64 念願の魔導師が入って来た!
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4月25日―――
ミオがペリグレット王国にやって来て1年が経った。
元の世界とは全然違う世界にやって来て驚きはしたけれど、今考えてみれば案外普通に受け入れていたように思える。
人間って、驚きすぎると冷静になれるのかもしれない。
「ミオ」
「はい?」
今日はシャルルが率いる騎士団とともに、ネーオールの森の見回りに来ているミオ。
森の入り口で二手に分かれたところで、シャルルがミオに声をかけた。
「覚えているか?」
「何をですか?」
「1年前の今日、この森でミオと出会ったんだよ」
「あ、そういえばそうでしたね」
「空から光が降りて来て、その光とともにミオが現れたんだ」
「ふ~ん、そんな感じだったんですか」
何だかいろいろなことがあって、あっという間に時間が流れていった1年だったなと思う。
黒ローブやルシヨット魔導国との戦いなんて、とんでもない戦いも経験した。
自分は……王国と竜を守るために、貢献できただろうか?
「私、やって来たのがこの世界で、この王国で、本当に良かったと思ってますよ」
「私も、ミオと出会えたことをとても嬉しく思うよ」
「これからも、この王国のために頑張るので、よろしくお願いします!」
「ふふ、こちらこそよろしく頼む」
正直なところ、この王国のために何をすればいいのかはまだよくわからないけれど、今出来ることをやりながら、王女としてすべきことは国王から少しずつ学んでいくしかない。
王女としてか……自分が王女だと考えると、やっぱり何だかむず痒いような恥ずかしいような、何とも言えない気持ちになってしまうミオだった。
今日の見回りも、特に問題はなく行われ、いつものように水竜と遊び、予定通り王都へと戻ることが出来た。
平和だということは良いことだ。
見回りの片付けの手伝いは、いつものようにお断りされてしまったため、シャルルと一緒にカミーユの所に向かった。
「そろそろ、私も準備とか片付けの手伝いしたいんですけど」
「それは無理だと思うよ。私だってミオに手伝わせたりしないからな」
「何でですか?」
「怪我をさせるわけにはいかないだろう?」
「ケガなんかしませんよ……それに、少しくらいケガしても、ヒールで治せますし」
「ミオは女の子なんだし、重たい荷物は持たせられないよ」
「ナターシャ達も女の子ですよ?」
「あの3人は騎士団だからな」
「私だって魔導師団の魔導師です」
なかなか折れないミオに、シャルルは困った顔をしながら少し考えて、ミオに言った。
「今度、あの3人と力比べでもしてごらん」
「力比べですか?私だって鍛えてるんで、そう簡単には負けませんよ!」
「ふふ、どうだろうな」
胸の前で拳を握って意気込むミオに、シャルルは笑いながらミオの頭に手を乗せた。
―――――――
―――――
―――
「ミオ」
「何ですか?」
「来週あたり、シャトロワ王国の国王が遊びに来るそうだ」
「え?」
ある日の朝食で、父親であるペリグレット国王がそんなことを口にした。
シャトロワ王国の国王が……遊びに来る?
よその国の国王が遊びに来るって、何して遊ぶんですか?
遊ぶって……ふつうに遊ぶことをイメージしてていいんですか?
「それって……私、何かしないといけない感じなんですか?来週?え、私何も出来ませんけど!?いろんなお作法とかは!?」
「別に堅苦しくしなくて大丈夫だ、私の古い友人なのだよ。ミオはいつも通りで構わないが……紹介くらいはさせてくれ」
「ふ、普通に挨拶すればいいです?」
「ミオなら、笑顔で立っているだけで構わんよ」
「が、頑張ります」
王女としての振る舞いなんかこれっぽっちもわからないミオ。
今から緊張して変な汗が流れてきそうだ。
シャトロワ王国は、ペリグレット王国の東に位置している、同じ大陸にある武装国家らしい。
この世界の地図がまだよくわかっていないミオは、今度図書室で地図を探すことにした。
王女として、この世界のことを知らなすぎると反省する。
朝食の後、いつものように庭園をブラブラしていたミオだったけれど、シャトロワ国王のことが頭から離れず、綺麗な花たちを見て楽しむ余裕など全くなかった。
ガゼボの中のベンチに座って、気持ちを落ち着かせる。
来週にシャトロワ国王がやって来るのは決定事項だ。
今こうして悩んでいてもどうにもならないことなんだし、あれこれ考えるのはやめよう。
ミオは、深呼吸をして立ち上がった。
ミオが気持ちを切り替えてカミーユのいる執務室に向かうと、そこには見慣れない金髪のツインテールの後姿があった。
ん?誰だ?
