67 王子様のご案内2
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「ミオ」
「はい?」
「明日は、王都の街を案内してあげたらどうだ?」
「え?」
王宮で、シャトロワ国王やエリアス達と夕食を食べていると、突然父親にそんなことを言われて固まるミオ。
もちろん、父親も一緒なのかと思ったらそうではなかった。
「私はコデルロスと一緒にチェスで対戦するのでな」
「今回も私が勝たせてもらうぞ」
「馬鹿を言うでないぞ。私だって負けてばかりはおれんよ」
チェスで対戦って……
「ち、ちょっと待ってくださいよお父さん!」
「何だ、どうした?」
「私、ご案内できるほど詳しくないですよ?今でも迷ってるくらいですし……」
「迷いながらブラブラするくらいが丁度良いのではないか?」
そんなわけあるか!
こうして、まさかの街のご案内という仕事が舞い込んでしまったミオだった。
―――――――
―――――
―――
「えーと……それじゃあ、行きましょうか」
「……おい」
「はい?」
「街まではどれくらいかかるんだ?」
「そうですね……徒歩40分てとこですかね」
「は?」
は?とは……?
ミオが首を傾げていると、エリアスが眉間にしわを寄せながら顔を近づけて来た。
近い近い……本当に、何で異世界のイケメンって距離感がおかしいんだろう?
「歩いて行くのか?」
「……私、いつも歩きですよ?」
「は?」
信じられないというような顔でミオを見るエリアス。
そんな顔されても、いつも歩いていますし……あ、シャルルと出かける時は馬車だな、そういえば。
「えーと……馬車…ですか?」
「当たり前だ」
「……少し待っててくださいね」
ミオは王宮前の広場に走って行った。
馬車なんて乗り方がわからないよ!
確か、シャルルがここにいたはず……
「シャルルさん!」
「ミオ?……どうしたんだ?」
「あの……馬車の乗り方がわからなくて」
「馬車?」
シャルルが状況を理解してくれたようで、笑いながらミオの頭に手を乗せると、一緒に門の所まで来てくれて、馬車の手配をしてくれた。
「私は、王国第一騎士団団長、シャルル・パトリエールです。申し訳ありません、馬車はいつも私が手配していたので」
「なるほどな。私はシャトロワ王国第一王子、エリアス・シャトロワだ。手数をかけた」
「ミオ、帰りもこの馬車に頼んであるから、心配はいらないよ」
「す、すみません。本当にありがとうございます、シャルルさん」
ミオとエリアスが馬車に乗り込むと、シャルルは笑顔で見送ってくれた。
本当に、街のご案内は出来るのだろうか……とても不安になるミオだった。
「おい」
「はい?」
「何故、外ばかり見ているんだ?」
「こうしてないと……あ、そっか」
ミオは自分にヒールをかけた。
酔い止めにはこうするんだとラウルに教えてもらったことを、すっかり忘れていた。
「酔い止めの方法忘れてました。もう、大丈夫です」
「酔い止め?」
「はい」
「何故、小窓を開けておく?」
「気分的に」
ヒールで酔い止めをしたとはいえ、外の風が入って来た方が気持ちがいいので、小窓は開けておくことにした。
これで馬車酔いもしないだろう。
こうして、とりあえず街には到着した。
馬車を下りて、御者に帰りもよろしくと伝えておく。
問題はここからだ。
「エリアス様は、どこかご覧になりたいお店とかあるんです?」
「別にない」
ですよねー。
「お前はいつもどの店に行くんだ?」
「私ですか?うーん……雑貨屋と薬草屋にはよく行きますけど」
「だったら、その店に案内しろ」
「え……いいんですか?めちゃくちゃ女子な店ですよ?」
「構わん」
ミオは、いつもの雑貨屋に向かった。
ミオが知っている道で。
前にラウルに近道を教えてもらったけれど……覚えられなかったので、いつも自分が知っている道で通っているのだ。
1年も住んでるんだから、いい加減覚えろなんて言われるかもしれないけれど、方向音痴が道を覚えるって凄く難しいんですよ!
