜が顔を出すので、その都度まだだと声をかけなければいけないのが面倒だったけれど。

 水竜には、帰りに声をかけることになっている。


 こうして、二手に分かれて見回りをして、森を出て小川まで進んだところで合流して昼食となった。

 ミオは手伝いが出来ないため、父親達と一緒に待つ。


「ミオが湖の上を通るたびに、竜が顔を出していたようだが?」

「帰りに声をかけるって言ってあったんですけどね。私がいるとすぐに顔を出すんですよ、あの子」

「随分と気に入られているのだな、ミオは」

「ちょっと待て。言ってあった?お前、竜と話せるのか?」

「話せますよ?」

「は?」

「はっはっは!エドワールよ、お前の娘は凄いなぁ!」

「私の自慢の娘だからのう」


 こうして昼食を食べてお腹を休ませた後は、ネーオールの森からオルレーヌの門までの間の見回りをした。

 ミオは上空から辺りを見回しながら、シャルル達とともに進んで行く。


「ん?」

「どうした?」


 前方に巨大な何かを見つけて目を凝らすミオ。


「向こうに何かいるみたいなので、ちょっと見てきますね」

「待て、1人では危険だ」

「大丈夫ですよ」

「ミオ!?」


 シャルルが引き留めたけれど、ミオは箒で飛んで行ってしまった。

 急いで追いかけるシャルルと騎士達。

 後方からついて来ていた国王達は、護衛を務めていた騎士に止められて状況を見守っている。


 ミオは、発見した巨大な何かの上まで移動して、ゆっくりと箒を下降させてみた。

 その巨大な何かは、頭の上に3つの赤い花を咲かせた巨大な草スライムのようだった。


「シャルルさーん、なんか、とても大きな草スライムみたいですよ」


 ミオは上空でシャルル達の方に振り返って、指を差しながら報告した。

 その報告を聞いたシャルルは、表情を険しくしながらミオに向かって叫ぶ。


「ミオ!すぐにそこから離れるんだ!」

「え?」


 キョトンとしているミオの後方で、巨大な草スライムが飛び上がった。

 その気配にミオが振り向いた瞬間、巨大な草スライムはミオに体当たりをして、ミオが弾き飛ばされた。

 ミオよりも大きな体とその弾力によって、草スライムの体当たりの威力は凄まじく、ミオは勢いよく地面に叩きつけられて転がった。

 血相を変えたシャルル達がミオに駆け寄る。


「ミオ!」

「……痛たたた」

「ポーションだ、飲めるか?」


 傷だらけで倒れていたミオを、シャルルが抱き起してポーションを飲ませたので、ミオの傷はすぐに癒された。

 それにしても、何だあの巨大な草スライムは?


「あれは、草炎(グラスファイア)スライムだ。時々、無害な魔物が上級の魔物に進化することがある」

「上級の魔物に進化ですか?」

「進化する原因はよくわかっていないが……草スライムと違って、とても攻撃力が高くなっているんだ」


 草炎スライムは、頭の上の花が炎を吐き出して攻撃してくるらしい。

 え、それって自分が燃えてしまうのでは?

 そう思った矢先、草炎スライムの周囲が火の海と化した。


「激しく炎を纏いながら体当たりしてくる上に、辺り一面を火の海にしてしまうとても厄介な魔物なんだ」


 シャルルが説明しながら、険しい顔で草炎スライムに目を向ける。

 火の海になった場所には花の種が植え付けられるため、どんどん花が咲いて炎を撒き散らす……厄介すぎるのでは!?


 ミオがフローズンフロストで火の海を凍りつかせると、シャルル達が炎を撒き散らそうとしている花達を斬りつけていった。

 フローズンフロストでは、魔物である花は凍らせられないのだ。

 続けてスノーフロストを使おうとしたミオだったけれど、纏った炎を消した草炎スライムが高く跳び上がったため、そっちにフローズンランスを放ったので使えなかった。


「てゆーか、スライム巨大なくせに動きが速いんですけど!?」


 すばしこく動き回る草炎スライムに、なかなか攻撃を当てられないミオ。

 空中でも機敏に向きを変えて動けるとか、反則過ぎなのでは!?

 ミオが必死に攻撃しながら箒で追いかけていると、下から攻撃魔法が放たれた。

 エリアスだ。


「地面に堕とせ!」

「お、堕とせと言われても……」


 こっちだって必死にやってるんですよ!

 ミオはいくつものフロージングランスを放ったけれど、草炎スライムは器用に動き回りながら回避する。

 その動きは予測不能で、体当たりもしてくるためミオは何度も地面に打ち付けられた。


「オイ!大丈夫か!」

「だ、大丈夫ですよ……」


 ミオは立ち上がるとヒールを使って傷を癒し、再び箒で草炎スライムの所に飛び上がった。

 このスライム、何でずっと空中で留まれるんだ?

