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憧れの異世界はやっぱりとても大変な世界  作者: 花聖
第四章 交流
75/132

67 王子様のご案内2

のんびり更新中♪

「ミオ」

「はい?」

「明日は、王都の街を案内してあげたらどうだ?」

「え?」


 王宮で、シャトロワ国王やエリアス達と夕食を食べていると、突然父親にそんなことを言われて固まるミオ。

 もちろん、父親も一緒なのかと思ったらそうではなかった。


「私はコデルロスと一緒にチェスで対戦するのでな」

「今回も私が勝たせてもらうぞ」

「馬鹿を言うでないぞ。私だって負けてばかりはおれんよ」


 チェスで対戦って……


「ち、ちょっと待ってくださいよお父さん!」

「何だ、どうした?」

「私、ご案内できるほど詳しくないですよ?今でも迷ってるくらいですし……」

「迷いながらブラブラするくらいが丁度良いのではないか?」


 そんなわけあるか!

 こうして、まさかの街のご案内という仕事が舞い込んでしまったミオだった。






 ―――――――

 ―――――

 ―――






「えーと……それじゃあ、行きましょうか」

「……おい」

「はい?」

「街まではどれくらいかかるんだ?」

「そうですね……徒歩40分てとこですかね」

「は?」


 は?とは……?

 ミオが首を傾げていると、エリアスが眉間にしわを寄せながら顔を近づけて来た。

 近い近い……本当に、何で異世界のイケメンって距離感がおかしいんだろう?


「歩いて行くのか?」

「……私、いつも歩きですよ?」

「は?」


 信じられないというような顔でミオを見るエリアス。

 そんな顔されても、いつも歩いていますし……あ、シャルルと出かける時は馬車だな、そういえば。


「えーと……馬車…ですか?」

「当たり前だ」

「……少し待っててくださいね」


 ミオは王宮前の広場に走って行った。

 馬車なんて乗り方がわからないよ!

 確か、シャルルがここにいたはず……


「シャルルさん!」

「ミオ?……どうしたんだ?」

「あの……馬車の乗り方がわからなくて」

「馬車?」


 シャルルが状況を理解してくれたようで、笑いながらミオの頭に手を乗せると、一緒に門の所まで来てくれて、馬車の手配をしてくれた。


「私は、王国第一騎士団団長、シャルル・パトリエールです。申し訳ありません、馬車はいつも私が手配していたので」

「なるほどな。私はシャトロワ王国第一王子、エリアス・シャトロワだ。手数をかけた」

「ミオ、帰りもこの馬車に頼んであるから、心配はいらないよ」

「す、すみません。本当にありがとうございます、シャルルさん」


 ミオとエリアスが馬車に乗り込むと、シャルルは笑顔で見送ってくれた。

 本当に、街のご案内は出来るのだろうか……とても不安になるミオだった。


「おい」

「はい?」

「何故、外ばかり見ているんだ?」

「こうしてないと……あ、そっか」


 ミオは自分にヒールをかけた。

 酔い止めにはこうするんだとラウルに教えてもらったことを、すっかり忘れていた。


「酔い止めの方法忘れてました。もう、大丈夫です」

「酔い止め?」

「はい」

「何故、小窓を開けておく?」

「気分的に」


 ヒールで酔い止めをしたとはいえ、外の風が入って来た方が気持ちがいいので、小窓は開けておくことにした。

 これで馬車酔いもしないだろう。


 こうして、とりあえず街には到着した。

 馬車を下りて、御者に帰りもよろしくと伝えておく。

 問題はここからだ。


「エリアス様は、どこかご覧になりたいお店とかあるんです?」

「別にない」


 ですよねー。


「お前はいつもどの店に行くんだ?」

「私ですか?うーん……雑貨屋と薬草屋にはよく行きますけど」

「だったら、その店に案内しろ」

「え……いいんですか?めちゃくちゃ女子な店ですよ?」

「構わん」


 ミオは、いつもの雑貨屋に向かった。

 ミオが知っている道で。

 前にラウルに近道を教えてもらったけれど……覚えられなかったので、いつも自分が知っている道で通っているのだ。

 1年も住んでるんだから、いい加減覚えろなんて言われるかもしれないけれど、方向音痴が道を覚えるって凄く難しいんですよ!

