63 カミングアウト
のんびり更新中♪
ここからは第四章です!
ミオとシャルルが元の世界から戻って来た翌朝。
死んだように眠ったミオは、スッキリと目覚めて大きく伸びをした。
戻って来る時、元の世界では1日を過ごし終えた夜、戻って来たら1日が始まった朝……1日寝ずに過ごしたようなもので、とても大変な1日だったのだ。
時差ボケ……じゃなくて、転生ボケとでも言うのだろうか?
「学生の頃は、レポート提出の時とかよく徹夜明けで行ってたけどさ……久々に死ぬかと思ったよ」
顔を洗って身支度をして、キャリーバッグからアルバムを取り出した。
王宮に朝食を食べに行くのに、父親である国王に持って行こうと思ったのだ。
これで、いつでも母親の顔が見れるし、少しは寂しさが紛れるのではないだろうか?
持ち帰ったお土産は、昨日の夕食の時に食堂で配ってもらったので、王宮の分のお土産も持って部屋を出た。
「アルバムって……こんなに数があると重いなぁ…」
ミオが生まれた頃のアルバムもあるため、結構な数だった。
そんな重たいアルバムを両手で抱えて歩いていると、廊下でカミーユと出会った。
「おはようございます、師団長」
「あぁ、おはよう。何だ?その重たそうな荷物は」
「アルバムです。父……えーと、王様に持って行こうかと思って」
「アルバム?何だそりゃ」
「写真がたくさん収納されてるものですよ」
「しゃしん?」
そうか、写真なんてこの世界には存在しなかった。
ミオは写真の説明をしようとしたけれど、何だかいろいろと難しかったので、外に出てベンチの上にアルバムを置いて、写真を見せながら説明した。
「これは……たぶん、7年くらい前の私と母です」
「これがカエデ様か?なるほど、お前を大人にしたような見た目だな」
「私、大人ですからね?」
今、とても失礼なことをサラッと言いましたよね?
「こっちは……随分と分厚いな。本か?」
「これは、私が生まれた頃からの写真ですね」
「そんな昔のものまであるのか?」
「母がアルバム作るの好きだったんですよ」
カミーユは、アルバムを開くと目を見開きながら、写真とミオを交互に見た。
え、どういう反応なんですかそれ……
「それじゃあ、私は王宮に行って来ますね」
「それ見たら、お前の父親はまた号泣だろうな」
「勘弁してください……」
ミオは、よいしょとアルバムを両手で抱えると、王宮へと向かった。
騎士団の訓練場では、朝食前だというのにたくさんの騎士達が剣を振っていて、いつもながら凄いなぁと思いながら通り過ぎた。
ルシヨット魔導国との戦いもあったので、騎士達の気合いも違っているようだ。
王宮前の広場では、夜勤を終えようとしている騎士達が集まっていて、ミオの姿を見つけた騎士が駆け寄って来た。
「おはようございます、ミオ様」
「おはようございます」
「お荷物、お持ちしますよ!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。父の所まで運ぶだけなので」
「ミオ様のお父様?」
しまった、つい父と言ってしまった。
どうしよう……
「あ、何でもないです!聞かなかったことにしてください!それじゃあ、行きますね!」
「え、ミオ様!?」
苦笑いしながら、ミオは足早にその場から立ち去った。
やっぱり、隠し通すなんて無理な話よね……毎朝、王宮を訪れているってこと自体、不自然なことでもあるし。
いっそのこと、公表した上で今まで通り接してもらった方がいいのでは?そんなことが頭を過ぎったミオだった。
「おはようございます、お父さん」
「おはよう、ミオ。どうした?そんなに大荷物を抱えて」
「昨日、ちょっと元の世界に戻って来たんで、お土産です」
「元の世界?……何だと!?元の世界に戻って来ただと!?ここが嫌になってしまったのか!?」
「ち、違いますから泣かないでくださいよ……私はもう、この世界で生きていくって決めたんですから」
「本当か?本当にいなくなったりしないのか?」
「はい」
「ミオ~~~~~~~!」
「いや、だから泣かないでくださいってば」
ミオは、机の上にアルバムを置いて父親を宥めた。
そして、父親の目の前でアルバムを開いて見せた。
ピタリと泣き止む父親。
「これは?」
「私と母です」
「何だと!?カエデだと!?……本当だ、カエデがたくさんいる!」
「母は1人しかいませんけどね」
父親はアルバムをめくるたびに、ミオと母親の姿に歓喜の声を上げていた。
いちいち声を出さなくてもいいですよ?