「おはようございます、師団長」
「やっと来たか」
「え、私そんなに遅くなりました?」
「そういうわけではないが……まぁ、座れ」
カミーユに促されてソファーに座ると、目の前に座っている金髪ツインテールは、何とも可愛らしい女の子だった。
「……師団長の娘さんですか?」
「んなわけあるか!ほら、コイツがミオだ。まずは自己紹介しろ」
カミーユが女の子に自己紹介をするように言うと、女の子はミオに目を向けて強気な笑みを浮かべた。
「はじめまして。私はアリス・ベルリング、12歳。来月には13歳になるわ。得意な魔法属性は、火・水・雷」
「え、魔導師さん?」
「そうよ。私は、王国魔導師団の中でも、最も可愛くて強い魔導師になることを目指していたのよ!」
「あ、そうなんだ」
「そうよ!それなのに……ミオ・サクライ、何であなたが私の立ち位置に君臨しているわけ!?」
「……え?」
「私と勝負しなさい!私に勝てたら認めてあげるわ!」
「…………師団長?」
「まぁ……そういうことだ」
そういうことって……どういうことですか!?
てゆーか、何故この子は今まで魔導師団に入って来なかったんだ?
「あの……私、別に自分のことを可愛いだなんて思ったこともないし、そんなに強いと思ったこともないので、もしも魔導師団に入ってくれるなら、最も可愛くて強い魔導師なんていう立ち位置はあなたになると思うけど……」
「そんなこと言って、内心で私を見下すんでしょ!いいから勝負しなさい!」
「別に見下したりなんかしないわよ、私……」
「私は、自分の目であなたがどれ程の強さなのかを見たいのよ!ほら、訓練場に行くわよ!」
「えー……」
凄いなこの子。
アリスは、立ち上がるとさっさと執務室から出て行ってしまった。
ミオが困ったようにカミーユに目を向けると、カミーユもため息をつきながら立ち上がり、いいから戦えとミオを訓練場へと向かわせた。
こうして、訓練場へとやって来たミオは、先に到着していたアリスと向き合って、訓練場の中央に立った。
そして、立会人となったカミーユの合図で、模擬戦が始まった。
先に攻撃を開始したのはアリス。
ミオが箒で飛び上がって攻撃を避けると、アリスがミオを見上げながら文句を言って来た。
「あー!ズルいわよミオ・サクライ!降りて来なさい!」
「ズルいって……師団長」
「はぁ……ミオ、箒はなしで頼む」
ミオは地上に降り立つと、箒をカミーユに預けて再びアリスと対峙した。
アリスが再びミオに向かって攻撃魔法を放ち、ミオはホーリーシールドリフレクションで跳ね返した。
アリスは、跳ね返された自分の攻撃を避け切れずに地面を転がり、立ち上がるとすぐにまた攻撃魔法を放った。
ミオは、もう一度攻撃を跳ね返すと、アリスが地面を転がったところにスノーフロストを放って氷漬けにした。
アリスは身動きが出来ず魔法も使えないため、この勝負はミオの勝利ということで終了する。
「悔しいけど、噂は本当ね!私の負けを認めるわ!」
「え、噂?」
ミオに関する噂が流れているのだろうか?
町中で魔法を使うことなんてないし、何処でどんな噂が出回っているのだろう?
あ……そういえば、港町ではケートスが出た時に魔法を使ったな。
「私の情報収集能力は凄いのよ!ミオ・サクライについての情報は、全部この手帳に書いてあるわ!……って、動けないじゃないのよ!早くこの氷を何とかしてちょうだい!」
「あー、今解除するよ」
ミオがスノーフロストを解除すると、アリスはバッグから分厚い手帳を取り出して見せた。
手帳には、騎士達の会話や町の人達の会話、その他いろんな噂話など、ミオに関して耳にしたことを全て書き込んでいるらしい。
ある意味、ストーカーよりも怖いのでは?
「……何書かれてんのか凄く気になる」
「秘密よ!」
「それで、お前はどうするんだ?魔導師団に入団希望ってことでいいのか?」
「当たり前よ!そのためにようやく家族を説得して出て来たんだから!」
「出て来たって……お前、まだ12歳だろうが。学校はどうすんだ?」
「王都にある学校への編入手続きは済ませて来たわ」
「なるほどな。だったら入団ってことでいいんだな?」
「そう言ってるでしょ」
「ミオ、コイツを案内してやれ」
「わかりました」
こうして、王国魔導師団にとても元気な女の子が入団することになった。
てゆーか、もしかしてこの子、私と同じくらいの身長なのでは?ミオは宿舎に案内しながらふと思った。
聞いてみると、アリスの身長は155cmだと言われて、ミオは両手と両膝をついて項垂れた。
やっぱり、この世界の女子って身長高くないですか?