 ある日突然閃いて、道を覚えることもあるけれど。


「このお店です。ウサギとか猫の雑貨がたくさんあって、とても可愛いお店なんですよ!」

「そ、そうか」


 キラーンという効果音を響かせながら目に星を宿すミオに、エリアスが若干引き気味だったのは……見なかったことにしよう。

 店内に案内してみたものの、エリアスがこの店にあまりにも似合っていなくて、危うく吹き出してしまいそうだった。


「ミオ様」

「はい?」


 店員に声をかけられてミオが振り向くと、1枚のチラシを手渡された。


「いつもご贔屓にして下さり、本当にありがとうございます。実は、この店の姉妹店が近くに出来まして……もしよろしければ、覗いて見てください」

「姉妹店?本当ですか!?ぜひ、立ち寄らせていただきます!」


 丁寧にこの店からの地図も書いてくれた。

 今度の休みにでも探しに行ってみよう。


「何か気になるものとかありました?」

「……母に土産でもと思ったのだがな」

「お母様にですか?」


 何だ、優しい所もあるんだこの王子様。


「これは?」

「これは、チャームですよ。こうしてバッグとかにつけるんです……たぶんですけど」

「何故、曖昧なんだ?」

「私がいた世界ではチャームだったんですけど、この世界ではどうなのかがわからなくて」

「なるほど」


 こうしていろいろと物色していると、オルゴールを発見した。

 造りはミオがいた世界のものとたぶん同じだ。

 ゼンマイを回して蓋を開けると、優しい音色のメロディーが流れる。

 知らない曲だったけれど、聴いていると癒されるから不思議だ。


 エリアスは、このオルゴールとチャームを母親のお土産に選んだようだった。


「薬草屋は……まぁ、薬草を売ってるんですけど、行きます?」

「お前は薬草屋で何を買っているんだ?」

「化粧水とか、紅茶です。とても美味しい紅茶があるんですよ。あとは、アロマオイルもたまに買ってますね」

「アロマオイル?」

「とても良い香りがするんですよ」

「……案内しろ」


 ミオは薬草屋に案内した。

 今日は何の紅茶が用意されているんだろう?

 薬草屋では、いつも紅茶が試飲出来るのでミオのお楽しみとなっていた。


「こんにちは」

「いらっしゃい……あ、ミオちゃん!……って、誰だよそいつ!?」

「えーと……とても偉い方ですよ、パトリックさん」

「偉い人って……誰?」


 王子様だって紹介しても良いのだろうか?などと悩んでいたミオだったけれど、悩む必要はなかったようだ。

 普通に、王子だと言うことは公表してもいいらしい。


「私は、シャトロワ王国第一王子、エリアス・シャトロワだ」

「ななな!王子さまでしたか!これは大変失礼いたしました。私はこの店の店主、パトリック・ラブリエです。こちらのお嬢様と魔導師団には、大変贔屓にしていただいているのですよ」


 さすがは店主だ、王子相手でも物怖じしないで普通に接客できている。

 パトリックは、ミオとエリアスをテーブルに案内すると、紅茶をふるまってくれた。


「こちらは、ベリーとアプリコットの紅茶で、ハチミツとミルクを加えたミルクティーです」

「わぁ、とてもいい香りですね!」

「新商品だよ。ミオちゃんには特別にプレゼントしてあげるけど」

「ちゃんと買っていきますよ」


 パトリックが出してくれた紅茶は、エリアスも一口飲んでとても気に入ったようだった。

 その後エリアスは、アロマオイルについてパトリックに説明を受けていた。

 ここでかなり時間が潰せそうで、パトリックにはとても感謝する。


「ところでミオちゃん」

「何ですか?」

「何故、王子様なんかと一緒に?」

「国王命令でご案内してるんですよ」

「なんと!」


 こうして、薬草屋にいる間にお昼の時間となり、ミオはパトリックにおすすめの店を尋ねた。

 すると、パトリックが店まで案内してくれて、従業員への説明までしてくれたので、スムーズに昼食に行きつくことが出来た。

 本当にパトリックには感謝しかない。


 昼食を食べた後は、ブラブラしながら噴水広場へとやって来た。

 そして、少し休もうとベンチに座ろうとした時。


「おい、お前!」

「今日こそは俺達が勝つからな!」

「勝負しろ!」


 ミオ達の前に、3人組の少年が現れた。

 15歳、16歳といったところだろうか?