「こっちは、私が生まれた頃からの写真です」
「何と!ミオが赤ちゃんだった頃まで見れるとは……おぉ、本当に天使のようだな!」
「恥ずかしいんでやめてください」
「今日はこれを見て過ごそうかの」
「仕事をして、空いた時間で見てくださいね。これは全部お父さんにあげるので」
「本当か!大切にするぞ!」
「それから、これは王宮の皆さんで食べてくださいね。騎士の皆さんには食堂で配ってるので」
「これは?」
「美味しいお土産です」
侍女が、朝食の用意が整ったことを知らせに来たので、父親と2人で場所を移動した。
母親に会わせてあげることは出来ないけれど、写真を見ることで、ミオと母親が過ごした時間を、父親とも共有できればいいなと思うミオだった。
―――――――
―――――
―――
ルシヨット魔導国との戦いが終わり、ペリグレット王国では穏やかな日常が戻り、人々は日々平穏に暮らしていた。
もうすぐ4月。
オルレーヌの港町もほとんど元通りに復興し、元の活気ある町へと戻っていた。
たった2ヶ月で復興できてしまうなんて、元の世界のようにいろんな技術が発展していないにも関わらず、人の力って凄いなと思う。
ルシヨット魔導国へと戻って行ったラウルからは、時々クリスタルを通じて連絡が来る。
一昨日くらいに連絡が来たけれど、まだ船の上のようだった。
でも、あと少しでルシヨット魔導国に到着すると話していたので、無事に到着することを祈るばかりだ。
ラウルは変わらずに元気そうで、コルトとディナールも元気だと話していた。
氷漬けにしていたガストビ達は、氷が融けてしまわないようラウルが結界を張っているらしい。
3人での船旅は大変そうだけれど、きっとラウル達なら大丈夫だろう。
「少し休憩をしようではないか」
ペリグレット国王の言葉で、護衛の騎士がお茶の用意を侍女に依頼しに行った。
只今、王宮の執務室では、各騎士団団長と魔導師団師団長が集まって、国王に半期の活動報告のようなものをしている。
9月の末には1年間の報告会もあるらしい。
そんな会議に何故か出席させられているミオ。
「疲れていないか?ミオ」
「大丈夫ですよ、シャルルさん」
「師団長にでもなるのか?嬢ちゃん」
「なりませんよ……この会議、私って必要なくないです?」
ミオが国王に目を向けると、国王はニコニコしながら言った。
「ミオにも、少しずつ私の仕事を知ってもらおうと思ってな」
「あ、そういうことですか」
「口で言うよりも、実際に見てもらった方がわかりやすいだろう?」
「そうですけど……難しい話はよくわかりませんよ?」
「少しずつで構わんよ」
ミオはペリグレット王国の王女なのだから、国王の仕事は覚えなければいけない。
自由にしていてもいいと言ってくれているけれど、何もしなくていいわけではないのだ。
いずれ、後を継ぐことになるのだし……今でも全く実感がわいていないけれど。
「師団長」
「何だ?」
「年取らない魔法ってないんですか?」
「あるわけがないだろうが、そんな魔法」
「やっぱりないですよねー。お父さんが年取らなければ、ずっと現役なのになぁ……」
「ははは。ミオ、さすがに私も永遠に現役じゃあ、体がもたんよ」
「え、大丈夫そうな顔してますよ?」
「勘弁してくれ。どんな顔だそれは……」
「ちょっと待ってくれ。嬢ちゃん、お父さんとはどういうことだ?」
「陛下が……ミオの父親?」
「…………あ」
ランディとレオポルドが困惑したような顔でミオと国王に目を向けて、ハッとしてゆっくりとカミーユに目を向けるミオ。
カミーユは盛大にため息をついた。
「お前なぁ、何普通に親子の会話してるんだよ」
「つ、つい……」
「はぁ……陛下、もう話してしまってもよろしいかと思いますよ」