ある日突然閃いて、道を覚えることもあるけれど。
「このお店です。ウサギとか猫の雑貨がたくさんあって、とても可愛いお店なんですよ!」
「そ、そうか」
キラーンという効果音を響かせながら目に星を宿すミオに、エリアスが若干引き気味だったのは……見なかったことにしよう。
店内に案内してみたものの、エリアスがこの店にあまりにも似合っていなくて、危うく吹き出してしまいそうだった。
「ミオ様」
「はい?」
店員に声をかけられてミオが振り向くと、1枚のチラシを手渡された。
「いつもご贔屓にして下さり、本当にありがとうございます。実は、この店の姉妹店が近くに出来まして……もしよろしければ、覗いて見てください」
「姉妹店?本当ですか!?ぜひ、立ち寄らせていただきます!」
丁寧にこの店からの地図も書いてくれた。
今度の休みにでも探しに行ってみよう。
「何か気になるものとかありました?」
「……母に土産でもと思ったのだがな」
「お母様にですか?」
何だ、優しい所もあるんだこの王子様。
「これは?」
「これは、チャームですよ。こうしてバッグとかにつけるんです……たぶんですけど」
「何故、曖昧なんだ?」
「私がいた世界ではチャームだったんですけど、この世界ではどうなのかがわからなくて」
「なるほど」
こうしていろいろと物色していると、オルゴールを発見した。
造りはミオがいた世界のものとたぶん同じだ。
ゼンマイを回して蓋を開けると、優しい音色のメロディーが流れる。
知らない曲だったけれど、聴いていると癒されるから不思議だ。
エリアスは、このオルゴールとチャームを母親のお土産に選んだようだった。
「薬草屋は……まぁ、薬草を売ってるんですけど、行きます?」
「お前は薬草屋で何を買っているんだ?」
「化粧水とか、紅茶です。とても美味しい紅茶があるんですよ。あとは、アロマオイルもたまに買ってますね」
「アロマオイル?」
「とても良い香りがするんですよ」
「……案内しろ」
ミオは薬草屋に案内した。
今日は何の紅茶が用意されているんだろう?
薬草屋では、いつも紅茶が試飲出来るのでミオのお楽しみとなっていた。
「こんにちは」
「いらっしゃい……あ、ミオちゃん!……って、誰だよそいつ!?」
「えーと……とても偉い方ですよ、パトリックさん」
「偉い人って……誰?」
王子様だって紹介しても良いのだろうか?などと悩んでいたミオだったけれど、悩む必要はなかったようだ。
普通に、王子だと言うことは公表してもいいらしい。
「私は、シャトロワ王国第一王子、エリアス・シャトロワだ」
「ななな!王子さまでしたか!これは大変失礼いたしました。私はこの店の店主、パトリック・ラブリエです。こちらのお嬢様と魔導師団には、大変贔屓にしていただいているのですよ」
さすがは店主だ、王子相手でも物怖じしないで普通に接客できている。
パトリックは、ミオとエリアスをテーブルに案内すると、紅茶をふるまってくれた。
「こちらは、ベリーとアプリコットの紅茶で、ハチミツとミルクを加えたミルクティーです」
「わぁ、とてもいい香りですね!」
「新商品だよ。ミオちゃんには特別にプレゼントしてあげるけど」
「ちゃんと買っていきますよ」
パトリックが出してくれた紅茶は、エリアスも一口飲んでとても気に入ったようだった。
その後エリアスは、アロマオイルについてパトリックに説明を受けていた。
ここでかなり時間が潰せそうで、パトリックにはとても感謝する。
「ところでミオちゃん」
「何ですか?」
「何故、王子様なんかと一緒に?」
「国王命令でご案内してるんですよ」
「なんと!」
こうして、薬草屋にいる間にお昼の時間となり、ミオはパトリックにおすすめの店を尋ねた。
すると、パトリックが店まで案内してくれて、従業員への説明までしてくれたので、スムーズに昼食に行きつくことが出来た。
本当にパトリックには感謝しかない。
昼食を食べた後は、ブラブラしながら噴水広場へとやって来た。
そして、少し休もうとベンチに座ろうとした時。
「おい、お前!」
「今日こそは俺達が勝つからな!」
「勝負しろ!」
ミオ達の前に、3人組の少年が現れた。
15歳、16歳といったところだろうか?