 子供でもなく大人でもない、微妙な年齢の3人組だ。

 咄嗟に立ち上がって剣を抜こうとしたエリアスを、ミオは慌てて止めた。


「だ、大丈夫なので、少しここで座っていてくださいね!」

「は?何を言っているのだ?」

「本当に、大丈夫なので!」


 ミオは苦笑いしながら3人の前に立った。

 少年達は不敵な笑みを浮かべながらミオを見下ろしている。

 そう、3人組の少年達は、ミオよりもはるかに背が高いのだ。

 ミオは、3人に向かって両手を翳した。


「スノーフロスト」

「は?」

「おい!ずりぃぞ!コイツ、魔法使いやがった!」

「これじゃあ、動けねーだろうが!」

「しばらくそこで固まってなさいよ」

「はぁ!?ふざけんなよコラ!」


 ギャーギャー騒いでいる少年達の前で、ミオは盛大にため息をついた。

 そして、眉間にしわを寄せながらゆっくりと3人を見上げる。


「君達、私は今、とても偉い人をご案内中なのよね」

「は?」

「偉い人?」

「誰だよ?」

「そんなに戦い方を学びたいんだったら、騎士団の養成所に行きなさいよ。私に教えられることはないからね?」

「俺達に魔法を教えてくれるまで諦めねーからな!」

「「そうだそうだ!」」

「だから、君達には教えられないってば」


 魔導師の素質もない人に、どうやって魔法を教えろと言うんだ?

 この3人、先日ミオがドロボーを捕まえてからというもの、街に来るとよく絡んで来るようになったのだ。

 本当に、勘弁してほしい……


「とにかく、私は今大事なお仕事中なの。まだ絡んで来るなら、この氷は解除しないからね」

「仕事中だ?嘘つけ!」

「誰が嘘つくのよ!」

「いいから魔法教えろよ!」

「だから、無理だって。いい加減諦めてよ……」


 なかなか引かない3人組にミオが困り果てていると、エリアスが歩み寄って来た。


「お前達、いい加減コイツを困らせるのはやめろ。いいか?魔導師になるにはその素質が必要だ。この光を纏えたら素質はある。だが、纏えないのであれば即刻諦めろ」


 エリアスは、手のひらに3つの光の玉を浮かび上がらせると、3人に向かって放った。

 その光は3人の体に吸い込まれていき……消滅した。


「わかったか?お前達に魔導師の素質はない」

「な、何だよコイツ!」

「胡散くせ―!」

「……私は、シャトロワ王国第一王子だ。これ以上引かないのであれば、こちらも強硬手段に出るぞ」


 シャトロワ王国のことは知っているらしく、エリアスがそこの王子だと知ると、青ざめながら謝罪する3人組。

 凄いな、シャトロワ王国の王子って。

 ミオが、3人の足元を凍りつかせていたスノーフロストを解除すると、3人は深々と頭を下げると走り去って行った。

 これで、今後絡まれることがなくなるといいな。


「ありがとうございました。あの光って何なんです?」

「魔光だ」

「魔光?」

「魔力の有無を確かめることが出来る。知らないのか?」

「はい、初めて見ました」


 魔光って……ミオが魔力操作の練習で出していたあの光の玉だろうか?

 手のひらに出して見せると、それだと言われた。

 なんと、あんな使い道があったなんて知らなかった。


「あ、今日のことは誰にも言わないで下さいね!また1人での外出禁止にされてしまうので……」

「お前、そもそも1人で外出なんて許される立場ではないだろうが」

「自由に出かけたいんです!まぁ、この街しか許可されてませんけど」

「とんでもない王女様だな」


 その後は、ジェラードを食べながら馬車が待機している街の入り口に向かい、街の案内を終えて王宮へと戻って行った。

 何とか無事に街を案内できて、ホッとするミオ。

 3人組の件は……ちょっとした出来事として、問題視しないことにしよう。



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お読みいただきありがとうございました!

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