―――――――
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―――
「いらっしゃいませ……って、ミオちゃんじゃん!相変わらず可愛いね!……ん?その子は?」
「こんにちは、パトリックさん。この子は、今日から魔導師団に入ったアリスさんです」
「アリス・ベルリングよ」
「ふぅん。私はパトリック、この薬草屋の店主だよ。魔導師団とも取引してるからよろしくー」
ミオは、カミーユにアリスの箒の材料を買って来るように言われて、アリスと一緒にモンフォワールの街へと来ていた。
カミーユが店の名前をメモに書いてくれたけれど、わからなければパトリックに聞けと言われたので、迷う前にパトリックの店を訪れたのだ。
「で、どうしたの?ミオちゃん」
「えーと、アリスさんの箒の材料を買いに来たんですけど、お店がわからなかったらパトリックさんに聞くように師団長に言われたので……」
「カミーユの奴め……でも、ミオちゃんのためならいくらでも教えてあげるよ!どの店だ?」
「ここなんですけど」
ミオはメモをパトリックに渡した。
それを見ると、パトリックは他の従業員に店番を任せて、ミオ達をメモに書いてある店まで案内してくれた。
本当に、いつも仕事の邪魔をしてしまって申し訳なく思う。
「箒の材料を買ったら、一緒にお昼でも食べに行こうか」
「え、でもパトリックさん仕事中ですよね?」
「ミオちゃんとランチするのも、仕事の1つだよ」
「そんな仕事ないですからね?」
こうして、箒の材料を買った後にパトリックにお昼をご馳走してもらい、ミオとアリスは王宮へと戻った。
街までの往復でアリスと会話してみて思った。
この子は、とても強気だし言葉も少しきついけれど、実はとても素直でいい子だ。
何よりも、男性しかいなかった魔導師団に同姓が入ってきたことは、ミオとしてもとても嬉しく思う。
「師団長、戻りました」
「お帰り、ミオ」
「あれ、シャルルさん今日は執務室でお仕事だったんですか?お疲れ様です」
「そうだよ。その子が新しく入った魔導師か?」
「そうですよ」
「アリス・ベルリングよ、よろしく。あなたは?」
「私は、王国第一騎士団団長のシャルル・パトリエールだ」
「箒の材料は揃ったか?」
「はい、買ってきましたよ」
「だったら、箒の作り方を教えてやれ」
「師団長、私、箒は自分で作ってないんで教えられませんよ?」
「……あー、そうだったな。だったら、アルが戻って来るまで待つか」
執務室でお茶を飲みながら話していると、間もなくアルバンが学校から帰って来て、アリスに箒の作り方を教えてもらったのだけれど……この2人、何とも波長が合わないようで。
まぁ、無事にアリスの箒は出来上がったから良しとしよう。
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―――――
―――
「あ、ナターシャ、ベネット、クリスティーヌ!」
「ミオ様」
「よぉ、相変わらず小さいな」
「皆が大きいだけだよ!」
王宮で朝食を食べた後、騎士団の訓練場の前を通りかかるとナターシャ達の姿を見つけて、ミオは名前を呼びながら手を振った。
すると、3人はミオの姿を見つけて駆け寄って来た。
「ねぇ、ちょっと私と力比べしてよ」
「力比べ?」
「ミオ様とですか?」
「うん」
「ミオの腕が折れちまうよ」
「折れないからね!」
こうして、3人と腕相撲をした結果……ミオは抵抗する間もなくあっさりと全敗してしまった。
え、私の腕力って……
「腕折っちまいそうで怖いから、もうやらねーぞ!」
「えー」
「何でまた力試しなんかしようと思ったんだ?」
「……騎士の皆さんが、見回りの準備とか手伝わせてくれなくて……3人は同じ女子なのに手伝ってるって、そんな話をシャルルさんとしてたら、3人と力試ししてみなって」
「あー、なるほどなー」
「私達は鍛え方が違うからね」
「剣って重いんですよ」
「うん、知ってる。シャルルさんの剣、重くて持てなかったもん」
「ミオ様とは体のつくりが違うんだよ」
「そんなことないからね?体のつくりは同じだからね?」
その後も、騎士団の準備をミオが手伝うことは許されなかったのは言うまでもない。
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