 飛ぶ機能なんてなさそうなのに謎だ。


 ミオがフローズンランスを放とうと構えると、草炎スライムが再び炎を纏った。

 そして……体を回転させながら上空から炎を撒き散らし始めた。

 ミオはすぐにフローズンフロストを放とうとしたけれど、ふと今ならスライムに攻撃が当たるのでは?と思い、フロージングランスを草炎スライムに向かって放ってみた。

 思った通り、回転しているスライムは動きを変えることが出来ないようで、ミオのフロージングランスが命中して、草炎スライムは地面に落下して行った。

 地面に堕ちた草炎スライムはエリアスが魔剣で砕き、撒き散らされた炎をミオがフローズンフロストで凍らせた。


 シャルルがミオとエリアスに駆け寄る。


「ミオ!大丈夫か!?」

「私は大丈夫ですよ」

「エリアス王子、加勢していただき感謝します」

「礼を言われるようなことではない。私も魔導騎士だ、ただ見ているだけというわけにもいくまい」


 草原がかなり燃えてしまったけれど、この辺りにいる草スライムによってすぐに再生するらしいので一安心だ。

 それにしても、魔物の進化とは不思議なものであり、上級の魔物は恐ろしい。

 今までこんな場面に遭遇したことはなかったけれど、こういうこともあるんだと肝に銘じておく。


 その後は特に問題なく見回りを終えて、ミオ達はネーオールの森へと戻った。

 まさかの草炎スライムとの戦いなんていう、サブクエスト的なイベントに遭遇したけれど、今日シャトロワ国王達が見回りに同行したもう1つの目的は竜を見ることだ。

 水竜にも帰りに声をかけると言ってあったし、ミオは約束通り帰り道の湖で水竜を呼び出した。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 王宮で国王達と夕食を食べて雑談し、ミオが宿舎に戻ろうと王宮から出て来ると、後ろからエリアスに呼び止められた。


「お前は、いつもあんな感じなのか?」

「あんな感じ?」

「騎士団との見回りだ」

「まぁ、そうですけど……いつもは何事もなく見回りしてますよ?でも、初めて遭遇する魔物って、私にはまだよくわからないんですよね」

「何故、王女であるお前が騎士団に同行などしているんだ?」

「え、だって私の本業は魔導師ですし」

「は?」


 何となく庭園を2人で歩いていたけれど、エリアスが足を止めてミオを見下ろした。


「お前……馬鹿だろ」

「わ、私に対して失礼じゃないですか!?」

「お前の本業は王女だろうが」

「私的には魔導師が本業なんです!」

「……フッ、まぁ、嫌いではないがな」


 徐にエリアスがミオを抱き寄せて、額をくっつけて来た。

 ミオの心臓が飛び出しそうなほどに動きを速める。


「お前を妃として迎えられないのは、とても残念だ」

「ななな、何を!?」

「お前のような女には会ったことがない。この王国に王子がいれば良かったのだが……本当に残念だ」


 エリアスは、ミオの額に唇を押し当てた。

 ミオの思考回路はショート寸前、もしかしたら頭から煙が出ているかもしれない。

 ちょっと待て、エリアスとはまだ顔を合わせて3日目だぞ。

 たった3日で結婚を考えるとか、大丈夫なんですかこの王子様。


 とりあえず……部屋に戻ろう。

 エリアスの腕から解放されたミオは、フラフラと宿舎に向かって歩き始めた。


「部屋まで送ろう」

「だだだ、大丈夫ですよ、すぐそこですし」

「夜道は危険だ」

「お、王宮内なので危険なことはないです」


 断ってみたものの、結局エリアスはミオの部屋までついて来た。

 てゆーか、何故何事もなかったように平然としていられるんだ?この王子様。

 それが普通なのか?

 ドキドキしまくっているミオがおかしいのか?


「あ、ありがとうございます、送っていただいて……お、おやすみなさい」

「あぁ、ゆっくり休め」


 ミオは部屋のドアを閉めてしばらく放心状態に陥り……ベッドにダイブした。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






 翌日は、エリアスだけが馬に乗って騎士団の見回りに同行した。

 ミオの父親とシャトロワ国王は、また2人でチェスをしながら、今度は何やら難しい話をしているようだった。

 この日の見回りでは特に何事も起こらず、ただエリアスが魔物と戯れるミオに驚いただけで終わった。

 こうして、シャトロワ国王とエリアスの滞在期間は終わり、翌朝ミオとペリグレット国王に見送られながら王宮を後にした。


 ミオは見送りの時に気がついたのだけれど、シャトロワ国王とエリアスにはちゃんと護衛の騎士がついて来ていた。

 護衛の騎士達は騎士団の宿舎に泊っていたらしく、滞在期間に食堂を訪れなかったミオはほとんど顔を合わせていなかったようだ。

 でも、そういえばネーオールの森近辺の見回りに同行した時に、見慣れない騎士達が護衛していたなと思い出す。


「やっぱり、王様とか王子様が出かける時って、護衛がつくんです?」

「そうだな」

「つかなくていいって言っても?」

「時と場合にもよるが……王子と王女では違ってくると思うぞ」

「何でですか?」

「何でって、ミオ……王子は戦えるけど、王女は戦えないであろう?」

「じゃあ、戦える私には護衛はいらないってことですね!」


 ミオが目を輝かせながら父親を見上げると、父親は困ったように笑いながら「そうはいかんよ」と言った。

 何故だ!?


「さて、2人は無事に帰って行ったし、今度はミオがルシヨット魔導国に行く準備を始めようかの」

「準備ですか?私の荷物まとめたらすぐに出れますよ?」

「ミオよ、さすがに王女として行かせるのであるから、それなりの準備は必要なのだよ」


 どんな準備だ?

 心の底から、ただの魔導師として出かけたかったなと思うミオだった。



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お読みいただきありがとうございました!

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