子供でもなく大人でもない、微妙な年齢の3人組だ。
咄嗟に立ち上がって剣を抜こうとしたエリアスを、ミオは慌てて止めた。
「だ、大丈夫なので、少しここで座っていてくださいね!」
「は?何を言っているのだ?」
「本当に、大丈夫なので!」
ミオは苦笑いしながら3人の前に立った。
少年達は不敵な笑みを浮かべながらミオを見下ろしている。
そう、3人組の少年達は、ミオよりもはるかに背が高いのだ。
ミオは、3人に向かって両手を翳した。
「スノーフロスト」
「は?」
「おい!ずりぃぞ!コイツ、魔法使いやがった!」
「これじゃあ、動けねーだろうが!」
「しばらくそこで固まってなさいよ」
「はぁ!?ふざけんなよコラ!」
ギャーギャー騒いでいる少年達の前で、ミオは盛大にため息をついた。
そして、眉間にしわを寄せながらゆっくりと3人を見上げる。
「君達、私は今、とても偉い人をご案内中なのよね」
「は?」
「偉い人?」
「誰だよ?」
「そんなに戦い方を学びたいんだったら、騎士団の養成所に行きなさいよ。私に教えられることはないからね?」
「俺達に魔法を教えてくれるまで諦めねーからな!」
「「そうだそうだ!」」
「だから、君達には教えられないってば」
魔導師の素質もない人に、どうやって魔法を教えろと言うんだ?
この3人、先日ミオがドロボーを捕まえてからというもの、街に来るとよく絡んで来るようになったのだ。
本当に、勘弁してほしい……
「とにかく、私は今大事なお仕事中なの。まだ絡んで来るなら、この氷は解除しないからね」
「仕事中だ?嘘つけ!」
「誰が嘘つくのよ!」
「いいから魔法教えろよ!」
「だから、無理だって。いい加減諦めてよ……」
なかなか引かない3人組にミオが困り果てていると、エリアスが歩み寄って来た。
「お前達、いい加減コイツを困らせるのはやめろ。いいか?魔導師になるにはその素質が必要だ。この光を纏えたら素質はある。だが、纏えないのであれば即刻諦めろ」
エリアスは、手のひらに3つの光の玉を浮かび上がらせると、3人に向かって放った。
その光は3人の体に吸い込まれていき……消滅した。
「わかったか?お前達に魔導師の素質はない」
「な、何だよコイツ!」
「胡散くせ―!」
「……私は、シャトロワ王国第一王子だ。これ以上引かないのであれば、こちらも強硬手段に出るぞ」
シャトロワ王国のことは知っているらしく、エリアスがそこの王子だと知ると、青ざめながら謝罪する3人組。
凄いな、シャトロワ王国の王子って。
ミオが、3人の足元を凍りつかせていたスノーフロストを解除すると、3人は深々と頭を下げると走り去って行った。
これで、今後絡まれることがなくなるといいな。
「ありがとうございました。あの光って何なんです?」
「魔光だ」
「魔光?」
「魔力の有無を確かめることが出来る。知らないのか?」
「はい、初めて見ました」
魔光って……ミオが魔力操作の練習で出していたあの光の玉だろうか?
手のひらに出して見せると、それだと言われた。
なんと、あんな使い道があったなんて知らなかった。
「あ、今日のことは誰にも言わないで下さいね!また1人での外出禁止にされてしまうので……」
「お前、そもそも1人で外出なんて許される立場ではないだろうが」
「自由に出かけたいんです!まぁ、この街しか許可されてませんけど」
「とんでもない王女様だな」
その後は、ジェラードを食べながら馬車が待機している街の入り口に向かい、街の案内を終えて王宮へと戻って行った。
何とか無事に街を案内できて、ホッとするミオ。
3人組の件は……ちょっとした出来事として、問題視しないことにしよう。
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お読みいただきありがとうございました!