「ミオ、すまんな。私もうっかりしていたよ……2人とも、実はミオは私の娘なのだ。ミオが危険に巻き込まれないように公表しなかったのだよ。それに、私の娘だと周りに知られれば、ミオも気を遣われてしまうのではないかとな」
「そうだったのですか。驚いたな、まさか嬢ちゃんが陛下の娘だったとはな。おっと、嬢ちゃんなんて呼んだら駄目だよなぁ」
「……今まで通りでお願いします、プーレ団長」
「シャルルとカミーユは知っていたのか?ミオが陛下の娘だってこと」
「まぁな」
「そのことはミオと一緒に聞いたからな」
「それにしても、本当に凄い嬢ちゃんだな。伝説の魔導師の娘で、陛下の娘か」
「あはは……」
例え、この王国の王女だとしても、皆には今まで通り接してもらいたいと思うミオだった。
いつか、他の皆にもこのことは公表する日が来るだろう。
だとしても、変わらない関係でいたいと思うミオだったけれど、それは難しいことなのだろうか……
それから、ミオが王女だということが知れ渡るまで、そう時間はかからなかった。
4月に入ったある朝、ミオがいつものように王宮で国王と一緒に朝食を食べ、他愛もない話をしてから庭園を散策し、騎士団が見回りの準備をしている広場にやって来てシャルルと話している時。
「ミオ~~~~~~」
「ん?」
ミオの名前を呼びながら、王宮から走って来た国王にミオが振り返る。
年のせいか、国王はミオの所まで走って来ると、膝に手をつきながら肩で息をしていた。
「だ、大丈夫ですか?お父さん……どうしたんです?」
「ハァハァ……大丈夫だ……ハァハァハァ……これ、ミオのだろう?私の部屋に落ちていたぞ」
「あ、私のスマホ。ありがとうございます、お父さん」
「ミオが見回りに行ってしまう前に届けられて良かった」
「ミオ……陛下……」
「え?」
シャルルが困ったように笑いながらミオの肩に手を乗せて、ミオはシャルルの顔を見てハッとする。
……やってしまった。
一瞬、シーンと静まり返った後、ザワザワし始めた騎士達。
1人の騎士がミオの所に駆け寄って来て、興奮気味に言った。
「以前、ミオ様が本のようなものを抱えて、お父様の所に運ぶと言っていたのは、国王陛下のことだったんですか!?」
「えーと……本ですか?……あー、アルバム……ま、まぁ……そうですね」
「ミオ様が国王陛下の娘さんということは……」
「「「王女様!!」」」
「あの……そうじゃなくて……あ、まぁ、そうなんですけど……うぅぅ……シャルルさん……」
ミオが涙目になってシャルルを見上げると、シャルルは笑いながらミオの頭に手を乗せて、騎士達にミオのことを説明した。
様々な理由があって今まで公表してこなかったこと、ミオが国王の娘だということは事実であり王女だということ、王女ではあるけれど今まで通り魔導師団の魔導師だということなどなど……
シャルルの説明で騎士達は納得し、今まで通り接してもらえそうで安心する。
「まぁ、でも良かったではないか。公表しないで隠しておくというのも、何だか胸につっかえるものがあるだろう?私もつい喋ってしまいそうで心配だったのだよ」
「そ、そうですね……」
「だが……ミオに危険が及ばないかは心配だがな」
「それは……たぶん、大丈夫ですよ。私も戦えるし、そもそも私を狙う人なんていないと思うし」
「そうだといいがなぁ」
「私はとても心配だよ」
「シャルルさんは心配性なんですよ」
ケラケラ笑うミオだったけれど、シャルルは困ったように笑いながらミオを見ていた。
それにしても……まさかのカミングアウトで大騒ぎになるかと思いきや、思ったほどでもなくて良かったと思うミオだった。
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